てんかんの原因と種類・間違えられやすい病気や対処法・治療法を解説

てんかんの原因と種類・間違えられやすい病気や対処法・治療法を解説 てんかん

てんかんとは

てんかんとは、発作を繰り返し発症する脳の慢性的な疾患です。
およそ100人に1人の割合で発症するといわれており、日本でも100万人のてんかん患者さんがいると推計されています。
私たちの脳には数百億の神経細胞が存在していますが、正常の人の場合、神経細胞同士で電気的な興奮を起こすことで情報を伝達しています。
一方でてんかん患者さんの場合は、この電気的な興奮が過剰に起こります。
てんかん発作の症状は人によってさまざまですが、患者さんごとにほとんど一定の症状を繰り返すことが特徴です。

てんかんの年代別発症率

てんかんは100人に1人の割合でみられる幅広い疾患ですが、年代別に見てみると小児と高齢者での罹患割合が最も高くなります。
3歳以下で症状が出始めることが最も多く、成人になると減少するものの、60歳を超えると脳卒中や脳梗塞などの疾患に伴い、てんかん罹患割合が再度増加していきます。

図 てんかんの年代別発症率【参考元:てんかんinfo UCSCares てんかんについて】

てんかんの原因

てんかんの原因はさまざまありますが、「特発性てんかん」と「症候性てんかん」で異なっています。
ただし、発生する機序としては、どちらも脳の電気信号が過剰に発生することによって起こります。
正常な人では、脳の電気信号によって体に命令を出し、走ったり、歩いたり、止まったりといったような動きができるようになります。
一方、てんかん患者さんの場合は、電気信号が過剰に発生してしまうため、適切な命令ができず、体の動きをコントロールできなくなります。
結果、発作の原因となります。

特発性てんかん

「特発性てんかん」は脳に明らかな病変が見つからないてんかんです。
検査で異常が出ないため、原因も不明のまま治療をおこなっていきます。
あるデータでは、全体の65%ほどが特発性のてんかんであるとされております。

症候性てんかん

「症候性てんかん」は、脳に障害が起こることや、脳の一部が傷つくことで発症するてんかんです。
生まれつきであったり、脳出血、脳梗塞、認知症、脳炎などが原因となって発症します。

図 てんかんの発症原因【参考元:epiサポ てんかんと一緒に暮らす】

てんかんの種類

てんかんは、大きく2種類に分けられます。
過剰な電気興奮が脳の一部に限って起こる「部分発作(焦点発作)」と広い範囲で起こる「全般発作」です。
この2種類からさらに発作の症状や発作型によって細かく分類されます。

部分発作(焦点発作)

過剰な電気興奮が脳の一部に起こる発作です。

単純部分発作

本人の意識があるまま発作が起こります。
そのため、症状については本人も覚えていることが特徴です。
症状としては、「体が回転する」、「輝く点や光が見える」「自律神経の異常」などがあります。

複雑部分発作

症状が起こっているとき本人の意識はありません。
意識が徐々に遠のいていくことが多いとされていますが、意識障害中に倒れることは少ないです。
症状としては、「急に動きが止まり顔がぼーっとする」、「口をもぐもぐさせる」といったことが特徴となります。

二次性全般化発作

単純部分発作や複雑部分発作の症状が起こりますが、その後大きな発作に移行します。
発作が始まる前に前兆がみられることが多いとされ、脳波をはかることで診断が可能となります。

全般発作

電気的な興奮が脳の全体で起こるため、意識障害を起こす患者さんがほとんどです。

強直間代発作

突然発作が起こり、強直発作(口を堅く食いしばったまま手足を伸ばす強直状態のまま発作を起こすこと)と間代発作(手足をがくがくと一定のリズムで曲げたり伸ばしたりする発作のこと)を起こします。
それぞれ1分未満とされていますが、発作が終わった後には30~1時間ほど眠りにつくこともあります。
意識がなく、突然倒れるため、発作とともに事故への注意が必要です。

欠神発作

けいれんを起こしたり倒れたりすることはありませんが、通常の動きの途中で数十秒間意識がなくなります。
話している最中で急に話が途切れる、眼球が上転する、呼びかけに反応しないといった症状がよくあらわれます。

脱力発作

全身の筋肉の緊張が消失することにより起こる発作で、突然崩れるように倒れます。
発作の時間が数秒と短いため、発作に気が付かずに放置してしまうパターンが散見されます。

ミオクロニー発作

全身もしくは手足などの一部が一瞬だけぴくっと収縮する発作です。
わずかなため自覚することも少ないですが、症状が大きいと転倒してしまったり、持っているものを投げ飛ばしてしまったりすることもあります。
光によって起こりやすいともされており、寝起きや寝入りに発症しやすい傾向があります。

