利尿剤の効果

利尿剤とは、尿の量を増やすことで、体から水分を排出する薬剤です。水分が全体的に減ると、血圧が下がるため、高血圧や心不全の改善効果が期待されています。
同時に、水分を排出するときに一緒に塩分も出るため、むくみの改善効果も実感することができます。
利尿剤の作用や種類についてもっと知りたい方は、以下のページで詳しく紹介していますのでご覧ください。
利尿剤にダイエット効果はある?

利尿剤は、水分を減らすことに伴ってむくみが改善します。
結果、体重の減少につながりますが、このようなむくみの改善を第一の目的として使用してしまうと、本来とは異なった使い方となってしまいます。
利尿剤は基本的に血圧を下げるために処方される薬剤ですので、ダイエット薬として多量に服用してしまうと、体にとって大事なビタミンやカリウムも一緒に排出されてしまうため、注意が必要です。
現在は、副作用が少ない薬剤も出てきてはいるものの、ダイエットを目的に使用するのは危険も伴いますので、避けましょう。
利尿剤以外で、食事の吸収を抑える薬剤や、満腹中枢を刺激する薬剤がありますので、気になる方は以下のページよりご覧いただけます。

利尿剤は市販で購入できる?
利尿剤は、「ループ利尿薬」や「カリウム保持性利尿薬」「サイアザイド系利尿薬」など多くの種類が出ています。
しかし、これらの利尿剤は、ドラッグストアなどの市販で購入することはできません。
利尿薬 | 作用機序 | 副作用 |
---|---|---|
ループ利尿剤 | ヘンレループ上行脚でのNa-K-Cl | 低カリウム血症、低カルシウム血症、低マグネシウム血症、高尿酸血症、退社性アルカローシス |
カリウム保持性利尿薬 | 集合管でのミネラルコルチコイド受容体阻害 | 高カリウム血症、女性化乳房、多毛症 |
サイアザイド系利尿薬 | 遠位尿細管でのNa-Cl共輸送体阻害 | 低カリウム血症、高カルシウム血症、高尿酸血症、代謝性アルカローシス |
利尿剤は、人によっては作用が強く出てしまう薬剤であるため、入手する方法としては、病院で処方箋をだしてもらう、もしくは個人輸入での購入となります。
病院での処方箋で薬剤を購入する場合、定期的な通院が必要となります。
忙しく日中働かれている方や、交通費が気になる方は、個人輸入の方がおすすめです。
個人輸入での購入の場合、通院や交通費が必要ないというメリットがあります。
しかし、利尿薬として世界中で人気であった「ラシックス(フロセミド)」の個人輸入が2017年以降禁止となっています。
ただ、ラシックスの代替として「ルプラック(トラセミド)」という薬剤は、個人輸入で購入可能です。もし購入をご希望される方は、参考にしてみてください。
より詳しくラシックス(フロセミド)やルプラック(トラセミド)について知りたい方は以下のページよりご覧ください。

利尿剤を長期服用した場合
利尿剤は、心不全や高血圧の改善に長い間使われてきた薬剤です。
水分量を減らすため、むくみの改善を経験される方も少なくないですが、利尿剤を長期間服用した時のリスクについてご紹介します。
効果の減弱

利尿剤の中でも「ループ利尿薬」は最も強い種類です。
このループ利尿薬は、水分を排出することで高血圧やむくみを改善する作用機序を持っていますが、長い間投与を続けると、水分の中に含まれるナトリウムを体の中にためようとする生体反応が起こります。
結果、利尿効果が弱まっていく場合もあります。
効果が減弱すると、不安が大きくなり通常の用量よりも多く服用してしまうことにもつながりかねません。
多く服用すると、副作用のリスクも高まり、脱水症状を起こしやすくなります。
高血圧や心不全など疾患の治療を目的に長期投与をすることは問題ないですが、ダイエットやむくみの改善を目的に長い間投与を続けるのは避けましょう。
予後への悪影響
ループ利尿薬を必要以上に使用し続けることは、予後に悪影響を及ぼします。
長期的な使用は、低カリウム血症を引き起こします。カリウムが4mEq/L以下になると、心臓に関わる病気の発症が増加するとされています※1。
加えて、うっ血解除を起こすと、腎機能への血流が減少し、腎機能障害が進行してしまいます。このような病気の発症が関わり合い、予後悪化へとつながるのです。
利尿剤ダイエットの危険性
利尿剤は、服用するとむくみが改善され、痩せたと思われる方も多いため、ダイエットに使用し続けるケースを見かけます。
しかし、利尿剤をダイエット薬として使うときには、医薬品としての副作用にも注意をしなければなりません。
利尿剤の主な副作用
- 低カリウム血症
- 脱水症状
- 頭痛
- 倦怠感
- のどが渇く
- めまい
- 頻尿
利尿剤の副作用:低カリウム血症

