不妊症とは
不妊症とは健康な男女が一定期間避妊をせずに性交しているにもかかわらず、妊娠に至らない状態のことをいいます。
日本産婦人科学会によると、この一定期間を「1年」と定義しており、女性の年齢が 35 歳以上の場合には 6 ヶ月としています。
一般的に排卵日付近に避妊せず性交をして妊娠する確率は約20%程度で、1年以内のうちに約90%の人が妊娠に至るとされています。
そのため、1年間、避妊をせずに妊娠をしなければ不妊症を疑います。
不妊症の割合
少し前までは約10組に1組のカップルが不妊であるというデータがありましたが、最近では晩婚化などもあり、妊娠する年齢が高くなっています。
不妊は年齢があがるとともに割合が増えていきますので、不妊症の割合は増加傾向にあります。
2015年の国立社会保障・人口問題研究所の報告によると、不妊検査や治療を受けたことがある・または現在受けている夫婦は18.2%であり、カップルの5.5組に1組が不妊症と考えられています。
不妊症の原因
世界保健機構の統計によると、不妊症の原因が女性側のみの場合は41%、男性側のみの場合は24%、男女双方に原因がある場合は24%、原因不明が11%と報告されています。
不妊症夫婦の約半数は男性にも原因があることがわかっています。
女性の不妊症の原因
排卵因子
月経周期が 25 日~38 日できており、基礎体温が二相性の場合は心配ありませんが、あてはまらない月経不順の方は排卵障害の可能性があります。
もし月経不順の場合、出血をしていても排卵をしていないことがあります。そのため、基礎体温や卵巣ホルモンの血液検査を行い、排卵が起こっているかどうか・排卵が起こらない場合原因はどこにあるのかを調べる必要があります。
卵管因子
卵巣と子宮をつなぐ卵管部分が、性感染症などでふさがると卵管に卵子が取り込まれにくくなり、不妊症になります。
とくに女性のクラミジアでは、無症状で発症することが多く、気づかないうちに卵管が詰まり、不妊症になっているケースがあります。
子宮因子
子宮に出来た筋腫やポリープなどが原因となります。月経量が多く、血液検査で貧血のある方は子宮筋腫の可能性があり、その中でも子宮の内側へ隆起する粘膜下筋腫の疑いがあります。
粘膜下筋腫は受精卵の子宮内膜への着床障害による不妊症になるとされています。
また、同じように子宮内膜ポリープも着床障害の原因になります。子宮内腔に癒着をきたし、月経量が減少する状態をアッシャーマン症候群と呼び、着床に影響することがあります。
頸管因子
排卵期には透明で粘調なおりものが増加しますが、子宮の奇形や子宮頸部の手術、子宮頸部の炎症などにより、頸管粘液量が少なくなった場合、精子が子宮内に侵入しにくくなり、不妊症となります。
免疫因子
何らかの免疫異常によって「抗体」と呼ばれるもので、精子を攻撃してしまう場合があります。
このように精子を障害する精子抗体、特に精子不動化抗体(精子の運動を止めてしまう抗体)を産生する女性では、抗体が頸管粘液内にも分泌され、パートナーの精子が運動性の良いものだったとしても通過を妨げてしまう可能性があります。
また卵管内にも精子不動化抗体が分泌され、人工授精で精子を子宮腔の奥まで注入しても、卵管内でその通過が妨げられてしまいます。
受精のタイミングでも、精子不動化抗体は精子が卵子と結合することを妨害し、不妊症になることがあるのです。
原因不明因子
不妊症の検査をしても、明らかな原因が見つけられない場合を原因不明因子と呼びます。原因不明不妊は約30%程度といわれています。
ただ、本当に原因がないことは少なく、検査で見つけられない原因が隠れているということがほとんどです。主に2つ考えられる原因がありますが、1つは、何らかの原因で精子と卵子が体内で受精していない場合です。人工授精や体外受精治療の適応となります。
もう1つは、精子や卵子の赤ちゃんを作る力が低下している、もしくはほぼないに等しい力になっている場合です。
加齢がこの原因と考えられており、女性は37歳~44歳の間のどこかで赤ちゃんを作る力が消失されるとされています。
一度、赤ちゃんを作る力が消失してしまうと、医学的に有効的な手段はなく、そのため早くから治療を開始することが重要であるとされています。
男性の不妊症の原因
性機能障害
ストレスなどが原因で有効な勃起が起こらず性行為がうまくいかない勃起障害(ED)や性行為は出来ても腟内射精が困難な腟内射精障害があります。
不妊の治療としてタイミング指導を行う場合、タイミングを意識しすぎてしまうことで性行為そのものの障害をきたす場合もあります。
その他にも、動脈硬化や糖尿病も性機能障害の原因になります。
糖尿病は軽症でも勃起障害を引き起こすとされており、重症となると射精障害や精液量が減少し一部の精液が膀胱内に射出される逆行性射精や精液が出なくなる無精液症をきたします。
軽度~中等度の精液性状低下
精子は精巣(睾丸)の中で作られ、精巣上体という細い管を通り抜ける間に運動能力をえて、受精を行うことの出来る完全な精子となります。
精巣での精子形成や、精巣上体での運動能獲得過程に異常があると、精子の数が少なくなったり、精子の動きが悪くなったり(精子運動率低下)、奇形率が多くなったりして、受精する力が低下します。
このような病態を「造精機能障害」と呼びますが、その一部の方は精索静脈瘤が関与すると言われています。
精索静脈瘤は外科的手術によって造精機能障害が回復し得る可能性があります。
