利尿剤を飲んでも効かない?その理由とは
「利尿剤を飲んでいるのにむくみが改善しない」「体重が減らない」「トイレの回数が増えない」と感じたことはありませんか?
利尿剤は腎臓での水分や塩分の再吸収を抑え、尿量を増やして余分な水分を排出する薬です。しかし、すべての人に効果が出るわけではありません。
▼利尿剤に効果を感じにくい主な原因
| 薬剤選択 | 病状や体質に合っていない利尿剤が処方されている |
|---|---|
| 用量不足 | 症状に対して量が少ない |
| 塩分過剰摂取 | 食事の塩分で利尿効果が打ち消される |
| 薬の耐性 | 長期服用で効果が弱まる |
| 薬物相互作用 | 他の薬との飲み合わせによる効果の減弱 |
| 腎機能低下 | 腎臓の働きが低下している |
| 病気の進行 | 心不全や肝硬変などの基礎疾患の悪化 |
効果が感じられない場合でも、自己判断で中止や増量は危険です。まずは医師に相談し原因を確認しましょう。
利尿剤の種類と効き方の違い
利尿剤には種類ごとに作用部位や強さが異なります。効きにくい場合は、薬が体に合っていない可能性があります。

ループ利尿薬(フロセミド、トラセミドなど)
ループ利尿薬(フロセミド、トラセミドなど)の特徴
- 腎臓のヘンレループに作用
- 強力な利尿効果、腎機能低下時にも使用可
- 効果は服用1~2時間後、6~8時間持続
メデマート取り扱い商品
| 商品名 | トーシミド | トール | ムクミトール |
|---|---|---|---|
| 画像 | ![]() | ![]() | ![]() |
| 有効成分 | トラセミド5mg/10mg/20mg/40mg/100mg | トラセミド5mg/10mg/20mg | トラセミド5㎎/10㎎/20㎎ |
| メーカー | John Lee Pharma(ジョンリーファーマ) | Intas Pharmaceuticals(インタスファーマ) | Asle pharmaceuticals(アスレ) |
| 販売サイト | トーシミドの購入ページ | トールの購入ページ | ムクミトールの購入ページ |
サイアザイド系利尿薬(ヒドロクロロチアジドなど)
サイアザイド系利尿薬(ヒドロクロロチアジドなど)の特徴
- 腎臓の遠位尿細管に作用
- 中程度の利尿効果、主に高血圧治療で使用
- 単独ではむくみに不十分なこともあり、併用が基本
- 血圧を下げる作用が高いため、むくみよりも高血圧治療に使用
とくに食塩感受性高血圧(塩分の影響を受けやすい高血圧) - 効果はループ利尿薬より穏やかで持続的
- 単独ではむくみに不十分なこともあり、併用が基本
| 商品名 | アクアザイド |
|---|---|
| 画像 | ![]() |
| 有効成分 | ヒドロクロロチアジド25mg |
| メーカー | Sun Pharma (サンファーマ社) |
| 販売サイト | アクアザイドの購入ページ |
カリウム保持性利尿薬(スピロノラクトンなど)
カリウム保持性利尿薬(スピロノラクトンなど)の特徴
- 腎臓の遠位尿細管・集合管に作用
- 弱い利尿作用で低カリウム血症を防ぎながら使用
- 心不全や肝硬変のむくみに効果的
- 単独使用よりも他の利尿剤との併用が多い
| 商品名 | スピロノラクトン | シレクトン |
|---|---|---|
| 画像 | ![]() | ![]() |
| 有効成分 | スピロノラクトン100mg | スピロノラクトン25mg/50mg/100mg |
| メーカー | Bristol Laboratories Ltd | John Lee Pharma (ジョンリーファーマ) |
| 販売サイト | スピロノラクトンの購入はこちら | シレクトンの購入はこちら |
バソプレシンV2受容体拮抗薬(トルバプタンなど)
バソプレシンV2受容体拮抗薬(トルバプタンなど)の特徴
- 集合管に作用、体内の水分のみ排出
- 低ナトリウム血症や難治性浮腫に使用
- 初回投与や再開時は入院が推奨される
- 最も強い利尿作用
- ループ利尿薬など他の利尿薬で効果不十分な心不全や肝硬変のむくみへ使用
- 水分のみを選択的に排泄させる
その他注射薬として浸透圧利尿薬(マンニトール)なども販売されています。
| 商品名 | トルバプタン | ナトライズ |
|---|---|---|
| 画像 | ![]() | ![]() |
| 有効成分 | トルバプタン15mg/30mg | トルバプタン15mg/30mg |
| メーカー | Centaur Pharmaceuticals Pvt.Ltd.(ケンタウル・ファーマシューティカルズ) | Sun Pharma(サンファーマ) |
| 販売サイト | トルバプタンの購入はこちら | ナトライズの購入はこちら |
どの利尿剤が適しているかは、病態や腎機能、電解質バランスなどによって異なります。
効果が不十分な場合は、種類の変更や併用療法が検討されることがあります。
詳しい内容を知りたい方は当サイトメデマートの別のコラムで詳細を紹介しておりますのでご覧ください。
利尿剤が生活習慣で効きにくくなるケース
日々の生活習慣が利尿剤の効果に大きく影響することをご存知でしょうか?
