利尿剤で足がつる?知っておきたい原因と対処法を徹底解説

利尿剤

利尿剤が引き起こす足がつる原因とは?

利尿剤が引き起こす足がつる原因画像

「最近足がつることが増えた」「夜中に突然足がつって痛みで目が覚める」
こんな経験をされたことありませんか?
もし、現在利尿剤を服用中なら、その関連性を疑ってみる必要があります。
利尿剤は、高血圧や心不全、むくみなどの治療に幅広く使われている大切な薬です。
詳しい働きについては当サイトメデマートの別のコラムで紹介されておりますのでご覧ください。

実は利尿剤は、その働きゆえに「足がつる(こむら返り)」という副作用が生じることがあります。
結論から申しますと、主な原因は体内のカリウム・マグネシウムなど電解質(イオン)のバランスが崩れることなんです。
電解質とは私たちの体内にある一定の範囲内で保持されており、身体の機能の維持や調節など、生命活動に必要な役割を果たしている物質をいいます。
利尿剤の働きに、特に影響を受けやすいのが「カリウム」や「マグネシウム」などの電解質です。
これらの電解質は私たちの筋肉が正常に働くために必要不可欠なんです。
利尿剤の影響によりこのバランスが崩れてしまうと、筋肉が急激に収縮しやすくなり、「足がつる」という症状が発症してしまうのです。

利尿剤は大きく分けて4つの種類が存在しますが、これらすべての利尿剤で同じように足がつるわけではありません。
特に注意が必要な利尿剤は以下の2種類です。
①ループ利尿薬(フロセミド、アゾセミドなど):強力な利尿作用があり、カリウム排出も多い
【メデマート取り扱い商品】

商品名トーシミドトールムクミトール
画像トーシミドトールムクミトール画像
有効成分トラセミド5mg/10mg/20mg/40mg/100mgトラセミド5mg/10mg/20mgトラセミド5㎎/10㎎/20㎎
メーカーJohn Lee Pharma(ジョンリーファーマ)Intas Pharmaceuticals(インタスファーマ)Asle pharmaceuticals(アスレ)
購入サイトトーシミドの購入ページトールの購入ページムクミトールの購入ページ

②サイアザイド系利尿薬(ヒドロクロロチアジドなど):比較的緩やかですが長期使用でカリウム低下が起こりやすい

商品名アクアザイド
画像アクアザイド
有効成分ヒドロクロロチアジド25mg
メーカーSun Pharma (サンファーマ社)
購入サイトアクアザイドの購入ページ

一方、カリウム保持性利尿薬(スピロノラクトンなど)はカリウムを排出しにくいという特徴があります。
足のつりやすさは個人差があり、同じ薬でも症状が出る人と出ない人がいます。
また、複数の利尿剤を併用している場合や、他の薬と組み合わせている場合はリスクが高まることもあります。
ではどのような作用機序で足がつるのか、詳しいメカニズムを見ていきましょう。

足がつるメカニズム

なぜカリウムやマグネシウムが不足すると足がつるのでしょうか?
私たちの筋肉が正常に動くためには、「収縮(しゅうしゅく)」と「弛緩(しかん)」のバランスが大切で、このバランスを保つために、カリウムやマグネシウムといった電解質が必要となります。
もし何らかの原因によりカリウムやマグネシウムが不足してしまった場合、以下のメカニズムにより「足のつり」が起こります。

足がつるメカニズム

①利尿剤の作用によりカリウムやマグネシウムが尿中に過剰排出される
②血中のカリウム・マグネシウム濃度が低下する
③筋肉や神経の細胞膜の興奮性が高まる
④神経が筋肉に「収縮しなさい」という信号を送りやすくなる
⑤筋肉が自分の意志とは無関係に勝手に収縮し、「つる」状態になる

特に脚の筋肉(ふくらはぎなど)は大きく、使用頻度も高いため症状が出やすい場所になります。

足がつりやすくなる条件

利尿剤による電解質バランスの乱れに加えて、以下の条件が重なるとさらに足がつりやすくなります。

  • 夜間・就寝中
    血流が緩やかになり、電解質の分布にムラができやすい
  • 運動後
    汗でさらに電解質が失われている状態
  • 高齢
    筋肉量の減少や血流の低下により影響を受けやすい
  • 脱水状態
    水分不足で電解質濃度が変化しやすい
  • 運動不足
    血流が悪く、筋肉の柔軟性も低下している