高度の精液性状低下、無精子症
精液中の中の精子の数が著しく少ない、もしくは運動率が極端に低い場合を指します。精子数が少ないとは、通常の1/100以下、運動率が低いとは、通常の20~30%程度のことを示しています。
このような症状は造精機能障害といわれていますが、その他にも視床下部から下垂体で造精機能を司るホルモンの分泌低下による低ゴナドトロピン性性腺機能低下症、停留精巣の手術後やおたふく風邪による耳下腺炎性精巣炎によっても、高度の精液性状低下が見られることがあります。
また、無精子症も原因の1つとなります。無精子症とは、射精された精液の中に静止が全く見られない状態を示しています。無精子症であっても。
閉塞した精路を再建したり、精巣内の精子を回収して顕微授精することにより、治療を進めることが可能です。
不妊症の症状
不妊症は、早くから気づけることはとても少ないですが、今後の将来のために自分が妊娠しやすいかどうかを症状からチェックしてみることも大切です。
気になることがあれば早めに医療機関を受診しましょう。
女性の不妊症の症状
あくまで一例ですが、以下の症状があります。
月経の量や期間が異常
月経の量が極端に多いことを過多月経といいますが、目安としては、1~3時間置き、また夜中に途中でナプキンを交換する必要がある場合です。期間が異常というのは、長期間出血している出血が8日以上続く場合です。
このような場合は子宮筋腫がある可能性を考えます。子宮筋腫は35歳以上の女性の多くに存在し、その多くは問題がないのですが、筋腫ができている場所によっては着床を妨げ不妊の原因となる場合もあります。
一方で、月経の量が非常に少ない場合、もしくは出血している期間が早く終わる(例えば2日以内)の場合には、ホルモンが十分に分泌されていないホルモン異常の可能性があります。
月経の間隔が長い(36日以上)、もしくは短い(24日以下)
排卵が出来ていない「無排卵」の可能性があります。
何らかの原因により十分なホルモンが分泌されないホルモン異常によって引き起こされ、無排卵の場合、卵子と精子は出会うことすら出来ません。
月経痛が非常に強く市販の痛み止めでは効果がない
月経痛がひどく痛み止めで効かない、そして腰痛、排便通がたまにある場合は子宮内膜症の可能性があります。
子宮内膜症とは、子宮内膜組織が、子宮以外の場所で月経のような増殖、剥離を繰り返す病気です。子宮内膜症が子宮以外で起こっている場合、剝離した血液を外に出すことができず、古い血液がたまって炎症や他の組織との癒着が起こり不妊の原因となります。
子宮内膜症が卵巣で発生した場合、卵子の質の低下が起こる可能性もあります。また、がんのリスクもあるためこのような症状がある方は早期に専門機関を受診してください。
性感染症に似た症状がある
クラミジアなどの性感染症は卵管采や卵管の癒着を引き起こすことがあります。
卵管采は卵巣から排卵された卵子を卵管に取り込む働きがあるため、卵管采が他の組織と癒着し機能しないとなると、卵子を卵管へ届けることができません。
また、卵管が癒着し塞がってしまうと、精子が通ることができなくなり卵子と受精することができません。
男性の不妊症の症状
あくまで一例ですが、以下の症状があります。
陰嚢(いんのう)が腫れている・熱を持っている・痛みや違和感がある・左右差がある
上記の症状がある方は、精索静脈瘤の可能性があります。
精索静脈瘤とは精巣やその上の精索部に静脈のコブが出来ることで血流が悪くなり、精巣温度の上昇などで精子濃度の減少、精子運動率の低下など精巣機能が悪くなる症状のことです。
精子の状態が悪いと、卵子と正常に受精できる可能性は低くなります。
精液量が極端に少ない
射精時に精液が体外ではなく、体内へ戻ってしまう逆行性射精が疑われます。
逆行性射精でも少量は射精されますが、その量で卵子と正常に受精できる可能性は低く、多くの精子を出す方が妊娠する確率は上昇します。
逆行性射精の場合には、膀胱内で射精された精子は尿と一緒に排出されます。
不妊症の検査・診断
女性の不妊症の検査・診断
不妊症かなと思った際に、まずは一般的な検査を受けます。そこで疾患が疑われる場合には、特殊な検査を行います。
一般的な検査
検査名 | 内容 |
---|---|
①内診・経腟超音波検査 | 子宮や卵巣を押しながら、痛みが発生するかどうかをみます。 同時に細い超音波プローブを挿入して、て子宮筋腫・卵巣のう腫・子宮内膜症などの異常がないかを確認します。 |
②子宮卵管造影検査 | X線による透視を行いながら子宮口から造影剤を注入して、子宮の形に異常がないか、卵管が閉塞していないかをみます。 少し痛みがありますが、この検査の後に自然に妊娠することも少なくないとされています。 |
③血液検査 | 血液を採って、ホルモン検査や糖尿病など全身疾患に関する検査を行います。 ホルモンは月経周期によっても変化しますので、月経期・黄体 期などに分けて検査します。ホルモン検査の中には、女性ホルモン・男性ホルモンや卵巣を刺激する卵胞刺激 ホルモン・黄体形成ホルモンが含まれますが、その他にも母乳を分泌するプロラクチンや甲状 腺ホルモンなど妊娠に関わるとされる検査も行います。 |
特殊な検査
検査名 | 内容 |
---|---|
