アリピプラゾール(エビリファイ)はどんな薬?

アリピプラゾールは心療内科や精神科などで主に使用され、うつ病や統合失調症などに使用され、その働きは非常に優れた特徴を持つ医薬品です。
脳内におけるドパミンの量を適切に調節する働きがあり、「ドパミン・システム・スタビライザー」と呼ばれています。
脳内のドパミンの働き
ドパミンは私たちの気分や行動、意欲に対し、重要な役割を果たす神経伝達物質です。脳内のドパミンは、適切な量が保たれていることが大切な神経伝達物質なのです。
ドパミンのバランスが崩れると、様々な精神疾患の症状が現れる可能性があります。
ドパミンのレベルが適切な範囲にあれば、意欲的で前向きな気分が維持されます。
しかし、ドパミンが不足すると、意欲の低下やうつ状態などの症状が現れる可能性があります。
一方で、ドパミンが過剰に放出されると、統合失調症のような幻覚や妄想、異常な興奮状態を引き起こすリスクがあります。
豆知識:ドパミン=ドーパミン?
実は「ドパミン」と「ドーパミン」は同じ物質のことを指します。
英語表記 dopamine をそのままカタカナにした場合は「ドーパミン」、医療・薬学分野では「ドパミン」と表記されることが多いという違いだけです。
どちらも脳内で快感や意欲、運動の調整などに関わる重要な神経伝達物質です。
アリピプラゾールの働き
アリピプラゾールは、ドパミンが過剰な場合にはその働きを抑える方向に働き、またドパミンが不足している場合には補う方向に働きます。このバランス調節作用により、様々な精神疾患の治療に役立ちます。
主な剤形
| 剤形 | 製品名 |
|---|---|
| 普通錠 | エビリファイ錠1mg・3mg・6mg・12mg |
| 口腔内崩壊錠 | エビリファイOD錠3mg・6mg・12mg・24mg |
| 散剤 | エビリファイ散1% |
| 液剤 | エビリファイ内用液0.1% |
医療用医薬品
| 商品名 | 製造販売元 |
|---|---|
| エビリファイ錠1mg・3mg・6mg・12mg/OD錠3mg・6mg・12mg・24mg/散1%/内用液0.1% | 大塚製薬株式会社 |
先発医薬品と異なる規格のあるジェネリック医薬品
- アリピプラゾール錠24mg「明治」(Meiji Seika ファルマ株式会社)
- アリピプラゾール錠24mg「アメル」(共和薬品工業株式会社)
- アリピプラゾール錠24mg「オーハラ」(大原薬品工業株式会社)
- アリピプラゾール錠24mg「トーワ」(東和薬品株式会社)
- アリピプラゾール錠24mg「サワイ」(沢井製薬株式会社)
- アリピプラゾール錠24mg「YD」(株式会社陽進堂)
個人輸入で購入できる医薬品
| 商品名 | エビリファイ【アリピプラゾール】 | アリップMT【エビリファイジェネリック】 | アスプリト【エビリファイジェネリック】 |
|---|---|---|---|
| 画像 | ![]() | ![]() | ![]() |
| 有効成分 | アリピプラゾール10mg/15mg | アリピプラゾール5mg/15mg | アリピプラゾール15mg |
| メーカー | Abdi Ibrahim Otsuka Pharmaceutical A.S. | トレントファーマ | Intas Pharmaceuticals(インタスファーマ) |
| 購入ページ | エビリファイ【アリピプラゾール】の購入はこちら | アリップMT【エビリファイジェネリック】の購入はこちら | アスプリト【エビリファイジェネリック】の購入はこちら |
アリピプラゾール(エビリファイ)の効果

統合失調症における効果
アリピプラゾールは、統合失調症の陽性症状(幻覚、妄想など)だけでなく、陰性症状(無為、無関心など)や認知機能障害、感情障害にも効果が期待できる医薬品です。
鎮静作用(落ち着かせる作用)が比較的弱いため、興奮が目立たない慢性期の患者に使われることが多くなります。
双極性障害・うつ病・うつ状態における効果
アリピプラゾールは投与量によりその働きが異なります。低用量で使用した場合にはドパミンの働きを高め、気分を改善するため「うつ病」や「うつ状態」に、しかし高用量で使用した場合にはドパミンの働きを抑えます。
その結果、落ち着かせることから「そう状態」に効果があります。特に、気分の波を小さくする気分安定作用が期待できます。
うつ状態では、気分反応性がある方、過眠や倦怠感がある方に適していると考えられています。またそう状態にある患者に対してもしっかりとした効果が認められています。
エビリファイの適応症
日本で正式に認められているエビリファイの適応症は以下の通りです。
エビリファイの適応症
- 統合失調症
- 双極性障害におけるそう状態の改善
