アルコール依存症とは
アルコール依存症は進行性の「脳の病気」という事をご存じですか?その人の個性や体質ではなく、治療をする必要性のある紛れもない病気であるということです。
また早期に治療を始めないと手遅れになる厄介な病気のため、治療方法についても早めに知っておくと役に立ちます。
この章ではアルコール依存症の定義や症状などの基礎を紹介します。
アルコール依存症の定義
アルコール依存症とは、自分で飲酒量をコントロールしたり、我慢したりできなくなる病気です。飲みすぎたら身体を壊すことや、会社や友人、愛する家族などにも迷惑がかかることを頭では理解していても、自分では禁酒することができなくなります。最終的には周囲との人間関係を壊し、自分自身の身体も壊してしまう恐ろしい病気です。
e-ヘルスネット(厚生労働省)によると、アルコール依存症は以下のように定義づけられています。
アルコール依存症の離脱症状
精神依存や身体依存が引き起こされると長期的な悪循環に陥ります。アルコールへの依存度が高まる要因としては「離脱症状」があります。
飲酒をやめると数時間~数日間離脱症状が引き起こされることで、それを打ち消すために再び飲酒をしてしまうような状態です。
離脱症状の有無は治療開始を検討するうえで重要なサインとなります。
以下に示すような離脱症状が自身に起こっていないかを定期的にチェックすることが重要です。
小離脱症状(飲酒をやめた直後~50時間に起こることが多い)
- 振戦(手の震え)
- 軽度の発汗
- 一過性の幻覚
- けいれん
- 軽度の見当識障害(自分がどこにいるか分からない)
大離脱症状(飲酒をやめて30~130時間に起こることが多い)
- 重度の振戦(手の震え)
- 精神運動の増加
- 自律神経症状
- 重度の発汗
- 幻覚
- 重度の見当識障害
アルコール依存症かどうかは離脱症状だけでは判断できません。
総合的にアルコール依存症のセルフチェックをする際は、AUDIT(アルコールスクリーニングテスト)を活用するのがオススメです。
こちらのチェックリストで20点以上の場合はアルコール依存症が疑われます。
アルコール依存症はなぜ起こる?
アルコール依存症が過度な飲酒によって引き起こされることは想像がつくかと思います。
しかし、「なぜ過度な飲酒をしてしまうのか」といった根本的な理由までしらないと一人ひとりにあった適切な対策、治療方法の選択をすることは難しいでしょう。
この章ではアルコール依存症がなぜ引き起こされるのかを、具体的なメカニズムも含めて紹介します。
お酒をやめられない理由
お酒をやめられない理由にはいくつかありますが、初期の段階では、飲酒によって寝付きが良くなったり、ストレスを発散できたり、気分が良くなったりといった報酬効果を期待して、飲酒が習慣化されるところから始まります。
習慣化はアルコール依存症のすべての引き金であり、習慣化が進むと自身で飲酒をコントロールできない精神的依存症状、身体的依存症状が引き起こされます。
この段階で禁酒や減酒をすると離脱症状が起こるため、それを打ち消すためにさらに飲酒をしてしまうという悪循環によりお酒をやめられなくなります。
お酒が強い人と弱い人の違い
お酒がやめられない理由の引き金は「飲酒の習慣化」であると紹介しましたが、この習慣化までの過程は個人差が大きく一概にどのくらい飲酒したら習慣化するといった目安はありません。
一方で、自分がお酒に強いか弱いかを知っておくことは過度な飲酒を控えるための意識づけになります。
いわゆるお酒に強いか弱いかは、その方のアルコールの分解能力が関係しています。
アルコールを分解する時に作られる「アセトアルデヒド」が悪酔いの原因物質であり、毒性が強く、顔が赤くなる、吐き気、頭痛、頻脈などを引き起こします。
アセトアルデヒドは、アルデヒド脱水素酵素(ALDH)によって無毒化されるのですが、このアルデヒド脱水素酵素(ALDH)のはたらきには遺伝的な個人差が非常に大きく、特に日本人ではそれが顕著です。
ALDH活性型 日本人の約50%
アルデヒド脱水素酵素(ALDH)のはたらきが強く、アセトアルデヒドを分解能力が高いため悪酔い症状も出ずいくらでも飲める方
ALDH部分欠損型 日本人の約45%
ある程度のアルコールを飲むことはできますが、飲酒をしてしばらくすると、顔が赤くなったり、吐き気や頭痛が出たりすることが多い方
ALDH欠損型 日本人の約5%
