個人輸入のジェネリック医薬品のほとんどはインドから
医薬品を個人輸入したことはありますか?おそらく多くの人はわざわざ海外から取り寄せて医薬品を服用している人は多くはないのではないでしょうか。個人輸入によって先発医薬品でも後発医薬品でも簡単に入手することができます。
先発医薬品とは、大手製薬会社が長い年月と多額の費用をかけて研究開発し、新たに製造した新薬をいいます。新薬の開発には膨大な時間と費用がかかるため、製薬会社は簡単にまねて作ることができない様「特許」と言うものを医薬品の製造にかけます。特許期間中先発医薬品は高価格で販売されます。
一方、ジェネリック医薬品とは、先発医薬品の特許期間が終了した後に、他の製薬会社が製造販売する医薬品をいいます。
ジェネリック医薬品は、先発医薬品と同じ有効成分、同じ効能効果を持ちますが、新薬開発にかかる費用が全くない事から価格は一般的に先発医薬品の3~6割程度と安価で販売することができます。安全性と品質に関しては、ジェネリック医薬品であっても先発医薬品と同等の基準で製造・管理されており、厚生労働省のお墨付きです。
ただし、有効成分以外の添加物については異なる成分を使用している為、まれに体質によっては先発医薬品とジェネリック医薬品で効き目や副作用に違いを感じる方もいます。
先発医薬品とジェネリック医薬品の違いについて簡単に解説してきました。もし海外から通販により個人輸入でジェネリック医薬品を入手した場合、知られざる事実があるのでご紹介いたします。
それは、個人輸入されているジェネリック医薬品のほとんどがインドから来ているということです。「えっそうなの?」と思った方は一度個人輸入した商品の箱を見てみて下さい。製造国がインドと書かれているかも知れませんよ。
実は、インドは世界最大のジェネリック医薬品製造国として知られています。と言うのも、世界で使用されているジェネリック医薬品のおよそ20%をインドが生産していると言われているから驚きですよね。その理由には、高度な技術と人件費を抑えた労働力が組み合わさった生産体制が成り立っているからこそなのです。
そもそもインドの製薬会社は、欧米の大手製薬企業が開発した新薬の特許が切れた後、速やかにジェネリック医薬品を製造し、世界中に供給しています。
ジェネリック医薬品の多くがインド製である背景を2点ご紹介します。
1点目は、まず何よりも価格の安さが挙げられます。
そもそもジェネリック医薬品と言っておきながら価格が高くてはお話になりません。インド製のジェネリック医薬品は、日本国内で販売されている同等の医薬品と比べて、はるかに安価です。もしもインド製の医薬品と同じ医薬品を日本で製造した場合、いくら特許が切れている医薬品だからと言っても、かかる人件費までは大きく削ることはできず結果として価格を下げるのにも限界が来るわけです。
2点目は、インドの製薬会社の人々は英語でのコミュニケーション能力に長けており、海外からの注文に対応しやすいという点が挙げられます。話が通じるのであれば価格の大きなプランも持っていきやすいというものです。
ただし注意しなければならない点もいくつかあります。インドは偽造医薬品の主要な製造国の一つとされているからです。いくら安価だからと言っても偽造医薬品を入手はしたくないもの。この場合信頼がおけるサイトから購入することが一番の対策といえます。
医薬品の特許は関係ないの?インド特有の特許制度
インドの医薬品特許制度は、世界の中でも独特な特徴を持ちます。
