そもそもワクチンとは?
「ワクチン」という言葉はニュースや病院などでよく耳にする言葉ですよね。
「予防接種」とは違うの?なんで打たなければいけないの?と、疑問に思う方もいるのではないでしょうか?そもそもワクチンとは何なのでしょうか?
結論から言いますと、ワクチンの目的は私たちの身体に免疫力を付けることを目的とします。
免疫力を付けることにより、私たちは病原菌から自分自身を守ることができるようになります。
このワクチンを接種することを「予防接種」と呼んでおり、予防接種をすることで免疫を獲得することができるようになると言う訳です。
ワクチンが開発された背景は、過去の感染症における多大なる被害が原因となっています。
かつては疫病などが猛威を振るって多くの人命が失われました。
しかし、科学の発展とともにワクチンが普及することにより、天然痘や小児麻痺など、かつて恐れられていた疾患などに対処することができるようになりました。
ワクチンができたからこそ多くの人命が救われ今の私たちが存在しているのです。
ワクチンをもう少し詳しく見ていきましょう。
基本的にワクチンには「生ワクチン」と「不活化ワクチン」「組み換えタンパクワクチン」「mRNAワクチン」「DNAワクチン」「ウイルスベクターワクチン」の6種類が存在します。
ここでは基本的な「生ワクチン」と「不活化ワクチン」について解説していきます。
まず、生ワクチンとは生きている細菌やウイルスの毒素を弱めて作成したワクチンです。
生きた病原体を体内に摂取するため、実際に感染した時と同じ状況を作ることによって免疫システムが働きます。その結果強い免疫を獲得することが可能となります。
通常1回ないし2回の接種で免疫を獲得することができるようになります。ただ、まれに摂取後感染した時と同じような軽い症状が出る場合があります。
具体的には、麻しん(はしか)、風しん、水ぼうそう、おたふくかぜ、ロタウイルス、結核などが該当します。
一方で不活化ワクチンとは細菌やウイルスの毒素や感染力をなくしたもの、または遺伝情報などで作製したワクチンです。
生ワクチンと違って生きた病原体ではないため体内で増殖することはありません。しかし十分な免疫を付けるためには複数回の摂取が必要となります。
具体的には、A型肝炎、B型肝炎、インフルエンザ、ポリオ、日本脳炎、百日せき、HIV感染症、肺炎球菌などが該当します。
ワクチンを接種すると免疫を獲得できると解説しました。この免疫ができるとは具体的には何ができると言うのでしょうか?免疫獲得について少し解説していきます。
予防接種によりワクチンを体内に接種すると、まず樹状細胞(じゅじょうさいぼう)と呼ばれる細胞が病原体を検知します。
樹状細胞はその情報を速やかにヘルパーT細胞に伝えます。
情報を受け取ったヘルパーT細胞(免疫の司令塔)は、次の2つの重要な指示を出します。
1つはキラーT細胞に病原体への攻撃を命じること。
もう1つはB細胞に対して、病原体に対抗するための「抗体」を作製することを命じます。
その結果、キラーT細胞は病原体へ攻撃を開始し、B細胞は形質細胞(けいしつさいぼう)に変化し、抗体を大量に生産します。
同時に、この時には、再び同じ病原体が侵入してきた時に備え、メモリーB細胞とメモリーT細胞が作製され、その情報を記憶してくれています。
ワクチンを接種する意味は理解できたのではないでしょうか?ワクチンは決して自分を守るためだけに行なうものではありません。
ワクチンを接種することにより、社会全体の健康を維持しつつ、また社会の機能を維持すると言った非常に重要な役割があります。集団接種をすることで集団免疫が形成されます。
これは、感染の拡大を防ぐとともにワクチンを接種することができない人達も守ることができるようになるのです。
今までの新型コロナウイルスワクチン
2020年初頭、新型コロナウイルスが世界中に広がり始めた時のことを覚えていますか?世界を襲ったこのパンデミックは、多くの犠牲を生み出し、医療システムや社会経済に深刻なダメージをもたらしました。
世界保健機構(WHO)は緊急事態宣言を宣言しましたよね。これを機に私たちの生活は一変し、同時にワクチンの開発が始まりました。
ワクチンの開発と言えば普通であれば10年はかかるものです。しかし、既存の技術や国際協力、そして莫大な資金投入のおかげでわずか1年ほどで実用化することができました。
まず、2020年7月から8月にかけて、政府はファイザー社・アストラゼネカ社とワクチン供給に関する基本合意を結びました。
さらに同年10月には、モデルナ社および武田薬品工業株式会社とも契約を締結し、政府は複数のワクチン候補の確保に努めてきました。
2021年2月になり、ファイザー社のワクチンが日本で特例承認され、まずは医療従事者への接種が優先され開始されました。
その後、高齢者、基礎疾患のある人、そして一般人へと徐々にワクチン接種が進められてきました。
2021年後半から2022年にかけて、効果の減弱や新しい変異株の出現などもあり、追加接種(ブースター接種)の必要性が認識され、さらなるワクチン接種が必要となりました。
現在では以下の5社の新型コロナウイルスワクチンが開発されました。
