ED治療薬に依存性はあるの?
ED治療薬使用している方や検討中の方の疑問の一つに「ED治療薬の依存性」があげられます。
ED治療薬に一度手を染めればもう抜け出せなくなるのではないだろうか。ED治療薬がなければもう勃起することはないのではなかろうか。根拠のないうわさだけが先走りED治療薬に対する誤解が広がっています。
一昔前と比較すると、現在はED治療薬も多く発売され広く普及しています。
使用により沢山の人がその恩恵にあずかっていることも事実です。
ではなぜそのような誤解が生まれたのでしょう。その誤解の種になるのがアルコールやたばこなどではないでしょうか。
確かにこれらの製品に依存性はあります。しかしだからと言ってED治療薬がそうであるとは言い切れません。その誤解を解くためにもまずは依存性について正しい知識が必要です。
一言で依存性と言っても実は依存性には「精神的依存」と「肉体的依存」の2種類が存在します。
今回はED治療薬の長期使用における依存性について精神的依存及び肉体的依存の双方に着目して解説していきます。
精神的依存
もしもED治療薬により精神的依存になるとどのような状態になるのでしょうか?
「精神依存」とは、依存性のある薬を連用すると、次第にその薬が手放せなくなっていく状態を言います。
例えば、ED治療薬を服用している人が、性行為のときにいつも服用していると、次第にそのED治療薬がなければ勃起しなくなってしまう。
ED治療薬がないと不安になり、探し回ったり、わざわざ買いに行ったりするようになる。これが精神的依存の典型的なパターンになります。
毎日のようにED治療薬を使用しているのに、「私は依存症じゃない」と思っている人が少なくないのが実情です。
依存症は本人の自覚がなくても進行していく病気です。
それでは実際問題ED治療薬は精神的依存性のある薬なのでしょうか?答えは「NO」です。どのED治療薬にも薬自体に依存性を生じる物質は入っておりませんのでED治療薬を続けることで精神的依存になることはありません。
ED治療薬の成分は、主に血管を拡張させて血流を増加させ、勃起を促進する働きをします。これらの成分が脳に直接影響を与えるわけではありません。
しかし、ED治療薬の使用によって得られる成功体験は、「心理的な影響」を生む可能性があります。
心理な依存は、ED治療薬に頼ることで得られた成功体験からくるものです。一度でもED治療薬を使用し、勃起が改善された経験があると、逆にED治療薬なしでは性行為が成功しないという不安が生じやすくなります。
これにより、ED治療薬に対する心理的な依存が形成され、薬に頼り切ることで自己価値観が左右される可能性があります。
ED治療薬への過度な依存が進むと、本来の治療目的から逸脱し、逆に症状の悪化を引き起こす可能性があります。ED治療薬を必要とせずに性行為を行う自信を得ることができない限り、治療の本質的な成功は難しくなります。
ED治療においては、薬での治療だけでなく、心理的なケアが同時に重要となります。患者はED治療薬の使用に依存することなく、自己肯定感を築くために心理的なサポートが必要です。
心理療法やカウンセリングを通じて、不安や自己評価の問題に取り組むことが大切です。
肉体的依存
もしもED治療薬により肉体的依存になるとどのような状態になるのでしょうか?
「肉体的依存」とは身体的依存とも呼ばれ、薬を継続的に摂取した状態から、急に薬の摂取をやめると、離脱症状(りだつしょうじょう)が身体に現れる状態を言います。
例えば、ED治療薬に対する肉体的依存が生じた場合、毎日使用していたED治療薬を急にやめたことで、頭痛や発汗、イライラなどの離脱症状が現れます。
肉体的依存が悪化してくると、この離脱症状を和らげるためにED治療薬を摂取するという悪循環が生まれます。
肉体的依存に対処するためには、断薬による離脱症状の管理や、代替療法の導入などが行われることで、依存からの脱却が可能となります。
それでは実際問題ED治療薬は肉体的依存性のある薬なのでしょうか?答えは「NO」です。精神的依存同様どのED治療薬にも薬自体に、肉体的依存性を生じる物質は入っておりませんのでED治療薬を続けることで肉体的依存になることはありません。
ED治療薬には、シルデナフィル(バイアグラ)、タダラフィル(シアリス)、バルデナフィル(レビトラ)などがあります。
これらのED治療薬は、勃起を阻害する酵素である「PDE-5(ホスホジエステラーゼ タイプ5)」を抑制することにより、陰茎部位における血流を増加させ、勃起を助けます。
しかし、これは使用した時のみの一時的な効果であり、ED治療薬の摂取を止めると通常は身体が元の状態に戻ります。
依存性を理由としてそれなしではいられなくなることもありません。
ED治療薬はあくまで一時的なサポートに過ぎず、基本的な健康状態やライフスタイルの改善がEDの治療において最も大切です。
ED治療薬は飲み続けると効果が薄れる?
