大人のADHDの特徴とは?
ADHDとは、発達障害の一部で注意欠如や多動症などを特徴とする疾患です。英語の「Attention-Deficit Hyperactivity Disorder」を略してADHDと呼ばれています。
授業中に座っていられなかったり、人が話しているときにしゃべってしまうなど子供でみられる疾患だと思われがちですが、実は大人の2~10%の方が、ADHDの診断基準に当てはまるといわれています。
ADHDの主な症状
ADHDでよくみられる症状は「不注意症状」と「多動性症状」です。
不注意症状は、注意力を持続させることができずに、ケアレスミスなどを繰り返します。
多動性症状は、落ち着きがなく突発的に動いてしまうため、衝動的な行動が目立つようになります。
大人のADHDでは、両方の症状がみられる場合と、どちらかの症状が強くあらわれる場合があります。
不注意症状
不注意症状は、注意力を長い間維持し続けることができない症状です。
小さい頃は、1回の授業を聞いていられなかったり、違うことに意識が向いてしまうような行動でADHDに気が付くケースが多いとされています。
しかし、大人になってからは細かい部分に気が付かないため仕事や家事での些細なミスが多くなることで気づく方がほとんどです。
例えば、「物をすぐになくしてしまう」「仕事の優先順位をつけることが苦手」といった症状もADHDの不注意症状の一例です。
「不注意症状」としてみられる例
- 細かなミスやケアレスミスが多い
- 約束を守ることができない
- 時間管理が苦手
- 片付けが苦手
多動性症状
多動性症状は、落ち着きなく動いてしまったり、衝動的に動いてしまう症状です。
じっとしていられなかったり、感情を抑えられないため、仕事でも衝動的な行動をしてしまうケースが少なくありません。
例えば、「仕事で相手の仕事を待つことができない」「静かにすることができない」などが多動性症状の一例です。
多動性症状は、小児期で目立ちやすいですが、大人になるにつれて症状が目立たなくなってくる傾向にあります。
「多動性症状」としてみられる例
- 落ち着かない雰囲気
- 貧乏ゆすりのような目的のない行動をおこなう
- 思ったことを全部口にしてしまう
ADHDの原因
ADHDの原因はいまだはっきりわかっていません。
しかし最近、研究が進んでいくにつれて、ドパミンやノルアドレナリンなどの脳内神経伝達物質が関与していることが明らかになってきています。
ドパミンやノルアドレナリンは、脳内で情報伝達を担う重要な神経伝達物質ですが、これらが減少することでADHDの症状があらわれるのではないかと示唆されています。
そのため、ADHDは親のしつけによって発症するものではなく、遺伝的な観点や、生まれた時の脳異常、神経伝達物質の関与などさまざまな要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。
症状の改善はできるのか?
ADHDの症状が治るのか不安な方も多いかと思いますが、睡眠や運動などの環境改善を行っていくことで症状改善が見込めます。
生活習慣による症状の緩和
ADHDの方は、生活していくうえで少しの工夫を取り入れることでミスや困りごとを減らせる可能性があります。
最も重要なのは、就寝時間と起床時間を一定にすることです。
ADHDの方は生活のリズムが乱れやすく、結果的に仕事のパフォーマンスに影響してしまいます。
まずは、寝る時間と起きる時間を決めて、毎日の習慣にするよう整えていきましょう。
他にも習慣的に取り入れると、困りごととなっている症状が改善されるライフハックもご紹介します。
例えば、「スケジュールや大事なことをメモに書いて壁に貼る」ことは物忘れに有効です。
ADHDの方は、約束や大事なことを見落としやすい傾向にあります。
そこで、スケジュールや大事なことを壁などの目につきやすいところに貼ることで、忘れてしまうことを防止できます。また、持ち物を1つのバックにまとめてしまうこともおすすめです。
忘れ物をして取りに帰る経験が多い方や支度に時間がかかってしまう方におすすめの方法です。
バッグを毎日変えていたり、バッグを複数使用していると忘れ物をするリスクが大きくなってしまいます。
そのため、使用するバッグを1つに決めてその中に使用するものをまとめて入れておくと良いでしょう。
睡眠の質の改善
ADHDの症状は睡眠不足と関連している可能性があり、短い睡眠時間や質の低い睡眠が物忘れやケアレスミスが多くなる原因になっているかもしれません。
大人のADHDの方では、次の日が仕事であっても夜に自分の興味のあるゲームやネットなどの趣味に没頭してしまい、夜更かししてしまうケースが少なくありません。
そのため、「寝る1時間半前までに入浴し体を温め、寝つきやすくする」「寝る2時間前はPC・ケータイなどのブルーライトを発するものを避ける」「お酒は飲みすぎない」といったことを心がけると良いでしょう。
