小児喘息とは
小児喘息は、名前の通り子供がかかる喘息です。喘息は、空気の通り道である気道にアレルギー性の炎症が起こり、呼吸が苦しくなる状態を繰り返す疾患です。
小児喘息の割合は増加傾向にあり、早くて2~3歳ごろから発症します。大きくても6歳ごろまでには小児喘息の90%ほどが発症するとされています。
子供の場合、大人のように上手に症状が伝えることができないため、不機嫌になったり、泣いたりして伝えようとします。
特に喘息の症状は日中よりも夜明けや朝方に起こりやすいため、子供が苦しそうではないか注意深くみていく必要があります。
また、このような小児期に気道の炎症が長い間続いてしまうと、気道が狭いままとなり、後から治療をしようとしても治りにくくなってしまうリスクがあります。
そのため、薬剤などを使って早めに喘息の症状をコントロールしていくことが重要と考えられています。
小児喘息の症状
喘息は、ダニやホコリ、タバコや動物の毛などさまざまな要因が症状を悪化させる刺激となってしまいます。代表的な症状は、「喘鳴」です。
喘鳴は、呼吸のために必要な気道が狭くなり、「ゼーゼー」、「ヒューヒュー」といった音が鳴る症状で、喘鳴が起きているときは呼吸がしにくくなります。
苦しさから、咳が出ることもあります。また、頑張って呼吸をしようとするため、肩を上下にさせて呼吸をする「肩呼吸」もみられます。喘鳴が落ち着かないと食事や睡眠など日常生活に支障をきたしてしまうため、このような症状をいち早く抑えていくことが大切です。
喘鳴が起こらなくても、息苦しさのみの症状が出る場合もあります。「ゼーゼー」、「ヒューヒュー」という音がなっていないから喘息ではないと判断しないようにしましょう。
呼吸のうち、特に小児喘息では、息を吐くときにつらくなりやすいため、胸に手を当てて立っていられない場合もあります。
小児喘息の可能性がある症状
- 「ゼーゼー」、「ヒューヒュー」といった呼吸音
- 夜間から早朝にかけて息苦しそう
- 横になると苦しそうで、寝ているとき座っている
- 息苦しさや咳が続いている
- 肩を上下させながら一生懸命呼吸する(肩呼吸)
小児喘息の原因
小児喘息の原因は、ダニやホコリ、食べ物などさまざま原因が考えられます。時には寒い空気なども小児喘息の原因となりうる場合があります。
原因となるものを「アレルゲン」と呼んでいますが、一覧でご紹介します。
小児喘息を引き起こすアレルゲン
- ダニ・ほこり
- 犬や猫などの動物の毛
- マラソンなどの運動
- タバコの副流煙
- 冷たい空気に触れるなど、天候
- 花粉
- 食べ物のアレルギー
小児喘息の発作時の対応
発作が実際に起きてしまった場合でも、慌てないよう対処法を知っておくことが大切です。
基本的にはお子さんの呼吸を落ち着かせることが第一優先です。
水分補給
ぜん息発作が家の中などで起こった場合には、すぐに身体を起こして1~2杯のお水を飲ませてください。
まずは落ち着かせることが大切であるため、水を飲んでもらうと同時に大きく息を吸ったり吐いたりを繰り返します。もし途中で痰などが出てきた場合は、飲み込まないよう、吐き出させます。
治療薬の使用
既に発作治療薬をもっていて、再発で発作が出てしまった場合には、すぐに薬を服用しましょう。発作を抑える薬がいくつかありますので、使うことですぐに症状が楽になります。
週1回以上再発の発作が出てしまう場合にはコントロール不足とも考えられますので、治療薬の変更を検討してみてもよいかもしれません。
また、発作が起きた時のために治療薬がどこにあるのかは、本人と一緒に事前に確認しておくことも大切です。
小児喘息の治療薬
ぜん息の治療薬は、「喘息の発作自体を抑える発作治療薬」と「アレルギーによる気道の炎症を改善させる抗炎症薬」に大きく分けられます。
症状に合わせて2つの薬剤を組み合わせて使用していきますが、どちらも薬剤のタイプとしてメインとなってくるのは「吸入薬」です。
吸入薬は、通常の薬ではあまり見られないタイプで、使い方に慣れていない方も多いですが、正しく使うことで最大限の効果が得られる薬剤です。そのため、吸入薬の正しい使い方をご紹介します。
吸入薬の使い方
吸入薬は、薬が噴射されたタイミングで、息を吸い込むことで気道に薬剤を吸入します。タイミングよく薬剤を吸い込めれば、少ない量でも高い効果が発揮されます。吸入薬に多い、加圧定量噴霧式吸入器(pMDI)は、薬の噴射と息を吸うことを同時に自分で行わなければなりません。子供の場合、上手にできない場合もありますので、スペーサーという吸入補助の道具を使うと、より正しく使えるようになります。
まず、スペーサーにpMDIから薬を噴射させて、そのスペーサーから薬を吸い込みます。
難しい場合は、何度も練習させたり、家族が目の前で見せてあげたりすると上手に服用できるようになってきます。
<吸入薬関連商品①>
●アスタリンインヘラー
アスタリンインヘラーは、サルタノールインヘラーのジェネリック医薬品です。有効成分はサルブタモールで、気管支を拡張させることで呼吸が楽になります。持ち運びが可能で、突然発作が起こった場合でもすぐに服用することが可能です。年齢によって服用量が異なります。