一般的に特許制度とは、新薬を保護する目的で設けられてきた制度です。他の会社が同じ薬を何の苦労もなく安易に作れないよう特許権期間を設け、多額な費用をかけて薬の有効成分を開発してきた会社が、一定期間独占的に薬を販売することで研究開発に要した費用を十分に回収できるような制度となっています。この制度があるおかげで長い年月と多大なる費用をかけて新薬を生み出してきた企業を守ることができる訳です。今ある治療薬はすべてそういった過程を経て出来上がってきたのです。
それではここで、通常日本で行われている「特許」と言うものについて解説していきます。
特許の種類 | 内容 | 該当項目 |
---|---|---|
物質特許 | 新薬を開発するにあたり、研究段階で取得する特許。最も権利範囲が広く、独占製造販売が可能 | 創薬研究 |
用途特許 | 既存物質において新たな用途が発見されたときに認められる特許 | 非臨床試験(3~5年) |
製剤特許 | 医薬品を製造する過程で発見した技術を保護する特許 | 臨床試験(5~10年) |
製法特許 | 医薬品の新しい製造方法の特許 | 審査/承認 |
この様に、新薬が開発されるときには簡単にまねできない様にあらゆる場面で特許が許されています。しかし、特許の制度についてインドの場合は少し異なります。まず何よりも、インドの医薬品特許制度とは、国として企業ではなく自国民を守るための手段となっているということが前提にあります。
1970年にインドにおいて「特許法」が成立されましたが、その内容は医薬品については「物質特許」だけは認めないというものでした。
これにより、先進国が開発した医薬品の有効成分をインド国内の製薬企業は独自の製法を用いて製造することで、合法的に医薬品を製造することができるようになりました。
そしてこのことが結果的にインドの製薬会社が他国よりも製造技術開発が進歩することを後押しする形となりました。
1995年になるとWTO(世界貿易機関:World Trade Organization)が設立されました。設立当初からインドも加盟することにより、TRIPS協定(特許等の知的財産権についての協定)を遵守することが義務付けられました。
猶予期限が切れる2005年になると大きな改正が行われました。この改正により、医薬品の物質特許がインドでも導入されるようになりました。しかし、インドの特許法には他の国にはない特異的な条項が盛り込まれているのです。それが特許の拒絶理由です。現在知られていないまったく新しい物質を発見した場合にのみ「物質特許」を認めるというもの。この条項のおかげでインドでは物質特許が導入された後も合法的にジェネリック医薬品の製造が可能とされています。
さらに、インドの特許法には「強制実施権」という規定もあります。この規定に該当した場合には、特許が無効とされる場合があるようです。これらの制度があるおかげで、多くの人々が必要な医薬品を安価に入手することができるようになるため、多くの発展途上国からは支持されている部分もあります。
多くの貧困に苦しむインドでは、高価な医薬品を入手することは非常に厳しい状況です。そのためインド政府は特許制度を通じて、必要な医薬品を適切な価格で国民に提供することを目指しているのです。
インドの代表的な製薬会社
ジェネリック医薬品の多くが製造販売されているインドですが、皆さんはインドには何社製薬会社があるかご存じでしょうか?インドの製薬業界は、世界の医療に多大なる貢献をしています。驚くべきことに、インドには実に3,000社以上もの製薬会社が存在します。これは単なる数字ではなく、世界中の人々の健康を支える重要な役割を担っているのですから驚きですよね。
今回は、さすがに3,000社以上の製薬会社を紹介することはできませんので、その中でもインドを代表する注目すべき5社をご紹介します。
1位:サンファーマ株式会社(Sun Pharmaceutical Industries Ltd.)
