利尿剤と便秘のメカニズム
実は、薬の副作用により「便秘」が生じる医薬品はみなさんが思っている以上に多いです。
一部紹介すると「強い痛み止め」や「お腹の痛み止め」、「強い咳止め」や「パーキンソン病の治療薬」、「うつ病の薬」や「精神病の薬」などを服薬する事で便秘が生じます。
その中の一つに「利尿剤」があります。
今回は「利尿剤」に焦点を当てて解説していきます。
利尿剤とは腎臓の機能を促進し、体内の余分な水分や塩分を尿として排出させる作用を持った医薬品です。
利尿剤を服薬することで体内の水分量が調整され、むくみを取ったり心不全の治療を目的として使用されます。また、血圧を下げる効果もあることから高血圧症の患者に使用することも少なくありません。利尿剤はかなり汎用性のある医薬品です。更には、稀ではありますが夜間頻尿を改善する目的で使用する先生もいる位です。
そんな利尿剤の種類や強さなど以下のページで詳しく解説しています。
次に、便秘のメカニズムについて考えてみましょう。
便秘は、腸の運動が低下し、便が体内に滞留する状態です。この状態が続くと、身体にさまざまな悪影響が及びます。便秘の主な原因には食物繊維不足、水分不足、運動不足、ストレスなどが挙げられます。便秘についてもっと詳しく知りたい方は以下のページを参照してください。
利尿剤を服用することにより便秘を引き起こす薬理作用は2つ考えられています。
1つは利尿剤を摂取した際の副作用として電解質異常が生じ、それに伴う腸管運動の低下作用により便秘が生じること。もう1つは体内の水分排出促進作用により脱水状態になり、スムーズに便が移動できなくなることにより便秘になることです。
これらの作用から利尿剤を服薬する事で便秘が生じることになります。
利尿剤と便秘薬の併用について
利尿剤を服薬する事で便秘になる可能性があることはわかりましたね。ではもし便秘になってしまったらどうしたら良いでしょうか?考えられる方法は2つあります。それは便秘の原因となっている利尿剤の服薬を中止する、もしくは下剤を追加服薬する事です。
原因を除去すればおそらく便秘は治るでしょう。しかし利尿剤は現疾患の治療に必要だからこそ服薬していたはずです。それを突然中止して良いはずがありません。
もし仮に便秘が酷いからと言って勝手に利尿剤の服薬を中止したとしましょう。すると便秘は解消しますが別の問題が発生します。それはむくみの悪化であったり、血圧の上昇、心不全の悪化などが考えられます。いずれにせよ心臓への負担は避けられません。もし利尿剤を中止するのであれば代替薬を用意しておく必要があります。
それでは下剤の追加を考慮した場合はどうでしょうか。
利尿剤と便秘薬の併用に問題はありません。その為、利尿剤はそのまま継続服薬できますので現疾患の治療は継続できます。その上で下剤を服薬したら便通改善するかもしれません。
しかしここで大切なことは下剤の選択です。利尿剤による便秘の原因は「腸管運動能の低下」と「水分不足」です。そんな状態でビサコジルやピコスルファートのような大腸刺激性下剤を投与したらどうなるでしょう。水分のないコロコロ便を頑張って出そうと大腸を刺激するわけですから腹痛は避けられません。またコロコロ便を頑張って出そうとするわけですから心臓への負担もかかるかもしれません。
それを避ける為にもできることなら水分を保持させるタイプの下剤が選択としては理想的です。
では、どの様な下剤なら良いか一部ご紹介いたします。
「医療用医薬品」
分類 | 商品名 | 製造販売元 |
---|---|---|
上皮機能変容薬 | アミティーザカプセル12μg/24μg | ヴィアトリス製薬株式会社 |
リンゼス錠0.25mg | アステラス製薬株式会社 | |
胆汁酸トランスポーター阻害薬 | グーフィス錠 | EAファーマ株式会社 |
膨張性下剤 | カルメロースナトリウム原末「マルイシ」5mg | 丸石製薬株式会社 |
浸透圧性下剤(浸潤性下剤) | ビーマス錠15mg/30mg | 日本臓器製薬株式会社 |