①腹腔鏡検査・子宮鏡検査 | 腹腔鏡検査は、臍部からカメラをいれてお腹の中を観察する手術です。全身麻酔をかけ手術室で行うため、痛みは少ないとされています。 子宮・卵巣などの骨盤内臓器の状態を確認し、子宮内膜症や卵管周囲の癒着などのこれまで診察からは見えにくかった不妊原因に気づけることがあります。 また手術中に、卵巣嚢腫や子宮筋腫などがあった場合、切除することが可能で、多嚢胞性卵巣症候群の治療を行うこともできます。 子宮鏡検査は卵が着床する場所を直接観察する検査です。麻酔をかけずに行うことが多いため外来で行うこともできます。 ポリープや筋腫などの腫瘍性病変や内腔の癒着などを見つけることができます |
②MRI 検査 | 体の断面像を撮ることのできる検査で、子宮や卵巣形態の詳細な情報が得られます。 子宮筋腫や子宮内膜症病変の診断に用いられ、卵管水腫など他の不妊原因となる疾患も見つけることができます。 |
男性の不妊症の検査・診断
男性側で不妊症かなと思った際に、泌尿器科の受診をお勧めします。
泌尿器科では、一般的な精液検査と、もし精液検査で異常があった場合に受ける泌尿器科的な検査が行われます。
精液検査
一定期間(2~7日間)禁欲した後に、精液全量を採ります。
基本的には病院で採取し、精液量、精子濃度、運動率、運動の質、精子の形態、感染の有無といった内容を検査します。
正常値から逸脱していた場合には、次の泌尿器科的検査に移行しますが、世界での基準値はWHO ラボマニュアル-ヒト精液検査と手技-5 版にて以下のように決まっています。
検査項目 | 説明 | 下限基準値 |
---|---|---|
精液量 | 射精された精液全部の量 | 1.5ml以上 |
精子濃度 | 精液1ccあたりに対し、精子が何匹いるか | 1500万/ml以上 |
総精子数 | 全ての精子の数 | 3900万/射精以上 |
前進運動率 | 全ての精子のうち、前に進むことができる精子は何%か | 32%以上 |
総運動率 | 全ての精子のうち、元気に動いている精子は何%いるか | 40%以上 |
正常精子形態率 | 見た目が正常な形をした精子が何%いるか | 4%以上 |
泌尿器科的検査
検査名 | 内容 |
---|---|
①診察 | 医師の診察ベースで、不妊症に関わるとされる以前かかった病気の有無や射精状況などの現在の性に関する生活について確認します。 加えて、男性不妊の理由で最も多いのが精索静脈瘤となっていますが、精索静脈瘤の有無や清掃サイズの測定なども同時に行います。 |
②内分泌検査 | X線による透視を行いながら子宮口から造影剤を注入して、血液を採取し、男性ホルモンや性腺刺激ホルモン、状況に応じてプロラクチンなどを調べます。 精液異常の原因を検索することができます。また、勃起障害や射精障害がある場合には受けていただきたい検査となっています。 |
③染色体・遺伝子検査 | 血液を採って、ホルモン検査や糖尿病など全身疾患に関する検査を行います。 ホルモンは月経周期によっても変化しますので、月経期・黄体精子数が極端に少なかったり無精子症の場合に受ける検査です。 染色体の軽微な変化や遺伝子異常が、精子形成障害の要因になっていないか調べます。 |
④特殊な検査 | 症状によって、MRI検査を行ったり、精巣の検査をしたり、勃起能力を調べたりします。 |
不妊症の治療
不妊症の治療には、タイミング法、排卵誘発法、人工授精、体外受精などの方法がありますが、最初はタイミング法から初めて、徐々にステップアップしていく治療法が標準となっています。
女性が妊娠できる年齢は 40 代前半までと限られているため、早期に不妊症の診断や治療を開始しないとますます妊娠しにくくなることにもなります。
このように病気や不安な要素がある場合には、すぐに産婦人科で不妊について相談するのがよいでしょう。
タイミング法
排卵日を生理周期から事前に予測し、性行為のタイミングを合わせる方法です。
一般的に排卵日の2日前から排卵日までが妊娠しやすいといわれています。排卵予定日より前に、卵子が入っている卵胞の大きさを測定します。
卵胞は、20mmになると排卵するといわれているため、排卵日をより正確に計測することができます。卵胞の測定以外にも補助的に排卵日を予測する方法があり、尿中の排卵ホルモン(黄体化ホルモン, LH)を検査する・基礎体温をつけるなどがあります。
排卵誘発法
排卵障害や、タイミング法がうまくいかない場合に排卵誘発法を行います。
人工授精や体外受精と併用として行う場合もあります。
クロミフェン・シクロフェニル
黄体化ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)などの脳から放出される卵巣を刺激するホルモンの分泌を促進して、卵巣を刺激します。
低刺激法に分類されており、軽度から中等度の比較的軽い視床下部性排卵障害によく使われます。通院回数が少なく副作用が少ないので投与しやすい特徴を持っています。
副作用は少ないですが、多胎妊娠がやや増加することが報告されています。
成分名 | シクロフェニル | クロミフェンクエン酸塩 |
---|---|---|
製造販売 | あすか製薬 | 富士製薬工業 |
用量 | 100㎎ | 50㎎ |
適応 | 第1度無月経、無排卵性月経、希発月経の排卵誘発 | ・排卵障害にもとづく不妊症の排卵誘発 ・生殖補助医療における調節卵巣刺激 ・乏精子症における精子形成の誘導 |