- 既存治療では十分な効果が認められない場合のうつ病・うつ状態
- 小児期自閉スペクトラム症に伴う易刺激性
自閉症スペクトラム障害の方は、柔軟性に欠け癇癪(かんしゃく)を起こしがちです。そのためアリピプラゾールを投与する事で気持ちを落ち着かせ、衝動性をコントロールする効果が期待できます。
日本の適応症は、海外とほぼ同程度に広く認められている点が特徴的です。
アリピプラゾールは様々な精神疾患に対してドパミンの働きを適切に調節することで有効に働きます。しかし、個人差があり副作用のリスクも考えられますので、必ず専門医の監督のもとで服用する必要があります。
※アリピプラゾールの詳細については下記を参照ください。

アリピプラゾール(エビリファイ)のメリット・デメリット
アリピプラゾールのメリット
①陰性症状や認知機能の改善が期待できる
統合失調症の無為・無関心などの陰性症状や、思考力・記憶力などの認知機能障害に対して、改善効果が期待できます。
②副作用が全体的に少ない
他の抗精神病薬に比べ、全体的に副作用が少ないことが特徴です。体重増加や動作緩慢など、つらい副作用のリスクが低くなります。
③気分安定作用がある
気分の波を小さくし、感情を安定させる作用があります。うつ病や双極性障害の治療にも役立ちます。
④1日1回服用で効果が期待できる
1日1回の服用でよく、服薬コンプライアンスが良好です。
⑤剤形の選択肢が豊富
内服錠剤のほか、液剤や散剤なども発売されており、服用しやすい剤形を選択することができます。
⑥後発品(ジェネリック)が発売されており、薬価がリーズナブル
先発品より安価なジェネリック医薬品が発売されています。
アリピプラゾールのデメリット
①鎮静作用が弱い
落ち着かせる鎮静作用が弱いため、統合失調症の激しい興奮状態には向いていません。
②稀に陽性症状を悪化させる可能性
一部の患者で、かえって幻聴や妄想などの陽性症状が悪化する場合があります。
③アカシジア(錐体外路症状「すいたいがいろしょうじょう」)が起こりやすい
不随意運動のようなアカシジアと呼ばれる副作用が、他の薬剤に比べ多いとされています。
またアリピプラゾールには剤形が異なることによるメリット・デメリットもあります。
アリピプラゾールOD錠(口腔内崩壊錠)のメリット
①水なしでも唾液で溶けるため、内服が苦手な方でも服用しやすい②効果発現が錠剤よりも多少早い
②飲み込みにくい方や、一時的に拒薬している方にも使用可能
③口に入れるとすぐに溶ける仕組みで、おいしい味がする
アリピプラゾールOD錠(口腔内崩壊錠)のデメリット
①一包化(まとめて包装)ができず、取り扱いが難しい
②湿気や水分に弱く、濡れた手で触ると溶けてしまう
③他の内服薬と併用時は、メリットが少なくなる
アリピプラゾールOD錠は服用のしやすさがメリットですが、湿気に弱く取り扱いが難しいのがデメリットです。
エビリファイ内用液のメリット
①水なしですぐに飲めるので、内服が困難な場合に便利
②効果発現が錠剤よりも多少早い
エビリファイ内用液のデメリット
①苦いオレンジ味がする
②錠剤より薬価が高い
内用液は水無しで飲めるのが大きなメリットですが、味が良くなく高価なのがデメリットです。体調不良時の一時的な使用が一般的です。
両製剤とも、通常の内服が難しい場合に役立つ剤形です。一方で、管理が難しかったり価格が高かったりと、使用には一定の制約があります。
アリピプラゾールには上記のようなメリット・デメリットがあり、個人で効果を見極める必要があります。
抗うつ剤服用で太る理由

抗うつ剤を服用すると、体重が増えてしまうことがあります。これには主な理由として以下があげられます。
①食欲増加
抗うつ剤には、食欲を増加させる作用があります。
・ヒスタミンをブロックすることで、満腹感が得にくくなり、食欲が増します。
・セロトニンの一部の受容体をブロックすることで、満腹中枢が抑制され、食欲が増加しま
②代謝抑制
セロトニンは精神を安定させ、リラックス状態をつくります。そのため、身体はエネルギーの消費を抑え、代謝量が少なくなって太りやすくなります。
③ノルアドレナリンの代謝亢進
一方で、抗うつ剤によってはノルアドレナリンを増やす作用が強まる場合があります。ノルアドレナリンには意欲や気力を高める作用があり、代謝を亢進させる働きがあります。
これらの作用により、抗うつ剤ごとに太りやすさが異なります。
その他の理由
抗うつ剤の副作用以外にも、以下の理由で体重が増加することがあります。
①病気の回復過程で、食欲は回復するが活動量が追いついていない
②精神状態の変化により、過食傾向になる
③ストレスなどにより、過食を起こす
抗うつ剤の服用中は、食生活や運動量、ストレスなどの生活習慣にも注意を払い、医師と相談しながら体重管理することが大切です。
アリピプラゾール(エビリファイ)は太る?