「薬剤耐性」と言う言葉を耳にしたことはありますか?薬剤耐性とは、ある薬剤を連続して使用しているうちに、その効果が得られなくなることです。
例えば、痛み止めの薬を最初は少量で効果があったのに、使用を繰り返すにつれて同じ量を投与しても効果が得られなくなることがあります。これはその痛み止めに対する耐性が体内でできてしまったためです。
薬剤耐性は、脳内の神経伝達物質レベルでの調整によって生じます。
例えば、オピオイド系(麻薬)鎮痛薬を繰り返し使用すると、脳内のオピオイド受容体の数が減少したり感度が低下することで耐性が形成されます。
つまり薬剤耐性とは、体がその薬剤の作用に順応し、効果が現れにくくなる状態のことをいいます。依存性のある薬剤ほどこの傾向が強く現れます。
これが薬剤耐性になりますがED治療薬についても同じことが言えるのでしょうか?
近年、ED治療薬の中でも代表的なものとされるバイアグラは、一時的な性的機能の向上をもたらし、多くの男性に安心感を提供してきました。
しかし、一部で「バイアグラを継続的に使用すると効果が薄れる」といった誤解が広がっています。この誤解の背後に潜む理由と、その真相について解説します。
まず、バイアグラには他のED治療薬と同様に、耐性が生じる可能性があるという誤解があります。
しかし、事実としては、バイアグラは通常、耐性を引き起こすことはありません。
これは、バイアグラの作用機序が一時的な血流の増加に基づいており、長期的な摂取による耐性の発生はないからです。
この誤解が生まれた主な原因の一つは、バイアグラが性欲を引き起こす薬剤であるという誤った認識からきています。
一部の人々は、「性欲を刺激する薬は耐性がつきやすい」という一般的な概念から、バイアグラにも同様の効果があると考えがちです。
しかし、バイアグラは単なる性欲を引き起こすものではなく、血流を増加させて勃起を促す薬であることをまず理解することが重要です。
そしてもう一つの原因は、バイアグラの使用方法の不安定性に関連しています。一部の使用者は、ある時は効果があり、別の機会では効果がないと感じることがあります。
しかし、これはバイアグラ自体の耐性ではなく、使用方法が安定していない場合の効果の不安定性に起因しています。バイアグラは食事の影響を大きく受けるため空腹時の条件下での摂取が必要であり、適切な使用法を守ることが重要です。
最後に、バイアグラの薬効の相対的な低下が感じられる場合でも、これは耐性によるものではなく、年齢に伴う身体の変化によるものと考えられます。
長期的なスパンでの使用において、身体の老化による性機能の低下が影響を与える可能性があります。
総じて、バイアグラは適切な使用法を守り、医師の指導に従う限り、通常は耐性が生じにくく、効果が薄れるという心配はほとんどありません。正確な理解と適切な使い方によって、男性の性機能をサポートする有効な選択肢であると言うことを覚えておきましょう。
飲み続けた場合のメリット・デメリット
ED治療薬は連続して長期にわたり使用しても「耐性」も「依存性」も付かないことは解説ししました。これで安心して使用ができますね。はたして本当にそうでしょうか?
ED治療薬は性的機能に関する問題に対処するために広く使用されており、多くの男性にとって一時の安心感をもたらしてくれます。
しかし、これらのED治療薬を長期間にわたり飲み続ける場合、メリットとデメリットが存在する事をご存じでしょうか?
