猫コロナウイルス、FIP【猫伝染性腹膜炎】の治療にかかる高額な費用とは?
現在、FIP(猫伝染性腹膜炎)に使用される薬剤はすべて未承認医薬品となっています。そのため、保険適応外の扱いとなることから、治療費用としてはおよそ100万円~200万円ほどかかってきてしまうという課題がありました。しかし、医薬品の中でも後発品(ジェネリック医薬品)などを使用すれば60万ほどに抑えられるケースもあります。薬剤が増えたことで費用の幅が広がっており、飼い主さんの選択肢なども増えてきています。
それぞれの治療法の特徴や有効性の違いなどを知って、状況にあった治療を検討していただければと思います。
FIP治療薬には何がある?
FIP治療において代表的な薬剤が「ムティアン(mutian)」「レムデシビル」「GS441524」「モルヌピラビル」です。それぞれの特徴をご紹介します。これまで不治の病として恐れられてきた疾患も、薬剤を投与することで生存、もしくは完治が目指せるようになりました。
ムティアン(mutian)、レムデシビル、GS441524、モルヌピラビルなど
ムティアン(mutian)
ムティアンは「Xraphconn(ラプコン)」とも呼ばれている薬剤で、FIPの特効薬「GS441524」を真似て製造したものとなります。ただしジェネリック医薬品ではありません。治療費用としては100万~150万ほどです
ムティアン(mutian)の有効性
ウェットタイプのFIPにかかった猫141匹に対してムティアンXを投与したところ、116匹が生存し、生存率は82.2%であったという研究結果があります。また、84日間の投与が必要ですが、投薬後4週間以内に再発したのはわずか3匹でした。
ムティアン(mutian)の副作用
肝機能の低下や下痢、嘔吐などが起こる可能性があります。
もし違和感があった場合にはすぐに主治医に相談しましょう。
レムデシビルは、GS-441524に化学修飾を加えた抗ウイルス薬です。レムデシビルは注射薬であるため、体内で速やかに代謝され、GS-441524に変化します。かなり治療経験も豊富であるため、報告されている研究データも最も多い可能性があります。動物用のレムデシビルは、人間に投与するものよりも濃度が2倍ほどとなっているという特徴があります。費用はGS-441524と比較し高価になっています。
レムデシビルは、GS-441524に化学修飾を加えた抗ウイルス薬です。レムデシビルは注射薬であるため、体内で速やかに代謝され、GS-441524に変化します。かなり治療経験も豊富であるため、報告されている研究データも最も多い可能性があります。動物用のレムデシビルは、人間に投与するものよりも濃度が2倍ほどとなっているという特徴があります。費用はGS-441524と比較し高価になっています。
レムデシビルの有効性
FIPの診断がついた猫31匹にレムデシビルもしくはGS441524の投与をしたところ、26匹のFIP症状が改善しました。改善率は84%で、一方、5匹(16%)は死亡しました。26匹のうち、18匹は治療終了後も追加の投与なく過ごせたというデータが発表されています。
レムデシビルの副作用
レムデシビルの出やすい副作用は、肝機能障害や悪心です。臨床試験では4%未満の発現率でしたが、異常があった場合にはお近くの医療機関を受診してください。また、肝機能障害のほか、過敏症も重大な副作用として報告されています。
GS-441524
GS-441524は、ギリアドサイエンシズ社の医薬品で、ヌクレオシドアナログ抗ウイルスがある化合物です。一般的には「GS」という略称で広まっていますが、さまざまな国のメーカーが販売しており、メーカーによって品質や効果が異なっている現状があります。オーストラリアやイギリスなどでは正規品が早い時期から使用されており、治療成績が豊富です。この医薬品を真似てつくられた薬剤がレムデシビルです。
GS-441524の有効性
GS-441524とレムデシビルのどちらかを投与した有効性報告があがっています。猫31匹にレムデシビルもしくはGS441524の投与をしたところ、26匹のFIP症状が改善しました。しかし、2019年の報告のため、現在は生存率などがあがっている可能性も見込めます。
GS-441524の副作用
実際に研究で起きた代表的な副作用は皮膚表面の病変、開放性の痛み、注射痕などでしたが、すべて軽度でした。肝機能や腎機能に関する副作用は研究などでもみられなかったことから少ないと考えられます。
モルヌピラビル
モルヌピラビルは新型コロナウイルス治療薬として開発された医薬品で、2021年に承認されたように比較的新しいタイプの薬剤です。ジェネリック医薬品が流通しているため、費用もこれまでの半分~1/4程度になるともいわれています。
モルヌピラビルの有効性
FIPと診断がついた18匹の猫にモルヌピラビルを投与したところ、14匹が完治したと記載されています。ほかの薬剤と比較すると、母数は少ないですが、8割近い寛解率と考えると有効性は高いともいえます。
モルヌピラビルの副作用
