花粉症とは
花粉症は、植物の花粉が鼻の中に入ってきたことに対して免疫反応を起こし、くしゃみや鼻水などの症状が引き起こされる病気のことを言います。花粉が飛ぶ季節になると始まることから、別名、季節性アレルギー性鼻炎とも呼ばれています。現在日本では4人に1人が花粉症であるともいわれています。
花粉症の原因
植物などの花粉
花粉症の原因は植物の花粉ですが、日本ではなんと60種類も花粉症の原因となるものが存在するとされています。
日本で最も大きな原因となっている花粉はスギ花粉です。日本人の花粉症患者さんの70%がスギ花粉が原因であるともいわれています。その背景として、全国の森林の18%がスギ林であるように、占めている割合が大きいことがあげられます。アレルギー性鼻炎(花粉症)・スギ花粉症ともに患者数は20年間増加しています。
生活習慣の悪化
植物の花粉のように、直接的な要因ではありませんが、生活習慣の悪化は花粉症の症状悪化に影響をもたらしているとされています。生活習慣の悪化とは、喫煙や量の多い飲酒、睡眠不足などが挙げられますが、例として、タバコの煙は鼻の粘膜を刺激し、症状を悪化させる可能性があります。また、飲酒はアルコールを分解する時に発生するアセトアルデヒドが、アレルギーを引き起こすヒスタミンの分泌を促すといわれています。
生活習慣が乱れがちの若い方などは、生活習慣を見直してみることも大切です。
花粉症の飛散時期
花粉は基本的に1年中飛んでいますが、地域や季節によって花粉の種類が異なっています。下の表で代表的な花粉をご紹介しています。
花粉症の疫学を調査した研究では、地域別の有病率では東北13.7%、北関東21.0%、南関東23.6%、東海28.7%、北陸17.4%、甲信越19.1%、近畿17.4%、四国16.9%、中国16.4%、九州12.8%で北海道、沖縄はごく少ない有病率でした。やはり地域によっても有病率や代表的な原因花粉は様々です。
<代表の花粉>
原因花粉 | 情報 |
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スギ | 本州や四国、九州の山中に分布しています。 |
ヒノキ | 本州の福島より南と四国、九州に分布しています。スギ花粉と似たアレルギー物質を持っています。 |
イネ科 | カモガヤやオオアワガエリ、ススキなどです。 |
ハンノキ | 日本全国に分布していますが、森や湖などの湿地に多いです。 |
シラカンバ | 北海道や本州の中部の北側に分布しています。北海道ではスギがほとんどない一方、シラカンバが原因となる花粉症が多いとされています。 |
ブタクサ | 東北より北側には少ないですが、比較的日本全域に分布しています。秋に起こる花粉症の代表とされています。 |
ヨモギ | 日本全域に分布しています。 |
カナムグラ | 日本全域に分布していますが、関東地方に多いです。 |
花粉症の症状
主にくしゃみ、鼻水、鼻づまりが多いとされており、その他にもかゆみや涙、充血などの目の症状を伴う場合もあります。また、下痢や皮膚のかゆみ、熱っぽさなどもあらわれることもあり、人によって異なります。
花粉症で症状が起こるメカニズム
アレルギーを引き起こす物質アレルゲンが、鼻の中の細胞にくっつくと、体内に抗体が作られます。再び、アレルゲンが侵入すると、異物と認識し、ヒスタミンやロイコトリエン、トロンボキサンなどのアレルギー誘発物質が放出され、鼻水などのアレルギー反応が起きます。
花粉症(アレルギー性鼻炎)治療薬の種類
花粉症の治療薬にはさまざまな種類があり、特徴もそれぞれです。花粉症は一度起こるとずっと付き合っていかないといけない疾患であるため、症状を緩和させるために、薬の服用はとても有効です。症状に合わせて薬剤を選んでいきましょう。
抗ヒスタミン薬
鼻水やくしゃみの症状の原因になっているヒスタミンの働きを抑える薬です。第一世代と第二世代があり、第二世代ではこれまで課題とされていた口が乾く・眠くなりやすいなどの副作用が軽減されています。
ケミカルメディエーター遊離抑制薬
マスト細胞からケミカルメディエーター(ヒスタミンやロイコトリエンなどのこと)遊離を抑制する薬剤です。効果が出るのに時間がかかり、1~2週間ほど必要です。
抗ロイコトリエン薬
抗ヒスタミン薬と比較し、鼻づまりに対して効果があるとされています。
プロスタグランジンD2・トロンボキサンA2受容体拮抗薬
トロンボキサンは血管透過性や機関誌収縮に関わるとされており、アレルギー性鼻炎を引き起こす要因となっています。トロンボキサンを阻害し、鼻づまりの症状を改善します。
Th2サイトカイン阻害薬