開発企業 | 商品名 | 対象年齢 |
---|---|---|
米ファイザー | コミナティ筋注6ヶ月~4歳用 | 6ヶ月以上4歳以下 |
コミナティ筋注5~11歳用 | 5歳以上11歳以下 | |
コミナティ筋注(1価:起源株) | 12歳以上 | |
コミナティRTU筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.1) | 追加免疫(3回目以降):12歳以上 | |
コミナティRTU筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.4/5) | 追加免疫(3回目以降):12歳以上 | |
米モデルナ | スパイクバックス筋注(1価:起源株) | 初回免疫(2回まで):12歳以上 追加免疫(3回目以降):18歳以上 |
スパイクバックス筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.1) | 追加免疫(3回目以降):18歳以上 | |
英アストラゼネカ | バキスゼブリア筋注(2022年9月に接種終了) | 18歳以上 注)18歳以上40歳未満の人には必要がある場合を除き使用しない |
米ノババックス/武田 | ヌバキソビッド筋注 | 初回免疫(2回まで):12歳以上 追加免疫(3回目以降):18歳以上 |
米ジョンソンエンドジョンソン/ヤンセンファーマ | ジエコビデン筋注 | 18歳以上 |
更には、塩野義製薬・KMバイオロジクスは開発中とのことです。このように新型コロナウイルスワクチンをめぐる状況は、常に変化し続けています。
パンデミックはまだ終息していません。ひそかに急増し始めている感染症の脅威を忘れてはいけません。下記コラムを確認し、再度見直しをしていきましょう。
レプリコンワクチンの臨床試験データ
レプリコンワクチンって聞いたことがありますか?新型コロナウイルスに対する次世代のmRNAワクチンのことをレプリコンワクチンと呼んでいます。
承認されたのは、製薬会社の「Meiji Seikaファルマ」です。このタイプのワクチンが承認されるのは世界で初めてのことです。
レプリコンワクチンは、ウイルスのゲノムの一部を複製する能力を持つ「レプリコン」を用いたワクチンになります。
レプリコンはウイルス全体の遺伝子ではなくて、一部の遺伝子だけを含んでいます。
そのため、本来のウイルスの様に細胞内において増殖することはありませんが、体内においてウイルスタンパク質を生成し、免疫細胞に提示することにより免疫応答を誘導します。
従来のワクチンにおいては、不活化されたウイルスや弱毒化されたウイルスを使用するため、感染のリスクが少なからずありました。
しかし、レプリコンワクチンにおいては、ウイルス全体の遺伝子を含まないことから、感染のリスクが低く、安全性が高いワクチンと考えられています。臨床試験データでは、このワクチンの有効性及び安全性を評価するために実施された研究結果を示します。
レプリコンワクチンの臨床試験は通常の医薬品開発計画に従って、複数の段階を経ておこなわれました。
①第一相試験では、少数の健康な成人を対象として、ワクチンの忍容性と免疫原性を確認しました。結果、重大な副反応は認められず、接種後に適切な免疫原性が確認できました。
②第二相試験では、より多くの参加者を対象として、更に詳しく投与量や接種回数などに関する研究が行われました。この段階においてワクチンの有効性並びに安全性のバランスが詳細に検討されました。
③第三相試験では、最も大規模なもので、数万人規模の参加者を対象として実施されました。
この試験では、ワクチン接種群とプラセボ群に分かれて、実際の感染予防効果や重症化予防効果が評価されました。
レプリコンワクチンの臨床試験データによると、発症予防効果は56.6%、重症化予防効果は95.3%という非常に高い有効性が示されました。これは、従来のワクチンと比較しても非常に優れた結果です。
安全性に関しては、一般的なワクチンと同様の軽度の副反応(接種部位の痛み、発熱、倦怠感など)が報告されましたが、ほとんどは軽度又は中等度であり、重篤な副反応の発生率は極めて低いことが確認されました。
また、レプリコンワクチンの特徴として、変異株に対しても有効性及び安全性が確認されました。
臨床試験データの解析により、レプリコンワクチンは幅広い年齢層において有効性と安全性が確認されました。
高齢者及び基礎疾患を持つ人においても、十分な免疫反応が得られることが示されています。
さらに、長期試験では、少なくとも6ヶ月以上は高い抗体価が維持されることも確認できています。このことから追加接種の回数を減らすことができる可能性が見いだされました。
レプリコンは従来のワクチンの10~100分の1の用量で同程度以上の抗体価と持続性があることが臨床試験により示されています。
このことから大量生産が可能であり供給不足を改善することができるようになります。
しかし、妊婦や小児などに対するデータは限られている為今後、これらの対照群に対する追加研究が必要となります。
レプリコンワクチンが開発国や先行治験国で認可されていない?
