成分ブメタニド(先発薬名ルネトロン)とは?

今回は、「利尿剤」の中でも強い効果を持つとされる「ブメタニド」という利尿剤についてご紹介します。
日本では「ルネトロン」という商品名で多くの患者の疾患に使用されてきました。
その剤形には錠剤と注射剤があり、緊急時にも対応できる薬です。
ブメタニドは「ループ系利尿剤」と呼ばれる種類に分類されます。
むくみや息切れは、体内に水分がたまりすぎているサインです。
その改善に使われるのが利尿剤で、ブメタニド(ルネトロン)はその中でも強力に水分を排出させる薬です。
特に心不全や腎機能障害がある場合、この症状は深刻な合併症を引き起こすかもしれません。
ブメタニドは、そうした状態を改善するために開発された薬です。
ラシックスの40倍の利尿作用と言われる理由
「ブメタニドはラシックスの40倍効く」と言われるのは、利尿作用そのものが40倍強いという意味ではなく、同じ効果を得るのに必要な薬の量が「フロセミド40mg=ブメタニド1mg」でほぼ同等になるため、用量換算上“40倍”と表現されていることによるものです。
【1】ラシックス細粒4%インタビューフォーム
ただし臨床効果は以下の要因に大きく左右され、単純に「40倍効く」とは言えません。
①個人の腎機能の状態によって、薬の効き方は大きく変わります。
②体重や年齢、むくみの程度によって、必要な薬の量は異なります。
③他に飲んでいる薬との相互作用で、効果が変わることもあります。
④食事内容(特に塩分摂取量)によっても、利尿効果は左右されます。
つまり、ブメタニドがすべての人に対して「文字通り40倍効く」わけではないということです。
医師は患者さん一人一人の状態を見ながら、適切な薬と用量を選択しています。
また、効果の強さだけでなく、作用時間や副作用のリスクなども考慮して薬が選ばれます。
ブメタニドは作用が早く現れる一方、効果の持続時間はフロセミドよりやや短い傾向があります。
そのため、単純な「強さ」だけで薬を評価することは難しいのです。
他のループ型利尿剤(フロセミド/トラセミド)との違い
ブメタニド、フロセミド(ラシックス)、トラセミドは、すべて同じループ系利尿剤のグループに属しています。
以下の表で、これらの薬剤の主な違いを比較してみましょう。
| 特性 | ブメタニド(ルネトロン) | フロセミド(ラシックス) | トラセミド(ルプラック) |
|---|---|---|---|
| 用法及び用量 | 1日1~2錠 | 1日1回40~80mg | 1日1回4~8mg |
| 効力比 | 1mg | 40mg | 4mg |
| 適応症 | 腎性浮腫、心性浮腫、肝性浮腫、癌性腹水 | 高血圧症(本態性、腎性等)、悪性高血圧、心性浮腫(うっ血性心不全)、腎性浮腫、肝性浮腫、月経前緊張症、末梢血管障害による浮腫、尿路結石排出促進 | 心性浮腫、腎性浮腫、肝性浮腫 |
| 作用発現 | 30分~1時間 | 30分~1時間 | 1時間程度 |
| 作用持続時間 | 4~6時間 | 6時間 | 6~8時間 |
| 生物学的利用率 (バイオアベイラビリティ) | 約80~90% | 約50~70% (個人差大) | 約80~90% |
| 食事の影響 | 比較的少ない | 吸収が遅延することがある | 比較的少ない |
| 主な代謝経路 | 肝臓及び腸管 | 主に肝または腎臓 | 主に肝臓 |
| 日本での使用頻度 | なし (令和7年11月現在) | 非常に高い | 中程度 |
この表からわかるように、同じグループに属していても、体内での働き方や特性にはそれぞれ違いがあります。
ブメタニドの特徴
①少ない量で効果が得られること
②体内での吸収率が高いこと
③効果の予測がしやすいこと
④尿量およびナトリウム、クロールの排泄を著しく増大する
医師はこれらの特性を踏まえて、患者さんの状態や生活スタイル、他の病気や薬との兼ね合いなどを考慮しながら、最適な薬剤を選択しています。
ブメタニドは通常は注射で投与

ブメタニドは利尿作用が非常に強いため、病院では主に“注射”で使われる薬です。
これは、注射の方が内服薬よりも素早く確実に体内に届き、効果が早く出るからです。
特に、重い心不全や肺に水がたまる肺水腫など、早急に体の水分を抜く必要がある緊急時によく使用されます。
ただし日本では現在、ブメタニドは薬価が登録されておらず販売も中止されているため、病院での保険診療では基本的に使えません。
後述のように海外のジェネリックを個人輸入することで内服薬を入手することはできますが、注射と錠剤では働き方が少し異なります。
注射は効果が出るまでの時間が短く(およそ30分以内)、飲み薬を飲めない人・腸での吸収が悪い人にも確実に使えるという利点があります。
