ニキビに間違われやすい酒さとは?症状や治療方法について解説

ニキビに間違われやすい酒さとは?症状や治療方法について解説 皮膚の病気

酒さ(しゅさ)とは

酒さとは画像

酒さ(しゅさ)は別名「酒さ性ざ瘡」「赤ら顔」とも呼ばれ、主に顔面の中央部に赤い発疹や小さな吹き出物が現れる慢性的な皮膚疾患を言います。その特徴的な症状から、古くから「酒さ」と呼ばれてきました。30歳から50歳代の方、また男性よりも女性に多く見られる疾患です。
酒さの正確な原因は、これまでのところ分かっていません。しかし、さまざまな要因が複雑に関係していると考えられています。

【酒さの原因となる可能性のある説】

①慢性的な化粧品やアクセサリーへのアレルギー
長年の化粧品の使用や、金属アレルギーによる肌への刺激が原因になっているのではないかという説があります。

②寒暖の差など外的刺激による血管拡張
気温の変化や紫外線など、外的刺激によって末梢血管が拡張し、酒さに似た症状が出る可能性が指摘されています。

③毛包虫(ニキビダニ)やピロリ菌など細菌感染の影響
毛穴の中の毛包虫感染や、胃に存在するピロリ菌感染が酒さの発症に関与しているのではないかと考えられています。

④自己免疫疾患の関連
酒さの患者に炎症性腸疾患や自己免疫疾患を患っている人が多いことから、免疫異常が原因の一つとみられています。

種類別肌の症状

種類別肌の症状画像

【典型的な症状】
頬や鼻周辺に赤い発疹が広がる
皮膚の下を走る細い血管が目立つ
ときに小さな吹き出物ができる

悪化したまま放置していると、鼻周辺が腫れあがって鼻瘤(びりゅう:団子鼻)を形成することがあります。このような症状がある場合に、医師は酒さである可能性が高いと判断します。似た症状のにきびや他の皮膚疾患と区別するため、発症時期なども考慮する必要があります。

【その他の症状】
この他の症状として、ほてり、ヒリヒリ感、かゆみ、皮膚の乾燥、むくみ、目のかゆみや充血などが見られる場合もあります。

誰にでも起こり得る病気である酒さは、アイルランド系や北欧系の白人に多いとされていますが、実際には人種を問わず起こり得ます。日本人でも決して珍しい病気ではありません。

酒さは発症部位や症状によって次の①~④のサブタイプに分類されます。

第1度酒さ・紅斑毛細血管拡張型(こうはんもうさいけっかんかくちょうがた)

最も一般的なのが「紅斑毛細血管拡張型」と呼ばれる第1度酒さです。この型の酒さでは、顔面の特定の部分に以下のような症状が現れます。

【主な症状】
頬や鼻、眉間、顎などに赤い発疹(紅斑)が出る
皮膚の下を走る毛細血管が拡張して目立つ
ときにニキビのような吹き出物(丘疹)が出る
赤みやヒリヒリ感、かゆみなどの自覚症状がある

発症したばかりの頃は、症状が出たり消えたりを繰り返すことが多いです。また、飲酒をしたり寒暖の差があると、症状が一時的に悪化するケースもあります。

【自覚症状が出やすい敏感肌】
この型の酒さの人は、肌が敏感で外的刺激に弱い傾向にあります。日光、気温の変化、刺激の強い化粧品などにさらされると、すぐにチクチクやヒリヒリ感を感じやすいのが特徴です。

【毛細血管拡張症に似ているが異なる】

皮膚の毛細血管拡張が目立つため、一見すると「毛細血管拡張症」に似た症状に見えます。しかし、酒さでは上記のような自覚症状があり、発疹の広がり方なども異なります。

第2度酒さ・丘疹膿疱型(きゅうしんのうほうがた)

