不眠症とは
不眠症とは、眠りたいと思っているにも関わらず、睡眠時間が短くなる・眠りが浅くなることによって身体や精神に不調を及ぼす神経症です。
成⼈の約30%がなんらかの不眠症状があり、6〜10%が不眠症に罹患しているとされています。
不眠症の種類
不眠の種類は短期不眠症と慢性不眠症の2種類に分けられます。それぞれの定義は以下の通りです。
・短期不眠症:不眠と日中の眠気が週に3日以上あることが続くが、3カ月未満である
・慢性不眠症:不眠と日中の眠気が週に3日以上あり、それが3カ月以上続く状態である
特に慢性不眠症は、日中の眠気や倦怠感、集中力の低下、抑うつ症状や不安など様々な精神的・⾝体症状を伴うことが多いです。結果的に、仕事の⻑期⽋勤や日常生活の⽣産性の低下などQOLの低下が課題となっています。
不眠症の分類
症状から以下の4つに分類されます。
・入眠障害:寝付きが悪く、布団に入ってもなかなか眠れない
・中途覚醒:眠りが浅く夜中に何度も目が覚めてしまう
・早朝覚醒:早朝に目が覚めてしまい、それから眠れなくなる
・熟眠障害:睡眠時間は十分であるにも関わらずしっかりと寝た感覚が得られない
1つだけ症状が現れる方もいますが、多くの方は2つ以上の症状が重複して現れます。
成⼈の30%以上が⼊眠困難、中途覚醒、早朝覚醒、熟眠困難などいずれかの不眠症状があるとされており、特に高齢者の方は、複数の症状を訴えることが多く、原因と不眠の症状を考慮して治療を行っていきます。
日本人の睡眠時間
日本人の平均睡眠時間は 1960 年では 8 時間13 分でしたが、2005 年には 7 時間 22 分と約 1 時間ほど短くなっています。
厚生労働省が平成29年に出した「国民健康・栄養調査」によると、日本人の1日平均睡眠時間は6時間以上7時間未満の割合が最も高く、男性が35.0%、女性が33.4%でした。睡眠時間が6時間未満の方の割合は、男性が36.1%、女性が42.1%であり、年齢別にみると特に40歳代で最も高く、男性が48.5%、女性が52.4%でした。
また、日本人の睡眠時間は世界の中でワースト2というデータもあります。世界的にみても睡眠時間自体は減少傾向にありますが、その中でも特に寝ていない国が日本とも言えます。
なぜ睡眠時間が大事なの?
睡眠中は、体の疲れをとるだけではなく、心のリラックスや記憶の整理をしています。
人間は、日中に学んだことを寝ている間に深い記憶として脳に取り込みます。睡眠不足が続くと、記憶を脳に定着させることが難しくなってきます。
ですから睡眠時間が不足すると、メンテナンスも不十分になり、疲れがとれなかったり、学習の効果が低くなったりします。
不眠症を起こす原因
不眠の原因はかゆみや痛みなど身体的な原因によるもの、不規則な生活習慣によるもの、ストレスや精神疾患によるもの、薬剤によるものなどさまざまで、原因に応じた対処が必要です。原因の例を紹介します。
ストレス
ストレスや緊張は自律神経の乱れを引き起こし、眠りを妨げます。真面目な性格の人はストレスをより強く感じやすい面があるため、不眠症になりやすい可能性があります。ストレス状態が続くと慢性的な不眠にもつながる恐れがあります。
生活の乱れ
寝る前に、緑茶やコーヒーなどのカフェイン、タバコなどのニコチンを摂取すると、これらの物質が持つ覚醒作用により、寝つきが妨げられてしまいます。アルコールには入眠を早くすると感じさせる作用がありますが、一時的であり、中途覚醒や早朝覚醒が増えていきます。
カフェインには利尿作用があり、トイレに夜中起きてしまうことで覚醒する不眠につながることもあります。
身体的な病気
合併している病気によって不眠が引き起こされるケースがあります。例えば、アレルギー疾患のかゆみが気になって眠れない、喘息の発作が止まらず眠れないといったものです。ほかにも高血圧や心臓病(胸苦しさ)・腎臓病・前立腺肥大(頻尿)・糖尿病・関節リウマチ(痛み)・脳出血や脳梗塞などでも不眠が生じます。このような場合、不眠の要因となっている疾患の治療が重要であり、原因となっている症状が改善すれば、不眠も改善していきます。
