良質で最適な睡眠時間が大事!健康な生活習慣と改善法を解説

良質で最適な睡眠時間が大事!健康な生活習慣と改善法を解説 睡眠

睡眠が担う役割

睡眠が担う役割画像

睡眠は人間が生きていくうえで欠かせない時間です。しかし、睡眠について詳しく知る機会は意外とないものです。これまで睡眠に関する研究は数多くされてきており、近年急速に睡眠に関するメカニズムが解明されてきています。本日は睡眠についてご紹介します。

脳のメンテナンス

そもそも睡眠は人間の体にとって必要なものなのでしょうか?人間が眠っているとき、脳は休息しています。人間が起きている間、脳を常に動かしている状態であるため、眠っている間に情報を遮断することで脳を休ませることができるのです。脳の老廃物の1種に「アミロイドβ」というたんぱく質がありますが、これが溜まるとアルツハイマー病の原因になるとされています。しかし、睡眠はこの「アミロイドβ」を脳脊髄中に洗い流す役割があります。

記憶の定着

睡眠には記憶を定着させる役割もあります。学習した記憶も睡眠を十分とることで定着するため、受験勉強の時期などには睡眠をしっかりととる方が学んだことが頭に残りやすくなります。

免疫力の向上

人が眠る前~睡眠直後には、「メラトニン」というホルモンが多く分泌されています。この「メラトニン」は免疫力を向上させるTリンパ球の生成を促進する作用があるため、睡眠をしっかりととっていると風邪をひきにくくなったり、感染症に対する治癒力があがるとされています。

ホルモンバランスの調整

睡眠はホルモンバランスの調整にも関与しています。「よく寝る子は育つ」という言葉がありますが、睡眠中は成長ホルモンが多く分泌されるため、骨や筋肉の成長もはやくなります。一方で幼少期から睡眠不足だったり、夜型の生活を続けていると十分成長しない可能性もありますので、子供には適切な睡眠時間を与えることが大切です。

最適な睡眠時間による良質な睡眠

最適な睡眠時間による良質な睡眠画像

睡眠は人間の体にとって重要な役割を果たしています。しかし、どのくらい睡眠時間を取ったらよいのでしょうか?

実は睡眠時間は長すぎても短すぎてもよくありません。

110万人以上の男女を対象に実施された試験で、睡眠時間と死亡リスクの関係性を調査したものがあります。結果、死亡リスクは睡眠時間7時間が最も少なく、短くなるにつれて、そして長くなるにつれて死亡リスクが上昇していくU字カーブとなっていることがわかりました。

参考リンク先

睡眠リズムラボ「図14」

また、別の研究で睡眠時間が10時間以上の方では心理的なストレスを感じている割合が多い傾向にあり、睡眠時間が5時間未満の方はBMIが高い傾向にありました。睡眠時間が長くても短くても生活習慣病の発症に関与する可能性があるため、7時間程度の睡眠が適切と考えられています。

睡眠のメカニズム

睡眠のメカニズム画像

人間が眠っている間、「レム睡眠」「ノンレム睡眠」を繰り返すことが分かっています。「レム睡眠」とは、脳が活発に動いている状態であり、この間に記憶の定着がおこなわれています。レム睡眠中に目がピクピクと動くことがありますが、体は休まっています。一方「ノンレム睡眠」とは、脳が休んでいる状態であり脳のメンテナンスや休息にとって重要な時間です。

睡眠の初期は「ノンレム睡眠」です。睡眠1時間ほどで最も深い位置に到達し、その後眠りがだんだんと浅くなっていきます。徐々にレム睡眠に移行しますが、その後再びノンレム睡眠、レム睡眠、と3~5回ほど繰り返すとされています。

参考リンク先

ドリエル眠りの種類 ~レムとノンレム~

年齢による睡眠の変化

年齢による睡眠の変化画像

最も理想的な睡眠時間は7時間ほどとされる一方で、睡眠時間というのは年齢によって変わっていきます。年齢を重ねるにつれて長く眠れなくなるため、10歳までは8~9時間ほどであった睡眠時間が、65歳になると6時間程度になるとされています。しかし、このように睡眠時間が減っていくのは自然なことであり、無理に抗う必要はありません。理由の1つとして、加齢に伴い、眠りを促進する「メラトニン」ホルモンが減少することが分かっています。そのため、65歳を超えて8時間眠れなくても悩まず、日中眠くなってしまうなどの症状がない場合は、医療機関を受診する必要はないでしょう。もし、睡眠が短すぎることで「朝起きた時によろけてしまう」などの支障をきたしている場合は、医療機関を受診し、必要に応じて睡眠薬の服用なども検討してみてもよいかもしれません。

睡眠薬は多くの種類があり、最近では長く服用しても依存性や認知機能低下のリスクが少ない「オレキシン受容体拮抗薬」「メラトニン受容体作動薬」のような薬剤も出ています。ご自身にあった薬剤を使うことで、不眠症状は改善するかもしれません。