飲み方 | 1日400〜600mgを2〜3回に分け、5〜10日間経口投与します。 | <排卵障害にもとづく不妊症の排卵誘発> まずGestagen、Estrogen testを必ず行って、消退性出血の出現を確認し、子宮性無月経を除外した後、経口投与を開始します。 第1クール1日50mg 5日間開始し、第1クールで無効の場合は1日100mg5日間に増量します。 |
禁忌 | ・乳癌、子宮内膜癌などエストロゲン依存性悪性腫瘍やその疑いのある患者 ・卵巣腫瘍のある患者や多嚢胞性卵巣症候群を原因としない卵巣腫大のある患者 ・妊婦又は妊娠している可能性のある女性 | ・乳癌、子宮内膜癌などエストロゲン依存性悪性腫瘍やその疑いのある患者 ・肝障害又は肝疾患のある患者 ・前立腺がんなどアンドロゲン依存性悪性腫瘍やその疑いのある患者 ・卵巣腫瘍及び多嚢胞性卵巣症候群を原因としない卵巣の腫大のある患者 ・妊婦 ・活動性の血栓塞栓性疾患の患者 |
起こりやすい副作用 | 不正出血、悪心、頭痛、全身倦怠感 | 虚血性視神経症、発疹、精神変調、AST上昇、ALT上昇、ビリルビン上昇、γ-GTP上昇 |
クロミッド
代表的な排卵誘発薬で少しの量で高エストロゲン作用を示すとされています。脳内の排卵に関わる部位に作用します。
経口投与で副作用も他の薬剤と比べると比較的少ないとされる一方、一方で、抗エストロゲン作用により子宮内膜が厚くなりにくいことがあります。
<クロミッド関連商品>
商品名 | クロメン【クロミッドジェネリック】 | クロミフェン |
---|---|---|
画像 | ||
一般名 | クロミフェンクエン酸塩50mg | クロミフェンクエン酸塩50mg |
価格 | 1錠あたり182円~ | 10錠あたり1400円~ |
メーカー | Kocak FARMA ilac ve Kimya Sanayi A.S | ジブラ社 |
購入ページ |
アロマターゼ阻害薬
経口薬で、アロマターゼの働きを阻害して、卵胞ホルモン(エストロゲン)の産生を抑える薬剤です。
排卵誘発を目的に使用されますが、クロミフェンと比較すると排卵誘発率は低いとされています。
成分名 | アナストロゾール | レトロゾール |
---|---|---|
製造販売 | アストラゼネカ | ノバルティスファーマ |
用量 | 1㎎ | 2.5㎎ |
適応 | 閉経後乳がん | ・排卵障害にもとづく不妊症の排卵誘発・閉経後乳癌 ・生殖補助医療における調節卵巣刺激 ・多嚢胞性卵巣症候群における排卵誘発 ・原因不明不妊における排卵誘発 |
飲み方 | 1mgを1日1回、経口投与します。 | 1日1回2.5mgを月経周期3日目から5日間経口投与します。十分な効果が得られない場合は、次周期以降の1回投与量を5mgに増量できます。 |
禁忌 | ・妊婦又は妊娠している可能性のある女性 ・授乳婦 ・本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者 | ・妊婦又は妊娠している可能性のある女性 ・授乳婦 ・本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者 ・活動性の血栓塞栓性疾患の患者 |
起こりやすい副作用 | 白血球減少、ほてり | 血中コレステロール増加、頭痛、ほてり、関節痛 |
アリミデックス
もともとは、閉経後の乳がん治療薬として開発されていましたが、排卵誘発剤として広く用いられています
<アリミデックス関連商品>
ゴナドトロピン製剤
ゴナドトロピン製剤は注射剤で、脳から放出される卵巣を刺激するホルモンです。
クロミフェンやシクロフェニルが無効な場合に使用されることが多く、クロミフェンやシクロフェニルと比較し、強力な排卵誘発効果が報告されています。
一方で、副作用として多発排卵による多胎妊娠の増加や、卵巣過剰刺激症候群などの発生頻度が高いことが報告されています。
ゴナドトロピン製剤は、①FSH とLH療法を含有するhMG 製剤②hMG 製剤から LH 成分を除去して FSH のみにしたFSH 製剤③遺伝子組換型 FSH 製剤があります。
高プロラクチン性排卵障害に使用するドーパミン作動薬
産後に母乳を分泌させるホルモンをプロラクチンが産後以外の時期に高くなると、排卵障害の原因となります。
この場合、麦角アルカロイド誘導体であるブロモクリプチンやテルグリド、カルベゴリンを用いることで、高い確率で排卵させます。
人工授精
排卵誘発法でも難しかった場合、人工授精を検討します。
人工授精は、受精する場所である卵管膨大部に精子を届けるため、子宮腔内に注入する方法です。精液をそのまま注入してしまうと痛みが発生するため、洗浄し、運動能力が高い精子のみを抽出して注入します。
人工授精もどのタイミングで行ってよいわけではなく、排卵のタイミングに合わせて行います。また、1つ前の項目で紹介した排卵誘発薬と併用して行うこともあり、特ににゴナドトロピンを併用した場合が最も妊娠率が高いとされています。
人口樹脂絵は6回程度で妊娠確率が頭打ちになるとされておりますので、6回行い妊娠が難しかった場合には体外受精を検討します。
人工授精には副作用もあり、出血、痛み、感染などがあげられます。感染に対しては、抗菌薬を投与することで予防をします。
体外受精
体外受精とは、排卵前の卵子を体の中から取り出し、培養液の中で製紙との受精を行わせる治療法です。
受精が正常に行われた場合、発育した良好胚を2~5日間の培養後に体内に移植します。
体外受精の時にも、前の項目であった排卵誘発薬を1週間ほど使用します。
近年耳にする「受精卵の凍結保存」とは?
