日本初!保険適用の肥満治療薬ウゴービの費用や効果・副作用比較

日本初!保険適用の肥満治療薬ウゴービの費用や効果・副作用比較 ダイエット

肥満治療薬ウゴービはどんな薬?

GLP-1製剤がもたらすさまざまな作用

「ウゴービ(一般名:セマグルチド)」は2023年3月に承認された肥満治療薬です。これまで日本では、保険適用内で肥満の方に使用できる薬剤はありませんでした。
しかし、ウゴービが承認されたことにより、初めて保険診療内で肥満治療が可能となるため、医療従事者や患者から大きく期待されています。
ウゴービはGLP-1受容体作動薬に分類される注射剤です。
GLP-1は「グルカゴン様ペプチド-1」の略で、膵臓から分泌されるホルモンの一種です。
GLP-1は、血糖値を下げる役割がありますが、GLP-1受容体作動薬は、GLP-1の働きを促進することで血糖値のコントロールに寄与します。

ウゴービの効果

ウゴービの肥満症に対する効果はどのくらいあるのでしょうか。
*1ウゴービは肥満症患者401例を対象に臨床試験を実施しています。2.4mg群、1.7mg群、プラセボ(偽薬を投与する)群にわけて、68週間皮下注射した時の効果を検証しました。
ウゴービは徐々に増量していく薬剤のため、最初は0.25mg/週投与し、それぞれの群の量まで段階的にあげていきました。
68週間後、2.4mg投与群では、体重が13.2%減少、1.7mg投与群では9.6%減少、プラセボ群では2.1%の減少でした。
また、5%以上の体重減少を達成した患者割合については、2.4mg投与群では83%、1.7mg投与群は72%、プラセボ投与群では21%という結果でした。よって、ウゴービには体重を減少させる効果があることが認められました。

ウゴービが使用できる条件と使用方法

ウゴービの適応は肥満症です。しかし、肥満症であれば全員に使えるわけではなく、特定の条件のある肥満症患者に対して使用することができます。
肥満症とは、BMIが25以上で肥満による合併症が11種類のうち1つ以上ある場合、もしくは内臓脂肪蓄積がある場合に定義されます。

肥満による合併症11種類

  • 耐糖能障害(2 型糖尿病・耐糖能異常など)
  • 脂質異常症
  • 高血圧
  • 高尿酸血症・痛風
  • 冠動脈疾患
  • 脳梗塞
  • 非アルコール性脂肪性肝疾患
  • 月経異常・不妊
  • 閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群
  • 運動器疾患
  • 肥満関連腎臓病

ウゴービの場合、高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のどれかであり、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られなく、以下に該当する患者に限ります。

BMI値ごとの肥満度

ウゴービの使用条件

  • BMIが27kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する
  • BMIが35kg/m2以上

ウゴービの副作用

ウゴービの副作用

ウゴービは医薬品ですので副作用のリスクがあります。
*1臨床試験において5%以上発現していたものは、「食欲減退」「頭痛」「悪心」「腹部膨満」などでした。
そのほかに重大な副作用として「低血糖」や「急性膵炎」などがありますので注意してください。もし気になる症状があった場合には医療機関にご相談ください。

低血糖

ウゴービはGLP-1受容体作動薬であるため、血糖値を下げる働きがあります。個人によっては血糖値が下がりすぎてしまい、低血糖状態となります。
多くは数日から数週間で自然に慣れていきますが、数週間経過しても症状がよくならない場合は医療機関を受診しましょう。

急性膵炎

*1急性膵炎はウゴービの添付文書では0.1%の発現率であると報告されています。頻度はまれですが、重篤な症状になるため注意が必要です。

ほかのGLP-1受容体作動薬との比較

ウゴービと同じGLP-1受容体作動薬(注射剤)としては「ビクトーザ」「オゼンピック」「マンジャロ」などが代表的な薬剤です。
それぞれの違いについてご紹介します。

ウゴービvsビクトーザ

ビクトーザはGLP-1受容体作動薬の中では初期のころから発売されている2型糖尿病治療薬です。
1日1回投与の皮下注射剤で、発売された時期が早いため、第1世代の薬剤と呼ばれています。
*2ビクトーザを1日あたり3.0mg投与した時の体重減少効果を試験で見た結果、8.0%の体重減少でした。
一方ウゴービは2.4mgの投与で、13.2%の体重減少効果が認められています。直接比較したわけではありませんが、ウゴービの方が体重減少効果が高いと考えられます

ウゴービvsオゼンピック

オゼンピックは、ビクトーザより後、マンジャロより先に発売されていたため第2世代のGLP-1受容体作動薬と分類されています。
ウゴービと同じ成分「セマグルチド」が含まれていますが、適応が2型糖尿病となっています。
同じ成分のため、効果も同じだと思われるかもしれませんが、投与量が異なるため期待される効果の高さも異なっています。オゼンピックは0.25mgから開始し、維持用量は0.5mg、最大投与量が1.0mgです。一方でウゴービは2.4mgまでの投与が可能です。セマグルチドはGLP-1受容体作動薬に作用し、食欲を抑えるはたらきがあります。
投与量が多ければ多いほど成分が含まれていることになりますが、ウゴービの方が投与可能な量が多いため、オゼンピックよりも高い食欲抑制効果が期待されます。ですが、伴って副作用も多く出る可能性がありますので注意してください。

