デパスが輸入規制、代わりになる薬はあるの?
日本で最も多く使用されている安定剤は何か知っていますか?実は日本で最も多く使用されている安定剤と言えば田辺三菱製薬株式会社が製造販売している「デパス」があげられます。
名前を聞いたことのある人もいるかもしれませんね。中には使用している人もいるかと思います。その位デパスは認知されている医薬品になります。
一般的に安定剤と言えば精神科や心療内科が処方するイメージですが、デパスは内科や整形外科などでも多く処方される医薬品です。その位汎用性が高くキレの良い薬だと言えます。
しかしデパスはある日を境に規制の対象となってしまいました。一体デパスに何があったのでしょうか?デパスの作用や服用の注意点、副作用なども含めて詳しく解説していきます。
デパスとは?
デパスは一般名をエチゾラムと呼びベンゾジアゼピン系の抗不安薬に属します。
その作用は抗不安作用の他に、筋弛緩作用と催眠鎮静作用を併せ持ちます。
その為デパスは日本では、「神経症、うつ病、心身症、統合失調症、頚椎症・腰痛症・筋収縮性頭痛」対して使用することが認められています。
しかしその作用は短時間型である為効果を持続させるためには1日3回の服薬が必要となります。
デパスの作用は視床下部及び大脳辺縁系、特に扁桃核のベンゾジアゼピン系受容体に作用します。GABA受容体のクロライドチャネルの開口作用を増強することで興奮を抑制します。
デパスの特徴は、速効性が期待できることと作用が強力である事があげられます。作用時間は短いもののしっかりと効果が実感できる抗不安薬と言えます。
どんな副作用があるの?
主な副作用
眠気、ふらつき、倦怠感、脱力感が報告されています。これらは薬の中枢神経抑制作用(ちゅうすうしんけいよくせいさよう)及び筋弛緩作用(きんしかんさよう)による影響と考えられます。
この副作用があるからこそ自動車の運転など危険な行為を伴う作業には従事してはいけません。特に高齢者などはふらつきによる転倒のリスクが上がります。
転倒して骨折などしてしまうとその後寝たきりになる可能性も秘めていることから高齢者への投与は特に注意が必要です。
重大な副作用
依存性(いぞんせい)、呼吸抑制なども報告されています。特にデパスは依存性の強い医薬品です。
どのくらい使うと依存になりやすいかはその時の状況にもよりますが、1か月以上使う場合は注意が必要です。
また投与量の急激な減少ないし中止することで、離脱症状(りだつしょうじょう)が現れることがあります。症状が良いからと言って自己判断で服薬を中止してはいけません。
投与を中止する場合には徐々に減量するなど慎重に行う必要があります。
デパスを飲んではいけない人は?
デパスを飲んではいけない人に該当するのは急性閉塞隅角緑内障(きゅうせいへいそくぐうかくりょくないしょう)の人と重症筋無力症(じゅうしょうきんむりょくしょう)の人がそれに当たります。
- 急性閉塞隅角緑内障
デパスを服薬する事で、眼圧が上がってしまう可能性があるため - 重症筋無力症
筋弛緩作用により症状を悪化させる恐れがある為
また慎重投与が必要な方として、心臓・肝臓・腎臓に障害のある人や脳に器質的障害のある人などがそれに該当します。
いづれの場合でも可能な限り別の医薬品の検討をした方が良いでしょう。
さらに併用に注意が必要な医薬品もあります。
中枢神経抑制剤、MAO阻害剤、フルボキサミンマレイン酸塩、アルコールを常時摂取している人は併用に注意する事と規定されています。
相互作用によりデパスの効果を強めることにつながる為、こちらも可能な限り別の医薬品を検討しましょう。
デパスのジェネリック薬
- 「NP」(ニプロ株式会社)
- 「クニヒロ」(皇漢堂製薬株式会社)
- 「EMEC」(アルフレッサ ファーマ株式会社)
- 「アメル」(共和薬品工業株式会社)
- 「日新」(日新製薬株式会社)
- 「トーワ」(東和薬品株式会社)
- 「JG」(長生堂製薬株式会社)
- 「NIG」(日医工岐阜工場株式会社)
- 「オーハラ」(大原薬品工業株式会社)
- 「ツルハラ」(鶴原製薬株式会社)
- 「SW」(メディサ新薬株式会社)
- 「TCK」(辰巳化学株式会社)
- 「日医工」(日医工株式会社)
- 「フジナガ」(藤永製薬株式会社)
- エチラーム錠0.5mg/1mg(Intas Pharmaceuticals)
- エチラーム舌下錠(Intas Pharmaceuticals)
有効成分は同じですが添加物などは異なります。