<吸入薬関連商品②>
●セロフロインヘラー
セロフロインヘラーは、アドエアのジェネリック医薬品です。吸入して使用しますが、気管支を広げ、炎症も鎮めます。吸入が終わった後にはうがいを行ってください。
商品名 | アスタリンインヘラー |
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有効成分 | サルメテロールキシナホ酸塩・フルチカゾンプロピオン酸エステル125mcg 250mcg |
価格 | 125mcg:1カップあたり16円~ 250mcg:1カップあたり22円~ |
メーカー | Cipla(シプラ) |
購入ページ |
上記関連吸入薬以外にも、アレルギー治療薬をご覧になりたい方は、以下のページよりチェックしてください。
家で気を付けたいポイント
小児ぜんそくのお子さんにとって、症状を引き起こす原因であるアレルゲンを取り除くことはとても大切です。
家の中で生活していると、アレルギー物質が多く発生しやすいため、ご家庭でできるポイントやコツについてご紹介します。
室内環境の整備
ダニやハウスダストなどは生活をしているだけでたまりやすいため、可能であれば寝室は毎日掃除機をかけるのが望ましいでしょう。
ダニは、人のフケや食べこぼし、カビなどに集まってくるため、3日に1回程度は全体の部屋の掃除も行うとよいです。
カーペットやじゅうたん、布団などはダニやホコリが増殖しやすいので、特に念入りに掃除をします。掃除中は窓を開けることや、掃除機の吹き出し口は窓の外に向けることなども気を付けたいポイントです。
小児喘息に関するよくある質問
- Q小児喘息は、成長とともによくなることはないのでしょうか。
- A
小児喘息は、成長に伴ってよくなることがあります。データとしては、小児喘息の子供の60%ほどが、しっかりと幼少期から治療をしていれば、最終的には完全に治るとされています。
完全によくなる状態を目指すために、日常的なコントロールが大切です。毎日発作が起きないように、事前に予防し、肺機能を正常化させることで治癒しやすくなるといわれています。
治療を途中でやめたりすると、その時は問題なくても大人になって再発しやすくなるともいわれています。
そのため、小児喘息の患者さんには毎日のコントロールを習慣化し、しっかりと治るまで治療を続けることが重要です。
- Qぜんそく発作が出た時は、学校を休ませてもよいのでしょうか。
- A
基本的には学校は休まず、発作が起きた場合には普段使用している薬剤で症状の改善を試みましょう。
小児喘息のガイドラインでは、治療の目標の1つに学校を欠席しないことが記されています。喘息で学校を休まないように、コントロールをしていくことが大切で、休んでしまう場合は症状のコントロール不足ととらえましょう。
また、喘息発作が出た時に自宅ではどのような対処法をしているかを学校に事前に伝えておくと、連携が取れて症状への対応も早くなります。
- Q発作がひどく、薬を飲んだ後に吐いてしまった場合はどのように対処したらよいでしょうか?
- A
基本的に薬を服用してから30分以上経過していた場合は、そのままで問題ありません。
しかし、薬を飲んでから30分経過していないのに吐いてしまった場合は、もう1度薬を飲んでください。
- Q小児ぜんそくにぬいぐるみはよくないと聞いたのですが、なぜでしょうか?
- A
ぬいぐるみはダニが繁殖しやすいため、子供のアレルゲンとなる可能性があります。ぬいぐるみをどうしても持ちたい場合は、すぐに洗いやすいものがおすすめで、定期的に清潔に保つことを心がけます。
また、ぬいぐるみと同じく、犬や猫、ハムスターなどを室内で飼うこともダニが繁殖する原因となりますので注意してください。
動物に関連するダニは掃除をしても完全な除去が難しいので、小児喘息の症状を悪化させてしまうことがあります。
- Q小児ぜんそくを持っている子供に向いている運動はありますか?
- A
小児ぜんそくのお子さんに望ましい運動は、運動誘発喘息を起こしにくい水泳やウォーキングなどがよいとされています。
ただし、小児ぜんそくだから、このスポーツはできないというのはありませんので、注意をしながらであればどのスポーツもすることができます。
運動誘発ぜんそくが起きてしまったら、運動を続けず、その場で呼吸を整えてください。
最後に
小児喘息は、子供にとっては非常につらい症状です。なかなか治らない咳や喘鳴を治療せずに放置していると、炎症が悪化し、大人になっても治りにくくなってしまうかもしれません。
小児ぜんそくはきちんと治療をすれば、60%ほどが完全に症状が改善するともいわれています。
そのため、小児ぜんそくが疑われる場合は、早めに医療機関を受診んし、治療を検討していきましょう。
出典
NPO法人 相模原アレルギーの会 小児ぜんそくQ&A
独立行政法人 環境再生保全機構 小児ぜんそくQ&A
アレルギーポータル 小児のぜん息