適度な運動による改善
ADHDで悩んでいる方には運動もおすすめです。
ADHDの原因の1つとして、「神経伝達物質の活動が低下していること」を前述で記載しましたが、運動を行うとノルアドレナリンやドパミン・セロトニンなどの分泌量が上昇することがわかっています。
運動もやりすぎはよくありませんが、20~30分程度のウォーキングやジョギング・サイクリングなどの有酸素運動はADHDの症状改善に効果的と考えられています。
ADHD症状のコントロール
生活習慣や睡眠、運動などの環境改善を行っても症状が改善しない場合は、薬物を使用して症状をコントロールしていきます。
薬の処方でのコントロール
ADHDに処方される薬剤としては「メチルフェニデート(コンサータ)」「アトモキセチン(ストラテラ)」「グアンファシン(インチュニブ)」などがあります。症状に合わせて薬物を選んでいきます。
●メチルフェニデート徐放錠
メチルフェニデート徐放錠は、コンサータという商品名で発売されています。
ドパミンとノルアドレナリンを増加させることで、ADHDの不注意や多動性症状を抑制すると考えられています。
18mg、27mg、36mg錠があり、症状に合わせて増やしたり減らしたりすることができます。
攻撃性があったり、すぐに怒りやすい方は、コンサータの服用で悪化してしまう可能性があるため他の薬剤が選択肢となります。不安が強い場合には、コンサータが選択肢となります。
商品名 | コンサータ |
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有効成分 | メチルフェニデート塩酸塩 |
効果 | 注意欠陥/多動性障害(AD/HD) |
用法用量 | 18歳以上には、18mgを初回用量として1日1回朝に経口投与します。 増量が必要になった場合は、1種間以上の間隔をあけて、9mgもしくは18mg増量します。 最高1日72mgまで使用できます。 |
メーカー | ヤンセンファーマなど |
●アトモキセチン
アトモキセチンは、ストラテラという名前で発売されている薬剤です。
シナプス間のノルアドレナリン・ドパミンを増加させることで不注意や多動性症状、衝動性を改善させます。
カプセルタイプで40mg、25mg、10mg、5mgから選ぶことができます。ジェネリック医薬品も出ておりますが、ジェネリックでは錠剤も発売されています。
商品名 | ストラテラ |
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有効成分 | アトモキセチン塩酸塩 |
効果 | 注意欠陥/多動性障害(AD/HD) |
用法用量 | 18歳以上では、1日40mgから開始し、80mgまで増量して80~120mgの間で維持します。 服用は1日2回に分けて投与します。 |
メーカー | 日本イーライリリー、東和薬品、日医工など |
●グアンファシン
グアンファシンは、多動性症状や衝動性に効果が期待されるADHD治療薬です。
武田薬品工業が発売しており、3週間ほどで効果が発現します。もともと降圧薬として開発されていたため、副作用としては、眠気や血圧低下が報告されています。
機序としては、シナプスにあるアドレナリン受容体を活性化させることで、アドレナリンを増加させ、ADHD症状を改善させると考えられています。
商品名 | インチュニブ |
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有効成分 | グアンファシン |
効果 | 注意欠陥/多動性障害(AD/HD) |
用法用量 | 18歳以上では、1日2mgから開始して1週間以上あけながら1㎎ずつ増量します。 1日4~6mgを維持用量とします。 |
メーカー | 武田薬品工業 |
<グアンファシン関連商品①>
●グアンファシン
グアンファシンは、注意力を高め、落ち着きを取り戻す薬剤で、ADHD治療に使用されます。
6歳以上の小児期注意欠陥・多動性障害(ADHD)に加え、成人期注意欠陥・多動性障害(ADHD)に対しても使用可能です。
商品名 | グアンファシン |
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画像 | |
有効成分 | グアンファシン |
効果 | 注意欠陥/多動性障害(AD/HD) |
用法用量 | 18歳以上では、1日2mgから開始して1週間以上あけながら1㎎ずつ増量します。 1日4~6mgを維持用量とします。 |
メーカー | 武田薬品工業 |
購入ページ | インチュニブの購入ページはこちら |
ADHD(注意欠陥・多動性障害)に関するよくある質問
- QADHDのタイプはどのようなものがありますか?