けいれんとの違いと間違われやすい病気

けいれんとてんかんはどちらも自身でコントロールできない症状という観点では同じように見えますが、実際は異なっています。
けいれんは、突然起こる手足や体の筋肉の不随意な収縮で、発生する原因を問いません。
一方でてんかんは、必ず脳の神経細胞の異常が原因となり、体の筋肉の不随意な収縮以外にも、意識の消失やぼーっとしてしまうなどさまざまな症状があらわれます。
非常に混同しやすい症状であるため、間違えられやすい疾患も多数存在します。
別の疾患だと思ったらてんかんだった、ということがないように、間違えられやすい疾患についてご紹介します。

失神

失神はてんかんと非常に間違えられやすい疾患の1つです。
失神は、不整脈などの心疾患や一過性脳虚血発作、血糖値の低下や低ナトリウム症などでも引き起こされます。
見分け方としては、失神は突然倒れるといったような意識障害が突発的に起こるのに対して、てんかんは前兆を伴うことが多いとされています。
また、失神は比較的早めに回復しますが、てんかんは回復に時間がかかり頭痛や神経症状を伴いながら回復します。

認知症

てんかんは高齢者の罹患率も非常に高いです。
高齢者がなるてんかんを高齢者てんかんといっていますが、認知症と症状が似ていることから間違えられやすい疾患です。
急に怒り出す、話したことを覚えていないなどは認知症にも高齢者てんかんにもみられる症状です。
見分ける方法としては、てんかんの場合は、同じ症状を繰り返すことが多いです。
本人は発作が起きていることに気が付いていないので、ご家族や周囲の方がビデオなどで撮って病院で見せてあげることなどが重要です。

熱性けいれん

てんかんと間違えやすいものの1つに熱性けいれんがあります。
生後6か月~6歳ごろまでの小児がなりやすく、感染症にかかったことで体温が上昇、けいれんをおこします。
見分け方としては、熱性けいれんは発熱が原因となって発作が起こりますが、てんかんは熱を出しているとき以外でも起こります。
また、熱性けいれんはほとんどが2~3回繰り返しておさまることが多いです。
てんかんは同じ症状を繰り返すので、このような繰り返しが見られたら注意です。

もしかして、てんかん?

もしかして「てんかんかも?」と疑う症状についてご紹介します。
普段何気なく過ごされている方でも、もし、てんかんだった場合、発作を起こすタイミングが悪いと事故などにつながりかねません。
気になる症状があれば、一度病院を受診し、相談することが大切です。

子どもの場合

「てんかん」を疑う症状

  • 子どもの記憶がないときがある
  • 口をもぐもぐさせる、反応がない
  • 突然の腹痛の後、混乱したり、眠気があったりする
  • 頻繁に言葉に詰まる
  • うなずく・速いまばたきなどの普通ではない動作を繰り返す
  • 赤ちゃんが仰向けで寝ているとき、両腕でつかむような動きをする

高齢者の場合

「てんかん」を疑う症状

  • ふだんは何の支障もなく日常生活を送っているのに、突然動作が止まり、声をかけても反応しない
  • 無自覚に口元をくちゃくちゃ動かす、身体をゆする、腕を動かす
  • 数十秒か数分たつと、何事もなかったかのように動き始める
  • 状態の良いときと悪いときがはっきりしている

目の焦点が合わない

てんかんが起こった時の対処法

てんかん発作が起こったら、まずはその本人の安全を第一に考えます。呼吸がしにくくならないよう衣服の襟をゆるめたり、嘔吐物で窒息しないように横に顔を向けて寝かせます。

てんかんが起こった時の対処法

  • 衣服のえりやボタンを緩めて気道を確保してください。
  • 食べ物を吐き出しそうになったら、嘔吐物がのどをつかえないように、顔を横に向けてください。
  • 倒れそうになったら座ってください。
  • 発作の状態(開始時間、継続時間、発作のタイプ、状況など)をメモに細かく記録しましょう。
  • 救急車を呼ぶかどうかの判断は5分前後で決めましょう。
  • 近くに危ないものがある場合はよけましょう。

てんかんの治療法

てんかんの基本的な治療は、抗てんかん薬の内服療法です。
抗てんかん薬はさまざまな働きの薬が複数出ていますので、最初は1剤で試して、もし発作が治らなければ2剤以上使用して発作をコントロールしていきます。
その人の症状や過去の発作歴、状況などに合わせて薬を選んでいきます。代表的なお薬を紹介します。

カルバマゼピン

焦点発作という部分的に症状が出る発作の第一選択薬です。全般的な症状が出ている際には悪化することもあり、適していません。量が増えると眠気やふらつきなどを生じることがありますので、異常があらわれた場合にはお近くの医療機関を受診してください。てんかんは精神症状も伴って出るケースが少なくありませんが、このような精神症状の改善にも効果が期待できることが報告されています。

商品名 テグレトール
有効成分 カルバマゼピン
効果 精神運動発作、てんかん性格及びてんかんに伴う精神障害、てんかんのけいれん発作:強直間代発作(全般けいれん発作、大発作)
躁病、躁うつ病の躁状態、統合失調症の興奮状態
三叉神経痛
用法用量 てんかんに使用する場合は、
成人には最初1日200〜400mgを1〜2回に分けて経口投与し、効果が得られるまで徐々に増量します。通常1日600mgが維持用量です。症状にあわせて1日1,200mgまで増量することができます。
小児に対しては、年齢、症状に応じて、通常1日100〜600mgを分けて経口投与します。
メーカー サンファーマ、藤永薬品、共和薬品工業など

