肩こりの原因は?
多くの人が経験した事のある肩こりは本当に辛いですよね。何故人は肩がこるのでしょうか。
人間は二足歩行をする体型をしているため、首や腰に負担がかかりやすい体質です。特に首から肩にかけての筋肉は、姿勢を保つために常に緊張しています。そのため、この部位の筋肉は血行不良を引き起こしやすく、疲労しやすくなります。
肩こりを引き起こす主な原因は以下の2つです。
1つ目は筋肉の疲労。2つ目は病気が原因の肩こりです。
この2つの原因が複合的に関連することで、肩こりという症状が現れるのです。したがって、この2つの原因を改善することが肩こり対策として大切だと考えられます。一つずつ肩こりの原因について見ていきましょう。
筋肉疲労
肩こりの主な原因の一つに、肩周辺の筋肉や血管の血行不良があります。
肩の筋肉は頭や腕の重みを支える大切な役割があるため、常にある程度の緊張を保っています。しかし、同じ姿勢を長時間続けたり、運動不足だったりすると、次第に筋肉が硬くなり、血管を圧迫するようになります。
すると、酸素や栄養の供給が滞り、疲労物質がたまっていきます。これを「筋肉疲労」と呼びます。
筋肉の疲労が蓄積すると、筋肉自体の血流が悪くなるため、酸素や栄養の供給不足からさらに筋肉の疲労が蓄積していくという負のスパイラルに陥ります。この症状を放置していると、血行不良が進み、筋肉の機能が低下します。長期的には筋力の衰えにもつながりかねません。
したがって、筋肉の過度な緊張を防ぎ、柔軟性を保つことが大切です。
病気が原因になる肩こり
肩こりの原因には、筋肉の疲労や姿勢の問題などのほかに、様々な病気が関係しているケースも少なくありません。
代表的なのが動脈硬化などによる血行障害です。高血圧症・低血圧症・脂質異常症などから血管の硬さが関与して血の巡りが悪くなると、肩の筋肉への酸素や栄養の供給不足から肩こりが生じます。加齢や貧血症状なども同様です。
また眼精疲労の症状として肩こりが起こる場合があります。さらに、肩こりはストレスとも関係しています。
過度のストレスは自律神経を乱し血圧を上昇させ血行不良を生じさせることで肩こりが出現しやすくなります。
そのほか、狭心症や心筋梗塞などの心臓病、脳動脈瘤などの脳血管障害でも、体の別の部位に痛みを感じる「関連痛」として肩こりが現れることがあります。
また、歯や目の疾患が姿勢の歪みや筋肉の過度の緊張を招いて肩こりの原因になるケースも報告されています。とくに歯列接触癖(しれつせっしょくへき)のある人は無意識に歯をかみしめるため、噛む筋肉の疲労により肩こりが生じることがあります。
このように、肩こりの症状だけでなく、全身の健康状態にも注意が必要です。
特に原因不明の肩こりが続く場合は、一度総合診療科を受けることをおすすめします。
病気を見逃さないためにも、肩こりの症状変化に気をつけることが大切です。
肩こりの治療や対処法
たかが肩こりと思って放置しておくと後々大変なことになりかねません。まずはしっかりとした治療や対処法を行うことが必要です。
ここでは、①マッサージ療法、②温熱療法、③運動療法、④首回りの運動、⑤薬物療法について紹介いたします。
①マッサージ療法
肩こりの人におすすめしたいのが、マッサージ療法です。マッサージは肩こりの緩和に効果的です。首や肩、肩甲骨付近の血行を促進し、筋肉の緊張をほぐします。
マッサージには様々な種類がありますが、肩こりに有効なのは、指圧マッサージとトリガーポイントマッサージです。指圧マッサージは、手のひらや指先で筋肉を押すことで行います。コリや痛みを感じる部分に集中的に刺激を与えることがポイントです。
一方、トリガーポイントマッサージは、筋肉の強い痛みの部位を刺激して痛みを和らげる方法です。
また、整体やリラクゼーションサロンでのマッサージも効果的ですが、長続きしづらい場合があります。そこで、家庭用電気治療器が便利です。低周波治療器は微弱な電流を使って筋肉のコリをほぐし、痛みを和らげる効果があります。コードレスタイプなら気軽に使え、自宅で手軽にケアできます。
このようにマッサージは、肩こりの主な原因である筋肉の疲労や硬直を和らげることができる優れた療法なのです。