アルコールが全く飲めず、少量の飲酒でも悪酔い症状が起きてしまします。
アルコール依存症の引き金が「飲酒の習慣化」であることを考えると、上記の3種の中で最もアルコール依存症のリスクが高いのは「ALDH活性型」の方であり日本人の半数はここに該当します。
ALDH活性型の方は、飲酒の機会や一度の飲酒量が多い傾向にあるので、当てはまった方は飲酒が習慣化しないよう意識して生活しましょう。
アルコール依存症の脳内メカニズム
飲酒が習慣化し、依存症状も起き始め、お酒を断つと離脱症状が引き起こされる状態においては、正常な場合と比べて脳内の神経ネットワークが壊れてしまっています。
自分の意志で禁酒や減酒をすることが難しいのはこの点にあります。
アルコール依存症の方の神経ネットワークでは、以下の2つの神経伝達物質が過剰になっていると考えられます。
ドーパミン
快感や幸福感を得たり、意欲を高めたりする「興奮性」の神経伝達物質。脳の報酬系を活性化させるためハッピーホルモンと呼ばれることもあります。
グルタミン酸
学習や記憶などの高次機能に重要な役割を担う「興奮性」の神経伝達物質。
過剰なグルタミン酸は神経細胞に対して障害をもたらします。
アルコール依存症が進行する前に、これらの神経伝達物質が正常にはたらくよう各種治療薬を用いて脳内の神経ネットワークを作り直していく必要があります。
アルコール依存症の薬物治療
アルコール依存症は多方面からの治療を組み合わせることが重要となります。
日本ではアルコール依存症の患者が100万人以上いると言われていますが、そのうち病院やクリニックで治療を受けている方はわずか5万人(5%)にとどまると言われています。
もちろん自分の意志で断酒、減酒ができれば良いのですが、本コラムでも解説している通り、依存症状や離脱症状が起き始めると自分自身で飲酒量をコントロールすることは非常に難しくなります。
できるだけ早期に病院やクリニックを受診しましょう。
なお、一部のアルコール依存症治療薬は海外から個人輸入することもでき、セルフメディケーションの一環として活用することができます。
「病院にいくまでのことでは…」といって治療を先延ばしにしてしまっている方は一度検討してみても良いでしょう。
この章では、3種類のアルコール依存症治療薬を紹介します。
飲酒欲求軽減薬:アカンプロサート(レグテクト)
商品名:レグテクト / 主成分:アカンプロサート
レグテクトは、脳内の「グルタミン酸受容体」と呼ばれる部位に作用します。
アルコール依存症の方はグルタミン酸受容体が強く活性化していますが、レグテクトはその働きを抑えると言われています。
断酒時は精神的にも身体的にも依存症状が出てしまい、何かしらの飲酒したくなるような刺激によって再飲酒への渇望感が起こります。
しかし、レグテクトを服用することでこの再飲酒への渇望感を抑えることができ、結果として断酒期間を延長することができます。
この後で解説する「セリンクロ」とレグテクトを組み合わせると、断酒できる日数がさらに増え、大量飲酒の日数もさら減少するなどのデータもあり、効果の高さに定評があります。
商品名 | レグテクトジェネリック | アカンプロサート【レグテクトジェネリック】 |
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一般名 | アカンプロセート(アカンプロサート) | アカンプロサートカルシウム |
価格 | 1錠あたり55円~ | 1錠あたり61円~ |
メーカー | Sun Pharma(サンファーマ) | Intas Pharmaceuticals(インタスファーマ) |
購入ページ | レグテクトジェネリックの購入ページはこちら | アカンプロサート【レグテクトジェネリック】の購入ページはこちら |
抗酒薬:ジスルフィラム(ノックビン)、シアナマイド(シアナミド)
・商品名:ノックビン / 主成分;ジスルフィラム
・商品名:シアナマイド / 主成分:シアナミド
ノックビン、シアナマイドは「アセトアルデヒド」を分解するアルデヒドデヒドロゲナーゼという酵素をブロックすることで、アセトアルデヒドを蓄積させます。
アセトアルデヒドは、悪酔いを引き起こす原因物質であるため、ノックビン、シアナマイドの服用中に少量でも飲酒すれば、頭痛や吐き気などの症状が強く起こります。
あえて積極的に悪酔い症状を引き起こすことで、アルコールを摂取する意欲を無くす効果が期待できます。
