ブロモクリプチンメシル酸塩

成分名

ブロモクリプチンメシル酸塩

適応症状

末端肥大症、乳汁分泌抑制、不妊症、パーキンソン病など

簡易説明

ブロモクリプチンメシル酸塩はスイスのサンドファーマ(現、ノバルティス社)が開発した持続性ドパミン作動薬です。
ドパミンは脳下垂体でのホルモン分泌を調整するため、成長ホルモンやプロラクチン(乳汁分泌ホルモン)の異常による疾患に関連しています。
また、ドパミンは脳内で身体の運動を調節しているため、パーキンソン病にも関与しています。
日本国内では、1974年4月に末端肥大症、下垂体性巨人症の治療薬として発売され、1983年にプロラクチン分泌異常の婦人科疾患の適応、1985年にパーキンソン病の適応を追加しました。

処方可能な診療科目

小児科/内分泌内科/産婦人科など

健康保険の適応

健康保険適応

病院で処方してもらう時の費用目安

診察料などの目安(*):100円(14.1円×7錠(14日分)=98.7円)~5,240円(41.6円×9錠×14日)
(*)本剤は適応疾患によって投与制限日数が異なります。目安は14日処方の場合の薬剤費になります。
薬代1錠あたりの目安:41.60円
薬代後発品1錠あたりの目安:14.10円(41.30円の薬剤あり)
病院によって差が有り薬代の他に、初診料・診察料・検査料などが必要になる。

高プロラクチン血症の治療で使用する場合は、脳下垂体の検査(腺腫の有無)を検査します。
視野障害のあるプロラクチン産生下垂体線種の方は定期的に視野検査を行います。

厚生労働省による認可、または発売年月日

発売年月日:1979年4月19日

国内のジェネリック認可

国内のジェネリック認可あり

関連製品(先発薬)

パーロデル錠2.5mg【製薬メーカー:サンファーマ株式会社】

関連製品(ジェネリック)

ブロモクリプチン錠2.5㎎「タカタ」【製薬メーカー:高田製薬株式会社、ブロモクリプチン錠2.5mg「トーワ」【製薬メーカー:東和薬品株式会社】、ブロモクリプチン錠2.5mg「フソー」【製薬メーカー:扶桑薬品工業株式会社/ダイト株式会社】、ブロモクリプチン錠2.5mg「F」【富士製薬工業株式会社】、ブロモクリプチン錠2.5mg「KO」【製薬メーカー:寿製薬株式会社】

海外での使用実績

Parlodelの製品名でノバルティス社が1975年に販売を開始し、現在はオーストラリア、韓国、シンガポールなど数十か国で販売している。

効果・作用

本剤はドパミン受容体に働き、ドパミン濃度を高める薬です。ドパミンはホルモン(プロラクチン、成長ホルモン)を調整する働きと、神経伝達(運動)を調整する働きを持っています。
このため、本剤は大きく3つの疾患に対する適応を持っています。
1.乳汁漏出症、産褥性乳汁分泌抑制、高プロラクチン血性排卵障害、高プロラクチン血性下垂体線種(以下、高プロラクチン血症関連婦人科疾患)
2.末端肥大症、下垂体性巨人症(以下、成長ホルモン関連内分泌疾患)
3.パーキンソン病

1.高プロラクチン血症関連婦人科疾患
プロラクチンは乳汁分泌を促すホルモンです。乳汁は出産後に乳児に与えるために分泌されますが、このプロラクチンには排卵を抑える働きがあります。
妊娠・出産という母体に負担が激しい状態を繰り返さないための生体防御反応です。
このプロラクチンが出産後以外で高い状態を高プロラクチン血症と呼び、不妊症の原因となります。
「産婦人科診療ガイドライン‐婦人科外来編2020」では、高プロラクチン血症の治療はブロモクリプチンを含むドパミン作動薬による薬物治療が第一選択とされています。
・国内の臨床試験
(乳汁漏出症)乳漏停止:57.3%(116/216)、乳漏減少:34.3%(74/216)。改善率88%。
(排卵障害)排卵率76.7%(165/215)、不妊症の方の妊娠率:45.3%(78/172)
(下垂体線種)乳汁漏出の有効率:76.7%(33/43)、排卵率:54.0%(27/50)、妊娠率:43.2%(16/37)