浸透圧性下剤(糖類下剤) | モニラック・シロップ65% | 中外製薬株式会社 |
浸透圧性下剤(塩類下剤) | 酸化マグネシウム原末「マルイシ」 | 丸石製薬株式会社 |
モビコール配合内用液LD/HD | EAファーマ株式会社 |
「個人輸入で購入の出来る医薬品」
商品名 | エックスラックス |
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画像 | |
有効成分 | センノシド・アカシア・カルナバワックス・微晶質セルロース・アルギン酸・マグネシウム他 |
価格 | 1箱あたり3,600円~ |
メーカー・ブランド | ノバルティス社 |
URL | エックスラックスの購入はこちら |
利尿剤投与により生じた便秘には上記で紹介したような下剤が理想的です。一言で「下剤」といっても今やいろいろな種類の下剤があります。市販薬でも下剤は販売されていますのでもし自分で購入される場合にはご注意ください。
利尿剤使用の際に便秘にならない対策方法
利尿剤を使用する時に便秘にならないようにするにはどうしたら良いでしょうか?水分が奪われるのだから水分制限がある場合を除いてとれる範囲でしっかり水分補給を行うことが基本となります。
便秘は誰にとってもストレスな症状です。便秘を解消し、再発を防ぐには食生活がとても大切な役割を果たします。ここでは、便秘を改善し予防する食べ物とその効果について解説します。
まず大切なのが食物繊維です。水溶性食物繊維は便を軟らかくして滑らかに通過させます。野菜、海藻、大豆製品に多く含まれています。一方、不溶性食物繊維は便の量を増やし腸の動きを活発にします。豆類、キノコ、ごぼうなどが不溶性食物繊維の供給源です。この2つの食物繊維をバランスよく取ることが大切なコツです。
次に大切な成分が脂肪酸です。チーズやナッツ、オリーブオイルなどの脂肪酸は、大腸を刺激して腸の動きを高めます。過剰にならないよう適量を心がけましょう。
そのほか、海藻や茸類、発酵食品に含まれる成分も便秘改善効果が期待できます。わかめや昆布、しいたけやエリンギは食物繊維だけでなく、腸内環境を整える成分が多く含まれています。
こうした食材を意識的に取り入れることが大切ですが、なかなか難しい場合もあるでしょう。そこでオススメなのが、スーパーで購入できるサプリメントです。食物繊維が主成分のサプリメントを食後に1日1包飲むだけで大幅に摂取量を確保できます。便秘対策として効果的な選択肢といえます。
腸内環境を整え便通を改善する為には、野菜がいかに大切かということがわかりましたね。色とりどりの野菜を余すことなく食べることが、便秘予防の基本中の基本となります。グリーンやイエロー、レッド、パープルと様々な野菜を組み合わせることで、便秘を引き起こす原因を打ち消すことができます。
バランスの良い食事、食物繊維の確保、発酵食品や野菜の活用すべてが大切です。これらを念頭に置いて食事を選び、楽しくバランスの良い食生活を実践しましょう。それが利尿剤使用の際にも便秘にならない対策方法となるのです。
よくある質問
- Q利尿剤服薬による便秘対策に多めに水分摂取をしても大丈夫ですか?
- A
はい、利尿剤を服用している場合、多めの水分摂取は便秘対策として非常に重要です。
利尿剤は体内の水分を排出させる作用があるため、脱水状態を引き起こしやすくなります。この脱水が便の水分不足と硬さの原因となるため、普段以上に水分補給を心がける必要があります。多めの水分摂取で利尿作用を打ち消すことはありません。むしろ適度な水分摂取が利尿剤の効果を最大限に引き出すことにつながります。ただし、心不全など水分制限が必要な方や透析中の方は場合によって制限があることがあるので、主治医と相談しながら、できるだけ水分を取るように気をつけましょう。
適量の水分摂取で便秘対策はもちろん、体調維持の面からも大切です。渇きを感じなくてもこまめに水分補給を心がけることをおすすめします。
- Q水分摂取に適さない飲み物はありますか?
