マンジャロとは

マンジャロは、糖尿病治療に使用される薬剤で、アメリカを拠点とするイーライリリー社が開発しました。世界初の持続性GIP/GLP受動体作動薬で、週に1回自分で注射を打ちます。
小腸から分泌されるGLP-1が血糖値を下げるホルモンとして効果的なことは知られておりましたが、GIPも同様に効果が得られることが分かってきました。
マンジャロは治療薬としてこれまで使われていなかったGIPも有効成分として含んでいるため、従来の糖尿病治療薬よりも有効性が高いと期待されています。
マンジャロの効果と体重減少のメカニズム

マンジャロの効果
マンジャロは、強力な血糖降下作用と体重減少作用を有しています。*3論文では、マンジャロ5mgを40週投与した結果、-1.87%のHbA1c減少効果が認められており、プラセボ群の+0.04%と比較しても有意な効果が得られています。
また、体重についても、マンジャロ5mgを40週投与したところ-7.0kgの減少が認められています。プラセボ群はわずか-0.7kg、そして既存のGLP-1受容体作動薬(リベルサス)は-4.0kgほどの減少効果だったため、マンジャロの効果の高さがうかがえます。
マンジャロの体重減少のメカニズム
マンジャロはGLP-1とGIPという2つのホルモンを刺激します。2つのホルモンを刺激すると、血糖値を低下させるインスリンが分泌されます。
しかし、これ以外にも「視床下部に作用して食欲を抑制させる」「胃の運動を抑制させて、内容物の排泄を遅延させる」作用も併せ持っています。
このため、血糖値を下げるだけではなく、食事量もセーブすることができ、体重が減少していくのです。
マンジャロの正しい使い方

マンジャロは週に1回皮下注射を行います。注射器は自動注入機能が搭載されているため、注射器のキャップを外してお腹にあて、ロックを解除のうえボタンを押すだけで投与が完了します。
食事の影響を受けないので、いつ投与してもよいですが、忘れないように毎週同じ曜日・時間に注射することを推奨しています。
最初の投与量は2.5mgから開始します。2.5mgの週1回投与を4週間続けた後、5mgに増量します。
5mgが基本用量となりますが、副作用がひどくて継続できない場合は2.5mgに減量してください。
マンジャロはご自身で注射器を保管しておく必要があります。ただし、効果を発揮するための有効成分は熱に弱いという特徴があります。そのため、直射日光は避け、冷蔵庫(2~8℃)で保管しましょう。
マンジャロの効果はいつから現れる?

マンジャロの効果は個人差がありますが、早いと投与してから2週間ほどで食欲が減ったと感じる方がいらっしゃります。血糖低下や体重減少効果は3カ月から6カ月ほどかけて徐々に出てきます。
1回の注射で約1週間ほど効果が持続するといわれているため、継続して投与することでさらに効果があらわれてきます。
そのため、自己判断で途中で投与をやめるのは避け、効果判定は6カ月~1年後に実施するのがよいと考えられます。
マンジャロの副作用について

マンジャロの主な副作用として「悪心」「食欲減退」「下痢」「便秘」などが報告されています。
発現率としては5%程度です。マンジャロには、胃腸の動きを抑制する作用があるため、強く効きすぎた結果、このような副作用が現れると考えられています。
副作用は投与初期に起こることが多く、投与を継続していくと体が慣れて感じにくくなります。
また、揚げ物など脂質が多い食事を少なくすることでも、症状が抑えられる可能性があります。ただし、継続が難しいほどの症状が出た場合は、すぐに近くの医療機関を受診してください。
また、糖尿病治療薬を使用する上で、頻度が高く起こる副作用が「低血糖」です。
しかし、マンジャロは体内の血糖値によってインスリン分泌量が調節されるため、血糖値が低い方にさらにインスリンが分泌されることが避けられます。そのため、低血糖のリスクが極めて少ない薬剤です。
マンジャロはどこで購入できる?