晩婚化に伴い、卵子や精子を凍結保存する選択をする人が増えている傾向にあります。受精卵の凍結は、受精卵をー196度の超低温で凍結し、保存します。
-196度の状態では、化学変化が起きにくく、何十年も変化させずに保つことができます。
保存期間が長くなったからと言って、生まれる赤ちゃんに異常が多くなることはありません。
排卵誘発薬以外の治療薬
hCG製剤
排卵前には、LHと呼ばれる黄体形成ホルモンが急上昇するLHサージが起こりますが、hCG製剤はLHに近い働きをします。
発育した卵胞の成熟を促し、受精の準備をさせ排卵に向かわせます。
注射製剤で、薬が投与されると、投与約40時間後に排卵が起こるとされています。
排卵を抑える薬
GnRHアゴニスト
GnRHアゴニストは、視床下部ホルモンGnRHの誘導体です。脳の下垂体に作用し、FSHとLHを強く放出させます。
長期間使うと、逆に排卵を抑えてしまうため、短期間の使用にとどめて排卵を促します。
成分名 | ブセレリン酢酸塩 | リュープロレリン酢酸塩 |
---|---|---|
製造販売 | クリニジェン | 武田薬品工業 |
用量 | 点鼻液0.15% | 注射用1.88mg/3.75mg |
適応 | ・子宮内膜症 ・中枢性思春期早発症 ・子宮筋腫の縮小及び子宮筋腫に基づく過多月経、下腹痛、腰痛、貧血の改善 ・生殖補助医療における卵胞成熟 ・生殖補助医療における早発排卵の防止 | ・子宮内膜症 ・過多月経、下腹痛、腰痛及び貧血等を伴う子宮筋腫における筋腫核の縮小及び症状の改善 ・中枢性思春期早発症 |
飲み方 | <生殖補助医療における卵胞成熟> 左右の鼻腔に各々1噴霧投与を1回投与し、採卵の34〜36時間前に2回投与します。 <生殖補助医療における早発排卵の防止> 1回あたり左右の鼻腔に各々1噴霧を1日2〜3回投与します。 | 月1回、用量と目的に合わせて投与します。 |
禁忌 | ・診断のつかない異常性器出血のある患者 ・妊婦又は妊娠している可能性のある患者 ・授乳期の患者 ・本剤の成分又は他のGnRH誘導体に対し過敏症の既往歴のある患者 | ・本剤の成分又は合成LH-RH、LH-RH誘導体に対して、過敏症の既往歴のある患者 ・妊婦又は妊娠している可能性のある女性 ・授乳中の患者 <子宮内膜症、子宮筋腫、中枢性思春期早発症> ・診断のつかない異常性器出血の患者 |
起こりやすい副作用 | ほてり、肩こり、頭痛 | ほてり、熱感、めまい、関節痛 |
GnRHアンタゴニスト
GnRHアンタゴニストは、体外受精、顕微授精を行う場合に、タイミング良く良い卵子を採取するために使用します。
通常、卵胞の直径が14mmほどに成長したところで投与します。作用としては、下垂体のGnRHレセプターに接着し、FSH, LHを放出しなくさせて、排卵を抑制します。また、アロマターゼを阻害します。
成分名 | セトロレリクス酢酸塩 | ガニレリクス酢酸塩 | レルゴリクス |
---|---|---|---|
製造販売 | 日本化薬 | オルガノン | あすか製薬 |
用量 | 0.25mg | 0.25mg | 40㎎ |
適応 | 調節卵巣刺激下における早発排卵の防止 | 調節卵巣刺激下における早発排卵の防止 | ・子宮筋腫に基づく過多月経、下腹痛、腰痛、貧血の改善 ・子宮内膜症に基づく疼痛の改善 |
飲み方 | 以下のいずれかで投与します。 ・卵巣刺激開始6日目から最終的な卵胞成熟の誘発まで、0.25mgを1日1回腹部皮下に連日投与します。 ・卵巣の反応に応じて本剤を投与開始し、最終的な卵胞成熟の誘発まで、0.25mgを1日1回腹部皮下に連日投与します。 | 卵胞刺激ホルモン製剤投与の6日目から開始し、0.25mgを1日1回皮下に連日投与します。 | 40mgを1日1回食前に経口投与します。初回投与は月経周期1〜5日目に行います。 |
禁忌 | ・本剤の成分又はGnRH誘導体に対し過敏症の既往歴のある患者 ・妊婦又は妊娠している可能性のある女性及び授乳中の女性 ・卵巣、乳房、子宮、下垂体又は視床下部に腫瘍のある患者 ・診断の確定していない不正出血のある患者 | ・本剤の有効成分又はその他の添加剤に対し過敏症の既往歴のある患者 ・ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)又は他のGnRH誘導体に対し過敏症の既往歴のある患者 ・妊婦又は妊娠している可能性のある女性 ・授乳婦 | ・妊婦又は妊娠している可能性のある患者、授乳中の患者 ・診断のつかない異常性器出血の患者 ・本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者 |