この型は、赤みやほてりに加えて、ニキビのような吹き出物が顔面に現れるのが特徴です。

【丘疹膿疱型酒さの主な症状】
持続的な発赤・紅斑
ニキビのような丘疹(赤く盛り上がった吹き出物)
膿疱(膿んだ水疱)
皮膚のかさつき・乾燥
かゆみや灼熱感

【発症部位は主に鼻周りから広がる】
症状は鼻周りから始まり、次第に頬や額にも広がっていきます。ニキビと似た吹き出物が散在して現れるため、一見するとにきび肌のように見えます。しかし、にきびとは異なり毛穴の詰まりはみられません。また、紅斑や火照りなどの自覚症状が強いのが特徴です。

【中高年女性に多い傾向】
丘疹膿疱型は中高年になってから発症することが多く、特に女性に多い傾向があります。一般的な酒さ(紅斑毛細血管拡張型)に加えて、こうした吹き出物症状が出る「重症型」ととらえられています。

【進行すると脂漏も】
症状が進行すると、皮脂の過剰分泌(脂漏)や炎症も伴うようになります。ニキビよりも激しい発赤やかゆみ、ヒリヒリ感を伴うようになります。

第3度酒さ・鼻瘤(びりゅう)

鼻瘤とは、鼻が次第に変形していく様子が特徴的です。

【鼻の皮膚が肥厚し、でこぼことした凹凸ができる】
鼻瘤が出現すると、鼻の皮膚が次第に肥厚し、小さな結節(けっせつ)ができて表面が凸凹となります。鼻全体が膨れ上がり、徐々に変形していきます。また、毛細血管が拡張して鼻が赤紫色になることもあります。ミカンの皮のようなごつごつした肌質になるのが特徴です。

【丘疹が固まって腫れ上がる】
鼻瘤はもともと、酒さの「丘疹膿疱型」で出る丘疹(吹き出物)が固まって腫れ上がり、徐々に瘤腫状になっていくことが原因とされています。

【鼻以外にも現れる可能性】
瘤腫型酒さの腫瘤は鼻だけでなく、額、顎、耳、まぶたなどにも現れる可能性があります。ただし最も多いのは鼻で、一般的に「鼻瘤」と呼ばれています。

第4度酒さ・眼型(がんがた)

眼型は酒さの中でも比較的珍しい型で、主に目や目の周りに症状が現れます。

【眼にあらわれる様々な症状】
眼型では、軽症から重症までさまざまな目の症状が見られます。

軽症:異物感、乾燥感、目のかすみ
重症:炎症、目の表面の損傷、角膜炎

また、ゴロゴロした違和感、眼瞼炎(まぶたの炎症)、結膜炎なども伴います。眼瞼が腫れたり、目の充血、皮脂腺の詰まりなども起こる可能性があります。目に関するものが中心ですが、視力の障害が起こるケースは非常にまれだとされています。

【皮膚症状の前に現れることも】
皮膚の症状が先にある酒さが一般的ですが、眼型の場合は目の症状が先行して出ることもあります。ただし、皮膚症状がまったく無い患者は2割程度とされています。

【症状の重症度には相関なし】
目と顔面の症状の重症度には相関はないとされています。つまり、目の症状が重くても皮膚症状が軽い場合や、その逆のケースもあるということです。眼型は酒さの中でも非常にまれな症状です。

ニキビと酒さの違い

ニキビと酒さの違い

酒さもニキビも、ともに顔面に発疹ができる病気ですが、これら2つの疾患は原因や症状が全く異なります。適切な治療を受けるために、両者の違いを理解しておくことが重要です。

【ニキビ(尋常性ざ瘡)とは】
毛穴つまりと皮脂の過剰分泌が原因
アクネ菌の増殖により炎症が起こる
赤みや膿のある吹き出物(ニキビ)ができる
顔だけでなく胸や背中にもできる