以下のような生活習慣が、利尿剤の効果を弱めてしまう可能性があります。
もし、思い当たる節がある方は気を付けた方が良いでしょう。

塩分の過剰摂取
最も重要な要因が食事からの塩分摂取です。
塩分(ナトリウム)を摂りすぎると、体は水分を保持しようとします。
つまり、利尿剤で水分を排出しようとしても、摂取した塩分が水分を引き留めてしまうのです。
日本人の平均塩分摂取量は約10g/日と言われていますが、高血圧や心不全、腎臓病の方は6g/日未満が推奨されています。
1).日本生活習慣病予防協会
2).日本高血圧学会
飲水量の問題
極端に水分摂取が多い場合、利尿剤の効果を超えてしまうことがあります。
一方で、水分摂取が不足すると、体は水分を保持しようとして利尿効果が出にくくなる場合もあります。
適切な水分摂取量は個人差がありますが、一般的には1日1.5~2リットル程度が目安です。
ただし、心不全や腎不全などで水分制限がある場合は、医師の指示に従ってください。
運動不足と姿勢
長時間同じ姿勢でいることや運動不足は、血液循環を悪化させ、下肢のむくみを助長します。
特に立ち仕事や座り仕事が多い方は、定期的に姿勢を変えたり、軽い運動を取り入れたりすることが大切です。
ウォーキングや水中運動など、自分の体力に合った運動を取り入れましょう。
アルコールと利尿剤
アルコールには一時的に利尿作用がありますが、長期的には体の水分保持を促進してしまいます。
また、アルコールは肝臓に負担をかけ、むくみの原因になることもあります。
利尿剤服用中は、アルコール摂取を控えるか、医師と相談の上で適量を守ることが重要です。
カフェインの過剰摂取
コーヒーや紅茶などのカフェインには利尿作用がありますが、過剰摂取は脱水を引き起こし、かえって体が水分を保持しようとする反応を促してしまいます。
適量を心がけましょう。
利尿剤と他の薬との飲み合わせや影響
利尿剤は他の薬と相互作用を起こすことがあり、その効果が弱まったり、副作用のリスクが高まったりする場合があります。
以下に、利尿剤と相互作用を示す代表的な薬をご紹介します。

デスモプレシン酢酸塩水和物(ミニリンメルト)との併用
「男性における夜間多尿による夜間頻尿」に使用されているデスモプレシン酢酸塩水和物は併用禁忌に分類されています。
利尿剤もデスモプレシンも共にナトリウムを喪失します。
その結果低ナトリウム血症が起きる恐れがあるためです。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)との併用
イブプロフェン、ロキソプロフェン、ジクロフェナクなどの消炎鎮痛薬は、利尿剤の効果を弱める可能性があります。
これらの薬は腎臓でのプロスタグランジン産生を抑制し、利尿作用を低下させるためです。
頭痛や腰痛、関節痛などで市販の痛み止めを服用する機会が多い方は、医師や薬剤師に相談するようにしましょう。
代替薬としてアセトアミノフェン(カロナール)は比較的利尿剤との相互作用が少ないとされています。
副腎皮質ステロイド薬との併用
プレドニゾロンなどのステロイド薬はカリウム排泄作用を有するため、低カリウム血症を発現する可能性があります。
ステロイド薬を使用している場合は、医師に伝えましょう。
降圧薬との相互作用
利尿剤は降圧薬として、あるいは他の降圧薬と併用されることが多いですが、組み合わせによっては過度の血圧低下を起こすリスクがあります。
特に、アンジオテンシン変換酵素阻害薬やβ遮断薬と呼ばれる降圧薬と併用する場合は注意が必要です。
糖尿病治療薬との相互作用
利尿剤は糖尿病治療薬の効果を著しく弱める可能性があります。
糖尿病の方は、血糖値のモニタリングを定期的に行うことが重要です。
注意すべき3つのポイント
①処方薬だけでなく、サプリメントや市販薬も含めて、服用している全ての薬を医師・薬剤師に伝えること
