ステロイドの作用
ステロイドとは、体の副腎という場所でつくられるホルモンです。ステロイドは大きく「炎症を抑える作用」、「細胞増殖を抑制する作用」、「血管収縮させる作用」、「免疫を抑制する作用」の4つの作用を持っています。このホルモンが持つ作用を薬として応用したものがステロイド薬となります。
ステロイドホルモンは多くの作用を持つため、薬は免疫疾患から皮膚疾患まで幅広く使用されています。
※ステロイドの主な作用
作用 | 説明 |
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抗炎症作用 | 炎症を促進する物質の産生を抑制します |
細胞増殖抑制作用 | 炎症を引き起こす細胞の増殖を抑えます |
血管収縮作用 | 炎症部分の血管を収縮させることで、患部の赤みを改善します |
免疫抑制作用 | 抗体の産生を抑制し、免疫機能を低下させます |
ステロイドの種類と強さのランク
ステロイド薬にはさまざまな種類があるため、効果の強さによって5つに分類されています。弱いものから「weak(弱い)」、「medium(普通)」、「strong(強い)」、「very strong(とても強い)」、「strongest(最も強い)」の順で強くなっていきます。代表的な薬剤をご紹介します。
※ステロイドの種類と代表的な薬剤
作用の強さ | 代表的な薬剤(一般名) | 商品名 |
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Strongest (最も強い) | クロベタゾールプロピオン酸エステル | デルモベート |
ジフロラゾン | ジフラール | |
Very strong (とても強い) | モメタゾンフランカルボン酸エステル | フルメタ |
酪酸プロピオン酸ベタメタゾン | アンテベート | |
Strong (強い) | ベタメタゾン吉草酸エステル | ベトネベート |
フルオシノロンアセトニド | フルコート | |
Medium (普通) | プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル | リドメックス |
トリアムシノロンアセトニド | レダコート | |
Weak (弱い) | プレドニゾロン | プレドニン |
ヒドロコルチゾン酢酸エステル | コルテス |
ステロイドの強さ:Strongest(最も強い)
皮膚に浸透しやすい成分を使っているため、含まれる成分量は少ないものの作用がとても強い。基本的には子供には使用されず、大人でも1週間ほどの使用がメインとなります。
商品名 | デルモベート |
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有効成分 | クロベタゾールプロピオン酸エステル |
効果 | ・湿疹・皮膚炎群(進行性指掌角皮症、ビダール苔癬、日光皮膚炎を含む) ・痒疹群(蕁麻疹様苔癬、ストロフルス、固定蕁麻疹を含む) ・掌蹠膿疱症 ・乾癬 ・虫さされ ・薬疹・中毒疹 ・ジベルばら色粃糠疹 ・慢性円板状エリテマトーデス ・扁平紅色苔癬 ・紅皮症 ・肥厚性瘢痕・ケロイド ・肉芽腫症(サルコイドーシス、環状肉芽腫) ・アミロイド苔癬 ・天疱瘡群 ・類天疱瘡(ジューリング疱疹状皮膚炎を含む) ・悪性リンパ腫(菌状息肉症を含む) ・円形脱毛症(悪性を含む) |
用法用量 | 1日1〜数回適量を塗ります。 |
メーカー | 岩城製薬、グラクソ・スミスクラインなど |
ステロイドの強さ:Very Strong(とても強い)
皮膚の炎症が強い場合や、湿疹が慢性化していると医師が判断した場合は、より上位のランクのステロイド外用剤を使用します。Vert strongは最も強い部類のステロイドになるため、重症化しているときによく処方されます。
<ステロイド外用薬関連商品①>
●トップコートクリーム0.1%
トップコートクリーム0.1%は、「フルメタクリーム」と同じ有効成分を含んだステロイド外用薬です。ステロイドには強さが5つにわけられていますが、上から2番目に属する強めの医薬品です。湿疹や皮膚炎の症状改善に効果がありますが、顔やデリケートな皮膚には使用できません。1日1~3回ほど患部に塗ります。
商品名 | トップコートクリーム0.1% |
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有効成分 | フランカルボン酸モメタゾン0.1% |
価格 | 15mg:1本あたり1296円~ |
メーカー | Cipla(シプラ) |
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<ステロイド外用薬関連商品②>
●エロコン軟膏
エロコン軟膏は、モメタゾンフランカルボン酸を有効成分に含んだステロイド外用薬です。ステロイドの中では2番目に強く、アトピー性皮膚炎以外の皮膚疾患にも有効です。軟膏タイプ以外にもクリームタイプやローションタイプなどもあります。
商品名 | エロコン軟膏 |
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有効成分 | モメタゾンフランカルボン酸エステル 0.1% |
価格 | 1本あたり1980円~ |
メーカー | MSD(メルク・アンド・カンパニー) |
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<ステロイド外用薬関連商品③>
●ネリゾナ軟膏
ネリゾナ軟膏は、ステロイドホルモンの中でも2番目に強い部類に含まれているので、炎症によるむくみや肉芽増殖などを抑制して、皮膚の赤みや腫れ、かゆみなどの症状を抑制します。
商品名 | ネリゾナ軟膏 |