精神的な病気
近年は、うつ病にかかる人が増加している傾向にありますが、うつ病患者さんの約8割が不眠を伴うという研究報告もあります。不眠症状や過眠症状とともに、気分の落ち込みや意欲減退、興味の減退などの症状があらわれる場合には精神的な病気が不眠の裏に隠れている可能性もあります。
その他の睡眠障害
睡眠時無呼吸症候群やレストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)などは、睡眠中に呼吸の異常や四肢の異常運動が出現するため、不眠を引き起こします。なかなか治りにくい難治性不眠症患者の10人に1人ほどはむずむず脚症候群ではないかともいわれております。
薬
治療薬が不眠の原因となることもあります。不眠のリスクとなる薬剤としては、降圧剤・甲状腺製剤・抗がん剤などがあります。また、抗ヒスタミン薬では日中の眠気が引き起こされます。
環境
騒音や光が気になって眠れないケースです。また寝る部屋の温度が寒すぎる・熱すぎる、湿度が適切でないなども不眠症の原因となります。
人間は強い光を浴びると覚醒してしまうため、現在普及しているインターネットやスマートフォンは寝る直前まで操作しないようにしましょう。
不眠症の診断
不眠症の診断においては、どのタイプの不眠症状か、日中に精神や身体の不調が出現し、生活の質に影響を及ぼしているかを確認します。さらに睡眠時無呼吸症候群やむずむず脚症候群など、不眠症の原因となりうる睡眠障害を除外していきます。
患者さんの主観的な訴えをもとに判断する方法もありますが、夜中の睡眠状態をより詳細に評価するために「睡眠ポリグラフ検査」という検査が行われることもあります。客観的に脳波の状態を調べることができます。
不眠症の自己チェック
自己チェックには「アテネ不眠尺度」が主に使用されています。「アテネ不眠尺度」は世界保健機関(WHO)が作成した尺度で、世界共通で使用されています。
全部で8問の質問に対して回答していき、回答に割り当てられた点数を合計し、不眠症かどうかをチェックします。約1分ほどでチェックを終えることができます。
実際のシートには、以下の質問があります。
点数 | 結果 |
---|---|
1~3点 | 睡眠がとれています |
4~5点 | 不眠症の疑いが少しあります |
6点以上 | 不眠症の可能性が高いです |
不眠症の治療
不眠症治療において最終的に目指すゴールとは、薬によって眠れる状態ではなく、薬に頼らなくても十分な睡眠が得られるような生活習慣を作り出すことにあります。薬物は目的ではなく手段なのです。
「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」では治療順序を定めたアルゴリズムを示しています。
まず患者の症状を把握した後、良い睡眠を保つことができるよう、睡眠衛生指導が行われます。その後リスクの評価をし、必要であれば薬物療法を行います。もし、無効であったり、部分的に良くなった場合、認知行動療法に移行します。
それぞれについて、ご紹介します。
睡眠衛生指導
不眠の症状を改善し、良い睡眠を確保するために、患者さん自身に睡眠に関する適切な知識を伝えて、生活を改善するための指導法です。指導法の例は以下の通りです。
項目 | 指導内容 |
---|---|
定期的な運動 | なるべく定期的に運動しましょう。高齢者など家の中で過ごすことが多くなると、疲れなくなってしまい眠りにくくなります。適度な有酸素運動をすることで、寝つきやすくなり、睡眠が深くなります。 |
寝室環境 | 快適な就床環境を作ることは大事なポイントです。⾳対策のためドアをきっちり閉める、遮光カーテンを⽤いるなどの対策も⼿助けとなります。睡眠のための適温は20℃前後で、湿度は40~70%くらいに保つのがよいといわれています。参考にして、寝室を快適な温度に保ちましょう。 |
