ゼロカロリーは本当は0ではない

「ゼロカロリー」と表示されている食品を見たことがあるかと思います。
一見、カロリーは含まれていない「0kcal」だと思ってしまう方も多いかもしれませんが、実はそういうわけではないということをご存じでしょうか。
ゼロカロリー等の定義
ゼロカロリーなどの表記は栄養表示基準制度をもとに定義づけられています。
100mlあたり5kcal未満であればカロリーゼロ/ゼロカロリー/ノンカロリーといった表記しても大丈夫です。
もしペットボトル(500ml)のゼロカロリー飲料を買ったとき、そのなかには25kcal未満のカロリーが含まれているかもしれません。
カロリーオフ・低カロリーの定義
カロリーゼロ以外にも、カロリーオフや低カロリーのように似たような表記をされているラベルがあります。それぞれ食品表示基準によって定義が決められています。
「カロリーオフ」はカロリーが低減されたという意味なので、他の同じ種類の飲み物と比較して100mlあたり20kcal以上低減されており、さらに低減された割合が25%以上でなければなりません。
「カロリー●%減」「カロリー●%カット」という表記がされることもあります。
一方、「低カロリー」は「100mlあたり20kcal未満」であることが定義となっています。
ゼロカロリーよりもカロリーが高いことになります。「カロリー控えめ」と表記されることもあります。
表現例 | 基準 | |
---|---|---|
カロリーを含まない例 | ・カロリーゼロ ・ノンカロリー | 飲料100ml(食品としては100g)あたり5kcal未満 |
カロリーが低い例 | ・低カロリー ・カロリー控えめ | 飲料100mlあたり20kcal未満。(食品100gあたり40kcal未満) |
カロリーが低減された例 | ・カロリーオフ ・カロリー●%減 ・カロリー●%カット等 | 他の同じ種類の飲料と比較して100mlあたり20kcal以上の低減(食品100gあたり40kcal以上)かつ低減された割合が25%以上 |
甘味料の種類と効果
ゼロカロリーの食品でも、甘味が全くないわけではありません。なぜカロリーがないのに甘いのでしょうか。
それは人工甘味料を使用しているからです。人工甘味料とは、人工的に作られた甘味の成分のことです。砂糖より数百倍も甘味が強いため、わずかな量で十分な甘味をつけることができます。
さらに人工甘味料にはブドウ糖が含まれていないため、血糖値を上昇させることもありません。
人工甘味料とその影響

人工甘味料は、ブドウ糖も含まれておらずカロリーも低いため良いことばかりのように思えます。
ですが、ゼロカロリーの人工甘味料を定期的に摂取すると、健康に悪影響があることがわかっています。
人工甘味料の定期的な摂取で、血糖値を正常に保つ能力が低下するという報告をご紹介します。*1
イスラエルの研究で、人工甘味料の摂取を制限している120人を対象に調査しました。
人工甘味料のスクラロースとサッカリンを毎日少量ずつ2週間摂取した人は、プラセボ群に比べて7日後の腸内細菌叢の組成や機能が変化し、血糖値を正常に保つ耐糖能が損なわれました。
しかし、アスパルテームやステビアなどの人工甘味料では、耐糖能に影響はみられませんでした。
人工甘味料も種類によっては定期的な摂取と過剰摂取に注意が必要です。
天然甘味料の利点
まず、甘味料の種類についてご紹介します。甘味料とは食品に甘味をつけるための調味料のことで、一番身近なものは砂糖です。
甘味料は大きく糖質系と非糖質系の2つに分類されます。
糖質系の甘味料とは具体的に砂糖、でん粉由来の糖、その他の糖、糖アルコールなどです。
一方、非糖質系甘味料はさらに天然甘味料と人工(合成)甘味料に分けられます。
天然甘味料とは、植物の葉や果実などに含まれる甘味成分を抽出して作られた甘味料のことで、人工甘味料は化学合成によって人工的に作られた甘味料です。
天然甘味料は「はちみつ」「エリスリトール」「キシリトール」などがあり、それぞれメリットがあります。
はちみつ
はちみつはミツバチが作った天然甘味料です。はちみつの主成分は「ブドウ糖」ですが、胃腸に負担をかけずに、すぐエネルギーに変わる特徴があります。
砂糖よりもカロリーが低く、砂糖の約30%の量で同じ甘さになります。カロリーも100gあたり砂糖が391kcalであることに対し、はちみつは329kcalです。
はちみつにはさまざまな種類がありますが、特に、加工がおこなわれていない「純粋はちみつ」と書かれているものを選ぶと良いでしょう。
エリスリトール
天然甘味料で、砂糖の70~80%ほどの甘さです。エリスリトールはカロリーが0という特徴があります。栄養素は身体に吸収されず、血糖値が上昇する心配もいりません。
そのため、糖尿病の方や糖質制限中の方には非常にメリットの多い天然甘味料です。
また、エリスリトールは虫歯の原因となる酸を生み出さないため、食べても虫歯にならないとされています。
キシリトール
キシリトールはガムを購入されたときに見たことがある方も多いかもしれません。
甘さは砂糖と変わらないですが、カロリーが砂糖の75%ほどです。虫歯を予防する効果や中耳炎を予防する効果があります。
甘味料の摂取量の目安
甘味料は摂取しすぎては身体に悪影響を及ぼしますので、許容可能な1日の摂取量が決まっており、「体重1kgあたり40mg」とされています。この制限内であれば安全という目安になります。
1日の許容摂取量を超えるには、体重70kgの人の場合、アスパルテームを200mgまたは300mg含む清涼飲料水を10本以上摂取する必要があります。
一般的な摂取量であれば、許容量を超えることはなさそうですが、摂取し過ぎには注意してください。
カロリーの摂取とダイエット

