新型コロナワクチンの解毒について
2020年頃、新型コロナウイルスが世界中に蔓延し、それに伴い新型コロナワクチンの接種が始まりました。一般的に、新型コロナワクチン接種とは「感染の予防」を目的としています。
しかし、ニュースなどでも取り上げられている通り、健康被害(病気になったり障害が残ったりすること)が起きてしまい、社会問題になっているのも一つの事実です。
インターネット上の誤った情報や伝聞、うわさなどにより、新型コロナワクチンは「毒」だという考えが広まっていますが、そもそも「ワクチン」とは、重篤な感染症を予防する薬であり、毒ではありません。したがって、「解毒」という表現は不適切です。
正しくは「ワクチンの解毒をする」ではなく、「ワクチンの副反応・後遺症を治療する」が適切な表現です。
現段階で後遺症の正しい治療法は確立していません。
インターネット上の誤った情報や、うわさなどを鵜呑みにしてしまうと、正しい選択ができなくなり、別の健康被害を受ける可能性もあります。
新型コロナワクチンの接種には賛否両論の意見があります。うわさに惑わされず情報を精査し、正しい認識を持つことが、自分の身を守る近道となるのではないでしょうか。
新型コロナワクチンの安全性について
新型コロナウイルスの予防として、新型コロナワクチンの接種をされた方は多いと思われます。
厚生労働省の発表では、「新型コロナワクチンについては、有効性や安全性が確認された上で薬事承認されており、さらに、国内外で実施された研究などにより、新型コロナウイルス感染症にかかった場合の入院や死亡等の重症化等を予防する「重症化予防効果」が認められたと報告されています。」との、見解が出されています。
また、東京都保険医療局によると「従来型1価ワクチンとオミクロン株対応2価ワクチンの安全性については、臨床試験におけるデータや接種後の副反応の発現状況等から、大きな差がないことが確認されており、オミクロン株対応1価ワクチンの安全性についても、既承認の製剤と基本的には同様で、特段の懸念はないとしています。」と発表がありました。
第57回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会の報告では「副反応検討合同部会において、接種に伴う副反応の疑いの報告を継続的に評価を実施。直近で開催された部会において、各年代層における接種と、回数別の接種について評価を行い、継続的に注視し、議論をしてきた内容も踏まえると、重大な懸念は認められないと考える、とされた。」
このような内容で化学的知見等については、まとめられています。
しかし、残念ながら新型コロナワクチン接種後の副反応や・後遺症で悩まれてるという方が、多くいるのも現実の一つとして存在しています。
参考
ワクチンの安全性と副反応
東京都保険医療局
第57回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会(令和5年11月22日)資料1から
新型コロナワクチンの有効性について
新型コロナワクチンは、新型コロナウイルスの発症を予防します。
新型コロナワクチンは、国内外で実施された研究などにより、感染した場合の重症化予防効果が認められたと報告されてます。
報告によれば「新型コロナワクチンの非臨床試験のデータでは、オミクロン株対応1価ワクチンの非臨床試験における初回接種や追加接種により、オミクロン株亜系統に対する中和抗体の産生が確認されたことから、一定の有効性が期待されています。」とあります。
ただし、接種しても完全に予防できるわけではないので、適切な感染予防策を行う必要があります。
また、第57回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会のまとめでは、以下のように有効性がまとめられています。
有効性
・感染、発症予防効果は20~40%程度
・入院予防効果は20~70%程度
・重症化予防効果は40~70%程度
有効性の持続期間
・感染、発症予防効果は4カ月程度で逓減する
・重症化予防効果は未接種者と比較すると1年以上、既接種者と比較しても5カ月程度は約40%程度を維持する
参考
第57回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会(令和5年11月22日)資料1から
厚生労働省 新型コロナワクチンの有効性・安全性について
新型コロナワクチンの仕組みと効果
新型コロナワクチンには種類があります。病原体そのものまたは、病原体を構成する物質などをもとに作ったものがあります。
これまでの新型コロナワクチン
これまでの日本国内における新型コロナワクチン(不活化ワクチン、組換えタンパク質ワクチン、ペプチドワクチン)
→ウイルスの一部のタンパク質を人体に投与し、これに対して免疫ができる仕組みです。
・現在の新型コロナワクチン「mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチン」
→ウイルスのタンパク質をつくるもとになる遺伝情報の一部を注射し、人の体の中で、この情報をもとにウイルスのタンパク質の一部が作られ、それに対する抗体などができ、これによりウイルスに対する免疫ができる仕組みです。
新型コロナワクチンの効果