これらの要因が複数重なると、利尿剤の影響がより強く出やすくなります。
例えば、暑い日に外出して汗をかき(脱水)、帰宅後すぐに横になる(血流低下)と、その夜に足がつる可能性が高まるのです。

利尿剤の副作用と注意点

利尿剤の副作用と注意点画像

足がつるのはとても嫌なことですが、それ以外にも気を付けなければいけない副作用や注意点が利尿剤にはあります。

ミネラルバランスの乱れが引き起こす意外な症状

利尿剤の働きで特に注意が必要なのは「カリウム」と「ナトリウム」の喪失です。
カリウムが減ると、足のつり以外にも実は「低カリウム血症」と呼ばれる次のような症状が現れることがあります。

  • 手足のしびれやだるさ
  • 筋力の低下
  • 動悸や不整脈
  • 便秘

詳しい内容については下記ページをご参照ください。

一方、ナトリウムが減ると「低ナトリウム血症」と呼ばれる次のような症状が現れることがあります。

  • 頭痛
  • 吐き気や食欲不振
  • 集中力の低下
  • ひどい場合には混乱や意識障害

これら電解質異常による症状は、「ただの疲れ」と見過ごされがちですが、実は利尿剤の影響かもしれません。

日常生活で感じる「ちょっとした違和感」

「階段を上ると息切れがする」「朝起きるのがつらい」
そんな日常の小さな変化も、実は利尿剤と関係しているかもしれません。
利尿剤によって起こりうる体調変化、いわゆる副作用には次のような症状が見られます。

  • 立ちくらみやめまい(血圧が急に下がることによる)
  • 全身のだるさや疲労感
  • のどの渇きや口の乾き
  • 尿量増加による睡眠の質の低下

特に暑い日や運動後は、通常以上に水分が失われて脱水状態になりやすく、これらの症状が強く出ることがあります。

こんな方は特に注意が必要です

利尿剤の影響は人によって大きく異なりますが、特に注意が必要なのは次のような人です。

  • 70歳以上の方(高齢者)
    体内の水分量が少なく、電解質バランスが崩れやすいです
  • 心臓の病気がある方
    電解質の乱れが不整脈を引き起こし、心臓への負担が増える可能性があります
  • 腎臓の働きが弱っている方
    薬の排出が遅れ、効果が強く出すぎることがあります
  • 他の薬を多く服用している方
    薬の相互作用で副作用が強まる可能性があります

これらの方々は重症化するリスクがあるため、小さな体調変化でも医師に相談することをおすすめします。

「自己判断」が招く思わぬ危険

「今日は調子が悪いから薬を飲むのをやめよう」「むくみがひどいからいつもより多く飲もう」
このような自己判断は、命に関わる危険を招くことがあります。
自己判断で薬の量を変えると次のような症状が出る可能性があります。

  • 血圧の急激な上昇や低下
  • 心臓への負担増加
  • 電解質バランスの重大な乱れ
  • 腎機能への悪影響

何か気になる症状があれば、自己判断せず必ず医師に相談してください。
薬の種類変更や量の調整など、あなたに合った選択をしてもらえます。
利尿剤は正しく理解し対処すれば決して怖い薬ではありません。
むしろ高血圧や心不全などを治療するための強い味方になってくれます。
定期的な診察や血液検査を受けながら、医師と二人三脚で治療を進めていくことが大切です。

足がつる原因と対処法

足がつる原因と対処法画像

足がつる症状に悩まされている方が最も知りたいのは「どうすれば良いのか」という具体的な対処法ではないでしょうか。
ここでは、具体的な対処方法をいくつか紹介します。

医師に相談すべきこと

まずは主治医に頻繁に足がつる症状を伝えましょう。
医師は検査を行いあなたの症状を確認したうえで適切な対処法を提案してくれます。
具体的には、利尿剤の種類の変更(カリウム保持性利尿薬への変更や併用)、服用タイミングの調整(就寝前を避けるなど)、カリウム製剤の処方(必要に応じて補給薬を追加)などがあります。
自己判断は危険ですので、必ず相談した上で指示に従いましょう。