規則正しい生活 | 規則正しい⾷⽣活をして、空腹のまま寝ないようにしましょう。空腹で寝ると睡眠は妨げられます。睡眠前に軽⾷(特に炭⽔化物)をとると睡眠の助けになることがあります。 脂っこいものや胃もたれする⾷べ物を就寝前に摂るのは避けましょう。また、就寝時間と起床時間を一定にすることも効果的と言われています。週末でも平日と同じ時刻に起床・就床する習慣を身につけることが大事です。日中に眠気があるときは昼寝をとることもOKですが、30分以内におさめるよう注意しましょう。 |
就寝前の水分 | 就寝前に⽔分を取りすぎないようにしましょう。夜中のトイレ回数が減ります。脳梗塞や狭⼼症など⾎液循環に問題のある⽅は主治医の指⽰に従ってください。 |
就寝前のカフェイン | 就寝の4時間前からはカフェインの⼊ったものは摂らないようにしましょう。カフェインの⼊った飲料や⾷べ物(例:⽇本茶、コーヒー、紅茶、コーラ、チョコレートなど) をとると、寝つきにくくなったり、夜中に⽬が覚めやすくなったり、睡眠が浅くなったりします。 |
就寝前のお酒 | 眠るためにお酒を飲むと寝つきが良くなったように感じますが、一時的です。段々と効果は弱まり、夜中に⽬が覚めやすく、朝早く目覚めやすくなります。深い眠りも減ってしまいます。 |
就寝前の喫煙 | ニコチンには精神刺激作⽤があるため、特に夜は喫煙を避けましょう。 |
寝床での考え事 | 昼間の悩みを寝るときに考えないようにしましょう。⼼配した状態では、寝つくのが難しくなりますし、寝ても浅い眠りになってしまいます。 |
薬物療法
睡眠薬の処⽅割合は近年増加傾向にあり、現在、⽇本の成⼈の20⼈に1⼈が服⽤している汎⽤薬となっています。薬は漫然と服用するのではなく、症状が改善すれば薬剤をやめる、減らすといった試みが大切になってきます。睡眠薬には、非常に多くの種類がありますが、それぞれ特徴があります。
医薬品
メラトニン受容体作動薬
睡眠に深くかかわるとされているホルモンの1つであるメラトニン受容体に作用し、自然の眠りに近い睡眠を誘導します。不眠症のタイプのうち、おもに入眠困難を改善します。
メラトニンは、体内時計の調節に深くかかわっているとされているため、昼夜逆転の不眠に対しても使用されることがあります。
メラトニン受容体作動薬として発売されているのは、現在ロゼレム1種類です。
成分名 | ラメルテオン |
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製造販売 | 武田薬品工業 |
用量 | 8mg |
適応 | 不眠症における入眠困難の改善 |
飲み方 | 就寝時や寝つけない時に1日1錠(8mg)水またはぬるま湯で服用をします。 |
禁忌 | ・本剤の成分に対する過敏症の既往歴のある患者 ・高度な肝機能障害患者 ・フルボキサミンマレイン酸塩を投与中の患者 |
起こりやすい副作用 | めまい、頭痛、倦怠感 |
◎ロゼレム
ロゼレムはベンゾジアゼピン受容体作動薬と比較すると効果はマイルドで、自然に近い眠りを導いてくれます。そのため、即効性はなく、物足りないと感じる方もいるかもしれませんが、大きな副作用が少ないとされており、安全性に優れた睡眠薬です。
<関連商品>
商品名 | ロゼレム | ラメルテオンタブレット【ロゼレムジェネリック】 |
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有効成分 | ラメルテオン | ラメルテオン |
メーカー・ブランド | 武田薬品工業社 | Sun Pharma |
URL | ロゼレムの購入はこちら | ラメルテオンタブレット【ロゼレムジェネリック】の購入はこちら |
オレキシン受容体拮抗薬
オレキシンは脳の覚醒を促す働きを持っています。そのため、オレキシン受容体を阻害することで、覚醒状態を抑制し、睡眠へとつなげます。オレキシン受容体拮抗薬は、比較的早く効果が期待され、さらに睡眠薬で多く見られる依存性を形成しにくいという特徴を持っています。
現在、MSD社からスボレキサントが、エーザイからレンボレキサントが発売されています。
成分名 | スボレキサント | レンボレキサント |
