アフターピルとは
アフターピルとは、性交後に避妊を目的として使用する緊急避妊薬です。
避妊に失敗した場合、避妊をせずに性交をしてしまった場合、性犯罪などに巻き込まれた場合など、基本的に性交後72時間以内に服用することで、避妊効果が見込めます。
24時間以内に服用すると妊娠阻止率は95%ほどであるといわれていますが、72時間を超えると十分な薬剤の効果が発揮されず約58%まで低下するとされ、早く服用すればするほど高い避妊効果が見込めます。
72時間以上経過して服用したからといっても避妊効果は時間の経過と共に低下していきますが、全く無くなるわけではありません。
海外では120時間以内に服用するタイプのアフターピルも認可されています。

アフターピルとほかのピルとの違い

アフターピル以外にもピルにはいくつか種類があります。
基本的には、配合されているホルモンの比率で作用が異なっています。
アフターピルはピルの中でも黄体ホルモンの量が多いピルとなっています。
分類 | 超低用量ピル | 低用量ピル | 中用量ピル | アフターピル |
---|---|---|---|---|
説明 | 卵胞ホルモンの配合量が0.03㎎より少ないものです。ホルモンの量が低用量ピルより少ないため、副作用が起こりにくいと考えられています。避妊を目的とした使用はできません。 | 卵胞ホルモンの配合量が0.05㎎より少ないものです。 1日1回1錠を、正しく服用すると避妊効果が99.7%といわれています。なお、性感染症を防ぐ効果はありません。 | 低用量ピルよりも卵胞ホルモンの含有量が多いものです。 生理日が大事なイベントと重なった際でも、計画的に前もって飲むことで予定日をずらすことができます。 | 黄体ホルモンを主成分としているものです。妊娠の可能性がある場合に、性行為から72時間以内に1錠飲むと、84%の確率で避妊効果が期待されます。 |
効果 | 月経困難症や子宮内膜症の治療 | 避妊効果・生理周期の安定化・肌荒れの改善 | 生理不順、過多月経(生理の出血量が多い症状)、月経困難症の治療・生理日の移動 | 緊急的に妊娠を防止する |
アフターピルの機序

通常、妊娠は排卵するタイミングで卵子と精子が出会い、受精します。
アフターピルはこの排卵を約5日ほど抑制し、タイミングを遅らせることで効果を発揮すると考えられています。
排卵された卵子の寿命は24時間ほどといわれており、24時間以内にアフターピルを飲むと、排卵を遅らせるためより効果が高くなります。
また、アフターピルは受精卵を子宮内膜に着床させないようにする効果があります。
女性は月経時に卵胞ホルモン(エストロゲン)の働きにより、子宮内膜が増殖して受精卵が着床しやすい環境を整えるようになります。
受精卵が着床しやすい環境というのは、子宮内膜がふかふかなベッドのような状態になるイメージです。
この子宮内膜の増殖を抑え厚みをなくすことで、受精卵が子宮内膜に着床しにくい状態へするため妊娠を防ぐことができます。
もし、アフターピルを飲んだ後、避妊がしっかりできていた場合、服用から3日以降3週間以内に出血が起こります。
出血は2~3日ほど続きますが、出血が起きた場合も、不正出血と月経とを区別できないことがありますので、性行為から3週間ほど経過したら、ドラックストアで販売している妊娠検査薬で確かめてみることをお勧めします。
また、生理のような出血があるまでは性行為を控える、もしくは必ず避妊をしてください。
アフターピル(緊急避妊ピル)が必要な時
以下のようなケースには、アフターピルの服用を検討しましょう。 未成年でも処方が可能で、保護者の同意書や同伴の必要はありません。
アフターピル(緊急避妊ピル)が必要な時
- コンドームが破れたり、外れたりした
- 避妊をしない性交後(膣外に出すなども含む)
- 経口避妊薬(ピル)の飲み忘れ
- 排卵日近くに性行為をしたため、妊娠しないか不安
- 性犯罪の被害にあってしまった(警察に相談することで、費用を負担してもらえる制度を利用できます。)
アフターピルの効果
日本で発売しているアフターピル「ノルレボ」と「レボノルゲストレル」を用いた妊娠阻止方法をレボノルゲストレル法と呼びます。
2種類の薬剤が普及する前にはヤッぺ法という避妊方法が主に使用されていました。
ヤッぺ法とは、ホルモン配合剤(卵胞ホルモン+黄体ホルモン)を内服する方法で、ヤッペ氏らが1977年に発表した緊急避妊方法です。
このヤッぺ法とレボノルゲストレル法との効果を比較した試験が1998年Lancet誌に掲載されています。
ヤッペ法とレボノルゲストレル法の効果の比較

ヤッぺ法 | レボノルゲストレル法 | |
---|---|---|
