プラケニル(ヒドロキシクロロキン)とは
全身性エリテマトーデス(SLE)、皮膚エリテマトーデス(CLE)の治療をするために使用される薬剤です。
全身性エリテマトーデスとは、免疫システムが誤って自身の細胞を攻撃してしまい、臓器に炎症や障害が起こる疾患です。自分で自分を攻撃してしまうことから、自己免疫性疾患と呼ばれています。
日本全国の患者数は約6~10万人ほどで、男女比は1:9とされています。妊娠可能な女性に起こりやすいことがわかっています。
プラケニルの効果
プラケニル(ヒドロキシクロロキン)は、免疫細胞に作用し、免疫反応を調整します。結果、皮膚症状や倦怠感などの症状を改善します。
また、全身性エリテマトーデスは、一度症状が良くなっても、再び病気の勢いが強くなり症状が悪化する「再燃」が起こる可能性もあります。しかし、プラケニルは、この再燃を抑える効果も期待できます。
プラケニルは、1〜2ヶ月ほどで効果が現れます。そのため、すぐに効果が見られなくても自己判断で薬剤を中止することは避けてください。
症状が落ち着いたとしても、再燃の可能性がありますので、プラケニルの治療は継続することが大切です。
プラケニルの副作用
副作用として「下痢」や「皮膚障害」「低血糖」などが発現しやすいです。
下痢
先発品の添付文書では5%以上の確率で発現すると報告されています。
下痢は服用1ヶ月以内に出ることが多いですが、服用し続けていると慣れて改善していくことが多いです。
下痢に対しては、「水分を十分に摂る」「スポーツ飲料などで塩分やカリウムの補給を心がける」「胃腸に優しい食べ物を摂取する」ことで症状が和らぐこともありますので、お試しください。
皮膚障害
発現率は5%未満とされています。皮膚障害のうち、重症なものは服用から1ヶ月以内に起こりやすいです。
重度の皮膚障害の初期症状として、高熱や目の充血、喉の痛みなどが現れますので、違和感を感じたらお近くの医療機関にご相談ください。
重度の皮膚障害の可能性がある初期症状
- 38度以上の高熱
- 痛みを伴うひどい口内炎
- 全身にあらわれる赤い斑点や水ぶくれ
- 唇のただれ
- まぶたの腫れ
- 目の充血
- のどの痛み など
低血糖
低血糖は血糖値が低くなりすぎた状態を指します。低血糖状態が続くと、意識を失うこともありますので、初期症状が見られたら早めに対応することが大切です。
低血糖の初期症状としては、「冷や汗や手指の震え」「意識が朦朧とする」「目がかすむ」などが挙げられます。症状を軽くするための方法として、「糖分の摂取」があります。
砂糖が入っている飴やジュース、ブドウ糖が含まれている食べ物を摂るように意識しましょう。
また、低血糖が起こったら自動車運転などの機械の操作は危険な事故につながる可能性がありますので避けてください。
低血糖の初期症状
- 不安感
- 脈が速くなり、動悸を感じる
- 意識がもうろうとする
- 冷や汗
- 吐き気
- 目のかすみ
- 頭痛 など
網膜症
網膜症は、視力低下や色覚異常をきたす疾患です。
「物が見えにくくなった」「物が欠けて見える」「色がわかりにくくなった」などの違和感を感じたら要注意です。
プラケニルを長期間服用する場合は、眼の検査を定期的に受けることが大切です。
プラケニル服用中の眼科検査必要性
なぜ眼科検査をする必要があるの?
プラケニルは、長期間服用していると「網膜症」がまれに現れることがあります。
過去に網膜症になったことのある方、網膜症に現在かかっている方は薬剤を服用することができませんので、まず最初に眼科検査を受ける必要があります。
そこで、網膜症がないか確認した上で、問題なければプラケニルでの治療を開始していきます。
検査の頻度
一度、網膜症がないことを確認した後も定期的に検査を受けることが重要です。
目に異常が起こっていた場合、早めに気がつく必要がありますので、少なくともプラケニルで治療を継続している間は年に1回を目安として検査を行いましょう。
ただし、「長期間プラケニルを使用している患者」「肝臓や腎臓の機能が低くなっている患者」「視力障害がある患者」「高齢の方」など患者さんによっては年1回以上検査を受けることが推奨される方もいますので、眼科医の指示を仰いでください。
先発薬とジェネリック
医薬品は薬を作った会社が約10年ほど販売特許を持っていますが、その後はジェネリック医薬品が発売されます。
ジェネリック医薬品は、先発医薬品と同じ有効成分を同じ量含んでいる、効果も安全性も同じことが確認された薬剤ですが、費用が先発医薬品よりも安くなっていることが特徴です。
プラケニルは、2010年に発売された薬剤であり、すでにジェネリック医薬品も発売されています。費用面で治療の不安を抱えている方はジェネリック医薬品を購入することがおすすめです。
また、オンライン診療や個人輸入サイトを使用で購入すると、診察費用や薬剤費用がさらに抑えられるケースもあります。
<先発医薬品>
●プラケニル
商品名 | プラケニル |
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有効成分 | ヒドロキシクロロキン |