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製造販売 | MSD | エーザイ |
用量 | 10mg,15mg,20mg | 2.5mg,5mg,10mg |
適応 | 不眠症 | 不眠症 |
飲み方 | 成人の方は1日1回20mg 高齢者には1日1回15mgを就寝前に経口投与します。 | 成人の方は1日1回5mgを寝る直前に経口投与します。症状により増減可能ですが、最高10㎎までとなっています。 |
禁忌 | ・本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者 ・CYP3Aを強く阻害する薬剤 | ・レンボレキサントに対し過敏症の既往歴のある患者 ・重度の肝機能障害のある患者 |
起こりやすい副作用 | 疲労、傾眠、頭痛、浮動性めまい、悪夢など | 傾眠 |
◎デエビゴ
デエビゴはオレキシン受容体拮抗薬に分類されている睡眠導入剤で、寝つきが悪い、途中で目が覚めるなどの不眠症の症状を改善する薬です。
覚醒維持に関与する物質オレキシンの働きを阻害することで、脳を睡眠状態に導くため、依存性が低く長期に渡り服用することが可能です。
服用開始から比較的早く不眠症改善が期待でき、反跳性不眠のデメリットが少ないという特徴があります。
◎ベルソムラ
ロゼレムと比べて即効性が期待され、寝る直前に飲むと、自然な眠りが誘発されます。ベンゾジアゼピン受容体作動薬と比べると、依存性や耐性を作りにくい薬剤とされています。光や湿気に弱いため、保管には十分注意が必要な薬剤です。
商品名 | ベルソムラ | デエビゴ |
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有効成分 | スボレキサント | レンボレキサント |
メーカー・ブランド | SMSD(メルク・アンド・カンパニー) | Eisai(エーザイ) |
URL | ベルソムラの購入はこちら | デエビゴの購入はこちら |
ベンゾジアゼピン受容体作動薬
ベンゾジアゼピン受容体は、脳内に存在し、抗不安や鎮静に大きくかかわるとされています。ベンゾジアゼピン受容体を刺激すると、脳の興奮が抑制され、眠気を催します。ベンゾジアゼピン受容体作動薬は、薬剤の半減期(効果の持続時間)によって、4つに分類されます。
作用時間が長い薬剤は、薬の効果が起きているときや翌日まで持ち越してしまう場合もあるため、近年は作用時間が短い薬剤が使用される傾向にあります。
また、ベンゾジアゼピン受容体作動薬は長年使用していると、効果が出にくくなってきたり、それによって薬剤の量が増えてしまう可能性もあります。最近は「脱ベンゾ」と呼ばれ、ベンゾジアゼピン受容体作動薬からオレキシン受容体拮抗薬やメラトニン受容体作動薬に移行しようとしている医療機関も増加しています。
成分名 | エスゾピクロン | トリアゾラム | ゾピクロン | ゾルピデム |
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製造販売 | エーザイ | ファイザー(先発) | サノフィ | アステラス |
用量 | 1mg,2mg,3mg | 0.125mg,0.25mg | 7.5mg,10mg | 5mg,10mg |
適応 | ・不眠症 | ・不眠症 ・麻酔前投薬 | ・不眠症 ・麻酔前投薬 | ・不眠症(統合失調症及び躁うつ病に伴う不眠症は除く) |
飲み方 | 成人には1回2mgを投与します。 高齢者には1回1mgを就寝前に経口投与します。 成人では1回3mg、高齢者では1回2mgを超えないようにします。 | 成人には1回2mgを投与します。 成人には0.25mgを就寝前に経口投与します。高度な不眠症には0.5mgの投与が可能です。 高齢者には1回0.125mg~0.25mgまで投与できます。 | 成人には7.5〜10mgを就寝前に経口投与します。 1日最高10mgまでです。 | 成人には1回5〜10mgを就寝直前に経口投与します。 高齢者には1回5mgから投与を開始します。 1日10mgを超えないようにします。 |