製造方法や製剤工夫なども異なりますが血中濃度の変化が先発医薬品であるデパスとほぼ同等になるよう設計されています。
しかし人によっては効果に違いを感じる方もおり、やむなく先発医薬品であるデパスに戻す人もいることは確かです。
向精神薬に指定されたデパス
2016年10月まではデパスも処方制限などなく長期処方が可能な医薬品として取り扱われてきました。鍵のかかる所にしまう必要などなく、一般の個人が輸入することも可能でした。しかしそんなデパスですが2016年10月14日(金)より向精神薬として指定されることになりました。
それは2016年9月14日厚生労働省の通知より新たに3物質を向精神薬に指定するとの発表による内容によるものです。その3成分とは「ゾピクロン」、「エチゾラム」、「フェナゼパム」です。フェナゼパムについては国内において医薬品としての流通はありませんが、国際条約上規制対象とされた為規制されました。
これに伴い規制と罰則(向精神薬に関する罰則:最高で7年以下の懲役又は200万円以下の罰金。)が強化されることになりました(向精神薬は、医師から処方された本人が携帯して入国する場合を除いて、一般人が海外から個人的に輸入することは禁止されています。また、本人が携帯せず、他の人に持ち込んでもらったり、国際郵便などで海外から取り寄せたりすることもできません)。
さらに向精神薬は、麻薬及び向精神薬取締法施行規則で定める分量の範囲内で、自己疾病の治療目的で携帯して輸出入することができます。日本へ入国(又は日本から出国)する際に携帯して輸入(輸出)できる分量としてエチゾラムは90mgと規定されています。
なぜ突然デパスはこの様に厳しい指定の対象となったのでしょうか。その原因について詳しく解説いたします。
デパスはなぜ輸入規制になった?
デパスが規制されることになった一番の原因はデパスの特性である「依存性」と「耐性」によるものの影響と言えます。デパスは非常に効果の優れた医薬品です。一度デパスの味を覚えてしまうと別の医薬品を使用したときにはデパスの方がよく効いた、デパスの方が良かったなど多くの方が絶賛し結局デパスに舞い戻ります。
ここで問題となる依存性ですが、具体的に身体的依存と精神的依存が存在します。
身体的依存とはデパスの使用をやめることで、離脱症状(りだつしょうじょう)と呼ばれる身体の症状が起こる状態を言います。また精神的依存とはデパスを連用する事によりデパスが欲しくてたまらない気持ちが抑えられなくなる状態を言います。
またさらにデパスの使用を続けていくと徐々に耐性が生じてきます。つまり今までの量では効きが弱くなってくるためデパスの使用量が増えてしまう状態を言います。
この様に身体的依存、精神的依存、耐性が生じてしまうとデパスなしでは生活ができない体になってしまいます。
これらの事をうけて、デパスを向精神薬として規制する事で乱用を防止しようとしました。
向精神薬となった今、デパスも1988年に採択された「麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約」の対象となり、輸入及び輸出の規制対象となりました。
向精神薬とは?
向精神薬とは中枢神経に作用して、精神神経系作用して精神機能に影響を与える物質、例えば、医薬品であれば精神安定剤、催眠鎮静剤、鎮痛剤等であって、法及び政令で定めるものを言います。
向精神薬は、その濫用の危険性、及び医療上の有用性の程度により第一種向精神薬から第三種向精神薬に分類され、各々規制内容に違いがあります。
第一種向精神薬にはメチルフェニデート(リタリン・コンサータ)が該当します。
第二種向精神薬にはフルニトラゼパム(サイレース)、ペンタゾシン(ソセゴン)などが該当します。
第三種向精神薬にはトリアゾラム(ハルシオン)、ブロチゾラム(レンドルミン)そしてエチゾラム(デパス)が指定されています。
具体的に見ると、まず主治医が処方できる日数が14日、30日、90日までと医薬品個々に制限がかかりました。
第三種向精神薬であるデパスは30日までの処方制限となります。また自己疾病の治療目的で向精神薬を携帯して入国又は出国する以外を除いて輸入又は輸出が禁止となります。
医療機関では誰もいない時にはかぎのかかる引き出しに入れて管理が必要です。
許可なく人に譲り渡すと法律違反となります。などなど「麻薬及び向精神薬取締法」により厳しく規制されています。
デパスは市販で購入できない?