2.成長ホルモン関連内分泌疾患
下垂体性成長ホルモン分泌亢進症とも呼ばれる指定難病の一つです。
脳下垂体にホルモンを過剰に分泌する良性腫瘍ができることが原因と考えられています。
手足の肥大や額やあごが大きくなる特徴的な顔貌が生じます。
治療は手術が一般的ですが、手術ができない、術後も成長ホルモンが低下しない場合などは薬物療法が行われます。
「間脳下垂体機能障害の診断と治療の手引き(平成30年度改定)」では薬物治療の一つにドパミン作動薬が選択肢として示されています。
・国内の臨床試験
成長ホルモンの低下、発汗・しびれ等の症状改善、顔つき等の改善がみられました。
本疾患99例に1日1錠(維持量3錠)を基準とした長期試験の結果。

3.パーキンソン病
パーキンソン病は指定難病の一つで、脳内のドパミンが減少することによっておこると考えられていますが、その原因など多くの事がまだ解明されていません。
ドパミンが減少すると、運動機能に異常が生じ、ふるえ、動作緩慢、筋肉の固縮、転びやすいなどの症状が現れます。また不眠やうつ、幻覚などの精神症状が現れることもあります。
「パーキンソン病診療ガイドライン2018」では、本剤はおそらく有用だが第一選択薬としては勧められないとの評価にとどまっています。
・国内の臨床試験
無動・寡動、固縮・ふるえなどの症状に対して74.2%(316/426)の改善がみられました。

新型コロナウイルス感染症予防・治療に関して

この薬には併用に注意すべき薬がありますので、新型コロナウイルスのワクチン予防接種や治療を行う場合は、必ず医師や薬剤師に相談してください。

使用方法

高プロラクチン血症関連婦人科疾患
1日1錠を夕食直後に1回服用から始め、症状に合わせて1日2~3錠を2~3回食直後に増量します。
成長ホルモン関連内分泌疾患
1日1~3錠を2~3回食直後に服用します。
パーキンソン病
1日半錠~1錠を朝食直後に1回服用からはじめ、1~2週間ごとに1錠ずつ増量し、維持量(通常6錠~9錠)を決めていきます。1日量が2錠の場合は朝食、夕食直後に服用し、3錠以上の場合は3食直後に服用します。

少量から初めて徐々に増やしていく薬ですので、必ず医師、薬剤師等の指示通りに服用してください。

副作用

主な副作用
・高プロラクチン血症関連婦人科疾患
副作用発現率:16.9%(578件/3,418例)
主な副作用と発現率
吐き気:12.0%(411件)、嘔吐:4.7%(159件)、便秘などの胃腸症状:2.5%(86件)、めまい:2.6%(88件)、頭痛等:1.3%(45件)、倦怠感等:1.6%(56件)
・成長ホルモン関連内分泌疾患
副作用発現率:30.7%(164件/534例)
主な副作用と発現率
吐き気・嘔吐:9.7%(52件)、便秘:8.2%(44件)、悪心3.2%(17件)、胃の不快感:2.2%(12件)、食欲不振などの胃腸症状:1.9%(10件)、めまい・ふらつき:2.2%(12件)、頭痛:1.9%(10件)
・パーキンソン病
副作用発現率:18.8%(978件/5,212例)
主な副作用と発現率
吐き気・嘔吐:8.3%(433件)、食欲不振:2.5%(128件)、胃の不快感:1.1%(57件)、便秘:0.7%(39件)、のどの渇き等:0.6%(31件)、幻覚・妄想:2.8%(145件)、ジスキネジア(自覚と無関係に(不随意に)体が動いてしまう症状):2.0%(106件)、めまい・ふらつき:1.2%(60件)、頭痛等:1.1%(57件)、立ちくらみ:0.7%(36件)