半減期(時間) | 5 | 2.9 | 3.8 | 2 |
起こりやすい副作用 | 眠気、ふらつき、頭重、倦怠感 |
◎ルネスタ
ベンゾジアゼピン系睡眠薬の中でも、依存症や離脱症状を起こしにくいとされる非ベンゾジアゼピン睡眠薬に含まれます。効果持続が5時間ほどのため、入眠障害と中途覚醒に効果が期待されます。錠剤に少し苦みがあります。
商品名 | エスゾピック | ハイプナイト | ソクナイト | フルナイト |
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有効成分 | エスゾピクロン | エスゾピクロン | エスゾピクロン | エスゾピクロン |
メーカー・ブランド | ロイドラボラトリーズ社(Lloyd Laboratories Inc.) | Consern Pharma | Asle pharmaceuticals(アスレ) | サンファーマ |
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◎ソナタ
海外でのみ発売されている薬剤で、非ベンゾジアゼピン系薬剤の超短時間型に分類されます。不眠症、不安神経症、気分障害などに適応を取得しております。旧ベンゾジアゼピン系睡眠薬と比較すると、薬をやめた時の離脱症状や依存症が起こりにくいとされており、服用後、体内に吸収されるのが早く、短時間で効果を発揮するのが特徴です。
商品名 | ハイプロン【ソナタジェネリック】 |
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有効成分 | ザレプロン |
メーカー・ブランド | Consern Pharma |
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◎ソミナー
海外でのみ発売されている薬剤で、非ベンゾジアゼピン系薬剤の超短時間型に分類されます。有効成分はドキシラミンで、機序としてはヒスタミンを抑制することで覚醒状態を抑える働きを持っています。
商品名 | ソミナー |
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有効成分 | ドキシラミン |
メーカー・ブランド | Charoen Bhaesaj Lab |
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●短時間型
成分名 | エチゾラム | ブロチゾラム |
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商品名 | デパス | レンドルミン |
製造販売 | 田辺三菱製薬 | 日本ベーリンガーインゲルハイム |
用量 | 0.25mg,0.5mg,1mg, 細粒1% | 0.25mg |
適応 | ・神経症における不安・緊張・抑うつ・神経衰弱症状・睡眠障害 ・うつ病における不安・緊張・睡眠障害 ・心身症(高血圧症,胃・十二指腸潰瘍)における身体症候ならびに不安・緊張・抑うつ・睡眠障害 ・統合失調症における睡眠障害 ・下記疾患における不安・緊張・抑うつおよび筋緊張 頸椎症,腰痛症,筋収縮性頭痛 | ・不眠症 ・麻酔前投薬 |
半減期(時間) | 6.3 | 7 |
起こりやすい副作用 |
●中時間型
成分名 | フルニトラゼパム | エスタゾラム |
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商品名 | サイレース/ロヒプノール | ユーロジン |
製造販売 | エーザイ/中外製薬 | 武田テバ薬品 |
用量 | 1mg,2mg | 1mg,2mg 散1% |
適応 | ・不眠症 ・麻酔前投薬 | ・不眠症 ・麻酔前投薬 |
半減期(時間) | 7(24) | 24 |
起こりやすい副作用 | 眠気、ふらつき |
●長時間型
成分名 | クアゼパム |