デパスと同じ有効成分を持つ市販薬は現在のところ販売されていない為購入することはできません。
ましてや向精神薬である為海外から個人輸入することなどできるわけもありません。
濫用の恐れのある医薬品ですので入手するには必ず医師の処方を必要とします。
でも中には病院に行く時間が取れず市販薬で何とかしたい場合もありますよね。
その場合には類似の医薬品を選択し様子を見ることも一つの手段として有効です。
では類似の医薬品にはどのようなものがあるのでしょうか?それにはまずどの様な症状に対しデパスが必要なのかによります。実のところデパスに類似の市販薬として使用できる適応症は「不眠症」及び「安定剤」のみになります。
それ以外の症状、例えば神経症やうつ病、統合失調症などにおける症状を改善する市販薬は販売されていません。
まずは原因疾患をしっかり治療する為にも病院を受診するようにしましょう。
デパスは病院でも処方してもらえない場合がある?
デパスは病院受診さえすれば誰でも処方してもらえるわけではありません。まず禁忌に該当する患者の場合には処方はできません。
次に慎重投与に該当する患者の場合、例えば心障害の患者、脳に器質的障害のある患者、衰弱患者、呼吸障害のある患者、腎機能障害患者、肝機能障害患者などは処方できない訳ではありませんが無理に処方することもありません。
デパス以外に処方薬を服用中の患者のなかにも処方してもらえない場合があります。それは併用注意薬を服用中の患者です。
例えば他の中枢神経抑制剤を服用中であったり、MAO阻害剤、フルボキサミンマレイン酸塩等を服用している患者などがそれに該当します。
その他主治医が患者の症状を確認した上で処方が適さない場合には処方してもらえません。
そもそも治療薬と言うものは医師が判断して処方するものであってほしいからと言ってお願いすれば必ず処方してもらえると言うことはありませんのでご注意下さい。
デパスの代わりになる、通販で購入できる医薬品とは?
デパスの代替品を通販、つまり個人輸入できる医薬品について紹介いたします。
先ほどデパスと同成分であるエチゾラムを配合した市販薬は販売していないことはお話ししました。さらには市販薬で購入するにあたり睡眠薬であれば購入できることもお伝えいたしました。それでは具体的にどのような医薬品ならば病院を受診せずに入手することができるのでしょうか。
ドラッグストアや通販で市販薬を購入する場合に注意しなければならない点が一つだけあります。
それは購入する薬が自分の疾患つまり症状に適応しているのかと言うことです。
その為には正確に自分の症状を把握する必要があります。その上で紹介する市販薬を購入し治療するようにしましょう。
精神安定剤
デパスに類似する精神安定剤は市販薬としてドラックストアなどでは販売していないことはお話したところではありますが海外から個人輸入する場合であれば入手することが可能です。
睡眠薬
こちらは海外から個人輸入可能な商品になります。
商品名 | ハイプナイト【ルネスタジェネリック】 | ハイプロン【ソナタジェネリック】 |
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一般名 | エスゾピクロン | ザレプロン |
価格 | 1錠あたり63円 | 1錠あたり40円 |
メーカー | Consern Pharma | Consern Pharma |
購入ページ |
デパスの代わりになる市販薬はあるの?その効果は?
個人輸入はしたことがない、海外から取り寄せるのは不安など少し購入にハードルが高い場合であれば普段からよく行くドラッグストアで購入できる医薬品を紹介いたします。
普段から慣れ親しんだ場所においてあるものであれば購入のハードルはかなり低く容易に手を伸ばすことができますよね。
それに個人輸入と異なる点はドラッグストアにいる薬剤師や登録販売者に相談することができると言うことです。
その薬の良い点、悪い点、また症状に適しているかなど確認した上で購入できるメリットはかなり大きいのではないでしょうか。
購入にもれなく安心が付いてくると言う点では薬局やドラッグストアでの購入も選択肢の一つとしてありでしょう。
デパスの適応症は複数ありますが今回は「睡眠薬」と「安定剤」に絞って紹介しますので一時的な症状緩和を目的として使用してみると良いでしょう。もし慢性的な症状であればそれは病院を受診してください。
市販薬の睡眠薬を紹介
小林製薬より販売している第2類医薬品になります。有効成分として酸棗仁湯エキス、サンソウニン、チモ、センキュウ、ブクリョウ、カンゾウを配合し心身が疲れ、精神不安、不眠などがあるものの不眠症、神経症に対し効果があります。
漢方薬が心身のバランスを整えストレスを軽減し不眠症を改善します。