②温熱療法
肩こり対策として効果的な温熱療法は、熱を加えることで血行を良くして筋肉をほぐし、肩の痛みやこりを和らげます。
温熱療法には主にホットパックや赤外線治療、温浴があります。ホットパックは、45~60度程度に温めたゲルパックを肩に当てる方法。保温効果が高く、湿潤熱による処置なので効果的です。
赤外線治療は、赤外線ランプからの熱効果で深部温めをします。浅い体表面だけでなく、関節や筋肉の奥まで血行促進効果が期待できます。
温浴は、38~41度の湯船につかることで全身の血行を良くします。湯上がりにストレッチすれば効果的です。
これらの温熱療法を行うことで、慢性的な肩こりの改善が期待できます。効果を実感するには、週に2~3回、計10回程度の継続が必要だとされます。
③運動療法
肩こりの改善には、適度な運動を取り入れる運動療法がおすすめです。
運動療法は、筋肉をほぐしたり肩の関節可動域を広げたりして、肩こりの原因である筋肉の硬直や血行不良を改善します。
有酸素運動を基本とし、自分のペースで楽しくできるウォーキングや水泳、ヨガなどの持久力トレーニングがおすすめです。運動強度は強すぎない程度にして、無理のない範囲で続けることが大切です。
週に2~3回、1回20分程度の軽めの運動をまずは3ヶ月続けることから始めましょう。生活習慣の一部として運動を取り入れ、肩こり予防や改善をしていきましょう。
④首周りの運動
肩こりの原因の一つとして、首の筋肉の硬直や歪みがあることが知られています。ストレートネックと呼ばれる首のまっすぐ化も肩こりの誘因になりえます。スマホを長時間操作している事でストレートネックになりやすいことから「スマホ首」とも呼ばれています。
そこでおすすめなのが、首のストレッチや筋トレです。自宅で簡単にできる首周りの運動として、以下の3種類を取り入れてみましょう。
●首すくめ運動:両肩を少し持ち上げながら背筋を伸ばします。10秒キープして肩を落とし脱力します。
●首回旋運動:ゆっくりと首を左右に回す運動です。全方向に動かすことがポイントです。
●前後左右へ首を倒す運動:首をゆっくりと前後左右に倒していきます。反対側の筋肉を伸ばします。
これらの運動を1日5分程度取り入れることで、筋肉の柔軟性アップと血行促進が期待できます。肩こり予防にも効果的です。
⑤薬物療法
肩こりへの治療として、マッサージや温熱療法などのほかに、薬物療法もあります。
薬物療法は、内服薬や外用薬、注射などの薬剤を使用する治療法の総称です。肩こりの筋肉の過緊張と痛みという悪循環を断ち切る第一歩として利用されます。
使われる薬剤には、痛み止め成分の他、筋肉をリラックスさせる筋弛緩薬やビタミン剤などがあります。注射では神経ブロック注射による鎮痛効果が期待できます。
薬の種類や使用量は個人差があるので、医師の指示に従うことが大切です。薬物療法を併用しながら、運動やマッサージなど自然治癒力も高めることが肩こり改善には必要です。
肩こりから来る頭痛
肩こりによって生じる頭痛は、医学的に「緊張型頭痛」と定義されます。肩や首の筋肉の緊張が引き金となる二次性頭痛です。
特徴としては後頭部を中心にしたズキズキした痛み。「ヘルメットをかぶったような重苦しさ」と例えられることも。頭痛に肩や首のコリ、めまい、全身倦怠感を伴う人も。
原因は姿勢の歪みや運動不足などの身体的ストレスと、精神的なストレスです。ストレスが筋肉の緊張を高め、頭痛を誘発すると考えられています。
ゆったり姿勢を心がけ、ストレス解消法を取り入れるなど、緊張緩和が頭痛予防に有効です。頭と肩の関連性を理解し対処しましょう。
四十肩や五十肩
四十肩・五十肩は、40歳から60歳代にかけて起こりうる肩関節周辺の炎症性疾患です。医学的には「肩関節周囲炎(かたかんせつしゅういえん)」と呼ばれ、その主な原因と症状は次の通りです。
原因1つ目は姿勢の歪みです。猫背などで骨盤にゆがみが生じると、それが肩まで伝わり炎症を招きます。
原因2つ目は運動不足。可動域が狭まり筋肉の耐久力が低下することで、肩関節への負担が増えます。