登録例数 | 997名 | 1001名 |
妊娠例数 | 31名 | 11名 |
非妊娠率 | 96.8% | 98.9% |
妊娠阻止率 | 57% | 85% |
※非妊娠率
生理周期に関係なく薬剤を内服して、妊娠しなかった人の割合
※妊娠阻止率とは
生理周期から妊娠の可能性がある時期に内服して、妊娠しなかった人の割合 レボノルゲストレル法の方が妊娠阻止率も高いことが分かりました。
アフターピルの種類
72時間1錠タイプ
72時間以内に1錠服用するタイプのアフターピルは2種類です。
先発品で、日本で初めて販売された「ノルレボ」とそのジェネリック医薬品である「レボノルゲストレル」です。 黄体ホルモンを主成分としており、緊急避妊として使用されます。
作用としては、アフターピル服用によって、5~7日間排卵が抑制されます。ただし、性交から時間が経過してしまうと、薬剤の効果が低下することが分かっているため、早く飲むことが重要です。
商品名 | ノルレボ | レボノルゲストレル |
---|---|---|
発売年 | 2011年 | 2019年 |
成分名 | レボノルゲストレル | レボノルゲストレル |
製造販売 | あすか製薬 | 富士製薬工業 |
用量 | 1.5㎎ | 1.5㎎ |
適応 | 緊急避妊 | 緊急避妊 |
飲み方 | 性交後72時間以内にレボノルゲストレルとして1.5mgを1回経口投与します。 | 性交後72時間以内にレボノルゲストレルとして1.5mgを1回経口投与します。 |
禁忌 | ・本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある女性 ・重篤な肝障害のある患者 ・妊婦 | ・本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある女性 ・重篤な肝障害のある患者 ・妊婦 |
起こりやすい副作用 | 頭痛、消退出血、悪心、不正子宮出血、倦怠感 |
◎ノルレボ錠
日本で初めて発売されたアフターピルです。国際的にも標準的な緊急避妊法として位置づけられています。
<関連商品>
商品名 | ノルレボ | ナイピル | アンウォンテッド72 |
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画像 | ![]() | ![]() | ![]() |
一般名 | レボノルゲストレル | レボノルゲストレル | レボノルゲストレル |
メーカー | Laboratoire HRA Pharma(エイチアールエーファーマ) | Asle pharmaceuticals(アスレ) | Mankind Pharma(マンカインドファーマ) |
購入ページ | ノルレボの購入ページはこちら | ナイピルの購入ページはこちら | アンウォンテッド72の購入ページはこちら |
72時間2錠タイプ
72時間以内に2錠飲むタイプですが、成分としては「ノルレボ錠」と同じレボノルゲストレルが含まれています。
服用方法としては、1錠目を服用した12時間後に2錠目を服用します。
1錠目から2錠目の服用まで12時間以上あけないよう注意が必要です。ほかのアフターピルと同様、早ければ早いほど避妊効果は高まるとされています。
<関連商品>
商品名 | マドンナ | ポスティノール |
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画像 | ![]() | ![]() |
一般名 | レボノルゲストレル | レボノルゲストレル |
メーカー | Biopharm Chemicals(バイオファームケミカルズ) | Gedeon Richter(ゲデオンリヒター) |
購入ページ | マドンナの購入ページはこちら | ポスティノールの購入ページはこちら |
120時間タイプ
◎エラ
これまでのアフターピルは、性行為から72時間以内の服用が必要でしたが、エラは5日以内であっても85%ほどの確率で避妊効果があるとされています。ノルレボの有効成分とは異なる、ウリプリスタール酢酸エステルが使用されています。また、レボノルゲストレルを主成分とするこれまでのアフターピルでは効果を十分に得ることができないとされていた、BMI値30以上の肥満女性に対しても十分効果が得られるという点でもメリットが大きい薬となっています。
商品名 | エラ |
---|---|
発売年 | 2009年 |
成分名 | ウリプリスタール酢酸エステル |
製造販売 | Abdi ibrahim |
用量 | 30㎎ |
適応 | 緊急避妊 |
飲み方 | 性交後120時間以内に1回1錠を経口投与します。 |
