トラセミドとは?

トラセミドは、心臓・肝臓・腎臓が原因のむくみに使われる強力な利尿薬です。
利尿薬は尿量を増やし、余分な水分や塩分を排出してむくみを改善します。
その結果としてむくみを改善することができるのです。
日本では田辺三菱製薬株式会社が1999年12月に先発品である「ルプラック錠4mg/8mg」を発売しました。
その後ジェネリック医薬品であるトラセミド錠を2018年6月にトーアエイヨー株式会社が、2017年12月には寿製薬株式会社が販売を開始しました。
▼メデマート取り扱い商品
| 商品名 | トーシミド | トール | ムクミトール |
|---|---|---|---|
| 画像 | ![]() | ![]() | ![]() |
| 有効成分 | トラセミド5mg/10mg/20mg/40mg/100mg | トラセミド5mg/10mg/20mg | トラセミド5㎎/10㎎/20㎎ |
| メーカー | John Lee Pharma(ジョンリーファーマ) | Intas Pharmaceuticals(インタスファーマ) | Asle pharmaceuticals(アスレ) |
| 購入サイト | トーシミドの購入ページ | トールの購入ページ | ムクミトールの購入ページ |
当サイトメデマートで販売されているトーシミドの詳細については別のコラムで紹介されておりますのでご覧ください。
トラセミドの作用と効果
日常で足や顔のむくみ、指輪がきつくなることはありませんか?
誰にでもむくみは起こりますが、心臓病・肝臓病・腎臓病の患者では重症化することがあります。
トラセミドは病的むくみを改善する薬で、服用すると数時間で尿量が増えます。特に心不全の患者によく処方されます。
ループ利尿剤としての特徴
利尿薬は作用部位によって4種類に分かれます。
(サイアザイド系、カリウム保持性、バソプレシンV2受容体拮抗薬、ループ利尿薬)
トラセミドは「ループ利尿薬」というグループに分類されます。
ループ利尿薬であるトラセミドには以下のような特徴があります。
トラセミドの特徴
- 利尿薬のなかで最も利尿作用が強い
- 腎機能低下時にも有効
- うっ血性心不全の第一選択薬として使用される
- 短時間で強力な効果が期待できる
- 比較的低カリウム血症があらわれにくい
特に速効性があり短時間で効果が強くあらわれるため、朝の服用を推奨しています。
適応外使用ですが夜間頻尿を改善するためにこのような使い方をする場合もあります。
トラセミドの利尿効果は、生活の質の維持に役立ちます。
尿量増加とむくみ改善のメカニズム
では、トラセミドがどのように働いて尿量を増やし、むくみを改善しているのでしょうか?
腎臓は血液から不要な物質や水分をろ過して尿を作ります。通常、ほとんどの水分と塩分は再吸収されます。
トラセミドは、腎臓のヘンレループという部分で、ナトリウムの再吸収を妨げる働きをします。
ナトリウムの再吸収が妨げられると浸透圧の関係上、水分も一緒に尿として排出されてしまうのです。
こうして尿量が増え、体内の余分な水分が減ることでむくみを改善させることができます。
トラセミドは腎臓の『Na⁺-K⁺-2Cl⁻共輸送体』を阻害し、ナトリウム・カリウム・塩素の再吸収を妨げます。このように輸送体に作用することでナトリウムと一緒に水分が体外に排泄される作用があります。
トラセミドは適切に使用することで、尿量を増やしむくみや心不全などの症状を改善することができるようになります。
長期使用で注意すべきポイント

トラセミドは効果が高い反面、長く使い続けるときには注意が必要なポイントがいくつかあります。
特に脱水や電解質バランスの乱れ、腎機能への影響に気をつけることが大切です。
脱水症状と水分補給の重要性
トラセミドは尿量を増やす作用があるため、脱水のリスクがあります。
服用中に以下のような症状が出た場合は注意が必要です。
トラセミドの特徴
- 喉の渇き
- めまい
- 疲労感
服用後に尿が増えるのは正常な利尿作用ですが、急に尿の量が減った場合は、体が水分不足になっている可能性があります。
対策
- コップ1杯程度の水を定期的に飲む習慣をつける
- 心臓に問題がある方や医師から水分制限を指示されている方は、自己判断で水分を増やさず、医師に相談する
電解質バランスの管理
トラセミドはカリウム・ナトリウムも排出するため、筋肉のけいれんや不整脈のリスクがあります。
例えば、カリウム不足になると手足のしびれや脱力感、不整脈などが起こりやすくなります。
定期的な血液検査で電解質の値をチェックすることが重要です。
医師から指示があった場合は、カリウムを含む食品(バナナやほうれん草など)を意識的に摂ることも大切です。
血圧や腎機能への影響
トラセミドは血圧を下げる効果もあります。
これは多くの場合メリットですが、急に血圧が下がりすぎると立ちくらみなどを起こすことがあります。
特に暑い日や入浴後は注意が必要です。
車の運転など危険な作業を伴う行為は避けなければなりません。
また、長期間使用することにより腎臓に負担がかかることもあります。
高齢者や既に腎機能が低下している方は影響を受けやすいので、定期的な腎機能検査が欠かせません。
服用量や頻度の自己判断のリスク
自己判断で服用量を増やしたり中止したりするのは危険です。特に心不全や腎臓病では症状が悪化する可能性があります。
体調の変化や副作用が気になる場合は必ず医師や薬剤師に相談し、指示に従いましょう。
薬の効果と体調を記録しておくと、次の診察で役立ちます。
長期的に上手くお付き合いするためには、正しい知識と定期的な検査が何よりも大切です。
自分の健康を守るために、医師と一緒に最適な治療を続けていきましょう。
安全に使うためのチェックリスト