起こりやすい副作用 | そう痒感・発赤・熱感・刺激感・腫脹等の注射部位反応 | 悪心、注射部位紅斑 | ほてり、不正出血、月経異常、骨吸収試験異常、頭痛、多汗 |
黄体ホルモン
女性の閉経前後は非常にホルモンバランスが崩れやすく、それらは「黄体ホルモン」の不足と大きく関係します。
「黄体ホルモン」が減少すると生理不順や無月経などになり、妊娠率を下げつ問題点となります。
そのため、薬剤を服用する事で「黄体ホルモン」を補いバランスを正常に導きます。
成分名 | メドロキシプロゲステロン酢酸エステル |
---|---|
製造販売 | ファイザー |
用量 | 2.5mg |
適応 | 無月経、月経周期異常(稀発月経、多発月経)、月経量異常(過少月経、過多月経)、機能性子宮出血、黄体機能不全による不妊症、切迫流早産、習慣性流早産 |
飲み方 | 成人1日2.5〜15mg(1〜6錠)を1〜3回に分割経口投与します。 |
禁忌 | ・脳梗塞、心筋梗塞、血栓静脈炎等の血栓性疾患又はその既往歴のある患者 ・重篤な肝障害・肝疾患のある患者 ・診断未確定の性器出血、尿路出血のある患者 ・稽留流産の患者 ・本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者 |
起こりやすい副作用 | 発疹、浮腫、食欲不振、倦怠感 |
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卵胞ホルモン
閉経などで女性ホルモンが減少すると、めまい、動悸、ほてり、のぼせ、イライラ感やストレスと言った更年期障害の症状があらわれますが、主成分のエストロゲンは、女性ホルモンの分泌を増加して、更年期障害に効果があるお薬です。
女性ホルモンを補充することにより、自然な形で排卵や生理を促してくれます。
成分名 | 結合型エストロゲン | エストラジオール |
---|---|---|
製造販売 | ファイザー | 久光製薬 |
用量 | 0.625mg | 0.09mg/0.18mg/0.36mg/0.72mg |
適応 | 結合型エストロゲンとして、通常成人1日0.625〜1.25mgを経口投与します。 機能性子宮出血又は腟炎に対しては、1日0.625〜3.75mgを経口投与します。 | 用量によって異なっておりますので、詳細は添付文書をご覧ください。 |
禁忌 | ・エストロゲン依存性腫瘍(例えば乳癌、子宮内膜癌)及びその疑いのある患者 ・乳癌の既往歴のある患者 ・血栓性静脈炎や肺塞栓症のある患者、又はその既往歴のある患者 ・動脈性の血栓塞栓疾患(例えば、冠動脈性心疾患、脳卒中)又はその既往歴のある患者 ・本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者 ・妊婦又は妊娠している可能性のある女性 ・重篤な肝障害のある患者 ・診断の確定していない異常性器出血のある患者 ・未治療の子宮内膜増殖症のある患者 | ・エストロゲン依存性悪性腫瘍(例えば乳癌、子宮内膜癌)及びその疑いのある患者 ・乳癌の既往歴のある患者 ・未治療の子宮内膜増殖症のある患者 ・血栓性静脈炎や肺塞栓症のある患者、又はその既往歴のある患者 ・動脈性の血栓塞栓疾患(例えば、冠動脈性心疾患、脳卒中)又はその既往歴のある患者 ・本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者 ・授乳婦 ・重篤な肝障害のある患者 ・診断の確定していない異常性器出血のある患者 ・妊婦又は妊娠している可能性のある女性 |
起こりやすい副作用 | 頭痛、めまい、発疹、腹痛 | 一次刺激性の接触皮膚炎、不正出血、消退出血、乳房緊満感 |
エストロモン
エストロモンは、更年期障害を改善する女性ホルモン剤「プレマリン」のジェネリック医薬品です。
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高プロラクチン血症の治療薬
高プロラクチン血症は、妊娠・出産していない状態でもプロラクチンの濃度が高くなってしまう状態で、黄体機能不全が起こったり排卵を止める働きがあるので不妊の原因になってしまうことがあります。
そのため、治療薬を飲むことで、プロラクチンの分泌を調整することができます。
成分名 | カベルゴリン |
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製造販売 | ファイザー |
用量 | 0.25mg/1.0mg |
適応 | 無月経、月経周期異常(稀発月経、多発月経)、月経量異常(・パーキンソン病 ・乳汁漏出症 ・高プロラクチン血性排卵障害 ・高プロラクチン血性下垂体腺腫(外科的処置を必要としない場合に限る) ・産褥性乳汁分泌抑制 ・生殖補助医療に伴う卵巣過剰刺激症候群の発症抑制 |