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商品名 | ドラール |
製造販売 | 久光製薬 |
用量 | 10,15 |
適応 | ・不眠症 ・麻酔前投薬 |
半減期(時間) | 36 |
起こりやすい副作用 |
医薬品以外の薬物
医師から不眠症と診断がついた場合には、処方箋が必要な医薬品を服用する必要がありますが、不眠症状のみでお悩みの方向けには、現在ドラッグストアなどで、OTC医薬品や睡眠サプリなどの睡眠改善薬が販売されています。
OTC医薬品
OTC医薬品の使用目的は、「一時的な不眠の次の症状の緩和:寝つきが悪い、眠りが浅い」です。そのため、漫然と服用するのではなく、2~3日ほどの服薬期間にとどめることが大切です。
●指定第2類医薬品
第2類医薬品とは、日常生活に支障が出るほどの副作用の恐れがある医薬品で第1類医薬品を除くものとされています。現在市販されている一般用医薬品のうち、大半が第2類医薬品とされています。
成分名 | ジフェンヒドラミン塩酸塩 | ジフェンヒドラミン塩酸塩 | ジフェンヒドラミン塩酸塩 |
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商品名 | ドリエル | グ・スリーP | ネオデイ |
製造販売 | エスエス製薬 | 第一三共ヘルスケア | 大正製薬 |
適応 | 一時的な不眠の次の症状の緩和:寝つきが悪い,眠りが浅い | 一時的な不眠の次の症状の緩和:寝つきが悪い,眠りが浅い | 一時的な不眠の次の症状の緩和:寝つきが悪い,眠りが浅い |
飲み方 | 15才以上は1日1回2錠を就寝前,寝つきが悪い時又は眠りが浅い時に使用してください。 15才未満は服用できません。 | 次の1回量を1日1回、寝つきが悪い時や眠りが浅い時、就寝前に服用して下さい。 成人(15歳以上):1錠 15歳未満:服用しないで下さい。 | 寝つきが悪い時や眠りが浅い時,次の1回の量を,1日1回就寝前に水又はぬるま湯で服用してください。 大人(15歳以上):2錠:1日1回 15歳未満:服用しないこと |
起こりやすい副作用 | 発疹、胃痛、めまい、動悸、倦怠感 | 発疹、胃痛、めまい、動悸、倦怠感 | 発疹、めまい、頭痛、動悸、胃痛 |
●指定第3類医薬品
第3類医薬品とは、副作用などのリスクが第1・第2類医薬品を比べると、比較的少なく、日常生活に支障を及ぼすほどのものではないが、体の不調が起こる恐れのある成分を含んでいるものを指しています。
成分名 | 無水カフェイン |
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商品名 | トメルミン |
製造販売 | ライオン株式会社 |
適応 | 眠気防止 |
飲み方 | 1回1錠、1日3回を限度として服用できますが、服用間隔は4時間以上あけてください。 |
副作用 | 食欲不振、吐き気、嘔吐、動悸、ふるえ |
特徴 | 飲み水が不要で服用可能です。 |
注意 | カフェインと併用すると用量が多くなってしまうため、注意してください。 |
睡眠サプリ
睡眠サプリは、睡眠の質を高めるために効果的な成分が配合されたサプリメントです。例えば、ストレス軽減効果のあるGABAや体温調整効果のあるグリシンなどが成分として含まれています。
医薬品よりも安全性が比較的高いとされ、ドラックストアやインターネット販売で購入することが可能です。一方、即効性が期待できないデメリットもあります。
睡眠サプリは、配合成分によって期待される効果が異なっています。今悩んでいる症状に合わせてサプリを選択すると良いです。
●眠りが浅い方(質があまりよくない方)
グリシンという成分が含まれているサプリがおすすめです。グリシンには体の内部体温を低下させる働きがあり、内部対応が低下すると代謝活動が抑えられます。無駄なエネルギー消費がなくなり、深い眠りにつきやすくなります。
●朝起きられない方