②薬の効果や副作用に変化を感じたら、すぐに医師に相談すること
③自己判断で薬の服用を中止したり、用量を変更したりしないこと
薬の相互作用は複雑で、個人差もあります。
効果が感じられない場合や副作用が気になる場合は、必ず医師や薬剤師に相談してください。
体質や病気が原因の場合
利尿剤の効果には個人差があり、体質や基礎疾患によって効きにくいケースがあります。
利尿剤の効果に影響を与える可能性のある体質的・病的要因について解説します。

腎機能低下
利尿剤は腎臓に直接働くお薬です。そのため、腎臓の働きが弱くなると、薬の効果が十分に出ないことがあります。
特に加齢や高血圧、糖尿病で腎機能が少しずつ低下している場合は、通常の量では効果が不十分になることがあります。腎機能が大きく低下すると、薬の種類を変えたり、別の治療を検討する必要があります。
腎機能低下のサイン
- むくみが悪化する
- 尿量が減少する
- 疲労感や倦怠感が強くなる
- 食欲不振や吐き気がある
- 血液検査でクレアチニンやBUN(尿素窒素)の上昇
健康診断だけでなく、腎機能は定期的にチェックしましょう。
特に高齢者や糖尿病・高血圧の方は注意が必要です。
心不全の進行
心不全が進むと心臓のポンプ機能が低下し、血液が体にたまりやすくなります。その結果、利尿剤の効果を感じにくくなることがあります。
心不全が進むと腎臓への血流も減るため、薬が届きにくくなることがあります。この心臓と腎臓の関係を「心腎連関」といいます。
心不全悪化のサイン
- 息切れや動悸の悪化
- 夜間の息苦しさ
- 疲れやすい
- 足のむくみの悪化
- 体重の急増(数日で2kg以上)
- 食欲不振
体重は毎日同じ条件で測り、急に増えた場合は医師に相談しましょう。
肝臓疾患
肝硬変などでは、血中のアルブミンが低下したり、血流の流れが悪くなったりして、むくみや腹水が起こりやすくなります。そのため利尿剤の効果が出にくい場合があります。
肝臓の働きが弱いと薬の効き方や持続時間にも影響します。肝疾患がある場合は、医師と薬の種類や量を相談してください。
甲状腺機能異常
甲状腺機能低下症
代謝が下がり、むくみやすくなります。この場合は利尿剤だけでなく、ホルモン補充が必要になることがあります。
甲状腺機能亢進症
遺伝的要因
人によって薬の効きやすさは異なります。
遺伝的要因
- 薬を分解する酵素の違い
- 塩分や水分の感受性の違い
これらにより、利尿剤の効果や副作用の出やすさも変わります。
高齢者の特性
高齢になると、体内の水分量が減少し、腎機能も低下する傾向があります。
また、複数の疾患を持つことが多く、薬の相互作用のリスクも高まります。
高齢者では、利尿剤による脱水や電解質異常のリスクが高いため、少量から開始し、効果と副作用を慎重にモニタリングすることが重要です。
状態に合わせた薬剤の調整や、代替治療法の検討が必要な場合があります。
詳しい治療法などは、当サイトメデマートの別のコラムで詳細紹介しておりますのでご覧ください。
利尿剤が効かないときの具体的な対策
利尿剤が効かないと感じたとき、どのような対策が考えられるでしょうか。
ここでは、医療機関での相談ポイントと、自分でできる生活習慣の改善策について具体的に解説します。

医療機関での相談
①薬の種類変更や用量調整
利尿剤が効かない場合、まずは現在使用している薬が適切かどうか医師と相談しましょう。
| 種類の変更 | 病状や体質に合っていない利尿剤が処方されている |
|---|---|
| 用量の調整 | 症状に対して量が少ない |
| 服用タイミングの変更 | 食事の塩分で利尿効果が打ち消される |
②併用療法
単一の利尿剤で効果不十分な場合、作用機序の異なる利尿剤を組み合わせることがあります。
| ループ利尿薬とサイアザイド系の併用 | 作用の違う薬を組み合わせることで、より強い利尿効果が期待できます 特に、利尿抵抗性の浮腫に有効です |