食事からのカリウム補給

日常的な食事でカリウムを意識的に摂ることも大切です。
カリウムを多く含む食品には以下のようなものがあります。

果物バナナ、アボカド、オレンジ、キウイ、さくらんぼ
野菜ほうれん草、じゃがいも、トマト、かぼちゃ、パセリ、ブロッコリー、にんじん
豆類納豆、枝豆、小豆、黒大豆、きな粉、いんげんまめ
その他ヨーグルト、鮭、干しあんず、切り干し大根、刻み昆布、乾燥わかめ

ただし、腎臓病など一部の疾患ではカリウム制限が必要な場合もあります。
医師の指導を確認した上で摂取してください。

サプリメントの活用

食事だけでは十分なカリウムやマグネシウムが摂れない場合、サプリメントの活用も一つの選択肢です。
【メデマート取り扱い商品】

商品名カリウム
画像カリウム
有効成分1粒あたり:カリウム(クエン酸カリウム由来) 99mg
メーカーNOW Foods (ナウフーズ)
購入サイトカリウムの購入ページ

ただし、以下の点に注意が必要です。

  • 医師に相談してから利用する
  • 用量を守って適切に使用する
  • 医薬品との相互作用に注意する

特に、市販のカリウムが含有されているサプリメントを利尿剤と併用する場合は、高カリウム血症になるリスクもあるため、医師の指導を仰ぐことをおすすめします。

足がつった時の緊急対応

実際に足がつってしまった時は、以下の方法で対処しましょう。

  • つった筋肉を優しく伸ばす
  • 足の指をつかんで自分の方に引き寄せる
  • マッサージでゆっくりほぐす
  • 温めて血行を促進する
  • 水分をこまめに摂る

痛みが強い場合は無理をせず、筋肉の緊張が和らぐのを待ちましょう。

生活習慣と足の健康

生活習慣と足の健康画像

薬以外でできる予防・改善方法の一つに「日常生活の改善」が挙げられます。
ここでは、生活習慣の面から足の健康を守る方法を紹介します。

水分摂取の重要性

利尿剤を服用していると、体が必要以上に脱水状態になりやすいものです。適切な水分摂取は非常に重要です。
具体的には以下の取り組みが大切です。

  • 1日1.5~2リットルの水分を目安に摂取する
  • 一度にたくさん飲むより、こまめに少しずつ飲む
  • 起床時や運動前後は特に意識して水分補給を行う
  • スポーツドリンク(電解質含有)の適度な活用も効果的

ただし、心臓や腎臓の疾患で水分制限がある場合は、医師の指示に従ってください。

適切な運動とストレッチ

筋肉の血流改善と柔軟性維持のために、以下の運動習慣を取り入れることも大切です。

  • ウォーキング
    無理のない範囲で毎日10~30分
  • ストレッチ
    特にふくらはぎを中心に、朝晩に軽く伸ばす
  • 足首の運動
    座ったままでもできる足首の回転運動

運動は急に強度を上げず、徐々に体を慣らしていくことが大切です。

生活習慣の見直し

以下の習慣も足のつりに関与するため見直しを行いましょう。

  • アルコール
    過剰摂取は利尿作用を強め、電解質バランスを乱す
  • カフェイン
    コーヒーや緑茶の飲み過ぎも利尿作用がある
  • 睡眠姿勢
    長時間同じ姿勢でいると血流が滞りやすい、足を延ばしすぎると筋肉が痙攣する
  • 靴選び
    合わない靴は筋肉に余計な負担をかける

第2章・第4章で述べた通り、電解質バランスも重要ですが、こうした生活面の工夫も併せて行うことで、より効果的に症状を改善することができます。

専門医に相談すべきタイミング

医師に相談すべきタイミング画像

足がつる症状は一時的なものもありますが、中には重大な病気が潜んでいるケースもあります。
自己判断せず、以下のようなサインがあれば専門家に相談しましょう。

すぐに相談すべき症状

次のような症状がある場合は、早めに医師の診察を受けることをおすすめします。

  • 頻繁に足がつる
    週に何度も繰り返す場合
  • 夜中に毎回起きる
    睡眠が妨げられるほど定期的に発生する
  • しびれやだるさを伴う
    単なる「つり」以外の症状がある
  • 両足が同時につる
    通常は片側だけのことが多いため
  • 痛みが長時間続く
    通常は数分で治まるはず
  • むくみや息切れも伴う
    心不全の悪化を示す可能性がある