また、他の利尿剤が効きにくくなる「利尿剤抵抗性」のケースでもブメタニドが有効なことがあり、難治性のむくみに対して選択される場合があります。
ルネトロン錠(内服)・注射液は販売中止(2021.3.31)
日本では、かつてブメタニドは「ルネトロン」という商品名で、錠剤(内服薬)と注射液の両方が販売されていました。
しかし、2021年3月31日をもって、製造販売元のサノフィ株式会社が諸般の事情によりルネトロン製品の販売を中止しました。
この販売中止により、日本国内では現在、ブメタニドの内服薬は正規の医療ルートでは入手できません。
これは、需要の減少や代替薬の普及など、さまざまな要因によるものと考えられています。
ただし、個人輸入という方法を通じて、海外で販売されているブメタニドのジェネリック(後発医薬品)を入手することは可能です。
海外ではブメタニドは「ブリネックス(Burinex)」などの商品名で販売されており、現在でも使用することは可能です。
▼メデマートで販売している商品
| 商品名 | ブリネックス |
|---|---|
| 画像 | ![]() |
| 有効成分 | ブメタニド1mg/5mg |
| メーカー | Karo Pharma(カロ・ファーマ) |
| 購入サイト | ブリネックスの購入ページ |
個人輸入に関しては、いくつか注意点があります。
個人輸入の注意点
①個人使用の目的に限って認められています(販売や譲渡は法律で禁止されています)。
②医師の処方や指導なしに使用することが可能ですが血液検査などができません。
③海外の医薬品は、日本の厚生労働省による品質チェックを受けていません。
④副作用や他の薬との相互作用についての情報提供が不十分な場合があります。
個人輸入による医薬品の使用を検討される場合は、よく検討したうえで、適切な指導のもと使用することが望ましいです。
自己判断での使用は、重篤な健康被害を招く恐れがあることは覚えておきましょう。
しかし家にいるだけで通販(個人輸入)といった手段で購入できるというのは大きなメリットであることは確かです。
軽度のむくみを短期使用で治したい場合には個人輸入により使用することも選択肢の一つになるかもしれません。
ブメタニド(先発薬名ルネトロン)の副作用
ブメタニドは効果的な利尿剤である一方で、その強力な作用ゆえに、副作用のリスクも見逃すことはできません。
ブメタニドの副作用を理解し、適切に対処することが、最も効果的な治療を行う上で大切な鍵となります。
ではどのような副作用があるか順を追ってみていきましょう。
主な副作用

①脱水症状(0.10%)
ブメタニドの強力な利尿作用により、体内の水分が過剰に失われると脱水状態になることがあります。
脱水のサインとしては、喉の渇き、口の乾燥、めまい、立ちくらみ、疲労感などが挙げられます。
特に高齢者や、もともと水分摂取が少ない方は注意が必要です。
②電解質異常(1%以上)
・低ナトリウム血症
ナトリウムが低下すると、倦怠感、頭痛、吐き気、筋肉のけいれんなどが起こることがあります。
・低カリウム血症
カリウムが不足すると、筋力低下、不整脈、疲労感などの症状が現れることがあります。
特に心臓の薬を飲んでいる方にとっては、重篤な副作用につながりかねません。
・低マグネシウム血症
マグネシウム不足は、筋肉のけいれんや不整脈などを引き起こす可能性があります。
③血糖値の上昇(0.1%未満)
ブメタニドを含むループ利尿剤は、血糖値を上昇させる可能性があります。
特に糖尿病の方や、血糖値が高めの方は注意が必要です。
④尿酸値の上昇(1%以上)
利尿作用により、血液中の尿酸濃度が上昇することがあり、痛風の発作を誘発する可能性があります。
⑤耳鳴り・難聴(0.1~1%未満)
まれですが、特に高用量を使用した場合や腎機能が低下している場合に、一時的または永続的な聴力障害を引き起こす可能性があります。
⑥脱力・倦怠感(1%以上)
利尿により体から水分が失われると脱力感や倦怠感を感じやすくなります。
注意点と使用上のポイント

ブメタニドの副作用リスクを最小限に抑えるため、以下のポイントに注意することが重要です。
①適切な水分摂取
特別な指示がない限り、十分な水分を摂取することが重要です。
ただし、心不全などの場合は水分制限が必要な場合もあるため、具体的な摂取量については医師の指示に従いましょう。
②バランスの良い食事
特にカリウムを含む食品(バナナ、オレンジ、トマト、ほうれん草など)を適度に摂ることで、低カリウム血症のリスクを減らせる可能性があります。
ただし、腎臓病がある場合は、カリウム制限が必要なこともあるので指示に従ってください。
③定期的な血液検査
ブメタニドを使用している間は、血液検査を定期的に行い、電解質バランスや腎機能をチェックすることが推奨されます。
