サリチル酸

成分名

サリチル酸

適応症状

疣贅(いぼ)、鶏眼(うおのめ)、胼胝腫(たこ)

簡易説明

サリチル酸の歴史は古く、紀元前400年頃にギリシャの医師、ヒポクラテスがヤナギの樹皮を噛むことで痛みや熱が和らげる治療を行っていたとされています。ヤナギの樹皮からサリシン(分解するとサリチル酸になる物質)が発見されています。日本でも鎮痛効果や歯痛への効果を期待してヤナギの爪楊枝が使われていました。
日本国内でサリチル酸は医療用医薬品としては角質を柔らかくする作用から、いぼなどの治療薬として用いられています。
サリチル酸製剤(以下、本剤)は国内ではサリチル酸「ケンエー」とスピール膏が発売されています。

処方可能な診療科目

皮膚科など

健康保険の適応

健康保険適応

病院で処方してもらう時の費用目安

診察料などの目安:約10円(*)~80円
(*)薬剤費は点数化された上で請求金額となります。点数は1点が10円となりそれぞれの薬価合計の1円単位を四捨五入して算出します。10円以下の薬剤に関しては1点(10円)と算出されます。
薬代1回あたりの目安:2.38円/g、79.50円/枚
薬代後発品1回あたりの目安:後発品なし
病院によって差が有り薬代の他に、初診料・診察料・検査料などが必要

厚生労働省による認可、または発売年月日

発売年月日:1950年10月25日

国内のジェネリック認可

なし

関連製品(先発薬)

サリチル酸「ケンエー」【製薬メーカー:健栄製薬株式会社】、スピール膏M【製薬メーカー:ニチバン株式会社】

関連製品(ジェネリック)

なし

効果・作用

サリチル酸は古代ギリシャ時代から鎮痛・解熱作用があると考えれていたヤナギの抽出エキスが原料となっていましたが、現在は化学的に合成して製造しています。ちなみに、サリチル酸の元となるサリシンはヤナギの学名サリュックに由来していると言われています。
サリチル酸は鎮痛剤として飲むと苦みが強く、胃腸障害が多いという課題があり、その課題を解決するためにアセチル化しアセチルサリチル酸(アスピリン)が開発されました。その後、サロンパスの成分であるサリチル酸メチルが開発されるなど、サリチル酸はサリチル酸そのものではなく、サリチル酸から合成された成分を鎮痛・解熱成分として使用されるようになりました。

一方、このような歴史的背景から、サリチル酸は分類としてはNSAIDs(非ステロイド性抗炎症剤)の一種に分類されています。このため、2021年3月8日に日本産婦人科学会等から発出された「NSAIDs添付文書改訂に関する周知」にも該当することとなりました。
この通知は「『妊婦にシクロオキシゲナーゼ阻害剤(=NSAIDs)を使用し、胎児の腎機能障害、尿量減少とそれに伴う羊水過少症が起こったとの報告のため妊婦には治療の有益性が危険性を上回る場合のみ処方する』との報告がアメリカ食品医薬品局(FDA)からあったため、日本国内のNSAIDsでもその対応を取る」というものです。アメリカでは48時間を超えてNSAIDsを投与した場合は胎児の超音波検査の実施を考慮することとなっていますが、日本では「適宜羊水量を確認すること」となりました。なおこの措置は、飲み薬の解熱鎮痛剤としての服用だけでなく、血栓予防のための低用量アスピリン(アセチルサリチル酸)、貼り薬、軟膏など飲み薬ではないNSAIDsも対象とするとの通知となっております。

サリチル酸には、鎮痛・解熱作用の他に、皮膚軟化溶解作用や抗菌作用があるとされています。このため、現在では、いぼ、うおのめ、たこの治療薬や化粧品等の防腐剤として使用されています。なお、一般用医薬品としてのサリチル酸は角質溶解作用(細胞間基質を溶解し鱗屑の剥離を促進して角質増殖皮膚を軟化させる作用がある。)、防腐作用(微生物(白せん菌類など)に対して抗菌性があり、その防腐力、石炭酸に匹敵する)と厚生労働省の資料(化膿性疾患薬)に記載されています。
サリチル酸は濃度50%で角質軟化溶解作用を示します。このため本剤もサリチル酸を50%含有しています。
医療用のサリチル酸にはサリチル酸を10%含んだワセリン軟膏製剤もあります。この製剤は角質軟化作用による角化症などのほかに抗菌作用による白癬(みずむし)、腋臭症(わきが)などの適応症を持っています。
微量の場合は抗菌作用による防腐剤として化粧品などにも使用されます。