IgE抗体を作ってしまう細胞に作用して抗体を作りにくくする作用を持っています。
ステロイド薬
鼻に直接ふきかけて使用するタイプと経口タイプがあります。ふきかけるタイプは副作用がほとんどないとされていますが、経口タイプは副作用があるため、1週間程度の使用となります。
点鼻用血管収縮薬
直接鼻にふきかけるタイプの薬剤で、鼻づまりに効果を発揮します。必要な時にポイントで使用します。
生物学的製剤
IgE抗体とマスト細胞が付着することを阻害し、アレルギー反応の原因となってくる部分を抑制します。
花粉症(アレルギー性鼻炎)治療薬の特徴
抗ヒスタミン薬
- 特徴
✓効果発現までの時間が早いが、眠気やふらつきなどの副作用が起こりやすい第一世代抗ヒスタミン薬と、第一世代よりも安全性が高くなった第二世代抗ヒスタミン薬があります。
✓現在は第二世代が主流です。
- 注意点
✓第二世代抗ヒスタミン薬に関しては、副作用が少なくなったといっても人によっては眠気や集中力の低下などの副作用が出るため、出た場合にはほかの薬剤を試してみましょう。
クラリチン
クラリチンは、第二世代の抗ヒスタミン薬です。抗ヒスタミン作用に加えてロイコトリエンを抑制する作用もあります。1日1回食後に服用します。
<関連商品>
商品名 | クラリチン |
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一般名 | ロラタジン |
価格 | 一錠あたり90円 |
メーカー | Schering Plough |
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エリアス
エリアスは、抗ヒスタミン薬の中でも比較的眠気が出にくい第二世代の治療薬であるとされています。1日1回1錠を服用します。副作用としてはだるさなどが報告されています。
<関連商品>
商品名 | エリアス |
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一般名 | デスロラタジン |
価格 | 一錠あたり112円 |
メーカー | MSD(メルク・アンド・カンパニー) |
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ケミカルメディエーター遊離抑制薬
- 特徴
✓眠気などの副作用は比較的少ないといわれています。
✓花粉症の症状が起こる前から使用することで、ヒスタミンの放出を予防し症状の悪化を防ぐことができます。
- 注意点
✓効果を実感するまでに時間を要し、2週間ほどかかることもあります。
抗ロイコトリエン薬
- 特徴
✓ロイコトリエンは鼻づまりに関わるとされているため、鼻づまりの症状に効果をよく示します。
✓眠気などの症状も少なく、喘息治療にも使用されます。
✓抗ヒスタミン薬と併用して使用することもあります。
- 注意点
✓抗ヒスタミン薬と比較すると、即効性には劣り、何日か継続的に飲むことで徐々に効果が発揮されます。
<関連商品>
商品名 | モンテア【シングレアジェネリック】 |
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一般名 | モンテルカスト |
価格 | 一錠あたり42円 |
メーカー | Cipla(シプラ) |
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プロスタグランジンD2・トロンボキサンA2受容体拮抗薬
- 特徴
✓鼻づまりがひどい場合に使用されます。鼻づまりの効果は第二世代抗ヒスタミン薬よりも効果的といわれています。
- 注意点
✓血小板凝集能があるため、抗血小板薬,血栓溶解薬,抗凝固薬との併用に注意が必要です。
Th2サイトカイン阻害薬
- 特徴
✓くしゃみや鼻水よりも鼻づまりに有効性がみられています。
- 注意点
✓単独使用よりもほかの作用機序を持つ薬剤と合わせることで増強効果が得られるとされています。
ステロイド薬
- 特徴
✓鼻水、鼻づまり、くしゃみなどあらゆるアレルギー症状の改善効果が期待されています。
✓直接鼻にふきかける点鼻薬と、1錠ずつのむ飲み薬の2タイプがあり患者さんの生活によって服用方法を変えることができます。
- 注意点
✓点鼻薬は決められた量をしっかり使用しないと十分な効果が得られません。
✓飲み薬では副作用リスクがあるため、服用期間は1週間ほどがめどとされています。
デキソナ
デキソナは、副腎皮質ホルモン剤(ステロイド)と呼ばれる分類の薬剤です。さまざまな疾患に使用されていますが、抗炎症作用や免疫抑制作用を持っているため、炎症やアレルギー症状を改善します。
