その薬の飲み合わせは大丈夫?食品やアルコールとの関係を解説

その薬の飲み合わせは大丈夫?食品やアルコールとの関係を解説 薬・漢方薬・市販薬

飲み合わせ(併用禁忌・併用注意)を間違えると起こること

飲み合わせ注意のイメージ画像

「ベーコンとほうれん草」の様に食べ物のなかでも食べ合わせが悪いものがあるように、薬にも飲み合わせが悪い組み合わせが存在します。一緒に飲む事で重い副作用が出たり症状が悪化するため「併用禁忌」に設定されているものや、一緒に飲むのに注意が必要な薬があります。
もし薬の飲み合わせを間違てしまうとどのようなことが起こるのでしょうか。
簡単にまとめると主に次の3つが起こる可能性があげられます。

①薬の効果が増強される

複数の薬が同じ系統の薬であったり、もしくは薬の効果に対し共通の作用機序または類似する作用機序がある場合、その薬の効果が増強し薬の作用が強く出ることがあります。
例えば、血圧を下げる薬同士の併用では血圧の著しい低下を引き起こす可能性があります。

②薬の効果が減弱される

代謝や吸収を阻害する薬、または排泄を促進する薬を一緒に服用することで、本来の効果が得られなくなることがあります。
例えば、テトラサイクリン系と呼ばれる抗菌剤と鉄剤を一緒に併用すると、両者が結合して抗菌剤の作用が低下します。

③重篤な副作用が起こる

薬に対する感受性が高い人の場合、特定の組み合わせの薬を一緒に服薬した場合、重篤な副作用が発現することがあります。
例えば、水虫治療薬と血液をサラサラにする薬の併用では、出血の危険性が増大することが指摘されています。

このように、予期せぬ強力な薬理作用や副作用が発現する場合があるため、原則的には医師の管理下での併用が望ましいです。市販薬の併用についても、必要に応じて薬剤師に相談することをおすすめします。

相互作用は何故起きるの?

相互作用のイメージ画像

「相互作用」とは互いに働きかけ影響を及ぼすことを言います。つまり互いに働きかけるもの同士を一緒に飲んだ場合に相互作用が発生する可能性があります。「薬×薬」はもちろんのこと、「薬×食品」や「薬×疾病」の組み合わせが考えられます。
なぜ相互作用が起きるのか、その主な理由とメカニズムについて以下に詳細を説明します。

薬同士による相互作用(「薬×薬」による影響)

①プラスによる影響

一緒に飲んだ薬が同じ作用機序や同じ効果により互いに影響しあうことで、その結果、作用が増強されることがあります。
例えば、種類の異なる血圧を下げる薬(ACE阻害薬、Ca拮抗薬、利尿薬など)を一緒に飲んだ場合が考えられます。これらの薬を併用すると、血圧低下作用が増強され副作用のリスクが高まります。

②マイナスによる影響

一方の薬がもう一方の薬の効果を減弱させることがあります。その為一緒に服薬することで、治療効果が低下する可能性があります。
例えば血液をサラサラにする薬(ワーファリン錠)と骨粗鬆症治療薬(グラケーカプセル)を一緒に服薬することにより前者の作用が減弱してしまうことから併用禁忌となっています。

飲食物やサプリメントとの相互作用(「薬×食品による影響」)

特定の飲食物やサプリメントは、一緒に服薬した薬の吸収、代謝、排泄に影響を与えることがあります。これが薬の効果や副作用に変化をもたらす可能性があります。
例えばハーブティー(セントジョーンズワート)の様な健康食品は血液凝固剤のワーファリン、気管支拡張剤のテオフィリン、強心薬のジゴキシンなど多くの薬の効果を減弱させるため併用注意とされています。

病気との相互作用(「薬×疾病」による影響)

現在患っている病気や障害は、薬の効果や代謝・排泄に影響を与えることがあります。また逆に、服薬した薬が現在患っている病気に対して症状を悪化させる作用につながることもあります。
例えば睡眠導入剤(ハルシオン錠)は緑内障の病気を悪化させるため併用禁忌となっています。つまり、睡眠導入剤を服薬した場合、眼圧が上昇することで失明するなど非常に危険な状態となることがあります。

相互作用が起こる主な理由は、これらの3つの理由が相互に影響し合うためです。これにより、薬の効果が予測不能に変わり、治療の安全性や有効性に影響を及ぼすことがあります。