ゼロカロリー商品のダイエット効果
WHOが2023年5月15日に発表したガイドライン*2で、「砂糖の代替となる人工甘味料に体重減少効果はなく、病気のリスクを高める可能性がある」ことが示されました。
ゼロカロリー食品は、ダイエット中のスイーツの代替としている方も多いかもしれません。しかし、本研究で人工甘味料を摂取した成人と小児の体脂肪変化を見たところ、長期的な観点でメリットはなかったという結果でした。
特に長期的に摂取することで、成人の2型糖尿病や心血管疾患、死亡のリスク増加に影響する可能性が示唆されています。
やはり、ゼロカロリー食品を漫然と、長期間使用することはよくないと考えられます。
一方で、短期間のみ集中的に置き換えることは問題なく、運動などと組み合わせて生活習慣の見直しから同時に行うとダイエット効果は高まるでしょう。
ゼロカロリー商品は本当に太らないのか?
ゼロカロリー食品は確かにカロリーは低いかもしれませんが、必ず太らないとは言い切れません。
なぜなら、人工甘味料を使用したゼロカロリー食品を長期的に摂取すると依存性がつくられ、結果的に食欲が増進され、太ってしまう可能性もあるからです。
ゼロカロリー食品は、上手に生活に取り入れることでダイエットのサポートとなりますが、使い方を誤ると以前よりも体重が増えてしまったということも十分あり得ます。
そのため、ゼロカロリー商品は、摂取する頻度や量をしっかりとコントロールしたうえで使うようにしましょう。
ゼロカロリーのメリット・デメリット

ゼロカロリー飲料・食品のメリットとデメリットについてご紹介します。
メリット
甘いものは一般的に高カロリーです。ダイエットのために糖質制限やカロリー制限する方も多いと思います。
ただ、過度なカロリー制限はストレスを溜めてしまい、結果的に「やけ食いしてしまう」「リバウンドしてしまう」こともあります。加えて、過度な制限が心を疲れさせてしまうこともあります。
ゼロカロリー食品はこのようなストレスを緩和させてくれる可能性があります。
一部の甘いものをゼロカロリー食品におきかえることで無理なくダイエットが可能になります。
「どうしても今日は甘いものを食べたいがカロリーが気になる…」という時は、ゼロカロリー食品に頼ってみてはいかがでしょうか。
デメリット
人工甘味料の過剰摂取には注意が必要です。人工甘味料は、科学的に合成された「食品添加物」です。
もちろん、安全性は検証されており、人体には無害なものとなっています。
制限内の量であれば問題ないですが、「カロリーが少ないからたくさん食べても大丈夫だ」と安心してしまうと過剰摂取となり、逆に身体に悪影響を及ぼす可能性があります。
人工甘味料には定期的に摂取すると余計に甘いものを食べたくなってしまう依存性があると言われています。
同時に、強い甘さに慣れてしまい基準量以上に甘味を欲してしまうため、気づかないうちに過剰摂取を招いてしまう可能性があります。
また、人工甘味料は、体内で消化や吸収をされずに体外に排出されるため、摂取しすぎると腹痛を起こす危険性もあります。
ゼロカロリーに関するよくある質問

- Q人工甘味料と砂糖はどちらの方がよいでしょうか?
- A
その方の健康状態や体質によって異なるため一概には言えませんが、人工甘味料はカロリーが低く血糖値を上げないという特徴があります。
しかし、依存性もあるため砂糖を摂取するよりも疾患リスクを長期的に高めてしまう可能性もあります。
それぞれのメリット・デメリットをしっかりと把握したうえで楽しむことをおすすめします。
- Q人工甘味料に発がん性はありますか?
- A
日本で使用されている人工甘味料に発がん性は認められていません。一方で過剰摂取にはご注意ください。
最後に
「カロリーゼロ」食品には、低カロリーで甘いものが食べられるなどのメリットももちろんありますが、食べ過ぎは良くありません。
しっかりと食べる量や頻度をコントロールしたうえで、上手に活用すると良いでしょう。さらに運動などと組み合わせるとよりダイエット効果が期待できます。
出典
「カロリーゼロ」「カロリー控えめ」「カロリーオフ」の違いは何ですか?
*1:Some Artificial Sweeteners May Have a Not-So-Sweet Impact on Our Bodies
*2:WHO advises not to use non-sugar sweeteners for weight control in newly released guideline