飲み方 | 成人1週1回(同一曜日)就寝前経口投与とし、1回量0.25mgから始め、少なくとも2週間以上の間隔で1回量を0.25mgずつ増量し、維持量1回あたり0.25〜0.75mgで投与します。 |
禁忌 | ・麦角製剤に対し過敏症の既往歴のある患者 ・心エコー検査により、心臓弁尖肥厚、心臓弁可動制限及びこれらに伴う狭窄等の心臓弁膜の病変が確認された患者及びその既往のある患者 ・妊娠中毒症の患者 ・産褥期高血圧の患者 |
起こりやすい副作用 | 嘔気・悪心、胃部不快感、食欲不振、赤血球数減少、血色素量減少、ヘマトクリット値減少、CK上昇 |
カベルゴリン
カベルゴリンは主にパーキンソン病の治療に用いられるお薬ですが、高プロラクチン血症による排卵障害の治療に使われます。
カベルゴリンを服用することでプロラクチンの分泌を調整することができます。
また、作用持続時間が長く、24時間安定した血中濃度を保つことができるので、週1回または10日に1回に1錠の服用で効果が期待できます。
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以下のような方は、早めに治療を行うことをおすすめします。
- 排卵日予測や基礎体温をはかることが難しい方
- 20代はもっとも妊娠しやすいと言われているが、思うように妊娠しない
- 30代前半で1年様子を見ても妊娠しない
- 35歳以上で半年ほど様子を見ても妊娠しない
- 30歳代後半〜40歳代で妊娠を希望している方
- ご夫婦のどちらに原因があるか分からず不安を抱えている
- 二人目がなかなかできないと感じる時
不妊治療の予防
不妊症に影響をもたらす可能性がある生活習慣として、不規則な生活、睡眠不足、肥満・痩せ、喫煙、過度な飲酒、ストレスなどが挙げられます。
生活習慣を改善することは、妊娠しやすい体作りにつながるため、生活習慣を見直すことは重要です。
特に喫煙は、活性酸素が卵子や精子に悪影響をもたらすことが分かっており、女性に関しては閉経をはやめてしまう可能性があるとも示唆されています。肥満や瘦せすぎはホルモンバランスが崩れやすくなります。
また、男性では精巣を温めすぎると精子をつくる機能が低下するとされています。
サウナや長風呂、きつい下着、長時間の自転車やバイクの運転、パソコンの膝上での使用は避けるようにしましょう。
妊娠ドック(不妊ドック)について
現在不妊症の方が増加していることもあり、不妊について不安を抱えている夫婦は3組に1組以上との結果が2020年国立社会保障人口問題研究所の調査より発表されています。
事前に不妊かどうかチェックしたい場合、妊娠ドックなどの検査もあるので、不安な方は受けてみるのも良いでしょう。
不妊症治療にかかる金額(不妊治療の保険診療に関する事)
多くの疾患に関する費用は、検査や治療が保険診療の適応内か、適応外かで変わってきます。
しかし、不妊治療にかかわる費用は2022年4月以降、保険診療の適応内となりました。
保険が適応されることで、通常の金額の3割の負担で治療を受けることができます。
以前と比較し、金額的なハードルは下がりましたが、女性の年齢によって適用条件が異なっています。
治療開始した時の女性の年齢が40歳未満 | 1子あたり最大6回まで |
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治療開始した時の女性の年齢が40歳以上43歳未満 | 1子あたり最大3回まで |
また、保険診療の適応内となった不妊に関する治療は、43歳未満の女性のみであるためこの点も注意しなければなりません。
不妊治療の金額の目安
分類 | 医療法 | 健康保険 | 治療費 |
---|---|---|---|
一般不妊治療 | 血液検査や子宮卵管造影検査、精液検査などの一般検査 | 一部適用 | 数百円~2万円 |
タイミング法 | 適用 | 数千円~2万円 | |
排卵誘発法 | 適用 | 数千円~2万円 | |
人工授精 | 適用 | 1万円~3万円 | |
高度不妊治療 | 体外受精 | 適用 | 10万~20万円 |
顕微授精 | 適用 | 10万~25万円 | |
凍結融解胚移植 | 適用外 | 10万~20万円 | |
顕微鏡下精巣内精子採取術 | 適用外 | 25万~40万円 |
高額療養費制度
保険の適応内で治療を行ったとしても、治療費が高額になってしまう場合は高額療養費制度というものがあります。その人の所得に応じて決められた1カ月当たりの上限額を治療によって超えてしまった場合に、費用を負担してもらえる制度です。
不妊症に関するよくある質問
- Q体外受精をはじめとする、近年進歩した新たな不妊治療法(生殖補助医療)はどこに行くと受けられますか?