<関連商品>
商品名 | デキソナ |
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一般名 | デキサメタゾン |
価格 | 一錠あたり53円 |
メーカー | Zydus Cadila(ザイダスキャディラ) |
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点鼻用血管収縮薬
- 特徴
✓鼻の中には血管が豊富にあるため、点鼻薬を使用すると15分ほどで効果が実感できます。
✓アレルギー症状が重症の方によく使用されています。
- 注意点
✓耐性が出てくるとされており、だんだんと効果がなくなっていくことがあります。
生物学的製剤
- 特徴
✓現在使用できる薬剤は「ゾレア」というもので、重症なスギ花粉症に使用可能です。
✓アレルギー反応自体を起こさせないよう改善していくため、これまでの薬剤に効き目がなかった方も効果を発揮する可能性が期待されています。
- 注意点
✓投与方法は皮下注射となっています。
✓過去の治療で効果が不十分だった方のみ使用が可能となります。
花粉症治療薬強さランキング
花粉症の強さランキングをご紹介します。
順位 | 名称 |
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1位 | ベクロミン【セレスタミンジェネリック】 |
2位 | ウィノラップ5【アレロックジェネリック】 |
3位 | スマルティ【ルパフィンジェネリック】 |
4位 | セトシップ【ジルテックジェネリック】 |
5位 | クレブロス【ザイザルジェネリック】 |
6位 | ビラクステン【ビラノアジェネリック】 |
7位 | アレグラ |
上位の薬剤ほど効果はとても強くなってきますが、一方で眠気などの副作用も強まる傾向があります。1つずつ薬剤の特徴をご紹介します。
1位:ベクロミン【セレスタミンジェネリック】
ベクロミン【セレスタミンジェネリック】は、花粉症の症状が重いときに効果的な薬剤で、日本でも古くから使用されています。抗ヒスタミン作用と抗炎症作用をあわせもっており、効果の強さと即効性があります。花粉症などのアレルギー症状のほか、湿疹や蕁麻疹、皮膚炎などにも有効です。
眠くなりやすいため、半年以上継続して使用しないよう注意をしてください。
<関連商品>
商品名 | ベクロミン【セレスタミンジェネリック】 |
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一般名 | d-クロルフェニラミン・ベタメタゾン |
価格 | |
メーカー | Jean-Marie Pharmacal Co.,Ltd |
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2位:ウィノラップ5【アレロックジェネリック】
ウィノラップ5【アレロックジェネリック】は、アレロックのジェネリック医薬品です。第二世代の抗ヒスタミン薬で、鼻水、くしゃみ、湿疹、かゆみなどのアレルギー症状を改善します。花粉症ピーク時期の1~2週間前に処方し始めると症状が軽減できるとされています。
<関連商品>
商品名 | ウィノラップ5【アレロックジェネリック】 |
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一般名 | オロパタジン塩酸塩 |
価格 | 1錠あたり50円 |
メーカー | サンファーマ |
購入ページ |
3位:スマルティ【ルパフィンジェネリック】
スマルティ【ルパフィンジェネリック】は、ルパフィンという薬剤のジェネリック医薬品で、「抗ヒスタミン作用」に加えて「抗PAF作用」という血小板活性化因子作用をもっています。新しいタイプの薬剤で、服用15分ほどで効果発現し、20時間ほど持続します。
商品名 | スマルティ【ルパフィンジェネリック】 |
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一般名 | ルパタジンフマル酸塩 |
価格 | 1錠あたり55円 |
メーカー | Zydus Cadila(ザイダスキャディラ) |
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4位:セトシップ【ジルテックジェネリック】
セトシップ【ジルテックジェネリック】は、ジルテックのジェネリック医薬品です。第二世代の抗ヒスタミン薬であり、効果も比較的強いとされています。花粉症の症状改善に加えて、通年性アレルギー性鼻炎にも効果があるとされています。