利尿剤は、体の水分を排出させますが、一緒にカリウムも排出してしまいます。
カリウムが体の中から出過ぎると、けいれんを引き起こし、麻痺を生じる場合があります。
長い間体からカリウムが足りない状態が続くと、腎臓に負担がかかり、病気を発症する可能性も高まっていきます。
利尿剤の副作用:脱水症状

利尿剤は、水を減らします。主に尿が増えるため、水分が体の中から奪われていくのに気が付かない方もいらっしゃります。
すると、脱水症状を起こし、体のだるさや倦怠感、立ち眩みなどの症状を引き起こします。
服用している途中にふらっと倒れたり、口の渇きが気になるようになったら注意が必要です。
利尿剤に関するよくある質問

- Q利尿剤の服用により注意が必要な方はどんな人でしょうか?
- A
利尿剤は、思わぬ副作用で脱水症状や立ち眩みが起こる場合があります。
そのため、自分で体温管理ができない子供や高齢者は、注意が必要です。
また、利尿剤は飲みすぎると用量依存的に効果と副作用が出てしまう可能性があります。
そのため、飲み忘れや飲み間違いが多い方も注意をする必要があります。
- Q低カリウム血症を起こしにくい利尿剤はありますか?
- A
新しい薬剤の「サムスカ(トルバプタン)」は、カリウムやナトリウムなどの量に影響を及ぼさずに水分を排出させる利尿薬です。
低カリウム血症のリスクは確かに少ないかもしれませんが、水分量は多く排出されるため、脱水症状にはほかの薬剤と同じく注意が必要です。
- Q利尿剤が心不全に効果があるのは何故でしょうか?
- A
心臓から体中に血液を送り出す力が低下すると、腎臓に流れる血液が少なくなります。
腎臓は人の尿の生成に大きくかかわっている大切な器官であるため、体に水分が溜まりすぎてしまいます。
利尿剤を服用すると、体から水分が排出されるため、心臓にかかる負担を減らすことができます。
- Q利尿剤を併用することはあるのですか?
- A
あります。
利尿剤には「サイアザイド系利尿薬」や「カリウム保持性利尿薬」「ループ利尿薬」など様々な種類があります。
基本的に同じ作用機序の薬剤を組み合わせることは少ないですが、例えば別々の機序を持つ「サイアザイド系利尿薬とループ利尿薬」のような組み合わせの併用は十分あり得ます。
また、利尿効果だけではなく、血圧も下げたい場合は利尿薬と高血圧を併用する場合もあります。
- Q利尿剤はいつ飲むのですか?
- A
一概には言えませんが、利尿剤は基本的に朝や午前中に飲むことが多いとされています。
利尿剤を服用すると、水分を排出させるため、寝る前に飲んでしまうと夜中トイレに何度も目が覚めてしまうケースが想定されます。
そのため、日中起きている時間帯に薬の効果まで確認することがよく、午前中、もしくは朝昼の服用がほとんどです。
しかし、薬ごとに適切な服用タイミングは異なるので、添付文書をご確認ください。
最後に
利尿剤は、体の中から水分を減らすことで、高血圧や心不全、むくみなどを改善する効果が期待されています。
利尿剤には種類がたくさんあり、それぞれの特徴や効果に応じて使い分けることができます。
しかし、利尿薬は長く使い続けていると低カリウム血症や脱水症状などの副作用リスクも高まってくるため、慢性的にだらだらと使用するのはよくないと考えられています。
正しい使い方で、薬剤を服用していきましょう。
出典
寿製薬株式会社 利尿薬とは?
福岡県薬剤師会
心不全のいろは 心不全Q&A
※1 HERT’s Selection2 急性心不全薬物療法ーわかっていること・わかっていないこと