アリピプラゾールを服用すると太るのではないかと心配される方も少なくありません。
たしかにアリピプラゾールは基本的には太る傾向にある医薬品です。しかし他の抗精神病薬と比較した場合においては比較的太りにくい医薬品に該当します。
アリピプラゾール(エビリファイ)の承認時の副作用頻度を見ると、体重増加の割合は以下のようになっています。
体重増加の割合
- 統合失調症で2.96%
- 双極性障害のそう状態で9.38%
- うつ病・うつ状態で10.06%
- 自閉症スペクトラム障害で18.18%
このように、アリピプラゾールを服用した人の中には一定の割合で体重が増加する傾向にあります。つまり、アリピプラゾールを服用すると太る可能性はあるということになります。
しかし、アリピプラゾールは他の抗精神病薬と比べると体重増加のリスクは低い部類に入ります。一部の患者は、他の抗うつ剤からアリピプラゾールに変更したことで体重が減少したと感じている方もいます。
アリピプラゾールで太る理由
アリピプラゾールで体重が増える理由は、主に以下の2点が考えられています。
①抗ヒスタミン作用や抗セロトニン2C作用による直接的な食欲増加
②非定型抗精神病薬(ひていけいこうせいしんびょうやく)が代謝を低下させる作用(原因不明)
つまり、アリピプラゾールにも一部食欲増加の作用があり、さらに非定型抗精神病薬全般に代謝低下の傾向があるため、結果的に体重増加のリスクがあるということです。
ただし、アリピプラゾールのこれらの作用は比較的弱いため、他の抗精神病薬ほど太る傾向は強くありません。
アリピプラゾールには体重増加のリスクがある一方で、他の抗精神病薬と比べると太りにくい特徴があります。服用中は食生活や運動量、ストレス管理などの生活習慣にも気をつけ、体重の変化に注意を払うことが大切です。
抗うつ剤・抗精神病薬の「太る」副作用比較
抗うつ剤の太りやすさは以下の一覧表のとおりです。
| 太りやすい | |
|---|---|
| 三環系 | アミトリプチリン塩酸塩 |
| NaSSA | ミルタザピン |
| やや太りやすい | |
|---|---|
| 三環系 | イミプラミン塩酸塩 |
| アモキサピン | |
| クロミプラミン塩酸塩 | |
| ノルトリプチリン塩酸塩 | |
| 四環系 | マプロチリン塩酸塩 |
| SSRI | パロキセチン塩酸塩水和物 |
| 太りやすい傾向 | |
|---|---|
| 四環系 | ミアンセリン塩酸塩 |
| SSRI | フルボキサミンマレイン酸塩 |
| セルトラリン塩酸塩 | |
| エスシタロプラムシュウ酸塩 | |
| その他 | スルピリド |
| トラゾドン塩酸塩 | |
| 太りにくい | |
|---|---|
| SNRI | デュロキセチン塩酸塩 |
| ベンラファキシン塩酸塩 | |
| ミルナシプラン塩酸塩 | |
抗精神病薬の太りやすさは以下の一覧表のとおりです。
| 太りやすさ | 太りやすい | やや太りやすい | 太りやすい傾向 | 太りにくい |
|---|---|---|---|---|
| 医薬品名 | オランザピン | リスペリドン | パリペリドン | ブロナンセリン |
| クロザピン | クエチアピンフマル酸塩 | ペロスピロン塩酸塩水和物 | アリピプラゾール | |
| クロルプロマジン塩酸塩 | アセナピンマレイン酸塩 | ブレクスピプラゾール | ||
| ハロペリドール |
アリピプラゾール(エビリファイ)のよくある質問
- Qアリピプラゾールを飲み忘れたときはどうしたら良いですか?