トラセミドを安全に使用するためには3つのチェックしなければならない重要なポイントがあります。
十分な効果を適切に得るために覚えておきたいポイントをご紹介します。
①定期的に血液検査を受けること
トラセミドは電解質に影響するため、定期的な血液検査が重要です。
検査を飛ばすと、知らずに体内バランスが崩れることがあります。
検査結果に応じて医師が薬の量を調整することで、効果を最大限に引き出しながら副作用を最小限に抑えられます。
特に服用開始直後や量を変更した際は、少しの体調変化にも敏感になりましょう。
②脱水や疲労感など異常が出たら服用を中止すること
以下の症状が出たら、自己判断で服用を続けず、医師に連絡してください。
医師に連絡すべき症状
- 激しい喉の渇き
- めまいや立ちくらみ
- 普段より強い疲労感
- 筋肉のけいれんや痛み
- 心臓の鼓動が乱れる感じ
- 尿量の急な減少
これらは脱水や電解質異常のサインかもしれません。
症状によっては服用の一時中止が必要になることもあります。
日頃から体調の変化を記録しておくと、診察時に医師に伝えやすくなります。
スマホのメモ機能や健康管理アプリを活用するのも良いでしょう。
③他の薬との併用に注意すること
トラセミドは多くの薬と相互作用を起こす可能性があります。
特に注意が必要なのはミニリンメルト(デスモプレシン酢酸塩水和物)と呼ばれる薬です。
男性における夜間多尿による夜間頻尿に使用される薬であり併用禁忌薬に分類されています。
その他、血圧を下げる薬(降圧剤)、消炎鎮痛剤(ロキソニンなど)、ステロイド薬、リチウム製剤、糖尿病治療薬などと一緒に使用する際にも注意が必要です。
併用すると効果が強まったり弱まったりする可能性があります。
市販薬やサプリでも注意が必要です。
新しい薬を始める際は、トラセミド服用中であることを伝えましょう。
お薬手帳は複数の医療機関を受診する際に特に重要な伝達ツールになります。
忘れずに持参し、常に最新の情報に更新してください。
これらのポイントを意識するだけで、トラセミドをより安全に、効果的に使うことができます。
薬は正しく使ってこそ、あなたの健康を支える強い味方になります。
利尿剤に関するよくある質問

- Q副作用が出たらどうすれば良い?
- A
トラセミド服用中に副作用と思わしき症状が出た場合、まず医師に連絡しましょう。
めまいや強い疲労感、不整脈などの症状は電解質異常のサインかもしれません。
特に呼吸困難や意識障害などの重篤な症状は救急受診が必要です。
自己判断で服用中止はせず、医師の指示を仰ぐことが大切です。
症状と時間を記録しておくと診察時に役立ちます。
- Q長期使用すると耐性ができることはありますか?
- A
はい、ループ利尿薬は長期使用することで耐性ができることがあります。
腎臓が薬に慣れると利尿作用は徐々に弱まります。
これは体の代償作用によるものです。症状として効き目の低下や浮腫の再発がみられます。
- Q毎日飲み続ける場合、水分や食事で気をつけることは?
- A
.トラセミド服用中は適切な水分補給が大切です。
脱水を防ぐため喉が渇く前に少量ずつ水分を摂取するよう心がけましょう。
食事面では、医師から指示がなければ極端な塩分制限は避け、バランスの良い食事を摂りましょう。
カリウムを多く含むバナナやトマト、ほうれん草などは摂りすぎに注意が必要です。
まとめ
トラセミドは強力な利尿作用でむくみを改善する薬です。
しかし、正しく使わなければ思わぬトラブルを招くこともあるため注意が必要です。
トラセミドはループ利尿薬の一種です。
腎臓に働きかけて余分な水分を排出し、心臓や肝臓及び腎臓が原因とされるむくみの症状を和らげます。
効果が高い反面、長期使用では注意が必要です。
特に気をつけたいのは脱水と電解質バランスの乱れです。
喉の渇きやめまい、疲労感などを感じたら要注意です。
また、腎機能や血圧への影響も見逃せません。
「効きが悪い」と自己判断で量を増やしたり、「調子がいいから」と勝手に中止したりするのは危険なので避けましょう。
安全に使い続けるためのカギは、定期的な検査と体調チェックです。
血液検査で電解質や腎機能をチェックし、体調の変化は必ず医師に伝えることが大切です。
また、他の薬との飲み合わせにも注意が必要です。
日常生活では、適切な水分補給と極端な塩分制限を避けたバランスの良い食事を心がけましょう。
カリウムを多く含む食品の摂り方にも気を配ると良いでしょう。
むくみ対策にトラセミドを使う際は、効果だけでなくリスクも理解し、医師の指示を守ることが何よりも大切です。
自分の体調変化に敏感になり、疑問点はためらわず医師または薬剤師に相談してください。
適切に使えば、トラセミドはあなたの生活の質を高める強い味方になります。
出典
ルプラック錠4mg/8mg添付文書
福岡県薬剤師会
ルプラック錠4mg/8mgインタビューフォーム
日経メディカル
寿製薬株式会社ホームページ