ウゴービvsマンジャロ

「マンジャロ」という薬剤は2023年4月に発売された比較的新しいGLP-1受容体作動薬です。5mg、10㎎、15mgと細やかな用量調節ができることが特徴です。
*3マンジャロに関する研究報告によると、マンジャロ5mgで15.8%、15mgで20.9%の体重減少が認められました。
ウゴービは2.4mgの投与で、13.2%の体重減少効果が認められていたため、ウゴービ2.4mgよりもマンジャロ15mgの方が体重減少効果は高いと考えられます

ウゴービ使用にかかる費用目安

ウゴービは2023年11月に薬価収載されました。最初は0.25mgから開始し、4週間ごとに週1回0.5mg、1.0mg、1.7mg及び2.4mgの順に増量していきます。増量しきった後は、2.4mを週1回注射します。

成分量金額
0.25mg1876円/本
0.5mg3201円/本
1.0mg5912円/本
1.7mg7903円/本
2.4mg10740円/本

ウゴービの維持用量2.4mgの価格は10740円ですので、週1回投与とすると1カ月に4回ほど注射することとなります。10740円×4回/月×3割負担と考えると、患者負担としては13000円程度となる見込みです。

ウゴービの関連ニュース

ウゴービは最近話題の薬剤です。ウゴービ関連のニュースをご紹介します。

ヨーロッパにおいて肥満症以外の適応拡大を検討

EMAと呼ばれる欧州医薬品庁は、2024年1月、ウゴービにおける「脳卒中」や「心臓発作のリスク低減」への適応拡大を見据えて検討していると発表しました。
ウゴービはヨーロッパにおいても「肥満症」の適応で販売されていますが、ウゴービを投与してからすぐに「心血管系リスクを減らす」作用が見つかっています。
ウゴービの販売元であるノボノルディスクファーマも、ヨーロッパでウゴービの適応拡大を申請しており、日本でも肥満症以外でウゴービが使用できる日が来るかもしれません。

ウゴービの日本発売は2024年2月予定

2023年1月現在、ウゴービは日本で承認を受けているものの発売はされていません。発売されてから初めてクリニックで保険適応の薬剤として使用することができます。
いつ発売されるのか、ということが日本の医療従事者・患者の中でも気にされていましたが、2024年2月22日をめどに発売する予定だとノボノルディスクファーマが発表しています

ウゴービに関するよくある質問

Q
ウゴービが使えない人はどのような人でしょうか?
A

「ウゴービの成分を服用して過去過敏症をおこしたことのある方」「糖尿病性ケトアシドーシスの方」「重症感染症、手術等の緊急を要する2型糖尿病の方」は使用できません。
糖尿病ケトアシドーシスとは、体の中でインスリンが不足し、血糖値が高くなる状態を指します。この状態ではインスリンの投与が必須であるため、ウゴービは投与の適応となりません。
また、重症の感染症や手術が想定されている2型糖尿病患者の場合も、インスリンを投与して血糖コントロールをする必要があるため、ウゴービを投与してはいけません。

Q
ウゴービはクリニックで処方できるのでしょうか?
A

クリニックでも処方できますが、施設が限られています。常に病院にいる代表医師が日本循環器学会・日本糖尿病学会・日本内科学会の専門医をもっていることが必須です。
加えて、ウゴービを投与してもらった患者は、2カ月に1回管理栄養士による栄養指導を受けなければなりません。
また、最大で投与できる期間は68週間までと定められています。

Q
肥満症治療は薬だけで可能なのでしょうか?
A

肥満症はBMIが高い状態です。薬で値を改善しても食生活や運動習慣が乱れていてはすぐに戻ってしまいます。
薬で治療のサポートをしつつ、基本的には運動を行うことで痩せやすい身体を作る、食事を見直すことで太りにくい体質に変えるということが大切です。

Q
ウゴービ投与を忘れてしまったらどうしたらよいでしょうか?
A

投与を忘れた場合、次の投与までの期間が2日間(48時間)以上であれば、気づいたその時にすぐに投与をしてください。
ウゴービは週1回投与する薬剤ですので、同じ曜日に投与することを推奨しています。飲み忘れが発生したその後は、もともと投与していた曜日に投与してください。
一方で、次の投与までの期間が2日間(48時間)未満の場合は、無理に投与せず、次の投与日に合わせてください。

Q
妊婦には投与可能でしょうか?
A

妊婦に対してウゴービの投与は避けてください。動物を対象に行った実験において、少ない量の投与でもラット、ウサギ、サルで胎児毒性が認められています。
また、授乳婦に対してウゴービを投与する場合は、授乳の中止を検討してください。ヒトのデータではありませんが、ラットにおいて乳汁中への移行が報告されています。

最後に

ウゴービはGLP-1受容体作動薬に分類される肥満症治療薬です。
2023年3月に承認されましたが、保険適用で治療ができる肥満治療薬としては日本初となる見込みです。週に1回の投与のため、投与負担も少ないことが特徴です。
しかし、外国では投与経験があるものの、日本では最近承認されたばかりの薬剤のため、臨床経験がまだまだ不十分です。
使用にあたっては用法用量をしっかりと守り、何か気になる症状が出たら我慢しすぎずお近くの医療機関に相談するようにしましょう。

出典

*1 医療用医薬品ウゴービ 添付文書情報
*2 GLP-1 受容体作動薬の体重減少効果
*3 Tirzepatide Once Weekly for the Treatment of Obesity
知りたい!糖尿病 GLP-1受容体作動薬とは?
ノボノルディスク製品サイト ウゴービ
REUTERS 欧州医薬品庁、肥満薬「ウゴービ」の適応対象拡大を検討へ
ノボ 肥満症治療薬「ウゴービ」発売は来年2月|製薬業界きょうのニュースまとめ(2023年11月22日)
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