新型コロナウイルス感染症の予防接種としてレプリコンワクチンは世界で唯一日本でのみ認可され、2024年10月1日から定期接種が予定されています。
しかし、開発国や先行治験国で認可されていないという事実が、多くの人々の間で疑問と懸念を呼んでいます。
レプリコンワクチンは前述の通り新しいタイプのワクチンです。少量の接種により長期間にわたって持続するという特徴があります。
しかしこのワクチンにはまだまだ未知の部分も多く、安全性や倫理性に関する懸念が存在します。
最も大きな疑問点として、開発国である米国や治験を実施したベトナムをはじめとする世界各国でいまだにレプリコンワクチンが認可されていないと言うことです。
この状況は、過去に海外で認可が取り消された薬剤を日本で使い続けたことで、深刻な健康被害が生じた薬害事件に類似します。
世界的に認可されていないことは何らかの安全上の懸念があるのではないかとも考えられます。
本来であれば、緊急時を除き、新しい医薬品やワクチンは十分な安全性が確認されるまでは一般に使用されることはありません。
しかし、レプリコンワクチンの場合、日本が世界に先駆けて認可し、定期接種まで計画しているという状況は何かあるのかもしれません。
この状況に対して、日本看護倫理学会は懸念を表明しています。
特に懸念されているのは、レプリコンワクチンが「自己複製するmRNA」であるために、接種者から非接種者に感染する可能性があると言うことです。これは、望まない人に対してもワクチンの成分が取り込まれてしまう可能性があると言う倫理的問題をはらんでいます。
また、遺伝子操作型mRNAワクチンは、人体の細胞内の遺伝機構を利用し、抗原タンパク質を生み出す技術であることから、人間の遺伝情報や遺伝機構に及ぼす影響、とくに将来世代への影響についても懸念が強く存在します。
さらに、インフォームドコンセントの問題も指摘されています。
ワクチン接種に際しては、潜在的なリスクや副作用について十分な説明を受け、理解した上で自発的に同意することが重要です。
しかし、従来のmRNAワクチンでも、この点が十分に実践されていなかったという指摘があります。
レプリコンワクチンの定期接種が始まれば、医療従事者を中心に接種を促す圧力が高まる可能性もあります。
以上の点からレプリコンワクチンの導入に関してはさらなる研究と長期的な安全性データの収集が必要であると言えます。開発国や先行治験国で認可されていない現状をよく考慮した上で判断していかなければなりません。
mRNAワクチン「レプリコン」まとめ
2020年から始まった新型コロナウイルス感染症によるパンデミックは、日本のみならず世界中で人々の生活を一変させました。
緊急事態宣言が発令され多くの企業が倒産しました。その脅威から人類を守るためにも、ワクチンの開発は非常に重要な位置づけとなりました。
現在Meiji Seikaファルマが新しく開発されたレプリコンワクチン(次世代型mRNAワクチン)は、世界各国から注目を集めています。
レプリコンワクチンは従来のmRNAワクチンと比較した場合、より少ない投与量でよい事、また効果も長期間にわたり持続することが臨床試験より確認ができています。
しかし、最新の技術であるため、将来の安全性や効果についてはまだまだ不明な点が多く存在することも事実です。
臨床試験データでは著しい結果が見られましたが、開発国や先行治験国で認可が得られていない現状が、日本においても慎重な対応が必要であることを考えさせられます。
つまり、有効性と安全性が十分に確認できるようになるまでは、現在承認されているワクチンの接種を継続することも考慮していかなければなりません。
今回のレプリコンワクチンのように新しい医療技術が登場する時には、常に期待と不安が伴います。
しかし、臨床試験によりしっかりとしたデータの裏付けを行い、その結果を慎重に評価することで、より有効で効果的なワクチンの開発につながっていく事でしょう。
パンデミックに襲われたあの緊急事態であれば早急な対応も必要とされますが、現行のワクチンがある以上時間をかけて検証していく事も問題ないのかもしれません。
今後も新しい技術の発展に注目しつつ、現在の対策を着実に実行していくことが、このパンデミックを克服する近道となることでしょう。
出典
新型コロナワクチンQ&A(厚生労働省)
新型コロナワクチンについて(2021年8月5日現在)(国立感染症研究所)
次世代mRNAワクチン(レプリコン) 「コスタイベ筋注用」(Meiji Seika ファルマ株式会社)
JRCT(臨床研究等提出・公開システム)
JRCT(臨床研究等提出・公開システム)
【緊急声明】 新型コロナウイルス感染症予防接種に導入されるレプリコンワクチンへの懸念 自分と周りの人々のために