- A
生殖補助医療が始まった 1980 年代は、この治療をおこなえるのは大学病院や、大病院のような先端的な医療が可能な施設のみでしたが、近年では技術が安定し、培養のための器具や試薬が一般化しています。よって、全国のどこの病院や生殖補助医療専門クリニックで治療を受けても、大きな違いがないレベルまで不妊治療は発展してきています。
日本産科婦人科学会の以下のページで、生殖補助医療を行っている施設(生殖医療登録施設)の一覧を毎年発表しています。施設検索-日本産科婦人科学会
公益社団法人 日本産科婦人科学会また、日本生殖医学会では、生殖医療を専門医とし資格を持つ医師(生殖医療専門医)を認定しています。
一般社団法人日本生殖医学会|生殖医療専門医制度 – 認定者一覧
一般社団法人 日本生殖医学会
- Q生殖補助医療の治療成績はどのくらいですか?
- A
日本産科婦人科学会の調査によると、生殖補助医療を用いた治療は、2010 年には全国で552 施設、242,161 治療周期が行われました。このうち生産分娩にまで至った治療周期は 27,682周期(11.4%)でした。
新鮮胚治療周期と凍結融解卵・胚治療周期の治療に分けると、新鮮胚治療周期で生産分娩
にまで至った治療周期は6.0%(9,471/158,391)、凍結融解卵・胚周期治療で21.7%
(18,211/83,779)でした。
新鮮胚治療では難しい症例が多いことが推測されます。出生児
数は 28,945 人であり、この数値は約 36 人に一人が生殖補助医療で出生していることになります。
これは小学校の1教室に 1 人は生殖補助医療で出生した児がいることになります。
- Q女性の加齢は、妊娠や不妊症にどのような影響を与えますか?
- A
①妊娠する力の低下
出産数は 30 歳から徐々に減少し、35 歳を過ぎるとその傾向は顕著になり、40 歳を過ぎると急速に減少します、不妊の頻度は 25 歳~29 歳では 8.9%、30~34 歳では 14.6%、35~39 歳 21.9%、40~44 歳では 28.9%と報告されており、30 歳から不妊症が増加、つまり自然に妊娠する確率が減っていることがわかります。②婦人科疾患の増加
女性は年齢があがると、卵管炎、子宮筋腫、子宮内膜症等に罹患するリスクが上昇します。
長期化して増
悪し、形態学的異常のリスクが増大することも考えられています。クラミジアなどによる卵管炎においては、卵管やその周囲の炎症が起こり、卵管が狭くなったり、塞がったり、または、卵管周囲の癒着が生じるため、卵管妊娠や卵管因子による不妊が起こります。
子宮筋腫は年齢とともに罹患率が増加し、筋腫核が増大し、子宮腔内に突出して着床や成長を障害することが考えられます。子宮内膜症においても、卵管周囲の癒着により、卵管の動きが制限され、卵子が卵管に入れなくなることが考えられます。
また、子宮内膜症における骨盤内環境の悪化が胚の成長や着床を障害することが指摘されています。③生殖補助医療による妊娠率・生産率の低下
女性は、30 歳以降妊娠率が低下すると1)で述べましたが、35 歳前後からは、妊娠率の低下と流産率の増加が起こります。たとえ体外受精や顕微授精などの生殖補助医療を行って受精を起こさせることができても、妊娠率・生産率は低下します。④赤ちゃんの死亡率の増加
女性の年齢が上昇すると、周産期死亡率(妊娠 22 週以降の胎児や生後 1 ヶ月以内の新生
児の死亡率)が上昇します。もっとも、周産期死亡率が低いのは、25~29 歳です。
- Q男性の加齢は不妊症にどのような影響を与えますか?
- A
加齢とともに、男性ホルモンを作る力も衰えますが、女性と異なり、何歳以上は不妊症に影響を与えるなど区切りをつけることは難しいとされています。
また、その人の健康状態など個人差もあります。
ただ、精子数は加齢とともに減少することが示されています。
一方で、精液の量自体も減るため濃度自体は変わらないとされています。報告では、30 歳代と比較すると 50 歳代では精液量は 3~22%、精子運動率は 3~37%、精子正常形態率は 4~18%低下すると報告されています。
運動している精子があれば、妊娠すること自体は可能ですので、精子の減少と不妊症を結び付けるのは難しいとされています。
流産に関しては、比較的多数の症例対照研究によると、女性の年齢や他の要因の影響を除いても、男性の加齢によって自然流産の確率が上昇すると報告されています。
また、45 歳より高齢の男性では 25 歳未満と比較して自然流産の確率が約 2 倍になるとするものや、自然流産に与える影響は男性の 40 歳以上は女性の 30 歳以上に相当するとの報告もあります。
出典
はらメディカルクリニック 不妊症とは
一般社団法人日本生殖医学会 Q4.不妊症の原因にはどういうものがありますか?
Medical Note
東京HARTクリニック 不妊症治療薬の効能および副作用
不妊症Q&A
KYONOARTSLINIC 「実際いくらかかるの?」~不妊治療が保険適用になってから~
Rukuo 不妊治療にかかるお金はどれくらい?