新型コロナワクチンには、入院や死亡などの重症化を予防する「重症化予防効果」が認められたとの報告があります。
また、国立感染症研究所の報告によると「デルタ流行期においては、呼吸不全を伴うCOVID-19肺炎および人工呼吸器を要するCOVID-19肺炎に対して、ともに非常に高い有効性(点推定値:それぞれ96%、>99%)を示した。」との考察が出ています。
参考
国立感染症研究所 新型コロナワクチンの重症化予防効果を検討した症例対照研究の暫定報告: デルタ流行期~オミクロン流行初期における有効性
新型コロナワクチン接種後でも感染はするのか
感染する可能性はあります。
新型コロナワクチン接種後に免疫がつくまでには1~2週間程度と言われています。
また免疫がついた後でも、予防効果は100%ではありません。
そして、時間の経過とともに発症予防効果は低下することが知られています。
参考
厚生労働省 ワクチンの仕組みや効果
長崎大学熱帯医学研究所 VERSUS Study
新型コロナワクチンの副反応について
新型コロナワクチンを接種した後は、接種部位の痛みが出たり、発熱、頭痛などが生じることがあります。稀に重い症状が現れることもあるので、注意が必要です。
また、新型コロナワクチン接種は、1回目よりも2回目の方が免疫反応が起こりやすくなるため、副反応が強く出やすいです。
主な症状
主な症状は「注射した部分の痛み、発熱、疲労、頭痛、筋肉や関節の痛み、寒気、下痢」などがあります。軽度の場合は数日以内に回復する方が多いです。
重篤な症状
重篤になると「重度の過敏症、心筋炎、深部静脈血栓症、心筋梗塞」など大きなリスクが伴う場合もあります。
極めて稀に起こる血栓症
2024年3月現在、アストラゼネカ社の新型コロナワクチン(令和4年9月30日以降は接種終了)では、稀に珍しいタイプの血栓症が起こるとの報告があります。頻度にはばらつきがありますが、極めてまれに起き、10万~25万回に1回との報告があります。
新型コロナワクチン接種後1ヵ月以内に生じ、特に若い女性に頻度が高いとされています。
現時点では、mRNAワクチンと、この血栓症の発症との因果関係は明らかにされていません。
新型コロナワクチン別の症状と発現割合
厚生労働省の新型コロナワクチン別のまとめは以下のようになります。
ワクチン名 | コミナティ | スパイクバックス | ヌバキソビッド | ダイチロナ |
---|---|---|---|---|
メーカー | ファイザー社 | モデルナ社 | 武田社ノババックス | 第一三共社 |
症状の発現割合 | ||||
50%以上 | 接種部位の痛み、疲労、頭痛 | 接種部位の痛み、疲労、頭痛、筋肉痛 | 接種部位の痛み、疲労、頭痛、筋肉痛 | 接種部位の痛み、倦怠感 |
10~50% | 筋肉痛、悪寒、関節痛、下痢、発熱、接種部位の腫れ | 悪寒、関節痛、吐き気、嘔吐、リンパ節症、発熱、接種部位の腫れ、発赤、紅班 | 倦怠感、関節痛、吐き気、嘔吐 | 接種部位の熱感、腫れ、紅班、頭痛、発熱、筋肉痛 |
1~10% | 吐き気、嘔吐 | 接種後7日以降の接種部位の痛みなど | 発熱、接種部位の腫れ、発赤、紅班 | 接種後7日以降の接種部位の痛みなど、リンパ節症、発疹 |
参考
厚生労働省 ワクチンの安全性と副反応
厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会 副反応検討部会)
副反応に対しての市販薬での対処
新型コロナワクチン接種後の頭痛や発熱に対して、厚生労働省は対応策を考えていますが、主治医や薬剤師に相談することも推奨しています。症状によっては、別の病気も考えられますし、普段服用している薬との飲み合わせ、併用禁忌なども考慮に入れるべきですので、自己判断せずに、まずは医療機関への相談が解決の近道ではないでしょうか。
新型コロナワクチンの後遺症について
厚生労働省の発表によると、現段階では、新型コロナワクチンが原因で後遺症が起きるという知見はありません。接種後の症状について研究が進められています。
後遺症についての実態調査
新型コロナワクチン接種後の遷延する症状に関する実態調査の報告が厚生労働省のHPにあります。
その報告では「新型コロナワクチンとの因果関係を評価することが困難であることから、国内外の他の情報等も含めて検討する必要がある。」「症状と新型コロナワクチン接種の間の因果関係を検証することはできないが、一部には症状の回復に長期間かかる事例や、発症から長期間経過しても未回復の事例が報告されている。」などの総括がされています。
参考
新型コロナワクチン接種後の遷延する症状に関する実態調査について(第100回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和5年度第15回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会資料)
IgA 腎症に係る現在の状況について(第101回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和6年度第1回薬事審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会資料)
イベルメクチンは新型コロナワクチンの解毒効果はあるのか?