エスエス製薬より販売されている第2類医薬品になります。
有効成分であるジフェンヒドラミン塩酸塩が覚醒物質であるヒスタミンの作用を抑制する事で自然に近い眠りに導きます。
主に寝つきが悪い、眠りが浅いなどの一時的な不眠症状を緩和しますドリエルには6錠のトライアルタイプと12錠の通常タイプ、またラベンダーアロマを配合した速く溶けるカプセルタイプのドリエルEXが販売されています。
皇漢堂製薬より販売されている第2類医薬品になります。
有効成分としてジフェンヒドラミン塩酸塩が使用されており寝つきが悪い、眠りが浅いなどの一時的な不眠の症状を緩和します。
リポスミンは医療用の睡眠薬(ベンゾジアゼピン系)とは異なり、抗ヒスタミン剤の副作用「眠気」を応用した製品です。
市販薬の安定剤を紹介
小林製薬から発売している第2類医薬品になります。有効成分にパッシフローラエキス、カノコソウエキス、ホップエキス、チョウトウコウエキスを配合しておりイライラ感・興奮感・緊張感の鎮静に伴う疲労倦怠感・頭重の緩和に効果を示します。
植物由来の生薬の働きで気持ちをおだやかにします。
仕事のイライラや気持ちが高ぶって眠れない、ストレスでカッとなる場合に投与する事で症状を緩和します。
伊丹製薬から発売している第2類医薬品になります。
有効成分にブロモバレリル尿素、アリルイソプロピルアセチル尿素、ジフェンヒドラミン塩酸塩が配合されており、頭痛、精神興奮、神経衰弱、その他鎮静を必要とする諸症に対し効果を示します。
ストレスによるイライラ・ドキドキを鎮めてリラックスし気分を落ち着かせ穏やかにします。
デパスに関するよくある質問
- Qデパスを服薬していますがお酒を飲んでも良いですか?
- A
エタノールとデパスは相加的な中枢抑制作用を示す事が考えられます。
デパス服用中にアルコールを摂取すると精神機能、知覚・運動機能の低下を起こすおそれがあります。
デパスを服用している間は飲酒は控えるようにしましょう。
- Qデパスを飲むことを急にやめたらどうなりますか?
- A
デパスの量を急激に減らしたり、中止したりすることで、けいれん発作、せん妄(せんもう:興奮状態、幻覚、妄想など)、振戦(しんせん:手足のふるえなど)、不眠、不安、幻覚、妄想などの離脱症状があらわれることがあるので、この薬を中止する場合には、徐々に減量していくようにしましょう。
- Q飲み忘れたときはどうしたら良いですか?
- A
服用を忘れた場合は、気が付いたタイミングでできるだけ早く服用してください。
ただし、次に服用するまでの時間が短い場合は、忘れた分は服用せずに1回分を飛ばしてください。絶対に2回分を1回で服用してはいけません。
誤って多く服用した場合は、すぐに医師または薬剤師に相談してください。
- Q錠剤が飲めない場合粉砕しても良いですか?
- A
デパスは粉砕して服薬することができません。
デパスの規格にデパス細粒1%が販売されておりますので細粒剤に変更して調剤してもらうと良いでしょう。
- Q高齢者が服薬する際に注意する点は何ですか?
- A
デパスには筋弛緩作用があります。
これにより、肩こりや腰痛、筋緊張性頭痛を軽減させることが期待できます。
しかしながら、下肢の筋肉も弛緩してしまうため、ふらつくことがあります。
特に高齢者では、夜間にトイレへ歩くときにふらついて転倒し、骨折に至るケースがあります。
高齢者の骨折は最悪寝たきりに至ることもある為特に注意が必要です。
まとめ
デパスまとめ
デパスの効果
- 抗不安作用
- 筋弛緩作用
- 催眠鎮静作用
- 依存性がある
デパスの副作用
デパスは気持ちを落ち着かせる効果だけではなく催眠作用も期待できます。さらには筋弛緩作用も強い為肩こりにも効果を示す非常に優れた医薬品です。しかし優れた効果の裏では依存性が問題となっています。その為2016年9月に向精神薬に指定されました。それを受け処方も30日分制限となり、海外からの輸入も禁止となりました。しかし処方箋が必要な医療用医薬品の中には、海外通販でも購入できる薬があります。デパスは輸入規制がかかっているため個人輸入はできませんが、デパスと似た効果を持つ抗不安薬・抗うつ薬・睡眠薬の中には個人輸入で購入できるものがあります。また薬局やドラッグストアで買える市販薬もあります。何点か類似商品も紹介しましたがいずれにせよデパスと同等の効果を感じられる医薬品は今のところ販売されておりません。
出典
厚生労働省
デパス錠0.25mg/0.5mg/1mg/1%添付文書
独立行政法人医薬品医療機器総合機構 ナイトミン
独立行政法人医薬品医療機器総合機構 ドリエル
独立行政法人医薬品医療機器総合機構 ドリエルEX
独立行政法人医薬品医療機器総合機構 リポスミン
独立行政法人医薬品医療機器総合機構 イララックa
独立行政法人医薬品医療機器総合機構 ウット