グリコピロニウムトシル酸塩水和物

成分名

グリコピロニウムトシル酸塩水和物

適応症状

発汗剤/止汗剤(原発性腋窩多汗症)

簡易説明

ラピフォートワイプ2.5%(以下、本剤)はDermina社が開発したグリコピロニウムトシル酸塩水和物を含有した外用薬で、原発性腋窩多汗症の患者に1日1回腋窩に塗布するワイプ(拭く)製剤です。
発汗は交感神経から分泌されるアセチルコリンのがムスカリンM3受容体に結合する事によって生じますが、本剤はこの結合を阻害することで発汗を抑制すると考えられています。
原発性腋窩多汗症の治療には薬物療法のほか、レーザー治療や手術療法がありますが、本剤は医師の施術によらず自分自身で治療できる、体への負担が少ない新たな治療選択肢となることが期待されています。

処方可能な診療科目

皮膚科など

健康保険の適応

健康保険適応

病院で処方してもらう時の費用目安

診察料などの目安:約3,600円(262.00円×14日(*)=約3,600円)
薬代1錠あたりの目安:262.00円
(*)2023年4月末日までは14日分が1回最大投与量
薬代後発品1錠あたりの目安:後発品なし
病院によって差が有り薬代の他に、初診料・診察料・検査料(**)などが必要になります。
(**)多汗症疾患重症度評価尺度(HDSS)による診断が必要です。

厚生労働省による認可、または発売年月日

発売年月日:2022年5月23日

国内のジェネリック認可

現在ジェネリック医薬品の製造はありません。

関連製品(先発薬)

ラピフォートワイプ2.5%【製薬メーカー:マルホ株式会社】

関連製品(ジェネリック)

現在ジェネリック医薬品の製造はありません。

海外での使用実績

・アメリカ
アメリカでDermira社より同一成分を有するQbrexzaが2018年10月に10月より販売されています(アメリカ食品医薬品局(FDA)承認:2018年6月)。
2021年9月現在、アメリカ以外では承認申請されていません。

効果・作用

原発性腋窩多汗症は、原発性局所多汗症(頭部・顔面、手掌、足底、腋窩に、温熱や精神的な負担の有無に関わらず、日常生活に支障をきたす程の大量の発汗を生じる疾患)のうち、腋窩に過剰な発汗を起こすものと定義されていて、両脇に発汗がおこる特徴があります。一言でいうと「原発性腋窩多汗症」とは、「何もなくても脇汗が多い」という病気です。
日本人の8人~9人に1人が原発性腋窩多汗症(有病率:12,76%)で年齢別には25歳から29歳が最も多いとされています。
原発性腋窩多汗症の診断には多汗症疾患重症度評価尺度(HDSS)が使われています。HDSSは問診票で、自覚症状により原発性腋窩多汗症の重症度を調べる検査です。

発汗は汗腺細胞のムスカリンM3受容体にアセチルコリンが結合することで生じますが、本剤はこの結合を阻害する事で、発汗を抑えます。抗コリン作用と呼ばれる働きです。

少しややこしい話になりますが、アセチルコリン、交感神経について若干解説をします。
自律神経には交感神経と副交感神経があり、互いに制御しあっています。交感神経はノルアドレナリンの働きで分泌され、副交感神経はアセチルコリンの働きで分泌されています。よくスポーツ選手などが「アドレナリンが出たので頑張れた」等のコメントをするように、アドレナリン(ノルアドレナリン)が関与する交感神経は活動を促す働き、副交感神経は逆にリラックスさせる働きがあります。
あれっと思いませんか?そうです。汗腺は交感神経系ですが、例外的にアセチルコリンによって分泌されます。

本剤はアセチルコリンの働きを抑える作用があるので、副交感神経の働きによって活発になる(副交感神経優位といいます。)生理現象が抑制されることがあり、その症状が副作用として現れることがあります。つまりリラックスしている時に起こるべき生理現象が起こらなくなる副作用です。代表的なものは「副作用」の項に記載している「喉が乾く」「おしっこが出にくくなる症状」や「眼が見えにくくなる」などの症状です。
難しくなるので簡略化して説明しますが、交感神経優位の状態は「狩りをしている状態」と考えてください。狩りをしている時はよく物が見えないといけません。またおしっこをしている場合ではありません。水分補給が必要となりのども乾きます。副交感神経優位のときは逆によく見える必要もなく、むしろこの間におしっこをしておくべきです。余計な水分を取る必要もありません。
この副交感神経が抑えらると、これらが交感神経優位に傾きます。瞳孔が開きよく見えるようします。すると瞳孔を開くために眼に栄養を与える水分(防水)が排泄されにくくなり、緑内障(眼圧上昇によるまぶしさ、かすみ目、ドライアイ等)が起こってきます。同様に排尿障害や口喝などの副交感神経優位が妨げられることによる症状が副作用として現れる事があります。