まず1位に輝いたのはサンファーマ株式会社です。ムンバイに本社を構える同社は、インド最大の製薬会社です。2023年度には34,726億ルピー(約5.9兆円)の収益を上げました。
サンファーマ株式会社の真の強みは、単なる経済的成功だけではありません。手ごろな価格のジェネリック医薬品を提供し、慢性疾患に対する革新的な治療法を研究することで、世界中の患者さんの生活を改善しているのです。
これらの研究開発への投資によって、より効果的な治療法の開発に成功し、市場における確固たる存在感を示しました。
2位:ドクター・レディーズ・ラボラトリーズ(Dr. Reddy’s Laboratories)
ドクター・レディーズ・ラボラトリーズは、多種多様な医薬品サービスで知られる大手製薬会社です。2023年度には21,200億ルピー(約3.6兆円)の収益を上げました。特筆すべき点として、新興市場における医薬品へのアクセスが良い点が挙げられます。手ごろな価格の医薬品に重点を置き、世界中の患者に必要な治療を届けることに注力しています。特に注目しているのは、ジェネリック医薬品だけではなく、バイオシミラーなどの先進的な製品開発にも取り組んでいる点です。常に新しい治療法の開発に取り組んでいるという強みがあります。
3位:シプラ株式会社(Cipla Pharmaceuticals)
シプラ株式会社は、特に呼吸器系疾患や感染症の治療薬に高い評価を得ている製薬会社です。2023年度には19,415億ルピー(約3.3兆円)の収益を上げました。最も称賛すべき点は、手ごろな価格のHIV/AIDS治療薬を先駆的に提供してきた点です。これにより、世界中の多くの患者さんが必要な治療を受けられるようになりました。
シプラ株式会社の研究開発の取り組みは、呼吸器系疾患や心血管疾患、抗レトロウイルス薬に重点を置いています。安定した影響力のある存在感がウリです。
4位:株式会社ルパン(Lupin Limited)
株式会社ルパンは、心血管系や糖尿病、小児科領域で強みを持つ製薬会社です。2023年度には16,368億ルピー(約2.8兆円)の収益を上げました。
ルパンの特徴は、未だに有効な治療法がない疾患に対する医療ニーズへの対応に力を入れていることです。特に心臓血管、糖尿病、小児科領域での治療法の開発に注力しています。この姿勢は、医療の未来を切り開く重要な役割を果たしていると言えます。
5位:オーロビンドファーマ株式会社(Aurobindo Pharma)
オーロビンドファーマ株式会社は、幅広いジェネリック医薬品の製造で知られている大手製薬会社です。2023年度には23,098億ルピー(約3.9兆円)の収益を上げています。オーロビンドファーマ株式会社の評価すべき点は、その世界的存在感にあります。特に新興国市場において、高品質なジェネリック医薬品を手ごろな価格で提供する取り組みを行っています。オーロビンドファーマの研究開発は、ジェネリック医薬品の製造技術の向上に焦点を当てており、常に製品の品質と効率性の向上を目指しています。
いかがでしたでしょうか。インドの製薬会社は、高品質なジェネリック医薬品を世界中に届ける、まさに「世界の薬局」としての役割を果たしています。高品質で手ごろな価格のジェネリック医薬品を世界中に供給することで、多くの人々の健康と生活を支えているのです。今回ご紹介した以外にも、インドでは多くの製薬会社が、世界の人々の健康を守るため、日夜努力を続けているのです。
インドの医薬品の品質と安全性について
製造・販売の多くがインドである理由について解説してきましたが、ここで多くの人が最も気になる点はインドの医薬品の品質と安全性ではないでしょうか。どんなに安いからと言っても品質に問題があっては安心して服薬することはできませんよね。
ここでは皆さんが気にされているであろう安全性について詳しく解説していきます。
まず結論からお話ししますと、インド製のジェネリック医薬品は日本だけではなく世界中で広く使用されており、品質・安全性共に問題ありません。ただし、その背景や注意点についても知っておく必要があるでしょう。
前述のとおり、インドは世界最大のジェネリック医薬品供給国として知られています。実際、インドの製薬会社が製造・販売する医薬品は、多くの国で使用されており、その品質と効果については広く認められています。
では、なぜインドの製薬会社の多くが国際的に信頼を得ることができているのでしょうか。その理由の一つに、医薬品の製造・販売における厳しい品質管理が挙げられます。