価格 | 皮膚エリテマトーデス、全身性エリテマトーデス |
用法用量 | 200mgもしくは400mgを1日1回食後に経口投与します。 1日の投与量はブローカ式桂変法によって求められる理想体重に基づいて決定されます。 |
メーカー | 製造販売元:サノフィ 販売元:旭化成ファーマ株式会社 |
<関連商品①>
●ヒドロキシクロロキン【プラケニルジェネリック】
ヒドロキシクロロキン【エイチスクイン】は、全身性エリテマトーデス・皮膚エリテマトーデスの治療薬プラケニルのジェネリック医薬品です。
抗炎症作用、免疫調節作用、抗マラリア作用、関節リウマチ、小児リウマチ、その他の膠原病の病状を改善するためにも用いられます。
ヒドロキシクロロキンは、日本でも昔使用されていた抗マラリア薬「クロロキン」を改良し開発された医薬品です。
クロロキンは目の網膜障害という副作用が問題となって販売中止になりましたが、ヒドロキシクロロキンは網膜障害に対する副作用発生率が低くなり安全性が高くなりました。
商品名 | ヒドロキシクロロキン【プラケニルジェネリック】 |
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画像 | |
一般名 | ヒドロキシクロロキン硫酸塩200mg/400mg |
価格 | 200㎎:1錠39円~ 400㎎:1錠64円~ |
メーカー | Johnlee Pharmaceutical Pvt Ltd(ジョンリー ファーマシューティカル) |
購入ページ | ヒドロキシクロロキンの購入はこちら |
新型コロナウイルスとの関係性
プラケニルの有効成分である「ヒドロキシクロロン」は、新型コロナウイルスの症状を改善する可能性があるとして、世界中の医療現場で多く使用されていました。
しかし、コロナ治療のために「ヒドロキシクロロキン」が投与された患者で、QT延長、トルサード・ド・ポアント、失神、心停止、突然死といった、生命を脅かす副作用の報告が増加しました。また、「ヒドロキシクロロキン」と抗生物質の「アジスロマイシン」を併用して投与された患者の多くで心拍の異常が見られたとの報告もあります。
現在、コロナ治療薬として、「ヒドロキシクロロキン」は認可されていないため、新型コロナウイルス感染症にプラケニルを使用する場合は、添付文書をしっかりと読んだ上で慎重に治療を進めることが大切です。
プラケニル(ヒドロキシクロロキン)に関するよくある質問
- Qプラケニルの服用を忘れてしまった場合にはどうしたら良いでしょうか?
- A
服用を忘れてしまった場合は、気がついた時点で服用してください。決して2回分をまとめて一度に服用しないでください。
1日1錠もしくは1日2錠服用している患者さんは、次の服用時間に1回分を服用します。
1日1錠と1日2錠を交互に服用している患者さんは、次の服用時間に、忘れてしまった時の量(1錠か2錠)を服用します。
- Q解熱鎮痛薬とプラケニルを一緒に飲んでも良いですか?
- A
一緒に飲んでも問題ありません。過去、一緒に服用したことによる相互作用は報告されていないためです。
しかし、一部の解熱鎮痛薬は、全身性エリテマトーデス(SLE)で起こっている症状の緩和にも用いられることがありますので、プラケニルと同じような効果をもたらし、過剰摂取になってしまう恐れもあります。
心配な場合は、お近くの医療機関もしくは主治医に相談してみると良いでしょう。
解熱鎮痛薬ではありませんが、糖尿病治療薬のインスリンと一緒に服用すると、低血糖の副作用が出やすくなるため、併用注意薬として指定されています。
他にも、抗てんかん薬と一緒に飲むと抗てんかん薬の効果が弱まってしまうため、注意が必要です。
- Q以前より体重が増えたのですが、プラケニルの服用量は変わりますか?
- A
プラケニルは患者さんの身長をもとにした理想体重によって服用量が決まります。
体重は服用量に影響せず、性別と身長によって規定されるので、心配しなくて問題ありません。
- Qプラケニル服用中にインフルエンザの予防接種は受けても良いですか?
- A
予防接種を受けることは可能です。ステロイドや免疫抑制薬は予防接種を受けることが難しいので、心配される患者さんも多いかと思います。
プラケニルが分類される免疫調整薬は患者さんの正常な免疫反応にはほとんど影響しないため、問題ありません。
むしろ、全身性エリテマトーデス(SLE)の患者さんでは従来、感染症にかかりやすいため、インフルエンザワクチンを事前に打っておく方が良いでしょう
最後に
プラケニルは全身性エリテマトーデスに使用される薬剤です。
服用することで皮膚症状や倦怠感など疾患の症状を改善してくれますが、網膜症の副作用が発現するリスクがあります。
プラケニルは長期間服用しなければならない薬剤ですので、少なくとも年1回を目安に定期的な眼科検査を心がけましょう。
出典
SLE.jp 治療中の方へ プラケニルについて
MedicalNote 全身性エリテマトーデス