商品名 | クロノル【ノックビンジェネリック】 |
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一般名 | Disulfiram |
価格 | 1錠あたり44円~ |
メーカー | Charoon Bhesaj(チャロエンバエサジ) |
購入ページ | クロノル【ノックビンジェネリック】の購入ページはこちら |
オピオイド受容体拮抗薬:ナルメフェン(セリンクロ)
商品名:セリンクロ / 主成分:ナルメフェン
セリンクロは脳内の「オピオイド受容体」と呼ばれる部位に作用することで、ドーパミンの作用を調節し、飲酒欲求を減らしてくれます。飲酒する1〜2時間前に服用すると、お酒を飲んでもおいしいと感じられなくなり、結果として徐々に飲酒量が減少していきます。
また、断酒期間中の離脱症状も軽減する効果があります。
セリンクロを半年間服用した場合、1日の平均的なアルコール摂取量が約10g減少し、大量飲酒の日数が1ヶ月あたり2~3日減少したというデータがあります。
アルコール依存症治療薬の選び方
3種類のアルコール依存症治療薬を紹介しましたが、主な目的と作用(概要)を以下にまとめます。ご自身の目的や、現在のアルコール依存症状をふまえたうえで治療選択をしてください。
飲酒欲求軽減薬 | 抗酒薬 | オピオイド受容体拮抗薬 | |
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商品名 (成分名) | レグテクト(アカンプロサート) | ノックビン(ジスルフィラム)、シアナマイド(シアナミド) | セリンクロ(ナルメフェン) |
主な目的 | 断酒・減酒 | 断酒 | 減酒 |
主な作用 (概要) | お酒を飲んでも、快感や幸福感を感じにくくする (結果として飲酒量が減る) | お酒を飲むと悪酔いが起こるようにする (結果として飲酒しなくなる) | お酒を飲んでも、快感や幸福感を感じにくくする (結果として飲酒量が減る) |
作用の強さ | 強い | 強い (継続服用ができれば) | 強い |
アルコール依存症に関するよくある質問
- Qアルコール依存症は早期の治療が重要ですが、進行してからの薬物治療には効果がありませんか?
- A
いいえ、アルコール依存症が進行しても薬物治療の効果はあります。
進行度合いによって薬物治療以外の治療方法を組み合わせることもありますが、薬物治療のサポートを受けながら治療することが多いです。
「アルコール依存症かも?」と思ったら、その状態にかかわらず病院やクリニックへの受診や、AUDIT(アルコールスクリーニングテスト)を実施してみましょう。
- Q禁酒したいのですができません。どうすればよいですか。
- A
アルコールへの依存度が高い場合、急に禁酒をすると強い離脱症状が起きてしまい、それを打ち消すために結局飲酒してしまうという悪循環を引き起こすことが少なくありません。
そんな時は一度「減酒・節酒」から始めてみるのもひとつです。
減酒や節酒には、飲酒欲求軽減薬であるアカンプロサートという成分が用いられるケースが多いです。
弊社メデマートでは安心の正規品個人輸入代行を行っており、こちらで関連商品を扱っておりますのでご参照下さい。
- Qいきなりの禁酒は難しく、徐々に飲酒量を減らしていきたい場合の治療薬はどれがよいですか?
- A
徐々に飲酒量を減らしていくには、飲酒欲求軽減薬のレグテクトが適しています。
服用中は、お酒を飲んでも幸福感を感じなくなるため自然な形で飲酒量を減らせるメリットがあります。
効果としても、抗酒薬(ノックビン、シアナマイド)、オピオイド受容体拮抗薬(セリンクロ)と比較して強めと言われておりしっかり効果も期待できます。
なおレグテクトを服用して24週経っても効果を感じない時は、別の薬への変更が推奨されています。
まとめ
禁酒薬のまとめ
- アルコール依存症の引き金は「飲酒の習慣化」である
- アルコール依存症のリスクが高いのはお酒に強い人(ALDH活性型)であり日本人の約5割が該当する
- アルコールに対する依存症、離脱症状が起こり始めると自分で飲酒量をコントロールすることは難しい
- アルコール依存症では脳内の神経ネットワークに支障が出ているため、薬物治療が有効である
- レグテクトは断酒や減酒に、ノックビンとシアナマイドは断酒に、セリンクロは減酒に使用することが多い