テアニンが含まれている成分のサプリを選択すると良いとされています。テアニンはうまみ成分の1種でお茶などに含まれます。テアニンを摂取するとリラックスしているときに分泌される「α(アルファ)波」という脳波を増やすことが期待されます。α波が増えると、スムーズな寝つきやすっきりとした起床につながるとされています。
●ストレスが多い方
オルニチンが含まれている成分のサプリを選択すると良いとされています。シジミなどの含まれる成分で聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。オルニチンを摂取すると、ストレスがあるときにでる「ストレスホルモン」が抑制されます。そのため、眠りや目覚めが改善するとされています。
●中途覚醒(途中で目が覚める)の方
クロセチンが含まれている成分のサプリを選択すると良いとされています。クロセチンはサフランやクチナシの果実に含まれる天然色素で、強い抗酸化作用を持っています。このクロセチンは「δ(デルタ)波」を増やす作用があり、この「δ波」は深い睡眠をしているときに出されます。また、クロセチンはセロトニンホルモンを増やすことでストレスを和らげる効果もあるので、途中で目が覚めやすい方にお勧めのホルモンです。
●ぐっすり眠れない方
GABAが含まれている成分のサプリを選択すると良いとされています。GABAはチョコレート菓子などの名前にもなっており聞いた方は多いかもしれません。GABAはストレス軽減効果が高いとされ、ほかにもリラックス効果や血圧低下作用に期待をされています。特に就寝前にGABAを摂取することで、ノンレム睡眠の時間が増えるため、しっかりとした睡眠につながります。
●睡眠が乱れている方
ラフマ葉エキスが含まれている成分のサプリを選択すると良いとされています。ラフマ葉エキスは体内時計の調節に関わるメラトニンを増やす・自律神経を整えるといった作用が期待されています。睡眠のサイクルが乱れている方にはお勧めのサプリとなっています。
有効成分 | グリシン | GABAなど | クロセチン | テアニンなど |
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商品名 | 味の素グリナ | ネルノダ | ナイトミン眠る力 | ネナイト |
製造販売 | 味の素株式会社 | サハウスウェルネスフーズ | 小林製薬 | アサヒグループ食品株式会社 |
期待される効果 | 睡眠の質を向上させる | 快眠効果を上昇させる | 深い眠りを促進する | 睡眠の質を高める |
飲み方 | 1日1本を就寝前などに服用 | 1日4粒を就寝前に服用 | 1日1粒を夕食後に服用 | 1日4粒を就寝前に服用 |
形状 | 顆粒 | 錠剤 | カプセル | 錠剤 |
<関連商品>
商品名 | メロセット |
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有効成分 | メラトニン |
メーカー・ブランド | アリスト |
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認知行動療法
認知行動療法は、不眠に関連する生活習慣や心配事に焦点を当て、適切なスケジュールで睡眠をとるトレーニングとリラクゼーション法によって身につけていく方法です。
認知行動療法のみの場合もあれば、薬物療法と併用して行われる場合もあります。
睡眠薬は、服用をやめると、不眠状態に戻ってしまうケースもありますが、認知行動療法は治療が終わった後も効果が持続します。しかし、即効性はありませんので我慢強く治療する必要があります。
不眠症治療薬使用において気を付けること
不眠症治療薬を服用するとよく眠れる一方で、気を付けなければならないこともあります。
持ち越し効果
持ち越し効果とは、薬剤の効果が長く残ってしまい、翌朝起きた際に、ふらつきが起こることを言います。高齢者などでは、薬の効果が長く持続してしまい、転倒につながるケースもあるため注意をしてください。
筋弛緩作用