商品名 | セトシップ【ジルテックジェネリック】 |
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一般名 | セチリジン |
価格 | 1錠あたり40円 |
メーカー | Cipla(シプラ) |
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5位:クレブロス【ザイザルジェネリック】
クレブロス【ザイザルジェネリック】は、第二世代の抗ヒスタミン薬です。ジルテックを改良して作られており、副作用が少なくなっています。ジルテックよりも効果が少し弱く、ザイザルよりも効果が少し強いといった位置づけとなります。
商品名 | クレブロス【ザイザルジェネリック】 |
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一般名 | レボセチリジン塩酸塩 |
価格 | 1錠あたり95円 |
メーカー | Santa Farma |
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6位:ビラクステン【ビラノアジェネリック】
ビラクステン【ビラノアジェネリック】は、抗ヒスタミン薬に分類され、ビラノアという薬剤のジェネリック医薬品です。第二世代の抗ヒスタミン薬であり、効果も強く、眠気の副作用も少ないです。1日1回の服用で24時間ほど効果が継続します。
商品名 | ビラクステン【ビラノアジェネリック】 |
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一般名 | ビラスチン |
価格 | 1錠あたり157円 |
メーカー | Laboratorios Vitoria(ラボラトリズ ヴィトリア) |
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7位:アレグラ
アレグラは、ヒスタミンを抑制することでアレルギー症状を緩和する薬剤です。眠気がほとんど出ない点が特徴です。花粉症にはもちろんですが、ダニやハウスダストが原因で発症する通年性のアレルギー性鼻炎にも効果を示します。1日1回1錠を服用します。花粉症のピーク時期の1~2週間前から服用すると、症状軽減効果が強まることが期待されています。
商品名 | アレグラ |
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一般名 | フェキソフェナジン |
価格 | 1錠あたり125円 |
メーカー | サノフィ |
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処方薬と市販薬の違い
花粉症治療薬には「処方薬」というものと「市販薬」というものがあります。それぞれの違いは以下の通りです。
薬効成分量 | 薬効成分数 | |
---|---|---|
市販薬 | 少ない | 複数種類が配合されている |
処方薬 | 多い | 基本的に1種類の成分 |
市販薬は、処方薬と比較して薬に含まれている成分量が少ない傾向があります。ドラックストアで手に入るため、副作用などの症状をなるべく抑えるために少なくしています。また、薬の効果を発揮する薬効成分の数も複数種類配合され、鼻水が出る、目がかゆいといったさまざまな症状に効くよう調節されています。
一方、処方薬は1つの薬剤に含まれている成分量が多く、そのため、決まった症状に対してピンポイントで効果を発揮します。
よくある質問
花粉症のまとめ
花粉症のまとめ
花粉症の原因
- 植物などの花粉
- 生活習慣の悪化
花粉症の症状
- くしゃみ
- 鼻水
- 鼻づまり
花粉症治療薬の種類
- 抗ヒスタミン薬
- ケミカルメディエーター遊離抑制薬
- 抗ロイコトリエン薬
- プロスタグランジンD2・トロンボキサンA2受容体拮抗薬
- Th2サイトカイン阻害薬
- ステロイド薬
- 点鼻用血管収縮薬
- 生物学的製剤
花粉症は、突然発症することもあります。もし、少しでも気になる症状がある方は、悪化させないためにも素早い治療が大切です。
参考にした文献およびサイト
【参考元:花粉症ナビ 花粉症の症状に悩む人たちの情報サイト 花粉症の基礎知識】【参考元:厚生労働省 はじめに ~花粉症の疫学と治療そしてセルフケア~】【参考元:厚生労働省 花粉症の原因】【参考元:アレルギーポータル よくある質問 花粉症】【参考元:ALLER-LAB 花粉症のQ&A】