重大な副作用
急激な血圧低下によるショック(失神等)
悪性症候群(急激な高熱、意識障害、不随意な手の震え等)
胸膜、心膜の繊維性変化
心臓弁膜症
後腹膜繊維症
幻覚・妄想、せん妄、錯乱等の精神障害
胃腸出血、胃・十二指腸潰瘍の悪化
痙攣、脳j血管障害、心臓発作等
突発性睡眠(突然の睡眠)

※その他、異変を感じた場合は直ぐに医師の診察を受け指示に従ってください。

使用に注意が必要な方
使用出来ない方

使用が出来ない方
麦角アルカロイド(エルゴメトリン製剤など)で過敏症(じんましん等)を起こしたことがある方
出産後の高血圧の方
心臓弁膜に異常のある方

※著しい血圧低下、突然の睡眠などがおこることがあるので、自動車運転等の危険を伴う器械の操作はしないでください。

使用に注意が必要な方
下垂体主要が大きい(トルコ鞍外に進展している)方
妊婦、妊娠している可能性のある方
下記疾患の方(過去に患った事のある方
(肝障害、胃・十二指腸潰瘍、精神病、重篤な心血管疾患、腎疾患)
レイノー病(寒さなどで手指等に痛みが生じるなどの病気)の方

上記にあてはまる方は、ブロモクリプチンメシル酸塩を使用する事が出来ない可能性があります。
ブロモクリプチンメシル酸塩を使用する前に、医師又は薬剤師に使用しても問題ないか必ず確認をして下さい。

併用禁忌薬

併用注意薬
交感神経刺激薬、麦角アルカロイド
血圧を下げる薬
アルコール
抗パーキンソン剤
向精神薬(フェノチアジン系薬剤、プチロフェノン系薬剤、イミノジベンジル系薬剤、非定型抗精神病薬)、ドパミン受容体拮抗薬(メトクロプラミド、ドンペリドン)
免疫抑制剤(シクロスポリン、タクロリムス)
抗生物質(マクロライド系)、抗ウイルス薬(HIV)、抗真菌薬(アゾール系)
オクトレオチド(先端肥大症などの治療薬)

本剤は薬物代謝酵素(CYP3A4)で代謝され、また阻害するので、CYP3A4が関与する薬との併用には注意が必要です。

上記を使用している方は、ブロモクリプチンメシル酸塩を使用する事が出来ない可能性があります。
ブロモクリプチンメシル酸塩を使用する前に、医師又は薬剤師に使用しても問題ないか必ず確認をして下さい。

併用禁忌薬
現在併用禁忌薬に該当する医薬品はありません。

上記の併用禁忌薬に入ってないからといって、その他の医薬品と併用するのは危険です
現在、薬を服用している場合は、併用可能かどうか必ず医師に相談してください。

よくある質問
症状がよくなったら薬をやめてもいいですか。

急に薬をやめると悪性症候群がおこることがあります。また薬剤離脱症候群と呼ばれる、いわゆる薬の禁断症状(不安、発汗など)がおこることがあります。
このため、薬をやめる時は医師や薬剤師の指示通り、徐々に減らしていってください。

普段の生活で気を付ける事はありますか。

この薬を飲んでいると、病的賭博(病的にギャンブルを繰り返す)、病的な性欲亢進、購買行動、暴食などがおこることがあります。このような症状が現れたら医師または薬剤師に相談してください。

サイト利用に関する注意事項

医薬品を使用する場合、必ず医師や薬剤師の指示に従って下さい。
医薬品を使用し、体調不良が現れた場合、我慢せずに直ちに医師の診察を受け、指示に従って下さい。