ピロカルピンとは

ピロカルピンとは、アラガン社が開発した薬剤で、経口薬としては「シェーグレン症候群」、点眼薬としては「緑内障」の治療薬として使用されています。ムスカリン受容体を刺激することで作用を発揮しますが、新たに老眼を改善する効果が発見され、2021年10月アメリカで「老眼の治療薬」として承認されました。「VUITY」という商品名が付けられており、老眼に使用できる新たな目薬として世界から注目されています。
老眼に対する効果

老眼とは、近くのものを見るときにピントを合わせられなくなる症状です。主な原因は加齢とされており、老化によって水晶体の弾力性が失われていくと近くのものが見えにくくなるとされています。年齢を重ねるうちに新聞や本が読みにくくなり、気づく方も少なくありません。
このような老眼に対してピロカルピン(VUITY)はどのような効果が認められているのでしょうか?
*1ピロカルピンは、40~55歳の老眼患者323人を対象として試験を実施しています。ピロカルピンを有効成分として含む目薬を点眼する群163名と、有効成分が含まれていない目薬を点眼するプラセボ群160名に分けて効果を判定しました。1日1回毎朝投与を行い、30日間継続してもらいました。結果、近距離視力の改善が認められた人の割合は、ピロカルピンを投与していた群30.7%、プラセボ群8.1%でした。ピロカルピン投与群の方が22.6%改善した人の割合が高かったため、効果の高さが認められています。
また、効果は点眼してから15分ほどであらわれ、6時間ほど持続することが認められています。
<関連商品①>
●ピロカルピンイソプト1%点眼液
ピロカルピンイソプト1%点眼液は、ノバルティスファーマ社で作られている緑内障治療薬です。瞳を小さくし眼圧を下げる効果があります。有効成分としてピロカルピン塩酸塩を溶液1mlに10mg含有しています。アメリカでは1.25%が老眼治療薬として承認されています。
商品名 | ピロカルピンイソプト1%点眼液 |
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有効成分 | 有効成分ピロカルピン塩酸塩が10mg含有されています。 他の成分は、塩化ベンザルコニウム、ホウ酸、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウムなど |
価格 | 15ml:1本あたり2,560円~ |
メーカー・ブランド | Novartis(ノバルティス)社 |
URL | ピロカルピンイソプト1%点眼液の購入はこちら |
<関連商品②>
●ピロカルピン点眼液2%
ピロカルピン点眼液2%は、インドのFDC社でつくられた薬剤です。日本で緑内障治療薬として処方されるサンピロ点眼薬と同じ成分「ピロカルピン塩酸塩」が含まれております。瞳を小さくし眼圧を下げる効果があります。
商品名 | ピロカルピン点眼液2% |
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有効成分 | ピロカルピン塩酸塩2% |
価格 | 5ml:1本あたり1,060円~ |
メーカー・ブランド | FDC(エフディーシー) |
URL | ピロカルピン点眼液2%の購入はこちら |
目薬以外の老眼治療法

これまで老眼を治療するには手術しかありませんでした。水晶体の弾力性が失われることで老眼は進行するため、人口のレンズを入れる方法が一般的でした。手術を実施すると、視力が劇的に回復するメリットがある一方で、時間がたつと症状が再発してしまうことや、場合によっては手術後に感染症にかかってしまうリスクがあることがデメリットとして挙げられています。また、老眼手術は保険適応外となるため、受けるには多大な費用がかかり、経済的な負担も大きい側面があります。そのため、「VUITY」のような、できるだけ侵襲性の少ない手術以外の治療法が求められています。
ピロカルピンの使用方法

ピロカルピンは1日1回~3回ほど、両目に1滴ずつたらします。点眼後1~2分間は、目を閉じると薬剤が浸透されやすくなります。
点眼後は瞳孔が小さくなり暗黒感が出ることがありますので、その間は危険な作業を行わず安静にしていることをおすすめしています。15分ほどで効果があらわれてきますが、頭痛や目の充血などが起こった場合にはお近くの医療機関を受診してください。
ピロカルピンを使用する際の注意点