|---|---|
| カリウム保持性利尿薬の追加 | カリウムの減少を防ぎながら、利尿効果を保つことができます |
| バソプレシンV2受容体拮抗薬の併用 | 従来の利尿剤で効果不十分な場合に検討されます |
③他の治療法の検討
利尿剤だけでなく、基礎疾患に応じた治療アプローチが重要です。
| 心不全 | 心臓の働きを助ける薬を併用 |
|---|---|
| 高血圧 | 他の降圧薬への変更や追加 |
| 腎不全の進行時 | 透析などの治療を検討 |
| 肝硬変による腹水 | アルブミン投与や腹水の処置が必要なことも |
日常生活での対策
①塩分を控える(減塩)
塩分が多いと体に水がたまり、むくみやすくなります。
| 1日の塩分目標 | 6g未満(重症の人は3~4g) |
|---|---|
| 塩分量の「見える化」 | 食品の栄養成分表示を確認する習慣をつけたり、塩分計を活用したりして、摂取量を客観的に把握しましょう。 |
| 減塩のコツ | ・酢・レモン・スパイスで味に変化をつける ・出汁のうま味を活用 ・減塩しょうゆ・味噌を使う ・外食ではスープを残す、薄味を選ぶ |
②運動療法
適度な運動は、血液循環を促進し、むくみの改善に役立ちます。
| 推奨される運動 | ・1日8,000歩を目安にウォーキング 3).日本生活習慣病予防協会 ・水中ウォーキングやヨガ、ストレッチも◎ ・長時間同じ姿勢を避け、2時間ごとに立ち上がる ・足を少し高くして寝る ・弾性ストッキングも有効 |
|---|
③体重・尿量モニタリング
| 体重測定 | 毎朝同じ条件で測る(急な増加はむくみのサイン) (起床後、排尿後、同じ服装)で測定し、記録しましょう。 |
|---|---|
| 尿量 | 食品の栄養成分表示を確認する習慣をつけたり、塩分計を1日1日の尿量を記録し、著しい変化があれば医師に報告しましょう |
| 症状日記 | むくみの程度、息切れ、疲労感などの変化を日記形式で記録すると、医師との情報共有に役立ちます |
④規則正しい服薬
| 決まった時間に服用 | 特にループ利尿薬は作用時間が限られるため、規則正しく服用することが重要です |
|---|---|
| 服薬カレンダーの活用 | 飲み忘れを防ぐために、カレンダーやスマートフォンのアプリなどを活用しましょう |
| 残薬の管理 | 次回の診察時までに薬が足りなくなることがないよう、残薬を定期的に確認しましょう |
まとめ
利尿剤が効かずにむくみが解消しないと悩んでいる方は意外と少なくありません。
原因はさまざまですが、適切な対策で改善できる可能性は十分にあります。
利尿剤の効果が感じられない主な理由として、塩分の過剰摂取、薬剤の種類と体質のミスマッチ、他の薬との飲み合わせ問題、そして腎臓や心臓の状態が影響していることが挙げられます。
特に日々の食事での塩分量は思った以上に多く、知らず知らずのうちにむくみを助長していることがよくあります。
改善のためには、まず医師や薬剤師に正直に状況を伝えることが大切です。
「効いていない気がする」と遠慮せず相談しましょう。
薬の種類変更や用量調整が必要な場合もあります。
同時に、自分でできる対策として、減塩の工夫(だしを活用する、香辛料で味付けするなど)や適度な運動を日常に取り入れることが効果的です。
自己判断で薬を中止したり用量を変えたりするのは危険です。
むくみと上手に付き合うためには、医学的アプローチと生活習慣の改善の両輪が必要なのです。
利尿剤は正しく使うことで、多くの場合むくみは改善します。
諦めずに、医師や薬剤師と二人三脚で、あなたに合った対策を見つけていきましょう。
出典
ルプラック錠4mg/8mg添付文書
フルイトラン錠1mg/2mg添付文書
1).日本生活習慣病予防協会
2).日本高血圧学会
3).日本生活習慣病予防協会