- A
利尿剤を飲んでいる場合、脱水予防のために水分摂取が大切ですが、飲み物の種類によっては向いていないものがあります。特にカフェインを含むコーヒーや紅茶、緑茶は利尿作用を増強する可能性があるので避けた方が良いでしょう。
炭酸飲料やアルコールも体内の水分喪失を招くためおすすめできません。代わりに、水、白湯、野菜ジュースなどのミネラルウォーターが脱水予防に適しています。果物やゼリーを食べるのも良いでしょう。脱水症状の時にはスポーツドリンクや経口補水液(OS-1)などの摂取も効果的です。
水分摂取する際には糖分やカフェイン、塩分の高い飲み物は控えめにし、上記のようなものをメインにすることをおすすめします。
- Q便秘改善に役立つ水分の摂り方はありますか?
- A
はい、特におすすめなのが起床直後と就寝前の水分補給です。
【起床後の水分摂取】
起床後すぐにコップ1杯程度のぬるま湯を飲むことで体内時計をリセットし、消化器の働きを高めます。【就寝前の水分摂取】
就寝2~3時間前に湯飲み約1~2杯のぬるま湯やハーブティーを飲むことで、就寝中に体内の水分が腸まで行き渡りやすくなります。これらの習慣をつけることで、腸の働きが高まり便秘改善効果が期待できます。
あわせて1日を通じてこまめに水分補給を心がけ、食事の前後に特に水分を取るよう意識することも大切です。水分が腸まで送られて初めて腸蠕動が促されます。
水分摂取のタイミングと量を意識し、便秘予防に取り組むと良いでしょう。
- Q利尿剤は飲み始めたら死ぬまでやめれないのですか?
- A
利尿剤を完全にやめることは難しい場合がありますが、状況に応じて減量や中止が検討されます。利尿剤は慢性的に水分貯留がある心不全患者さんなどが長期服用することが多い薬剤です。
このため一旦利尿剤を開始すると完治しない限り、ずっと服用が必要になることが一般的です。ただし、原疾患の改善や年齢による腎機能低下など体調の変化に応じて、医師が利尿剤の減量・中止の判断をします。
特に高齢になるにつれ徐々に腎機能が低下していきますので、その辺りを見極めながら調整していくことが多いです。したがって、一概に生涯服用が必要というわけではなく、定期的に腎機能や水分状態をチェックし、個々の症例に応じた対応が取られます。
状況変化に応じた見直しをしながら、必要最小限の量でコントロールすることが大切です。
- Q利尿剤による副作用の便秘にヨーグルトを摂取しても良いですか?
- A
ヨーグルトに含まれる乳酸菌は、小腸で活躍する善玉菌です。乳酸菌そのものは大腸内では数が少ないものの、生成する乳酸によって大腸の働きを活発化させます。一方、大腸内で99.9%を占める主要な善玉菌がビフィズス菌です。ビフィズス菌は酢酸の生成で大腸内環境を整える大切な働きがあります。
高齢者はビフィズス菌が減少しがちなことから、これを積極的に補う意味でも、ヨーグルトや発酵食品がおすすめできます。従って積極的にヨーグルトを摂るのであれば「ビフィズス菌」をメインにしているヨーグルトを摂ると良いでしょう。ヨーグルトの摂取は腸内フローラを整え、便秘解消の効果が期待できます。
まとめ
まとめ
利尿剤を飲むと便秘になるメカニズムは、体内の水分量が減少し便が硬くなることと、電解質異常により腸の動きが悪くなることの2通りが考えられます。
便秘になった場合、利尿剤を勝手に中止することはおすすめできません。代わりに、水分を保持させる効果のある下剤を併用することが理想的です。
利尿剤使用の際に便秘を予防するには食事から十分な水分と食物繊維を摂取することが重要です。野菜や海藻、きのこ類などを積極的に取り入れる食生活を心がけましょう。発酵食品や食物繊維サプリメントもおすすめです。
色とりどりの野菜をバランスよく食べることで、腸内環境を整え利尿剤使用時の便秘リスクを下げることができます。楽しい食生活こそが実は便秘を解消するための予防のカギとなります。
出典