日本国内で行われた臨床試験
第Ⅱ/Ⅲ相試験(原発性腋窩多汗症患者に対する投与4週後の効果:HDSSが2段階以上改善)は本剤群で41.1%(69/168例)、プラセボ群(偽薬投与群)で16.4%(27/165例)と有意に本剤群が高かった(ピアソンのカイ二乗検定、P<0.0001)。
第Ⅲ相長期投与試験(原発性腋窩多汗症患者に対する長期投与の効果:HDSSが2段階以上改善)は28週で60.5%(101/167例)、52週で64.3%(83/129例)となった。
これらの臨床試験の結果より国内で、「原発性腋窩多汗症」の治療薬として承認された。

使用方法

1日1回、清潔で乾いている状態の両脇1回づつ拭きます。ごしごしこすりません。
包装は使う直前に開封します。1枚の不織布で両脇に使います。
使用後は、他の人が触れないように捨てます。使用後はすぐに手洗いをしてください。
開封時に薬液が飛び散ることがあるので目から離して開封します。
9歳未満の小児を対象として臨床試験は行っていません。
包装に記載されているQRコードから使い方の動画を見ることができます。

副作用

主な副作用
薬の作用(抗コリン作用:交感神経を抑える働き)による全身への副作用がおこることがあります。
羞明(まぶしく感じる)、散瞳(瞳孔がひろがる)、霧視(かすみ目)、ドライアイ、排尿困難、頻尿、口渇(喉が乾く)、接触皮膚炎(かぶれ)、湿疹

発生頻度:副作用発現頻度:23.1%
眼の症状:羞明(4.2%)、散瞳(4.2%)、霧視(2.3%)、ドライアイ(1.2%)
排尿症状:排尿困難(3.5%)、頻尿(1.5%)
全身および投与部位の症状:口喝(3.8%)、適用部位皮膚炎(0,8%)適用部位湿疹(1.2%)
皮膚の症状:接触皮膚炎(1.9%)、湿疹(0.4%)

傷口や湿疹、皮膚炎等があるときはへの使用しません。
両脇以外の場所には使用しません。

※その他、異変を感じた場合は直ぐに医師の診察を受け指示に従ってください。

使用に注意が必要な方
使用出来ない方

使用に注意が必要な方
・閉塞隅角緑内障の患者、前立腺肥大による排尿障害のある患者(抗コリン作用により症状を悪化させるおそれがある。)
・抗コリン作用により羞明などの眼症状が現れることがあるので、自動車の運転等の危険を伴う機械の操作を行う際には注意が必要。
・発刊抑制効果により体温が上昇するおそれがある。
・動物実験において胎盤通過性、乳汁中移行が報告されている。

上記にあてはまる方は、グリコピロニウムトシル酸塩水和物を使用する事が出来ない可能性があります。
グリコピロニウムトシル酸塩水和物を使用する前に、医師又は薬剤師に使用しても問題ないか必ず確認をして下さい。

併用禁忌薬

併用禁忌薬
現在併用禁忌薬に該当する医薬品はありません。

併用禁忌薬に入ってないからといって、その他の医薬品と併用するのは危険です
現在、薬を服用している場合は、併用可能かどうか必ず医師に相談してください。

よくある質問
いつ使用すればよいですか。

いつ使用するかの規定はありません。臨床試験では使用後4時間は脇を洗わないこととしていました。洗浄してしまった場合でも1日2回塗布することは避けてください。

汗が出なくなると体温があがり、熱中症になる可能性はありませんか。

発汗しやすい環境下(高温多湿な場所や運動時など)で汗が出なくなると体温が上昇するおそれがあり、本剤の使用が熱中症を引き起こす可能性は否定できません。

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