これらの症状は、単なる一時的な筋肉の痙攣ではなく、低カリウム血症や他の病気のサインかもしれません。

医師の診察で行われること

病院を受診すると、次のような検査や対応が行われることがあります。

  • 血液検査
    カリウムなど電解質レベルの確認
  • 薬の見直し
    利尿剤の種類や用量の再検討
  • 心機能検査
    必要に応じて心臓の状態をチェック
  • 神経学的検査
    筋肉や神経の問題を調べる

これらを通じて、足がつる原因をしっかり特定し、最適な対処法を見つけることができます。

検査の重要性

「たかが足がつるだけ」と軽視せず、特に利尿剤を服用中の方は定期的な血液検査でカリウム値をチェックすることが大切です。
低カリウム血症は放置すると不整脈など、より深刻な問題を引き起こす可能性があります。

また、医師と良好なコミュニケーションを保ち、現在服用している薬の効果や副作用について率直に相談できる関係を築くことも重要です。
症状が軽いうちに相談することで、大きな問題になる前に対処することが可能です。

利尿剤に関するよくある質問

よくある質問
Q
市販の利尿剤でも足がつる?
A

はい、ドラッグストアなどで購入できる市販の利尿剤でも、足がつる可能性があります。
市販の利尿剤は医療用に比べると作用は穏やかですが、それでも体内の水分バランスや電解質に影響を与えます。
特に長期間使用したり、指示量以上に摂取したりすると、カリウムなどの電解質が不足して足がつることがあります。
また、市販品は医師の管理下にないため、自己判断で使用量や期間を決めがちです。
これが思わぬ副作用につながることがあります。
むくみを改善したいからといって「多く飲めば効果的」と考えるのは危険です。
むくみが気になる場合は、まず生活習慣の見直し(塩分制限や適度な運動など)を試み、それでも改善しない場合は、市販薬に頼る前に医師に相談することをおすすめします。

Q
カリウムを摂れば治る?
A

足がつる症状は、カリウム不足だけが原因ではありません。
様々な要素が複雑に絡み合っています。
利尿剤を服用中の方は確かにカリウムが減りやすいですが、それだけに目を向けるのは不十分です。
例えば、マグネシウム不足も大きな原因の一つです。
また、水分不足による脱水も要注意です。
さらに、長時間同じ姿勢でいることによる血行不良や、運動不足による筋肉の衰えも足のつりを引き起こします。
冷えも大敵です。
寝る前の冷たい飲み物や冷房の効きすぎた部屋で眠ると、夜間に足がつりやすくなります。
カルシウムのバランスも重要で、過剰摂取や不足どちらも問題になり得ます。
このように、足のつりはカリウム一つだけでなく、多角的な視点で考える必要があります。
利尿剤を服用中の方は、自己判断せず医師の指示を仰ぐようにしましょう。
正しい知識と総合的なケアで、足のつりの悩みは改善できます。

まとめ

利尿剤を使っていると、足がつることがあります。これは薬の影響で体内のカリウムやマグネシウムなどの電解質のバランスが崩れることが原因です。特に夜間や運動後に起こりやすく、珍しい症状ではありません。

足がつる主な原因は電解質の不足で、特にループ利尿薬やサイアザイド系の薬を使っている場合に起こりやすい傾向があります。筋肉が正常に働くためには、これらの電解質が欠かせません。

対策としては、バナナやアボカドなどカリウムを多く含む食品を意識して食べること、適度な水分補給、ストレッチなどが効果的です。ただし、自己判断で薬の量を減らしたり中止したりするのは危険です。

もし症状が気になる場合は、必ず医師に相談してください。特に、足が頻繁につる、痛みが強い、しびれや脱力感を伴う場合は、早めに受診することをおすすめします。これらは低カリウム血症や他の病気のサインかもしれません。

利尿剤は多くの病気の治療で非常に重要な薬です。足のつりは確かに不快ですが、正しい知識と対処法があれば、心配せずに治療を続けられます。不安なことがあれば、医師や薬剤師に相談してみてください。

出典

MSDマニュアル家庭版(低カリウム血症)
MSDマニュアル家庭版(低ナトリウム血症)
ラシックス錠10mg/20mg/40mg添付文書
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