新型コロナウイルスが世界各国で蔓延した後、症状に対してイベルメクチンで対応する人が増えています。
そもそもなぜ、イベルメクチンでの対応が増えたのでしょうか。それは、最初から新型コロナワクチン反対という訳ではなく、新型コロナワクチン不足による部分が大きかったようです。
一部の国(インド、南アフリカ、ペルー、南米のその他多くの国々、スロバキアなど)が新型コロナワクチン不足に陥り、毎日感染が拡大している状況で「代替の対応の一つとして」イベルメクチンが新型コロナウイルスの対策として承認され、使用が推奨されたことで、イベルメクチンの使用が広まったと思われます。
これにより各国では、イベルメクチンの有効性についての研究が行われていますが、まだ、確実に効果があるという論文はありません。研究は進められている状況です。
日本国内においては、「抗寄生虫薬」としてのみ承認されています。また、日本国内では、新型コロナウイルスへの有効性について治験を続けていた興和株式会社と北里大学から、「安全性は確認されましたが、統計的有意差は確認できませんでした」との発表がありました。新型コロナウイルスに対して、イベルメクチンを使用することは現段階では不適切です。それでも使用するという方もいるかもしれませんが、これは危険な行為であり、控えるべきです。
国内でのイベルメクチンに関する研究結果
【北里大学・医師手動治験結果】
これによると「多施設共同プラセボ対象無作為化二重盲検医師主導治験(CORVETTE-1)の主要評価項目において、イベルメクチン単回投与群(200 μg/kg)とプラセボ投与群との間に統計学的有意差を認めなかったことをお知らせいたします。」とのお知らせがあります。
参考
北里大学病院
【興和株式会社・興和/新型コロナウイルス感染症患者を対象とした「K-237」(イベルメクチン)の第Ⅲ相臨床試験結果に関するお知らせ 】
これによると、「軽症の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症を対象疾患として、「K-237(開発コード)」(一般名:イベルメクチン、以下、「本剤」)の第Ⅲ相臨床試験を進めておりましたが、今回の臨床試験につきましては、主要評価項目において、統計的有意差が認められなかったことをお知らせいたします。」とあります。
また「本試験は、軽症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者1,030例を対象として実施した国際共同、多施設共同、プラセボ対照、無作為化、二重盲検、並行群間比較試験です。本剤は、主要評価項目である治験薬の投与開始から168時間までの臨床症状が改善傾向に至るまでの時間をプラセボと比較した結果、安全性は確認されました。また、死亡例はなく、重症化例もほとんど認められませんでした。しかしながら、オミクロン株が主流と考えられる今回の対象患者においては、本剤およびプラセ
ボともに投与開始4日前後で症状の軽症化が認められましたが、本剤の有効性を見出すことができませんでした。」
参考
興和株式会社
どちらも詳細な論文はこれから公表予定となっておりますが、現時点で、イベルメクチンが新型コロナウイルスに関して有意差が認められてない。としています。
イベルメクチンでの新型コロナワクチン解毒
イベルメクチンで新型コロナワクチンの解毒ができるというのは、インターネット上のうわさであり、根拠のない情報で不適切です。
必ず効果があるとする論文は存在していません。
また、上記(1.新型コロナワクチンの解毒について)で解説した通り、副反応や後遺症を「毒」と呼ぶ解毒という表現が見受けられますが、これは認識が間違っています。
現在、世界各国でイベルメクチンの研究はまだ進行中で、詳細な結果が待たれている状況です。
一部の国の保健機関では、治療に「効果がある」として推奨している例もあり、これが誤解を招いている原因の一つでもあります。
これにより日本国内においても、新型コロナウイルスに効果があるから使って良いのではないか?という意見がインターネット上などで散見されますが、国内では抗寄生虫治療薬としての承認しかされていませんので、これは誤った使い方です。
皆さんが安全に使用できるようになったと確定するまで、学会や論文の公表を待ちましょう。その上で、正しい認識を取り入れることが重要です。
その他の解毒方法
上記以外にもエビデンスのない治療法が、うわさとして出回っています。
16時間断食をする、血管のマッサージなどはエビデンスのない民間療法で、実践するのは危険です。
また、カテキン・ナットウキナーゼの効果があるとか、抗酸化作用のあるサプリがいいとか、これらは全てうわさや、エビデンスのない情報ですので、信じてしまうのは危険です。
どんなものでも新型コロナワクチンの副反応に対して、完全に治療できるものはありません。
国や研究施設、メーカーなどが研究を進めているのは事実ですが、結果や論文が出されているわけではないのが現状です。
まとめ
・「ワクチンを解毒する」という表現は誤りです。「ワクチンの副反応・後遺症を治療する」が正しい表現です。ワクチン自体は毒ではないので、その表現は不適切です。
・新型コロナウイルスや新型コロナワクチンの副反応に対して、イベルメクチンを推奨する国もありますが、日本では承認されていません。
現在、研究も進行中で、その研究結果や論文の公表を待つ状況にあります。また、イベルメクチンは、作用機序に関しても未解明の部分があるため賛否両論ありますが、期待を持てる治療法の一つであると言えます。
ただし、先入観で無許可で使用するのは危険が伴うため、研究結果を待ち、使用は控えるべきです。
・イベルメクチンが万能薬であるとか、がんにも効果があるとか、副反応・後遺症にも効果があるといった意見があります。これらは一切根拠のない情報です。
通販で大変人気だから、有名人が宣伝していたから、インフルエンサーが紹介していたから、といった理由で信じて使用するのは、極めて危険です。
情報を慎重に精査し、正確な理解を持つことが重要です。