次は、ED治療薬を飲み続けた場合のメリットとデメリットに焦点を当て、そのバランスを理解する上での重要な要素について解説していきます。
ED治療薬を飲み続けた場合のメリット
ED治療薬を使用する上で代表的なメリット5選をご紹介します。
①勃起力の向上
これは言わずもがなED治療薬に期待する代表的な効果になります。そもそもこの効果がなければ飲む意味はありません。
その位服薬により得られるメリットとして最も重要な効果になります。
②賢者タイム(不応期)の短縮
不応期とはどの様な状態を指すのでしょうか。男性が性的な刺激によって達した後、しばらくの間性的興奮から離れてしまう期間のことを「不応期」と呼びます。これは射精後の一定期間、男性ホルモンの分泌量が低下するために起こります。
不応期では、身体的には勃起できなくなり、精神的にも性的欲求が減退してしまいます。この“ふらつき”を表す言葉として「賢者タイム」という俗語も存在します。医学用語では射精後不応期と表記されることが多いですね。不応期に入ると、同じ性的刺激を加えても身体はまるで反応しません。これは体内の性ホルモン値が一定レベルまで回復する必要があるため。
つまり性欲や性的能力が完全にシャットダウンするわけです。不応期に要する時間は個人差が大きいものの、数分から1時間ほどが一般的です。この時間を内分泌系がリセットする時間という意味で「リフラクトリーピリオド」とも呼ばれています。年齢が高くなるほどに長くなる傾向にあるとされます。
性的刺激に対する身体の反応能力が失われますが、ED治療薬の使用によってその時間を短縮できることが報告されています。
これはED治療薬に含まれる有効成分が、陰茎への血流を高め勃起を助ける働きに加え、射精後のホルモン変化を抑制する効果があることが関係していると考えられます。
年齢が高くなるほど長引きがちな賢者タイムですが、ED治療薬を上手く利用することで、より早期に次の性機能を取り戻すことが可能になるわけです。性的不能への不安を和らげるだけでなく、より充実した性生活を送る助けにもなりうるでしょう。
③早漏改善を期待できる
ED治療薬には、陰茎への血流を高め硬度を向上させる効果に加え、射精に至るまでの時間を延長する「早漏改善」効果もあることが期待されています。
性的不能への不安を和らげるとともに、早漏も改善してくれるED治療薬。メリットを最大限享受できる使用法を心得ておくことが大切でしょう。
④普段よりも大きくなる可能性がある
EDに悩む男性が増えるにつれ、治療薬の使用も一般的になりました。
勃起を助け血流を増やすことで正常な勃起を取り戻す効果はよく知られていますが、実はサイズが普段より大きくなる可能性もあるのです。
加齢と共に多くの男性が経験するのが、全盛期と比べて勃起時の大きさが小さくなってしまうこと。これは勃起に関わる海綿体への血流が低下しているためです。
ところがED治療薬の使用によって海綿体への血流が改善することで、本来の大きさまで膨張できるようになるのです。むしろ全盛期以上の“大きさ”を実感できるようになる人も少なくありません。
効果の持続時間にも個人差がありますが、ED治療薬を上手に活用することで、サイズの面でも思いがけないメリットを得られる可能性があるのです。ただし過剰な期待は禁物で、個人差が大きい点には注意が必要です。
⑤自信を取り戻すきっかけになる
より強い勃起力を手に入れ性生活が円満になると男としての自信にもつながります。
結果として仕事やプライベートの満足度の向上にもつながる副次的な効果も期待できます。
ED治療薬を飲み続けた場合のデメリット
ED治療薬は多くの男性に効果を発揮していますが、持つデメリットも正しく理解しておかなければなりません。
特に副作用の可能性、生活習慣病悪化への影響、過剰依存の心理など、注意すべき点は少なくありません。
副作用
- 頭痛
- めまい
- 消化器系の症状
- 高血圧の症状を悪化させるリスク
上記に加えてED自体の原因でもある生活習慣病に対する注意が必要です。
ED治療薬を過信するあまり根本治療をしないと全体症状の悪化にもつながりかねません。
精神面での依存によっても問題が生じやすいでしょう。薬なしには性行為ができないとの過剰な思い込みは避けたいところです。
ED治療薬に関するよくある質問
- QED治療薬を飲み続けるといきにくくなるって本当ですか?