飲み合わせを注意しないといけない食品

併用注意食品のイメージ画像

くすりとの飲み合わせに注意が必要な代表的な食品について解説していきます。

食品理由
グレープフルーツジュースグレープフルーツの成分が肝臓の酵素を阻害し、薬の血中濃度を上昇させることがあります。
これにより、薬の効果が強まり、副作用が生じる可能性が高まります。
納豆ビタミンKを多く含む納豆は、血液をサラサラにする薬(ワーファリン錠)の効果を減弱させてしまいます。
これは、ビタミンKがワーファリンの作用に拮抗する為です。
牛乳と制酸剤牛乳中のカルシウムが抗生剤と結合することで、薬の吸収が低下する可能性があります。
また、大量の牛乳と制酸剤を同時に摂ると、カルシウム吸収が増加し、吐き気などの不快な症状が生じることがあります。
カフェインカフェインが含まれる飲み物と薬を同時に摂ると、興奮作用が増幅され、不眠症や過度の興奮が生じる可能性があります。
特に、一緒に摂る薬にもカフェインが含まれる場合は注意が必要です。
アルコール薬とアルコールの同時摂取は、薬の効果を増強または低下させ、副作用を引き起こす可能性があります。
一部の抗生剤はアルコールとの相互作用が強く、症状が強く現れることがあります。
チーズとチラミンを含む食品チーズの中に含まれるチラミンは、一部の薬の分解を妨害し、チラミン中毒を引き起こす可能性があります。
他にも、ニシン、たらこ、サラミ、ソーセージ、ビール、ワインなども注意が必要です。

個々の薬剤の性質と併用する食材の成分を理解しておくことが大切です。

飲み合わせを注意しないといけない薬

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食品同様に飲み合わせを注意しなければいけない薬は多いです。その中でも一部ご紹介します。

医薬品理由
風邪薬×栄養ドリンク風邪薬にも栄養ドリンクにもカフェインが入っているものがあります。
同時に摂取する事でカフェインの過剰摂取となり思わぬ副作用が生じます。
下剤×胃腸薬マグネシウムが使用されているものが多いので為過剰摂取により作用の増強並びに下痢の悪化が見られます。
抗菌剤×制酸剤テトラサイクリン系やニューキノロン系抗菌剤はアルミニウム・カルシウム・マグネシウムなどと相互作用するため作用の減弱が見られます。
総合感冒薬×咳止め総合感冒薬に入っている成分と咳止めにはいっている成分が重複する事があり作用の増強が見られることがあります。
総合感冒薬×解熱鎮痛剤総合感冒薬に入っている成分と解熱鎮痛剤にはいっている成分が重複する事があり作用の増強が見られることがあります。
アレルギー性鼻炎薬×胃腸薬口渇・便秘などの副作用が増強される可能性があります。

これらは代表的な医薬品の一部の相互作用を示しました。飲み合わせを注意しなければならない薬はまだまだたくさん存在します。
まずは自分が服薬する薬についての飲み合わせを薬剤師に確認してみるところから始めてみると良いでしょう。

飲み合わせを間違えないための予防

予防策のイメージ画像

飲み合わせを間違えないためには、正確な服薬習慣を身につけることが重要です。以下に、飲み合わせのNG習慣を防ぐための予防対策を紹介します。

①服薬目的を理解し自分飲んでいる薬に興味を持つこと

薬の名前や効果、服用方法について理解を深め、処方箋の変更に気づけるように心がけましょう。
服用薬に対する食品など飲み合わせの悪いものについては紙に書いておき見える位置に貼っておくと良いでしょう。

②説明書や薬情(薬の効能・効果が書かれた用紙)を確認する

薬袋や薬情を見ながら薬を飲む習慣をつけましょう。飲む回数や錠数を誤らないようにし、薬のなくなるタイミングを確認することで、飲み間違いを防ぐことができます。

③ピルケースやお薬カレンダーなどを利用

常備薬の残数を統一すること、またピルケースやお薬カレンダーを活用する事で飲み忘れ防止につながります。
同じ数の錠剤がセットされているため、飲み間違いに気づきやすくなり、非常時にも備えがしやすくなります。

④飲んだことを記録する習慣をつける

  • 飲んだ殻を捨てずに取っておく
  • 薬のシートに飲む日付を書く
  • 飲んだらカレンダーに印を付ける
  • お薬管理ボックスやスマートフォンアプリを使って飲んだ記録を残す

⑤災害時の備え

災害時に備えて、手元に1週間分程度の常備薬を用意しておきましょう。
しかし、複数の薬がある場合は、残数を統一し、バラバラにならないように注意する事が大切です。

これらの予防対策を取り入れることで、飲み合わせを間違えないための確実な手段を得ることができます。
正確な服薬習慣は、健康維持や治療の成功に直結するため、患者自身が積極的に取り組むことが重要です。