本剤は国内で有効性・安全性を確認するための臨床試験は行われていません。

使用方法

サリチル酸「ケンエー」
1日1〜2回、患部に塗ります(薬局などで軟膏剤、液剤等にします。)
通常は絆創膏を用います。

スピール膏M
患部と同じ大きさにきって貼り、動かないように固定します。
2~5日ごとに貼り替えます。

患部が化膿している等の異常がある場合は、適切な処置を行った後で使用します。
長期間使用しても症状が改善しない場合は、改めて診察を受け適切な治療を受けてください。
眼には使用しないでください。

副作用

主な副作用
過敏症、皮膚の発赤、紅斑等
広範囲に使用すると副作用が現れやすいので注意してください。
長期間、大量に使用すると、食欲不振、吐き気、消化管出血などが現れることがあります。

※本剤は副作用頻度が明らかになる調査をしていません。

※その他、異変を感じた場合は直ぐに医師の診察を受け指示に従ってください。

使用に注意が必要な方
使用出来ない方

使用が出来ない方
妊産婦・授乳婦(同系列の他の薬剤(NSAIDs)で胎児に異常があらわれたことがあります。)

使用に注意が必要な方
糖尿病の方(感染抵抗力が低下しているので、角質を取る時に皮膚が傷つくと感染しやすくなるため)

上記にあてはまる方は、サリチル酸を使用する事が出来ない可能性があります。
サリチル酸を使用する前に、医師又は薬剤師に使用しても問題ないか必ず確認をして下さい。

併用禁忌薬

併用禁忌薬
なし

併用禁忌薬がないからといって、その他の医薬品と併用するのは危険です
現在、薬を服用している場合は、併用可能かどうか必ず医師に相談してください。

よくある質問
医療用医薬品のサリチル酸と一般用医薬品のサリチル酸の違いは何ですか。

医療用医薬品は医師の診断による治療薬として「処方」される薬剤で、一般用医薬品はご自身の判断で薬局などで購入する薬剤です。
一般に医療用医薬品は効果が高い反面、副作用にも注意が必要とされています。一般用医薬品は様々な年齢、性別、基礎疾患等の方が使用するため安全性が重視されています。また、副作用などのリスクに対して特に注意が必要な第1類医薬品、注意が必要な第2類医薬品、比較的リスクの低い第3類医薬品に分類されています。サリチル酸を含有する「イボコロリ」は第2類医薬品に分類されています。
医療用の医薬品であるスピール膏Mは50%のサリチル酸が含まれていますが、イボコロリの含有量は10%です。

ケミカルピーリングに使われるサリチル酸について教えてください。

ケミカルピーリングにはサリチル酸マクロゴール、サリチル酸エタノールが用いられます。両剤とも医療用医薬品としての承認は受けていません。
両剤のケミカルピーリングに対する評価は、「尋常性挫創治療ガイドライン2017」に記載されています(尋常性挫創=にきび)。ガイドラインにケミカルピーリングに関しては「炎症性皮疹にケミカルピーリングは有効か?」「面皰(めんぽう)にケミカルピーリングは有効か」の2つの設問があり、共にサリチル酸マクロゴールは「選択肢の一つとして推奨する」、サリチル酸エタノールは「現時点では推奨しない」とされています。両剤とも医療用医薬品としての承認を受けていないため保険適応外(自費診療)となります。

誤って目に入ってしまった場合はどうすればよいですか。

水で数分間、注意深く洗ってください。コンタクトレンズを着けている場合は可能であれば外して、外した後も水洗いを続けてください。また、直ちに医師の診察を受けてください。

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