臨床試験では吐き気や、下痢などが報告されていたため、同じく注意が必要です。新しい薬剤のため、猫に使用した時の安全性は、まだまだ分かっていないことが多く、これからの研究報告にも注目が必要です。
FIPの各治療法の値段比較
各メリット・デメリット
現在、FIPに使用される治療薬は病院ごとにもよりますが、4種類あります。この中で、モルヌピラビルは比較的新しい部類の治療薬に分類されます。医薬品はどんどん機序や分子構造などが進化していくため、基本的に新しい薬剤になればなるほど高い治療効果が期待できます。また、通常新しい医薬品であればあるほど高い価格がつきますが、モルヌピラビルは安い費用で治療が行える点もメリットの1つであるといえます。
一方デメリットとしては、新しい医薬品であるため、長期的な効果や副作用などが不明である点は考慮しなければなりません。
ムティアン(mutian) | レムデシビル | モルヌピラビル | |
---|---|---|---|
費用 | 100万~150万 | 180万~200万 | 30万~60万 |
有効率 | 82.2% | 84% | 78% |
治療期間 | 84日 | 84日 | 84日 |
モルヌピラビルは費用を最も安く抑えれられる治療法
現状使用できる医薬品の中ではモルヌピラビルが最も費用が安くなっています。理由としては、モルヌピラビルのジェネリック医薬品が流通していることがあげられます。もともと、新型コロナウイルスの治療薬として開発されたモルヌピラビルでしたが、製造会社のMSD社が中所得、低所得国のためにジェネリック医薬品の製造を許可しました。
これまでFIPには莫大な治療費用がかかっており、その費用のために治療をあきらめなければならない人も少なからずいました。しかし、このように費用が理由で治療を断念していた人にはモルヌピラビルの治療を検討いただければと思います。
新しいFIP治療・特効薬モルヌピラビルの治療法で治る確率・実績
モルヌピラビルは、FIPに効果があると報告が出ている薬剤の中では新しい医薬品となります。新しい医薬品では実際の猫に使用した研究発表が少ない現状がありますが、最近、
FIPと診断された18匹の猫にモルヌピラビルを使用した論文が報告されています。
結果、18匹のうち14匹がモルヌピラビル投与によって完治しました。完治率としては約8割ほどで、これまで一度かかったら治る見込みのない疾患とされてきましたが、早めに治療を開始することが生存率を上昇させることにおいて大切なポイントです。
認可されていない各未承認薬を動物病院が使用している現状について
現在、日本でFIP治療に使用できる承認薬は存在していません。FIPへの効果も多数研究データとして報告されているものの、あくまで「新型コロナウイルスの症状改善」などの抗ウイルス薬として承認されており、承認が下りていないという実情です。
しかし、FIPは治療をしなければおよそ9日ほどで死に至ってしまう恐ろしい病気ですので、何も治療をしないわけにはいきません。FIPの原因は猫コロナウイルスの突然変異によって起こるため、猫の命を助けるために、コロナウイルスへ承認された医薬品を未承認薬として使用せざるを得ないのです。
動物病院が個人輸入代行サイトで購入されているモルヌピラビルのジェネリック薬【モルヌビッド】の紹介
モルヌピラビルは複数種類のジェネリック医薬品が販売されています。その中でモルヌビッドという商品は、モルヌピラビルと全く同じ成分量、成分を含んでおり、適応も同じとなっているジェネリック医薬品です。新型コロナウイルスの症状を改善するデータも認められており、発症から5日以内で重症化リスクのある方に対して、入院や死亡リスクを30%ほど低下させる効果が確認されています。
これまでFIP治療に使用されていたMUTIAN(ムティアン)などでは100~150万円が治療費としてかかっておりました。しかし、モルヌピラビルではその3割~5割ほどにまで安くすることが可能であるため、FIPの治療を行いたいがこれまででは高すぎて治療が難しかった方におすすめです。
商品名 | モルヌビッド【モルヌピラビル】 |
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画像 | |
有効成分 | モルヌピラビル |
価格 | 200mg:1錠あたり263円~ |
メーカー | Healing Pharma(ヒーリングファーマ) |
購入ページ |
最後に
FIP(猫伝染性腹膜炎)は、無治療の場合9日ほどで死に至る病とされてきました。しかし、最近では治療薬も普及してきた一方で、治療費用は100万円~200万円と非常に高額でした。このような中でモルヌピラビルのFIPへの効果が報告され始めてきています。今後、モルヌピラビルが治療にもっと使用されるようになれば、安全性や有効性の詳しいデータが積み重なっていきます。これまで、治療費用が高くFIPになった猫の治療をあきらめなければならなかった方たちにとって、モルヌピラビルは選択肢が広がる一助になるでしょう。