ピロカルピンはまだ使用経験が少ない薬剤になりますので、投与にあたっては以下の点に注意しましょう。
過去に過敏症を起こしたことのある方は注意
薬剤には有効成分が含まれており、過去その有効成分や似たような薬剤で過敏症を起こしたことのある方は、ピロカルピン使用に注意が必要です。ひどい場合には、アレルギー反応を起こし、アナフィラキシーショックとなるケースもありますので慎重に投与をしてください。
運転や高いところでの作業などには注意
ピロカルピンは、瞳孔を収縮させる働きを持っています。瞳孔は、目に入ってくる光を調節している部位であるため、ピロカルピン投与直後は視界が暗くなりやすい傾向にあります。運転や高いところでの作業、機械を動かす作業などは事故につながる恐れもあるため注意をしましょう。
コンタクトレンズの装着タイミングに注意
「VUITY」は、コンタクトレンズの上から点眼することは認められていません。「VUITY」を投与した後10分ほど時間をあけると装着が可能となりますので、点眼する際にはコンタクトを外し忘れていないかチェックしましょう。
日本での承認について

現在日本では承認されていません。ただ、ピロカルピン(VUITY)がアメリカで承認されたため、日本で承認される可能性も高いと考えられています。
しかし、まだまだ「VUITY」の使用経験は少ない状況です。「VUITY」は、頭痛や不快感といった副作用が起こる可能性が報告されていますが、このような安全性情報も蓄積されきっていません。そのため、今後製薬会社主導の臨床試験や、医師が執筆した論文などでデータが報告されていくことで、日本での承認の可能性も高くなってくるかもしれません。
現在の国内での購入方法

ピロカルピンを有効成分として含む市販薬は、2024年1月現在販売されていないため、ドラックストアでの購入はできません。「VUITY」を購入するには、病院やクリニックで処方してもらう、もしくは個人輸入サイトから入手する方法となります。
病院やクリニックでの購入を希望される場合、「VUITY」はまだ日本で承認されていない薬剤のため、自費診療で扱っている病院・クリニックを探す必要があります。病院やクリニックでは、初診料や交通費用、薬剤費用がかかってくるため、経済的な観点で費用を抑えたい方は個人輸入サイトでの購入がおすすめです。一方で、「VUITY」の処方後も継続して診察を受けたい場合や、薬剤以外の治療法も考慮したうえで老眼治療を実施していきたい場合は病院やクリニックでの購入が向いているかもしれません。
よくある質問
- Qピロカルピンの第3相試験で、老眼への効果が認められたとのことですが、どのような患者が組み入れられたのでしょうか?
- A
組み入れ条件としては、「老眼鏡がないと日常生活が不便だと感じている方」「明るい高コントラストでの矯正遠距離視力が20/25以上」など、いくつかの基準をクリアした患者が対象となっていました。重度のドライアイ患者や眼球内の手術をしたことがある患者、緑内障の患者は除外しています。
- Q「VUITY」はどのような機序で老眼を改善するのでしょうか?
- A
「VUITY」は眼に入る光を調節する瞳孔を縮小させることで、遠くを見る視力を維持したまま近くの距離の視力を向上させます。瞳孔が小さくなると、目の焦点を当てられる深さが広がり、これまであてられていなかった範囲外に焦点を当てられるようになります。
- Qピロカルピンを投与することで遠くの視力がみえにくくなってしまうことはありますか?
- A
ピロカルピンを投与しても遠くが見えにくくなることはありません。遠くの視力に関わる部位に影響を与えることはほとんどないとされています。
最後に
最後に
ピロカルピンは、ムスカリン受容体を刺激することで「緑内障」や「シェーグレン症候群」に対する効果が認められている薬剤です。さらに、「老眼」への効果も発見され、アメリカでは2021年10月に承認を受けています。
老眼は年齢を重ねることで発症リスクが上がる疾患で、だんだんと近くのものが見えにくくなっていきます。高齢化社会が急速に進む日本では、老眼患者も増加していくことが見込まれています。しかし、老眼の根本的な治療法は手術しかなく、感染症や費用増大のリスクから簡単に治療できる方法が求められていました。このような中でアメリカで承認された「VUITY」は、目薬という簡単な方法で老眼の改善効果が期待されているため、今後老眼患者の1つの治療選択肢になっていくことでしょう。
現在は保険適応外のため、購入できる方法は限られていますが、「最近近くのものが見えにくくなった」とお悩みの方はピロカルピンを検討してみてください。
出典
参天製薬 遠視・老眼とは
みんなの介護 介護の教科書
*1 日経メディカル 新規の老眼治療用点眼薬、第3相で有効性示す