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有効成分 | ジフルコルトロン吉草酸エステル |
価格 | 1本あたり1502円~ |
メーカー | Bayer(バイエル) |
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<ステロイド外用薬関連商品④>
●アリストコートA
アリストコートAは、有効成分であるトリアムシノロンアセトニドによる抗炎症作用で、炎症を鎮めたりアレルギーによる腫れや痛み、かゆみなどを改善する外用クリームです。
湿疹や虫さされ、乾癬、円形脱毛症などの症状に効果的です。
商品名 | アリストコートA |
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有効成分 | トリアムシノロンアセトニド 0.1% |
価格 | 1本あたり1700円~ |
メーカー | Pfizer(ファイザー) |
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ステロイドの強さ:Strong(強い)
中学生以上や、高齢者にはストロング程度のステロイドで問題ないとされています。ただし、使用期間や使用上の注意は守ったうえで塗っていくことが大切です。
商品名 | フルコート |
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有効成分 | フルオシノロンアセトニド |
効果 | ・湿疹・皮膚炎群(進行性指掌角皮症、女子顔面黒皮症、ビダール苔癬、放射線皮膚炎、日光皮膚炎を含む) ・皮膚そう痒症 ・痒疹群(じん麻疹様苔癬、ストロフルス、固定じん麻疹を含む) ・虫さされ ・乾癬 ・掌蹠膿疱症 ・薬疹・中毒疹 |
用法用量 | 1日1〜数回、適量を患部に塗ります。 |
メーカー | 田辺三菱、陽進堂など |
ステロイドの強さ:Medium(普通)
小学生くらいまでの子供はmediumくらいのステロイドがよいとされています。子供では皮膚の発達がまだ大人と比較して十分ではないため、薬剤が浸透してしまう可能性がありますので、強すぎる薬剤は使用しないようにしましょう。
商品名 | リドメックス |
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有効成分 | プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル |
効果 | 湿疹・皮膚炎群(進行性指掌角皮症、ビダール苔癬を含む)、痒疹群(固定じん麻疹、ストロフルスを含む)、虫さされ、乾癬、掌蹠膿疱症 |
用法用量 | 1日1〜数回、適量を患部に塗ります。 |
メーカー | 興和、岩城製薬など |
ステロイドの強さ:Weak (弱い)
2歳未満の幼児に使用することが多い強さです。
商品名 | プレドニン |
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有効成分 | プレドニゾロン |
効果 | 皮膚科領域、眼科領域、耳鼻咽喉科領域、外科領域など |
用法用量 | プレドニゾロンとして1日5〜60mgを1〜4回に分割経口投与します。 |
メーカー | シオノギファーマ、東和薬品など |
薬局で購入できるステロイド
「Strongest(最も強い)」と「very strong(とても強い)」以外のステロイドに関しては、ドラックストアなどで市販薬として扱うことができます。「Strongest(最も強い)」と「very strong(とても強い)」に関しては、強い薬剤となってくるので、市販での入手は不可能です。ご自身の症状や部位に合わせて適切な強さの薬剤を選ぶことが大切です。
ステロイドの使用方法
基本的には、プレドニゾロンという薬剤が使用されることが多いですが、1日当たり20~60mgから開始して、2~4週ごとに5~10mgずつ減量していきます。20mg以下の場合はさらにゆっくり減らしていき、1日おきに内服する方法の方がより副作用が出にくいとされています。
注射の場合は、メチル・プレドニゾロン500~1000mgの点滴注射を3日間実施します。
ステロイドの注意すべき点
ステロイドは非常に便利な薬剤ですが、使用にあたって注意しなければならない点もあります。
突然中止しない
ステロイドホルモンは、体でも作られているホルモンです。体にある量以上のステロイドホルモンを内服すると、副腎皮質からのステロイドホルモンが分泌されなくなります。突然使用を中止すると体の中でステロイドホルモンが足りない状態となり、倦怠感や吐き気、頭痛や血圧低下などの症状をきたしてしまう恐れがあります。自己判断での中止には注意をしましょう。
副作用
ステロイドは副作用が出ます。免疫抑制作用があるため、免疫機能が低下しすぎると感染症の副作用を起こすことがあります。ただし、日常生活においてマスクの着用や人ごみを避けるなど対策することでかかりにくくなります。また、ステロイドを長期的に服用することで骨粗鬆症になりやすくなります。骨の量が減ってしまうため、予防薬の投与など対策をしましょう。ほかにも高血圧やむくみ、精神症状、高脂血症などを引き起こすこともあります。
ステロイド外用薬に関するよくある質問
最後に
ステロイドは、子供から大人まで幅広い疾患に使用される薬剤です。強さも弱いものからとても強いものまで5種類あるので、ご自身の症状に合わせて使用することができます。市販薬でもご自身の症状が治らない場合には、医療機関や個人輸入でのみ入手可能な「very strong」、「strongest」のステロイド薬をお試しください。
出典
【参考元:第一三共ヘルスケア 皮膚の悩み、調べて、あきらかに ひふ研】【参考元:東邦大学医療センター 大橋病院 膠原病リウマチ科 ステロイドとは】【参考元:東京女子医科大学病院 腎臓病総合医療センター ステロイド治療】