- A
ED治療薬を飲んでも感度が鈍ることはありません。
むしろ、勃起を維持しやすくなることで性行為の時間が長くなり、いきやすくなる効果が期待できます。
ただし、もともと早漏気味だった人は、勃起が続く時間が長くなるために射精までにかかる時間が伸び、いきにくく感じることがあるかもしれません。
ですが、これは感度が鈍ったためではなく、逆に以前に比べコントロール力がついた結果です。
シアリスの効果が正しく発揮されているということなので、いきにくいと悩む必要は全くありません。
要するに、シアリスは勃起を助けて性行為を快適にする薬です。
感度を鈍らせるなどの心配は無用で、むしろ性生活の質を高めてくれることが期待できる良薬なのです。
- QED治療薬は毎日飲んでも問題ありませんか?
- A
毎日飲んでも特に問題はありません。
ED治療薬の添付文書にも記載があるように、ED治療薬は毎日服用しても効果が弱まったり、副作用が強く出たりすることはありません。
ただし、服用の間隔には注意が必要です。ED薬を服用した後、次に服用できるまで24時間空ける必要があります(シアリスは腎機能に障害のある方は48時間空ける)。
この間隔を守らないと血中濃度が高くなり過ぎ、副作用のリスクが高まります。
しかし、正しい間隔を守っていれば、ED治療薬は毎日でも持続的に効果が得られます。性生活の頻度に合わせて適宜服用していただいて構いません。
必要な分だけ服用し、効果の持続にも目を向けつつ上手に活用していきましょう。
- QED治療薬を使用したら、もう薬なしでは勃起できなくなると聞いたのですが本当ですか?
- A
ED治療薬には依存性がなく、むしろ本来の勃起能力を取り戻すきっかけとなる場合があります。
ストレスや不安感など心因性のEDの人がED治療薬を使用することで、数回の性行為を経験することができれば自信がつきます。
そうすることで、ED治療薬を使わなくても正常に勃起できるようになるケースが少なくありません。
ED治療薬そのものに勃起能力を弱めたり依存を生み出したりする作用は全くありません。
むしろ本来の勃起機能を取り戻す効果を発揮する場合がある好薬です。
- QED治療薬を使い続けると性機能が低下すると言うのは本当ですか?
- A
ED治療薬を使い続けることで性機能が低下するということは事実ではありません。
ED治療薬は使用している間は勃起機能を改善する作用がある薬です。使用をやめれば本来の勃起能力に戻ります。したがって、ED治療薬を使い始めたからといって性機能が低下するということはありません。
むしろ加齢に伴う自然な性機能の低下に対して、ED治療薬は補助的な効果を発揮します。ED治療薬を使い始めたことで性機能の低下が加速することはありません。
性機能の低下自体は年齢と共にゆっくりと進行しますが、そのペースをED治療薬が速めているわけではありません。適切に使用していればむしろ性生活の質は維持・向上できると考えられます。
- Q過度の緊張によるEDの改善にも効果はありますか?
- A
過度の緊張が原因で起こっているED(勃起障害)には、精神安定剤の使用が効果的です。
特に若い世代でよくある「自慰では勃起するがパートナーがいると勃起できない」といった緊張性のEDは、精神安定剤によって気持ちをリラックスさせることが治療の近道です。
性行為時の強い不安や緊張が勃起を妨げている場合、バイアグラ等のED治療薬を飲んでも十分な効果が得られません。
精神安定剤により気持ちのストレスを和らげることが大切なのです。
性行為が数回うまくいけば、徐々に自信がつき、精神安定剤なしでもEDは改善していきます。
精神的な要因のEDには薬による治療も重要な選択肢となります。
ED治療薬の依存性や耐性まとめ
まとめ
ED治療薬は多くの男性にとって有効な治療法ですが、依存性や耐性への誤った理解から、適切な使用を妨げている場合があるでしょう。ここで正しく知っておきたいのは次の諸点です。
まず依存性ですが、身体的依存の可能性は低い一方で、精神的に過度に頼ってしまうことは起こり得ます。効果への信頼感から薬以外では性行為ができないとの思い込みが生じやすいのです。
また耐性が生じ薬効が弱まるとの疑念もあるでしょうが、実際には飲食や生活習慣の影響など別の要因が関係していることがほとんどです。むしろ正しい使用で効果は持続するといえます。
過度な依存や誤解を避けることで、ED治療薬のメリットを長期に享受できる可能性があります。
出典
バイアグラ錠25mg/50mg/ODフィルム25mg/50mg添付文書
シアリス錠5mg/10mg/20mg添付文書
バルデナフィル錠10mg/20mg「トーワ」添付文書
ED診療ガイドライン「第3版」