バルプロ酸ナトリウム

全般発作という全般的に症状が出る発作の第一選択薬です。片頭痛や気分障害の症状改善にも使用されています。副作用としては消化器症状や眠気などが主ですが、一定の方で体重増加が発現することがあります。高用量は妊娠中の方には使用できません。

●バルプロ酸ナトリウム

商品名 デパケン、セレニカ
有効成分 バルプロ酸ナトリウム
効果 各種てんかん(小発作・焦点発作・精神運動発作ならびに混合発作)およびてんかんに伴う性格行動障害(不機嫌・易怒性等)の治療
躁病および躁うつ病の躁状態の治療
片頭痛発作の発症抑制
用法用量 てんかんに使用する場合、1日400〜1,200mgを1日2〜3回に分けて経口投与します。
メーカー 興和、協和キリンなど

ラモトリギン

全般発作でも部分発作でも使用することができます。レノックスガスト―症候群という子供に出やすい発作にも有効である薬剤です。錠剤は水分がなくても服用ができるので、とっさの発作予防に使用しやすいです。

●ラモトリギン

商品名 ラミクタール
有効成分 ラモトリギン
効果 ・てんかん患者の定型欠神発作に対する単剤療法
・他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の下記発作に対する抗てんかん薬との併用療法
部分発作(二次性全般化発作を含む)
強直間代発作
Lennox-Gastaut症候群における全般発作
用法用量 最初の2週間は1日1kgあたり0.3mgを1日1回もしくは2回に分けて経口投与し、次の2週間は1日1kgあたり0.6mgを1日1回もしくは2回に分けて経口投与します。
その後は、1〜2週間ごとに1日量として最大1kgあたり0.6mgずつ漸増する。維持用量は1日1kgあたり1〜10mgとします。
メーカー グラクソ・スミスクライン、東和薬品、日医工など

<ラモトリギンを含む関連商品①>

●ラミクタール
ラミクタールは、てんかんの発作予防だけではなく、気分の低下を改善する薬剤です。興奮しているアミノ酸を抑制することによって抗てんかん作用を発揮します。

商品名 ラミクタール
画像 ラミクタール画像
有効成分 ラモトリギン25mg・50mg・100mg
価格 25mg:1錠あたり90円~
50mg:1錠あたり120円~
100mg:1錠あたり150円~
メーカー GSK(グラクソ・スミスクライン)
購入ページ

ゾニサミド

全般発作や部分発作に効果が期待されている抗てんかん薬です。てんかんは2剤以上薬を使用することも珍しくありませんが、併用している薬剤への影響が少ないとされています。食欲低下や気分低下の副作用が報告されていますので、注意をしてください。

●ゾニサミド

商品名 エクセグラン
有効成分 ゾニサミド
効果 単純部分発作(ジャクソン型を含む焦点発作、自律神経発作、精神運動発作)
複雑部分発作(精神運動発作、焦点発作)
二次性全般化強直間代けいれん(強直間代発作(大発作))
強直間代発作(強直間代発作(全般けいれん発作、大発作))
強直発作(全般けいれん発作)
非定型欠神発作(異型小発作)
混合発作(混合発作)
用法用量 てんかんに使用する場合、1日100〜200mgを1日1〜3回に分けて経口投与します。その後1~2週ごとに増量していきます。
メーカー 住友ファーマ、共和薬品工業など

<ゾニサミドを含む関連商品①>

●ゾニセップ
ゾニセップは、脳神経の興奮を抑えることで発作などの症状を抑制する抗てんかん薬です。てんかん以外にもパーキンソン病の症状も改善します。

商品名 ゾニセップ
画像 ゾニセップ画像
有効成分 ゾニサミド25mg
価格 25mg:1錠あたり43円~
メーカー Sun Pharma Laboratories Ltd.
購入ページ

てんかんに関するよくある質問

最後に

てんかんは、慢性的な脳の疾患で、症状が分かりにくいため気が付かず過ごしている方もいます。しかし、症状を放っておくと突然の発作に対応できず、最悪の場合事故につながってしまう場合もあります。意識が途切れる、同じ発作症状を繰り返す、ぼーっとしてしまうなどの症状でお悩みの方は、無理に我慢しすぎず、一度治療を検討してみてもよいかもしれません。また、周囲に発作のような症状がある方がいたら、本人は気づいていないケースもありますので、症状のメモを取ってあげる、動画に記録してご本人に伝えてあげるなどといった配慮も大切です。

出典

【参考元:けいれん、てんかん】【参考元:てんかんinfo UCBCaresてんかん 小児てんかん】【参考元:国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター それって認知症?「てんかん」かも!?】
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