これにより、問題が深刻になる前に発見することができ、即座に対処することが可能です。
④服用時間への配慮
利尿作用が強いため、夜間の睡眠を妨げないよう、朝や昼間の早い時間帯に服用することが一般的です。
夕方に服用すると、トイレのために睡眠が何度も中断される可能性があります。
⑤自己判断での用量調整は避ける
効果が不十分だからといって自己判断で増量したり、症状が改善したからといって急に中止したりすることは危険です。
⑥アルコールとの相互作用
アルコールは利尿作用を増強したり、血圧低下を引き起こしたりする可能性があります。
ブメタニドを使用中はアルコール摂取を控えるようにしましょう。
⑦他の薬との相互作用に注意
特に以下の薬剤との併用には注意が必要です。
▼併用禁忌薬
| 薬剤名等 | 相互作用 |
|---|---|
| デスモプレシン酢酸塩水和物(ミニリンメルト)(男性における夜間多尿による夜間頻尿) | 低ナトリウム血症が発現するおそれがある |
▼併用注意薬
| 薬剤名等 | 相互作用 |
|---|---|
| 非ステロイド性消炎鎮痛剤 (インドメタシンなど) | 利尿作用を減弱することがある |
| 降圧薬(血圧を下げる薬) | 降圧作用を増強するおそれがある |
| リチウム:躁病(そうびょう)および躁うつ病の躁状態などの治療薬 (炭酸リチウム) | リチウム中毒を起こすことがある |
| アミノグリコシド系抗生物質 (ストレプトマイシン、カナマイシン等) | 腎障害及び聴器障害が発現、悪化するおそれがある |
| 昇圧アミン (アドレナリン、ノルアドレナリン) | 昇圧アミンの作用を減弱するおそれがある |
| ジギタリス製剤 (ジギトキシン、ジゴキシン等) | 心臓に対する作用を増強するおそれがある |
| セフェム系(セファロスポリン系及びセファマイシン系)抗生物質 | 腎障害を増強するおそれがある |
| 糖質副腎皮質ホルモン剤、ACTH (ヒドロコルチゾン等) | 過剰のカリウム放出を起こすおそれがある |
⑧体調変化に敏感になる
めまい、極端な疲労感、不整脈、筋肉のけいれんなどの症状が現れた場合は、電解質異常のサインかもしれません。
⑨高齢者への配慮
高齢の方は脱水や電解質異常のリスクが高まります。また、めまいによる転倒リスクも考慮する必要があります。
家族や介護者は特に注意深く見守りましょう。
ブメタニドのような強力な利尿剤は、適切に使用すれば多くの患者さんにとって効果的な治療選択肢となります。
しかし、その効果を安全に得るためには、定期的な血液検査を欠かさないことが何よりも重要です。
自己判断での減薬や休薬は避けることが大切です。
まとめ
ブメタニド(商品名:ルネトロン)は、強力な利尿作用を持つループ系利尿剤の一種です。
同じループ系利尿剤であるフロセミド(ラシックス)と比較した場合には、なんと40倍の差があります。
この「40倍」という表現は単純な薬理学的比較であり、実際の効果は個人の状態に大きく左右されます。
日本では2021年3月31日にルネトロン製品(内服薬・注射薬)の販売が中止となり、現在は使用することができません。
しかし、内服薬については当サイトメデマートを利用すれば、個人輸入という形でジェネリック医薬品であるブリネックスなどを入手することが可能です。
ブメタニドの主な副作用としては、脱水症状、低ナトリウム血症、低カリウム血症などの電解質異常があります。
その強力な利尿作用ゆえに、適切な水分補給や定期的な血液検査が必要です。
また、高齢者や腎機能障害のある方は、特に慎重な使用が求められます。
利尿剤は単に「水を出す薬」ではなく、体内の水分・塩分バランスを整えることで、心臓や腎臓などの重要臓器の負担を軽減する大切な役割を担っています。
特にブメタニドのような強力な利尿剤は、心不全や難治性のむくみの治療に貴重な選択肢となります。
私たちの身体の水分管理は、多くの慢性疾患の管理における重要な柱の一つです。
適切な知識とサポートのもとでブメタニドを含む利尿剤を使用することは、多くの患者さんの生活の質を向上させる手助けとなります。
むくみや息切れなどの症状でお悩みの方は、自己判断での薬の使用は避け、まずは医師に相談することをおすすめします。
一人ひとりの体調や生活環境に合わせた治療計画を立てることで、安全かつ効果的に症状の改善を目指すことができるようになります。
出典
ルネトロン錠1mg添付文書
ルネトロン注射液0.5mgインタビューフォーム
ルネトロン錠1mgインタビューフォーム
【1】ラシックス細粒4%インタビューフォーム
ラシックス錠10mg/20mg/40mgインタビューフォーム
ルプラック錠4mg/8mgインタビューフォーム
ラシックス錠10mg/20mg/40mg添付文書