- A
飲み忘れに気づいたらすぐに1回分を服用してください。
ただし、次の服用予定時間が近い場合には、その時に服用せずに、次の服用予定時間に1回分のみ服用します。絶対に2回分を一度に飲まないでください。過剰摂取は副作用のリスクが高まります。規則正しい服用を心がけましょう。飲み忘れを減らすために毎日決まった時間に服用するなどの工夫をすると良いでしょう。
- Q誤って多く服用してしまった時はどうしたら良いですか?
- A
アリピプラゾールを多く服薬してしまった場合、嗜眠(刺激がないと眠ってしまう)、ぼんやりする、血圧上昇、脈が早くなる、嘔吐(おうと)、などの症状が現れる可能性があります。特に小児の場合は、一過性の意識消失、ぼんやりするなどの症状も起こりうるとされています。
このような症状が同じ時期に複数現れた場合は、アリピプラゾールの過剰摂取が考えられます。その場合は直ちに服用を中止し、医師に受診することが必須です。過剰服用は重篤な健康被害につながるリスクがあるためです。
つまり、アリピプラゾールを誤って多く飲んでしまった際は、上記のような症状に注意を払い、複数の症状があらわれた時点で速やかに医療機関を受診することが大切になります。
- Qアリピプラゾールを服用して太った場合はどうしたら良いですか?
- A
アリピプラゾールを服用して体重が増えてしまった場合の対応としては、以下のようなことが挙げられます。
①生活習慣の見直し
食事内容や運動量など、基本的な生活習慣を改善することが重要です。
②運動習慣の取り入れ
適度な運動を習慣化することで、体重のコントロールが期待できます。
③食事時の噛む回数を増やす
良く噛むことで、満腹感が得られ、過剰な食事を防げます。
④薬物の減量
主治医に相談の上、アリピプラゾールの用量を適切に調整することで体重増加を抑えられる可能性があります。
⑤別の抗精神病薬への変更
アリピプラゾール以外の薬剤に切り替えることで、体重増加のリスクが下がる場合があります。
いずれの対策も主治医への相談が前提となります。単独で薬の減量や変更を行うことは避け、医師の判断を仰ぐ必要があります。生活習慣の改善と運動習慣の定着から始め、状況次第で薬物調整の要否を検討するのが一般的なプロセスとなります。
まとめ
アリピプラゾール(商品名エビリファイ)は、統合失調症などの精神疾患の治療に使用される新世代の抗精神病薬です。
その作用機序は他の抗精神病薬と異なり、ドパミンやセロトニンの受容体を部分的に刺激または阻害することで神経伝達を調整することにより、症状の改善を図ります。
この薬剤は有効性が高い一方で、体重増加などの副作用が指摘されています。
しかしアリピプラゾールは一般的な抗精神病薬と比較した場合、体重増加のリスクは低いとされています。
アリピプラゾール服用による体重増加の原因は、作用機序による食欲亢進や代謝変化が考えられています。
実際、体重が増える傾向にある方もいますが、個人差も大きく、体重が変わらない方もいます。
アリピプラゾールは強力な精神疾患治療薬です。しかし体重増加リスクは低いとはいえ副作用のデメリットもあることを知っておくことが大切です。
患者自身の生活習慣の改善に加えて、主治医とよく相談しながら、メリット・デメリットを勘案した上で慎重に服用を続けていくことが大切だと言えるでしょう。
出典
エビリファイ錠1mg/3mg/6mg/12mg/散1%添付文書
エビリファイOD錠3mg/6mg/12mg/24mg添付文書
エビリファイ内用液0.1%添付文書
抗精神病薬服用者の肥満
太りやすい傾向のある抗精神病薬は?