禁忌 | ・本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある女性 ・重篤な肝障害のある患者 ・妊婦 |
起こりやすい副作用 | 不正出血や消退出血、吐き気、頭痛、胸の痛み、経血量の 増加や減少また生理不順、疲労、下腹部痛 |
<関連商品>
商品名 | エラ |
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画像 | ![]() |
一般名 | ウリプリスタール酢酸エステル |
メーカー | Abdi ibrahim(アブディイブラヒム) |
購入ページ | エラの購入ページはこちら |
アフターピルの副作用

従来の避妊方法である「ヤッぺ法」と比較すると、アフターピル服用での副作用発現率は減少しました。
通常、アフターピル服用による副作用は24時間以内に軽減するとされていますが、人によっては副作用が出てしまう場合があるので、代表的なものをいくつかご紹介します。
吐き気
アフターピルの副作用で代表的なものの1つが吐き気です。
通常薬は、服用してから時間をかけて体の中に吸収され、効果を発揮します。その吸収までの時間は薬ごとに異なっており、アフターピルはだいたい2時間ほどといわれています。
そのため、服用から2時間以内に吐いてしまった場合、十分な効果が得られない場合があります。
医師の指示に従ってもう1錠服用することも検討します。
また、アフターピルの副作用は他の薬剤の併用で対処が可能なものがほとんどです。
吐き気が出た場合には、市販の吐き気止めの服用も検討しましょう。 吐き気の発言率は1%以下といわれています。
眠気
アフターピルはホルモンを多く含んでいるため、眠気が強く起こることがあります。
眠気などがひどい場合は、少量であればカフェイン入りの飲料を飲むことも可能です。
出血
ノルレボ錠の添付文書では、消退出血が46.2%、不正子宮出血が13.8%の割合で報告されています。服用3日以降に起こった出血は、アフターピルの作用によるもので消退出血と考えられます。
しかし、茶色い出血が少しであれば問題ありませんが、鮮やかな色の血が続くなど、色や量に違和感がある場合は、再度医療機関を受診しましょう。
頭痛
頭痛もノルレボ錠の添付文書によると12.3%の割合で報告されています。
対処法としては、市販の頭痛薬を飲むことが1つとされています。
肌荒れ
アフターピルでは女性ホルモンを体内に入れるため、ホルモンバランスが崩れ、肌荒れを引き起こすことがあります。
アフターピルの注意点
内服後
一般的に、アフターピル服用後早い人は3日、平均7日後に生理のような出血が起こります。
服用から3週間以内に出血があれば、避妊ができたという合図となっていますので、確認するようにしましょう。
もし、出血が来ない、整理とは異なる色・量の出血が続くなどの異変がないかもしっかり確認しましょう。
また、アフターピルを飲んだから、そのあとは「避妊をしなくても大丈夫」というわけではありません。服用後の性行為に対する避妊効果はないので注意しましょう。
飲み合わせ
アフターピルの効果は薬やサプリメントの影響を受けることがあります。
また内服中のお薬によっては、アフターピルを処方できないこともあります。内服中のお薬がある場合は必ず医師に伝えるようにしましょう。
アフターピルの効果に影響する薬・サプリメント
・抗けいれん剤
フェノバルビタール・フェニトイン・プリミドン・カルバマゼピン
・HIV プロテアーゼ阻害剤
リトナビル
・非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤
エファビレンツ
・リファブチン
・リファンピシン
・セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)
※セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)は鬱やイライラ、睡眠障害などに効用があるとされるハーブです。
サプリメントもあり、PMS(月経前症候群)や更年期障害の症状緩和のために服用することもあります。
このほか血栓症などで処方される血液をサラサラにする薬(抗凝固剤)は、アフターピルの服用によって効果が変わることが認められています。
抗凝固剤
・フェニンジオン
・ワルファリン
この2種類のお薬を飲んでいる人は、アフターピルの処方ができないこともあるので医師に相談してくださいね。
念のため服用しているお薬がある人は、診察の際にお薬手帳を持参すると安心です。
アフターピルの購入方法
婦人科受診(超低用量ピル・低用量ピル・中用量ピル)