マンジャロは「病院(クリニック)」にて医師の診察を受けたうえで処方されます。
そのためドラックストアやAmazonなどの通販サイトでの購入はできません。
副作用が不安な方や薬剤の服用について確認したいことがある方は、病院受診の際にしっかりと確認してください。
マンジャロと他の糖尿病治療薬との比較
糖尿病治療薬は非常に多くの種類があります。主に使用されることの多い「GLP-1受容体作動薬」「SGLT2阻害薬」「ビグアナイド系薬剤」の違いについてご紹介します。
マンジャロ | リベルサス | フォシーガ | ゾメット*2 | |
---|---|---|---|---|
分類 | GIP/GLP受動体作動薬 | GLP-1受容体作動薬 | SGLT2阻害薬 | ビグアナイド系 |
作用機序 | GLP-1とGIPの両方に作用しインスリン分泌を促進 | GLP-1受容体に作用し、インスリン分泌促進 | 腎臓の近位尿細管に存在するSGLT2をブロックし、糖を尿と一緒に排出する | 肝臓における糖新生を抑制することで血糖を下げる |
適応 | ・2型糖尿病 | ・2型糖尿病 | ・2型糖尿病 ・1型糖尿病 ・慢性心不全 ・慢性腎臓病 | ・2型糖尿病 ・多嚢胞性卵巣症候群における排卵誘発、多嚢胞性卵巣症候群の生殖補助医療における調節卵巣刺激 |
有効成分 | チルゼパチド | セマグルチド | ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物 | メトホルミン塩酸塩 |
体重減少効果 | ◎ | ◎ (マンジャロよりやや低い) | 〇 | △ |
使用方法 | 週1回皮下注射 | 1日1回空腹時に経口投与 | 1日1回経口投与 | 1日2~3回に分けて経口投与 |
入手方法 | 病院(クリニック) | 病院(クリニック)、もしくは個人輸入 |
リベルサス(GLP-1受容体作動薬)
リベルサスは、GLP-1受容体作動薬の飲み薬です。糖尿病治療薬の中では2020年に発売されており、比較的新しいです。
これまでGLP-1受容体作動薬は注射剤しか発売されていませんでしたが、リベルサスは経口のため、手軽に服用できるメリットがあります。
血糖低下作用や体重減少作用などの効果はマンジャロに比べて劣りますが、注射剤が苦手な方には適している薬剤となります。
もっと詳しくGLP-1受容体作動薬について知りたい方は、下記のコラムをお読みください。
<関連商品①>
●リベルサス
リベルサスは、経口タイプのGLP-1受容体作動薬として承認された2型糖尿病治療薬です。
GLP-1受容体作動薬は、注射を使ってGLP-1を投与するものが主ですがリベルサスは経口薬です。
血糖値を下げるインスリン分泌の促進効果の他、胃腸の働きを調整するため食欲が抑えられ、空腹感も少なくなります。
日本国内においては、糖尿病治療薬としては承認を得ていますが、肥満治療薬としては未承認です。
商品名 | リベルサス |
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有効成分 | セマグルチド3mg/7mg/14mg |
メーカー | Novo Nordisk(ノボノルディスク) |
購入ページ | リベルサスの購入はこちら |
フォシーガ(SGLT2阻害薬)
フォシーガは、体内の余っている糖を体外に排出することで血糖値を下げる薬剤で2013年に発売されました。
血糖値を下げるだけではなく、体内の水分も一緒に減らすため体重減少効果や慢性心不全の改善効果も期待できます。そのため、血糖を下げるだけではなく、高血圧など心血管疾患のリスクを下げたい方に使用されています。
*1臨床試験で報告されている体重減少作用は、24週間の投与で-1.5kgほどであり、マンジャロやリベルサスほどではないものの一定の効果が期待できます。
SGLT2阻害薬について詳しく知りたい方は、下記のコラムでまとめていますのでお読みください。
<関連商品①>
●フォシーガ
フォシーガは有効成分:ダパグリフロジンを含有しています。
SGLT2阻害薬に分類され、2型糖尿病・1型糖尿病の治療、慢性心不全、慢性腎臓病の治療などにも使用されています。
人間の体内には「SGLT2」という成分が存在しており、この成分は糖が尿から排出するのを阻害する働きがあります。
フォシーガのようなSGLT2阻害薬は、尿から糖を排出させる作用があるため血糖値が下がるように働きかけます。
このような効果から近年、日本のクリニックではダイエット目的として処方されていることで注目を集めています。
食事から摂取した糖分を尿として排出してくれる作用があるため、腎臓から吸収される糖のカットをしてくれるので糖質制限に近い効果が期待できます。
運動が苦手な方などには、最適のダイエット薬となるとネットでも話題になっています。
フォシーガの血糖コントロールは約8~12時間持続し、作用時間は24時間にも及ぶといわれています。朝服用すれば夜中まで効果時間が続くので、1日1回の服用で血糖コントロール効果が期待できます。
商品名 | フォシーガ |
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有効成分 | ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物5㎎/10㎎ |
メーカー | AstraZeneca(アストラゼネカ) |
販売サイト | フォシーガの購入はこちら |
ゾメット(メトホルミン)
ゾメットはビグアナイド系薬剤の1つで、メトホルミンとも呼ばれています。
1960年代から使用されており、これまで多くの糖尿病患者さんの治療に役立ってきました。
ゾメットは、マンジャロやリベルサスのように直接インスリン分泌を促進する効果はなく、肝臓で糖が新しく作られることを防いだり、筋肉や脂肪に糖を吸収するよう促進したりすることで血糖値の上昇を抑制します。
ゾメットは他の治療薬と比較して安価であるため、初期の糖尿病の方や、コストを抑えたまま治療を継続したい方にオススメです。
メトホルミンについては、下記のコラムで詳しく説明していますので気になる方はお読みください。
<関連商品①>
●ゾメット【メトホルミン】
ゾメットの有効成分「メトホルミン」は2型糖尿病の改善薬として使用されているビグアナイド系の血糖降下薬です。筋肉での糖代謝を促したり、肝臓で糖が作られるのを抑制し、血糖値を下げる薬です。
同系の薬の中では特有の副作用の乳酸アシドーシスの発現が少なく、比較的安全性が高いことが特徴です。さらに、老化の原因になる活性酸素を抑制したり心血管疾患の発症リスクが減少したりと、近年ではエイジングケア効果があることが注目されています。
メトホルミンは、2型糖尿病の治療において「食事療法」「運動療法」「スルホニルウレア剤(SU薬)」の治療をしても改善が見込まれない場合に使用する薬になります。
商品名 | ゾメット |
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有効成分 | メトホルミン500mg |
メーカー | Intas Pharmaceuticals(インタスファーマ) |
購入ページ | ゾメットの購入はこちら |
マンジャロに関するよくある質問