睡眠薬の一覧はこちら

睡眠時無呼吸症候群といびき

睡眠時無呼吸症候群といびき画像

睡眠は、「自分で十分とれている」と思っていても、質があまりよくないことがあります。例えば、睡眠時無呼吸症候群は、不眠につながりやすい疾患の1つとされています。睡眠時無呼吸症候群とは、寝ている間に無呼吸症状が繰り返し起こり、その結果昼間に眠くなってしまう疾患です。睡眠時無呼吸症候群の患者はイビキをかきやすいとされていますが、イビキは睡眠中に喉が狭くなり空気が通りにくくなることで起こります。さらに喉が狭くなると呼吸が止まる無呼吸を繰り返しますが、太っている人や顎が小さい人などで発症しやすいとされています。

無呼吸状態では酸素が不足してしまいます。熟睡感のある睡眠につながらず、いくら寝ても昼間眠いという状況が引き起こされるのです。さらに、心臓や血管などに負荷がかかり、高血圧や脳卒中のリスクが上昇します。しっかりと睡眠をとることは日常生活だけではなく、今後の疾患リスクにもかかわってくるため、「睡眠時無呼吸症候群かも?」と思う方は専門の医療機関を受診してみることをおすすめします。

朝型と夜型とは

朝型と夜型とは画像

睡眠時間は7時間が適切とされていますが、個人差があります。同じように、人によって朝が得意なパターンか夜が得意なパターンかも異なっています。朝型・夜型かは生まれつきの体質によって違うとされています。朝型の明確な定義は決まっていませんが、朝型の方は早寝早起きのことが多く、午前中からアクティブに動くことが苦になりません。一方で、夜型の方は遅寝遅起きになりやすく、夜になればなるほど活動的になっていきます。一般的に20代などの若者は朝が苦手な割合が高いとされていますが、年齢を重ねるにつれて朝型になっていきます。

朝型・夜型どちらがよいということはありません。どちらであっても生活リズムがしっかりとしていて、体のリズムに合わせた生活をしていれば問題はありません

快眠するなら生活習慣を見直そう

快眠するなら生活習慣を見直そう画像

睡眠は大切とわかっていても、「最近夜眠れなくなってきた」「眠れるが日中ぼーっとする」「朝早く起きすぎてしまう」といったような不眠症状でお悩みの方も少なくありません。不眠になると、翌日の学校や仕事などに支障をきたしてしまうことにもつながりかねません。質のよい睡眠を取り戻すためにも、眠れない方は不眠を改善する方法を試してみてはいかがでしょうか。

食事

質のよい睡眠に規則正しい食事は大切です。朝ご飯をきちんと食べないと体に栄養が足りず、脳が一日の活動を始めることができません。すると、生活リズムが崩れ、夜眠れなくなるなどの症状が出てくる可能性があります。また、夜寝る直前にカフェインをとると脳が覚醒してしまい、寝つきが悪くなります。アルコールを眠れないタイミングで使用する人もいますが、危険です。アルコールは一時的に眠りをもたらすものの、深い眠りを妨げてしまうため夜中に目を覚ましやすくなります。寝る前にのどが乾いたら、水やあたたかいハーブティーを飲むようにしましょう。

運動

運動をすると体が疲れるため、寝つきがよくなり質のよい睡眠をもたらします。毎日運動しなくても週に2~3回程度、軽めの運動をするとよいでしょう。無理はせず、体をリフレッシュさせる感覚で取り組みましょう。

環境

質のよい睡眠には寝るときの環境も非常に重要です。例えば、寝る前までスマートフォンを見ているとブルーライトが脳を覚醒させ、寝つきにくくなります。また、寝るときに照明などに明かりがあると深い睡眠を妨げてしまうリスクもあります。明るさだけではなく、部屋が乾燥しすぎていないか、湿度が高すぎないか、室温が高すぎないか、低すぎないかは意識して改善してみると良いでしょう。

よくある質問

よくある質問画像
Q
お風呂は睡眠にとって良いのでしょうか?
A

湯船にゆっくりとつかることは質のよい睡眠をもたらす可能性があります。40度くらいのお湯に30分ほどつかると徐々に深部体温が上昇し体の血行が良くなります。体温が下がるタイミングで眠りにつくと、リラックスしながら十分な睡眠をとることができます。加えて、お風呂後にラベンダーやジャスミン、ローズなどのよい香りをかぐとリラックス効果が高まるとされています。

Q
子どもの夜型はそのままにしてもよいのでしょうか?
A

スマートフォンやPCの普及によって夜型の子供は増えています。伴って睡眠時間も減少していますが、成長の遅れや注意力の低下を引き起こすリスクがあります。成長ホルモンが多く分泌されている子供の時期こそ適切な睡眠の大切さを伝えてあげることが重要です。

最後に

まとめ

睡眠は人間の体にとって非常に重要な役割をもたらしています。睡眠をとっている間に、脳を休ませることができ、記憶の定着も促進することができます。7時間程度の睡眠が毎日とれれば良いですが、日本では不眠に悩む方も少なくありません。しかし、不眠は生活習慣の改善で症状がよくなるケースもあります。また、生活習慣の改善とともに不眠症治療薬を使用することで効果的に質のよい睡眠をとれるようになることもあります。十分な睡眠は疾患リスクや死亡リスクを下げますので、今後の健康な生活のためにも睡眠の習慣は大切にしていきましょう。

出典

国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 睡眠・覚醒障害研究部

睡眠リズムラボ

The Association Between Habitual Sleep Duration and Mortality According to Sex and Age: The Japan Public Health Center-based Prospective Study

独立行政法人国立病院機構 福岡病院 睡眠時無呼吸症候群

タイトルとURLをコピーしました