婦人科や産婦人科、レディースクリニックなどで購入することができます。検査などもピル処方と同時に行うことができます。医師の処方箋が必要となりますが、クリニックによっては通話による診療で、オンラインで薬剤を処方してくれるところもあります。
●薬局・ドラックストアではまだ購入できない
現在の日本では、ドラックストアや薬局などではまだ購入できません。「まだ」と書いたのは、2023年6月26日、「緊急避妊薬(アフターピル)」市販化に向けた動きが、厚生労働省から発表されたためです。2024年3月までを調査期間として、それまでは1県1つを目安に指定された薬局でアフターピルが販売されることとなりました。 いわゆる試用期間を行うということになります。 現在の体制では、必ず医療機関の受診が必須となっていますが、アフターピルは72時間以内に服用しないと避妊効果が減少するとされています。例えば、土曜日の夜に薬剤が欲しいと思った場合、多くの医療機関が休みである日曜日は何もできず、最短でも月曜日まで待たなければならないため、その時点で約48時間ほどとなってしまいます。 このような状況を解決するために、市販化の動きがすすめられています。しかし、アフターピルはあくまで緊急での不要とすることは変えず、望まない妊娠を避けるためには低用量ピルの服用をお勧めします。
<関連商品>
商品名 | マーベロン | トリキュラー |
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一般名 | エチニルエストラジオール・デソゲストレル | エチニルエストラジオール・レボノルゲストレル |
メーカー | MSD(メルクアンドカンパニー)/N.V. Organon(オルガノン) | Bayer(バイエル)/Zydus Healthcare(ザイダス ヘルスケア) |
購入ページ | マーベロンの購入ページはこちら | トリキュラーの購入ページはこちら |
3000円~20000円の間で購入が可能ですが、自由診療という保険適応外の医薬品となるため、購入先ごとに費用が変わってきます。
ジェネリック医薬品である「レボノルゲストレル錠」は先発品の「ノルレボ錠」よりも安いケースがあります。
※価格は参考ですが、一例を記載します。
ノルレボ(先発) | ノルレボ(後発) | エラ | |
---|---|---|---|
クリニック | 約10,000円~ | 約8,000円~ | 約8,000円~ |
オンラインクリニック | 約10,000円~ | 約9,000円~ | 約8,000円~ |
個人輸入 | 約3,000円~ | 約3,000円~ | 約5,000円 |
アフターピルに関するよくある質問

- Qアフターピルは体に影響を及ぼす、副作用の強い危険な薬ですか?
- A
「アフターピルの種類」でもご紹介したノルレボ錠の吐き気や頭痛などの副作用は少なくなっています。
多くの国では緊急避妊薬は既に安全性が確認されたとして約90カ国以上で販売されています。
一方で、中用量ピルを活用した緊急避妊(ヤッぺ法)では吐き気などの副作用が強く、避妊効果も落ちますが、価格が安いことから未だに利用されています。
また、日本では発売されていませんが、他の外国では120時間以内の服用であれば有効なアフターピル(ウリプリスタール酢酸エステル/エラ ella)も認可されています。
- Q妊娠が心配のため、アフターピルを1錠以上服用してもよいですか?
- A
アフターピル(緊急避妊薬)は用法用量を守り、決められた錠数を服用してください。
日本で認可されているアフターピルは、先発品のノルレボ錠と後発品のレボノルゲストレル錠の2種類です。妊娠の可能性がある性行為後、72時間以内に1錠を服用します。
「本当に効果があるのだろうか」と不安を感じることがあるかもしれませんが、2錠以上服用しても効果が上がるわけではないことが認められています。
逆に身体への負担も大きくなってしまう可能性があるので、1錠以上服用することは避けましょう。
- Qどちらも避妊ができるアフターピルと低用量ピルの違いは何ですか?
- A
どちらも避妊しますが、作用機序が異なります。
低用量ピルは排卵を抑えることで、一方アフターピルは着床を防ぐことで妊娠を阻止します。
そのため、アフターピルは性行為後72時間以内に1錠飲まなければなりませんが、低用量ピルは毎日1錠服用していれば問題ありません。
副作用の発現割合も異なっており、低用量ピルの方がアフターピルと比較し少ない傾向にあります。どちらも妊娠への影響、後遺症などは確認されていません。
出典
あすか製薬
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