飲み合わせについてのよくある質問

Q
お酒と睡眠薬は一緒に飲んでも良いですか?
A

薬を服用している時にお酒を飲むことは避けるべきです。なぜなら、アルコールと薬は相互に影響しあう可能性があるからです。
まず、アルコールそのものが中枢神経抑制作用があるため、抗不安薬や睡眠薬などと併用すると効果が増強され過ぎて危険です。呼吸抑制や意識障害を起こすリスクが大幅に高まります。
次に、アルコールが肝臓の代謝系酵素を阻害することで、他の薬剤の代謝速度が低下し、作用時間が延長してしまう場合があります。その結果として副作用が強く出る可能性があります。
さらに、長期的な飲酒は肝機能障害を引き起こすので、薬の代謝・排泄に影響がでることも考えられます。
以上の理由から、原則として薬の服用時にはアルコールを避ける必要があります。やむを得ず飲酒する場合は、医師や薬剤師に飲酒量と併用の安全性について必ず確認しましょう。自己判断は厳禁です。

Q
飲み合わせの悪い飲み物を飲んだ場合、どの位時間を空けたら薬は飲めますか?
A

基本的には飲み物の種類や、飲む人の体質・体の大きさにもよります。
飲み合わせの悪い飲料を飲んだ後、どれくらい時間を空ければ薬を飲んでも安全なのかは、以下の点から判断します。
まず飲料に含まれる物質が体内から消失するまでの時間です。例えばアルコールの場合は完全に代謝・排泄され血中濃度が0になるまで時間がかかります。一般的に飲酒後6~8時間空けるのが望ましいとされています。
次に飲料と薬の相互作用の持続時間です。グレープフルーツジュースの薬との相互作用は、一度働くと2~3日間は持続すると考えられています。
最後に個人差です。体内の代謝能力や薬の感受性には個人差が大きいので、一概に時間を定めることは難しく、場合によっては1日以上空ける必要があります。
以上から、飲み合わせで注意の必要な飲料を飲んだ場合、一般的には6~8時間空けるのが目安となります。効果の強い薬や体質的な影響が大きい人では、24時間以上空けることをおすすめします。詳細については医師や薬剤師に確認することが重要です。

Q
風邪薬服用中に市販薬で頭痛薬は飲んでも大丈夫ですか?
A

風邪薬を飲んでいる時に頭痛がある場合、頭痛対策として市販薬で解熱鎮痛薬を飲むことはおすすめできません。
その理由は以下の通りです。
風邪薬と解熱鎮痛薬には共通して、解熱や鎮痛を目的とした成分が含まれていることが多いです。代表的なのがアセトアミノフェンやイブプロフェンです。このため2つの薬を併用すると、これらの成分の血中濃度が高くなり過ぎ、本来の薬理作用だけでなく副作用のリスクも増大させてしまいます。
具体的には肝障害や消化性潰瘍、腎機能低下などの重大な副作用が現れる可能性があります。高齢者ほどこのリスクが大きくなります。
頭痛がある場合でも、まずは風邪薬のみを飲み、効果が不十分であれば医師や薬剤師に相談することをおすすめします。頭痛が激しい時には風邪薬をいったん中止し、専用の鎮痛薬を飲む方が賢明な場合もあります。判断に迷ったらすぐに専門家に確認しましょう。

まとめ

薬の飲み合わせまとめ

薬の飲み合わせには思っている以上に相互の影響があるため、正確な知識と予防策が大切になります。
飲み合わせにおいて特に注意すべき点として、併用禁忌や併用注意を見逃してしまうと、薬の効果が増強または減弱してしまい、重大な副作用が発生する可能性があるります。
また、薬同士や食品、病気などが相互に影響し合うことで、予測不能な薬理作用が発現する可能性があるため一つ一つの飲み合わせが重要となります。
飲み合わせに注意が必要な食品には、グレープフルーツや柑橘類、納豆、牛乳、カフェイン、アルコールなどがあり、相互作用に注意が必要であること、同様に、薬でも作用が増強する組み合わせや作用が減弱する組み合わせを紹介しました。これらの飲み合わせを間違えない為の予防対策として、服薬目的を理解し、説明書や薬情を確認することで誤りを防ぐこと、予備数を統一し、ピルケースを利用すること、飲んだことを記録する習慣をつけることなどがあげられます。
正確な服薬習慣と飲み合わせに関する知識は、薬の安全な使用を確保するために必要不可欠です。医師や薬剤師とのコミュニケーションを大切にし、自身の健康管理に積極的に取り組むことが重要です。

出典

薬物相互作用について
薬物相互作用
薬の知識(厚生労働省 日本薬剤師会)
知っておきたいくすりの知識(厚生労働省 日本薬剤師会)
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