症状は、腕を挙げる時の肩の痛み、寝返り時の痛み、洋服の着脱困難など。日常生活のどの場面でも痛みが出現します。四十肩・五十肩は自然治癒する一方で、運動障害が残るリスクもあるので、適切な治療が必要不可欠です。
四十肩・五十肩の発症を防ぐには、姿勢改善と適度な運動が大切です。加齢による変化を少しでも遅らせたいものです。
肩こりのための市販薬
肩こりの治療は基本的に対処療法になります。痛み止め、ビタミン剤、筋弛緩剤、漢方薬など様々なアプローチの方法で治療を行うことができます。市販薬ではたくさんの種類の医薬品が販売されている為お勧めの治療薬をご紹介いたします。
分類 | 市販薬 | |
---|---|---|
飲み薬 | 鎮痛剤 | ロキソニンSプレミアム |
筋弛緩剤 | コリホグス | |
ビタミン剤 | キューピーコーワiプラス | |
塗り薬 | 鎮痛剤 | ボルタレンACローション |
ロキソニンEXローション | ||
ゼノールエクサム液ゲル | ||
貼り薬 | 鎮痛剤 | ロキソニンEXテープ |
フェイタス5.0 | ||
オムニードケトプロフェンパップ |
医療用医薬品と同成分を求めるのであれば個人輸入などで購入することも可能です。
肩こりに関するよくある質問
- Q肩こりで湿布を購入する場合温シップと冷シップのどちらを購入したらよいですか?
- A
一般的に急性期の炎症・熱を帯びている症状には冷シップを、逆に慢性期の熱を帯びていない症状には温シップを使用することで十分な効果が得られます。特に肩こりの様な患部に熱を帯びていない慢性的な痛みであれば温シップを選択すると良いでしょう。鎮痛効果はどちらも同じです。また温でも冷でもないテープ剤を選択しても効果は変わりません。
- Q肩こりを根本的に治すにはどうしたら良いですか?
- A
肩こりを根本的に治すには、次の3つのポイントを意識することが大切です。
1つ目は、姿勢の歪みをできる限り改善すること。猫背やスマホ首などを直すことで、肩や首、背中の筋肉の緊張をほぐします。
2つ目は、マッサージなどで肩の筋肉に直接血行を促進すること。そうすることで筋肉内の老廃物が流れ、緊張が緩和されます。
3つ目は、鍼(はり)や整体などで、肩の腱や靭帯といった深部組織のコリをほぐすこと。
この3つを意識して対策を立て、継続することが大切です。姿勢改善から始めることをおすすめします。
- Q直ちに受診が必要な肩こりとはどんな症状がありますか?
- A
肩こりは自宅でのセルフケアで改善できることも多いですが、次のような症状がある場合は要注意です。
・運動時の肩の痛み:狭心症など心疾患の可能性があります。
・手のしびれや麻痺:神経や血管の圧迫が考えられます。
・動かしていないのに痛む:骨や内臓の疾患の場合があります。
・徐々に症状が重くなる:がんなどの進行性疾患の可能性が考えられます。
このような症状や推移がある場合は、放置せずに専門医の診断を受けましょう。原因が特定され、適切な治療を受けることが大切です。気になる症状があればためらうことなく受診しましょう。
まとめ
まとめ
この記事では、肩こりの原因や治療法、対処法などについて解説しました。 肩こりの主な原因として、筋肉の疲労や病気があります。病気が疑われる場合には直ちに受診が必要です。治療法や対処法として、ストレッチやマッサージ、薬物療法などが効果的です。肩こりに効く薬では内服薬・湿布薬・塗布薬を紹介しましたので是非参考にしてみて下さい。 特に肩こりは悪化すると頭痛を発症することもある為注意が必要です。 また年齢とともに起こりやすくなる四十肩や五十肩では酷い場合は病院での受診が必要となります。 肩こりを改善するには、自分の体調や原因を理解することが大切です。日頃の運動不足解消や、早期のストレッチなど対処することが大切です。 現代社会では欠かせないスマホですが、毎日スマホを触っていることでストレートネックになりやすくなります。自分で休息・ストレッチの時間を作るようにすると良いでしょう。
出典
社団法人日本整形外科学会(肩こり)
社団法人日本整形外科学会(五十肩)
一般社団法人日本臨床内科医会(肩こり)