オレキシン受容体拮抗薬やメラトニン受容体作動薬にはあまりみられませんが、ベンゾジアゼピン系睡眠薬の中には、筋肉を弛緩させる作用を持っている薬剤があります。持ち越し効果と同様、立ち上がる時に力が入らず転んでしまうことも想定されます。
依存症
薬剤を飲んでいないと落ち着かず、どんどん服用量が増えてしまうことを指します。本人が気づかないうちに用量が増加していることがあるため、もし依存症の症状が出た場合には、専門家に相談しましょう。多くの薬剤は量を減らすことが可能です。
反跳性不眠
飲み続けていた薬剤を中断することによって、不眠が悪化することを言います。ベンゾジアゼピン系睡眠薬睡眠薬で、作用時間が比較的短いものに起こりやすいとされています。
よくある質問
- Q睡眠薬より寝酒の⽅が安⼼のような気がします。
- A
アルコールには、寝付きが良くなり眠れたように感じる効果がありますが、⼀時的です。眠れたと感じる効果は⼀晩の前半のみにしか生じず、後半になると逆に眠りが浅くなっていきます。結果的に睡眠の質は下がっている状態であり、寝ている途中でアルコールが体から抜けてゆく反動で眠りが浅くなることが要因とされています。また、睡眠をとるためにアルコールを毎⽇飲んでいると、徐々に耐性ができて効果がなくなり、アルコールによる不眠の原因になります。休肝⽇に眠れないのは注意するべき症状です。このような中でお酒を飲み続けると、アルコール依存症になってしまうリスクもあります。自分でお酒を使って不眠を改善しようとせず、医師と相談することが推奨されています。診断の結果、睡眠薬が必要であれば服⽤することをお薦めします。
- Q睡眠薬の減量法を教えてください。
- A
睡眠薬を⻑い間服⽤した後に、突然中断すると不眠が悪化することがあります。 時には⽇中の不安感やイライラ感を引き起こします。これらの症状の多くは⼀過性といわれており、徐々に軽減していきますが、個人差があり、数⽇〜数週間持続することもあるので注意してください。避ける方法として、睡眠薬を突然やめるのではなく、徐々に減量するものがあります。1種類の睡眠薬を4分の1 錠ずつ減らし、1〜2 週間経過をみて問題がなければさらに 4分の1錠減量していきます。焦らず、時間をかけて減量することが大切です。特に、2錠以上服⽤している・2種類以上服⽤している・⻑い間服⽤している⽅は、ゆっくりと減量していくことが必要です。減量する睡眠薬の順番も決まっていますので、睡眠薬の減量は自分で⾏わず、必ず主治医に相談してから⾏ってください。また、最近では薬物治療の進化により、減薬するときに不快な症状が出にくい睡眠薬も開発されています。
不眠症が治っていれば睡眠薬は減量、中⽌できます。睡眠薬を減量した直後は睡眠の質が悪化したと感じることもありますが、多くは数⽇で回復がみられます。、もし、正しい⽅法で減薬しても不眠症状が持続する場合には、不眠症が治っていない可能性があるので、治療を再開する必要があります。減量は⼀時中⽌して主治医に相談してください。
- Q市販の睡眠薬も不眠症に効果があるでしょうか?
- A
市販の睡眠薬にはドリエルなどの錠剤や漢⽅などさまざまありますが、不眠症患者さんを対象にした 臨床試験で⻑い間服用した時の治療効果と安全性がしっかりと確認されていません。そのため、これらの市販薬の注意書きにも記載してある通り、「⼀時的な不眠に使⽤すること」、「不眠症の診断を受けた⼈は使⽤しないこと」が原則です。⼀時的な不眠とは旅⾏や⼼配事などで数⽇程度眠れないことをさします。⼀⽅、不眠症は眠れないことで⽇中の眠気や倦怠感など⼼⾝の不調がでたときに診断されます。不眠が⻑引く場合、いわゆる慢性不眠症の場合には市販の睡眠薬を服用することはお薦めできません。不眠の原因は⼈によってさまざまです。不眠症状が続く場合には、主治医や産業医、睡眠専⾨医に相談しましょう。
- Q⾼齢なので睡眠薬の副作⽤が⼼配です。
- A
年齢とともに薬を分解・排出する体のはたらきが弱まり、薬が体に蓄積しやすくなる傾向があります。そのため、薬の効果が強すぎたり、副作⽤が出やすくなる可能性があります。睡眠薬を服⽤していて、翌⽇に眠気が残ったり、ふらついたりするときには、種類や⽤量を調節してください。