- A
ADHDには、集中力を持続できない「不注意優勢型」と、落ち着きがない「多動・衝動性優勢型」、両方が混ざっている「混合型」の3種類に分けられます。
大人になってからADHDと診断される方は「不注意優勢型」が多いとされています。
子供のころに「多動・衝動性優勢型」だった方は、比較的早めに学校の先生が気が付いてくれたり、両親と一緒に病院を受診するケースが多いですが、「不注意優勢型」の子供は気が付かれにくくそのままに大人になります。
仕事をしていく中で本人が困ることが増え、病院を受診し、ADHDと診断される傾向にありますので、大人のADHDでは「不注意優勢型」が多いと考えられています。
- Q大人になってADHDと診断された場合、悩みを相談できる場所はあるのでしょうか?
- A
困った頃があれば気軽に相談できる支援機関があります。
例えば、発達障害者支援センターでは、生活や仕事に関するさまざまな情報を提供しています。
各地域にありますので、気になった場合にはお問合せしてみると良いでしょう。また、地域によっては「家族会」があります。
家族会では、同じような疾患を持ち困っている人同士が集まって活動しているので、悩みを分かち合うことができます。Webサイトなどで探すと良いでしょう。
- QADHDかもしれないと思ったらどうしたらよいでしょうか?
- A
「ADHDかも?」と不安になった場合は、まず自分のこれまでの行動や生活を振り返ってみてどんなことで困っていたのかをまとめてみましょう。
まとめておくと病院に受診した際、診断をつける際の補助的なものとして役に立ちます。
その後、専門機関で自分の症状がADHDにあてはまっているのかみてもらうと、治療やサポートを受けることができます。
診断がつくことで、「ミスや落ち着きのなさは自分だけのせいではなかった」と安心して生活することができます。
- QADHDの診断はどのようにするのでしょうか?
- A
国際的に「DSM-5」という診断基準が定められています。
仕事や日常生活に関する簡易問診票のようなもので、結果をもとに医師がADHDかどうかを判断します。
ほかの疾患が隠れていないかもみることができます。
最後に
ADHDは子供だけの疾患と考えられていましたが、近年ADHDの症状に悩まされる大人の方が増えてきています。
仕事でミスが多かったり、落ち着きがなかったりと困っている中で、病気が原因と思わずに自分の症状について我慢している人も多いかもしれません。
しかし、ADHDは疾患であり生活習慣の改善や薬物治療によって改善が可能です。
少しでも不安な方は、これまでの行動や経験を振り返り、一度病院を受診してみると良いでしょう。
出典
生きづらさを、生きやすさに 大人の発達障害ナビ 大人の注意欠如・多動症(ADHD)とは
LITALICO 仕事ナビ 大人のADHD(注意欠如・多動症)の特徴は?診断、治療、仕事での対処法、支援を紹介
医療法人社団ベスリ会 東京
TMSクリニック ADHD(注意欠如多動症)症状を目立たなくする方法とは?