どういった品質管理がされているのかと言うと、インドの多くの製薬会社は、国際的な機関からの認証を受けています。例えば皆さんもよく耳にしたことがあるかもしれませんが、WHO(世界保健機関)やFDA(アメリカ食品医薬品局)、EMA(ヨーロッパ医薬品庁)などの認証を受けているのです。これらの「認証」は、医薬品の製造過程が国際基準に適合していることを示す重要な指標となっているのです。
しかしながら、インドの環境問題が医薬品の製造に影響を与える可能性についても考えなければなりません。インドでは大気汚染や水質汚染が深刻化しています。
例えば、環境汚染によって汚れた水が医薬品の製造過程などに使用されてしまうと、医薬品に不純物が混入するリスクが高くなるでしょう。汚れた水から製造された医薬品なんて口にしたくないですよね。
ただし、私たちのこの様な心配に対して、インド政府や国際機関は医薬品の製造において厳格な規制と監査を行っています。特に海外に輸出される医薬品については、輸出先の国の基準をクリアする必要があり、これが品質の保証となっています。
つまり、日本で販売されているインド製の医薬品は、日本の厳しい基準をクリアしなければ輸出することはできないのです。日本の基準もクリアしていると聞けば安心して口にすることができますよね。
その上で、私たち消費者はどのようなことに注意しなければいけないのでしょうか。
まず、信頼できるブランドや製品を選ぶことが大切です。当サイトのメデマートにおいては、全商品に対して成分鑑定を行っています。それだけ品質に関して厳しい基準を設けているわけですね。
インドの医薬品産業は、世界中の人々の健康に大きく貢献しています。特に発展途上国では、安価で質の良い医薬品が入手できることが非常に重要な意味を持ちます。
これからもインドの医薬品業界は発展し、世界の医療の一端を担うことになるでしょう。私たち消費者も、その恩恵を受ける事になります。しかし今後も私たちは医薬品の安全性と品質には常に注意を払う必要があります。健康は何物にも代えがたい大切なものです。医薬品の選び方だけでなく使い方にも、常に慎重かつ正しい判断が必要とされます。
まとめ
まとめ
ジェネリック医薬品市場において、インドが世界的に主要な地位を占めている理由は、独自の特許制度、高度な技術力、そして人々の健康を重視する姿勢があります。
インドは「世界の薬局」と呼ばれるほどに、ジェネリック医薬品の生産で圧倒的な存在感を示しています。その理由は単に安価と言うことだけではありません。インドの製薬会社は、高度な研究開発能力と最先端の製造技術を駆使することによって、品質の高い医薬品を効率的に生産しているのです。
特に着目すべきはその特許制度です。インドでは2005年までは医薬品の特許が厳密には認められていませんでした。この独自の法制度によって、長い期間にわたり多くのジェネリック医薬品が開発・生産される土壌が育まれました。このバックグラウンドがあることでインドの製薬会社は国際市場における競争力を急速に高めていきました。
インドの製薬業界をリードする企業には、ご存じの人も多いかと思いますが、サンファーマ株式会社(Sun Pharmaceutical Industries Ltd.)があります。サンファーマ株式会社は世界4位の後発医薬品メーカーにまで上りつめました。
また、品質と安全性についても、インド製の医薬品は一般的に高い基準を満たしています。多くの企業がFDAやEMAの厳格な基準を満たすことにより、世界中の患者さんに信頼される医薬品を提供しています。
総括すると、インドがジェネリック医薬品の重要な製造拠点となるには歴史的経緯と戦略的施策があったからこそです。特許制度を有効に活用し、製造技術を駆使することで、インドは多くの患者にとっての医療費削減を提供してきました。
今後も、インドの製薬産業はさらなる進化を遂げることでしょう。バイオシミラーやバイオテクノロジーの分野にも積極的に参入し、より複雑で高度な医薬品の開発・生産にも取り組んでいきます。
インドのジェネリック医薬品産業は、単なる「安価な代替品」の製造会社ではありません。それは、世界の医療を変革し、人々の健康と生活の質を向上させる、革新的で社会的意義の高い産業なのです。
出典
個人輸入のジェネリック医薬品のほとんどはインドから
インドにおける医薬用途発明の保護制度