- Qマンジャロの投与がオススメされる方はどんな方でしょうか?
- A
「糖尿病に罹患しており、血糖値を下げたい方」「糖尿病だけではなく、肥満も解消したい方」「食事制限を行うダイエットが継続できない方」などがおすすめです。
マンジャロは血糖低下作用のほかに、食欲を抑える作用も有しているため、特に体重が重い方や血糖値が高い方の方が効果が出やすいと考えられています。
- Qマンジャロを注射する際に痛みはありますか?
- A
マンジャロの注射器は非常に細い針を使用しているため、注射時の不快感や痛みは少ないとされています。
しかし、皮膚が弱い方は痛みではなくかぶれや腫れが生じ、不快感につながる可能性がありますが、数日で自然と改善していきます。
- Qマンジャロは内服できますか?
- A
2025年3月時点ではマンジャロの内服薬は発売されておりません。
- Qマンジャロを投与し忘れてしまった場合にはどうしたらよいでしょうか?
- A
次の投与まで3日以上あいている場合には、気づいた時点で打って問題ありません。
次の投与は予定通りの日程で行ってください。一方で、次の投与まで3日以内の場合は、次の投与まで打たないようにしてください。
最後に
マンジャロは、新しく発売された糖尿病治療薬で血糖低下作用だけではなく、食欲を抑える作用も有しています。
これまでの薬剤よりも、有効性が高く血糖を低下させたい人はもちろん、食事制限でのダイエットが継続できなかった方にも使用いただけます。
ただし、新しい薬剤ということもあり費用面や効果面で気になる方は、すでに使用経験が多く積まれているGLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬、メトホルミンから治療を開始することも可能です。
それぞれ特徴がありますので、ご自身の状況や目的に合わせて選択していくと良いでしょう。
出典
イーライリリー 製品サイト:マンジャロ(チルゼパチド)
*1:kegg 医療用医薬品:フォシーガ
*2:kegg 医療用医薬品:メトグルコ
*3:Efficacy and safety of a novel dual GIP and GLP-1 receptor agonist tirzepatide in patients with type 2 diabetes(SURPASS-1): a double-blind, randomised, phase 3 trial