【酒さとは】
顔面の毛細血管拡張と持続的な発赤が特徴
ニキビのような吹き出物もあるが、自覚症状(かゆみ、ヒリヒリ感)もある
寒暖の変化や食事、ストレスで悪化しやすい

【見分け方のポイント】
酒さとニキビの見分け方の大きなポイントは以下の3つです。

①顔全体の赤みの有無
酒さでは顔全体的に赤みや毛細血管の拡張が見られますが、ニキビではあまり見られません。

②白ニキビ(コメド)の有無
ニキビには毛穴に詰まった白ニキビ(面ぽう)がみられますが、酒さにはありません。

③かゆみやヒリヒリ感などの自覚症状
酒さには発疹以外にも、かゆみやヒリヒリ感などの自覚症状がありますが、ニキビにはあまりありません。

このように、発疹の広がり方や自覚症状の有無で、酒さとニキビは区別できます。原因が異なるため、治療法も違ってきます。正しく見分けて、適切な治療を受けることが大切です。

酒さの治療方法

酒さの治療には、症状の程度や種類によって、以下のような薬剤が選択されます。

内服薬

一般名ドキシサイクリン塩酸塩水和物ミノサイクリン塩酸塩ロキシスロマイシン
販売名ビブラマイシン錠50mg/100mgミノマイシンカプセル50mg/100mgルリッド錠150
製造販売元ファイザー株式会社ファイザー株式会社サノフィ株式会社

※赤みやニキビ様の発疹、膿疱に効果的。長期内服が一般的で、定期的な肝機能チェックが必要。

【漢方薬】
十味敗毒湯
桂枝茯苓丸
清上防風湯
黄連解毒湯
荊芥連翹湯
体の毒素排出、熱や炎症の改善、細菌の増殖抑制などの作用があり、症状に合わせて使い分けられる。

このように内服薬には様々な種類があり、酒さの症状や重症度に合わせて使い分けられます。ただし長期服用が一般的なため、定期的な検査が欠かせません。

外用薬

一般名販売名製造販売元
医療用医薬品メトロニダゾールロゼックスゲル0.75%マルホ株式会社
一般用医薬品アゼライン酸DRX AZAクリアロート製薬株式会社

ロゼックスゲル0.75%は殺菌成分「メトロニダゾール」を配合。酒さの原因菌を殺菌し、炎症を抑えます。2022年から保険適用になった医薬品で刺激が少なく安全性が高い製品です。

DRX AZAクリアは市販薬のニキビ治療薬として販売されていますが、メトロニダゾール同等の酒さ効果をもっています。皮脂を溶かし、毛穴をスッキリさせます。抗菌と炎症抑制作用もある上、妊婦や授乳中の方も使用可能と言う特徴があります。

【個人輸入で購入できる医薬品】

商品名イベルメクチンクリームスキノレンクリーム
画像イベルメクチンクリームスキノレンクリーム
有効成分イベルメクチンアゼライン酸
メーカー・ブランドAjanta Pharma(アジャンタファーマ)DKSH (Thailand) Limited
URLイベルメクチンクリームの購入はこちらスキノレンクリームの購入はこちら

イベルメクチンクリームは、ニキビダニを減らし、炎症を抑制します。吹き出物への効果が高く、ロゼックスと同程度に刺激が少ないです。ただし保険診療ではなく自由診療での使用になります。
内服薬に比べ、外用薬は局所的に作用するため全身的な副作用が少ないと考えられています。また塗り続けるだけなので継続しやすいのも長所です。

その他の治療法

レーザー治療

Vビーム
酒さの原因となる余分な血管を選択的に破壊し、赤みを改善

機器治療

ポテンツァ
肌に微細な穴を開け、創傷治癒効果で肌トラブルを改善

悪化させないためにできること

悪化させないためにできること

酒さは、日常生活の中の様々な要因で症状が悪化してしまう病気です。赤みや吹き出物、かゆみなどの症状が一時的に強くなることで、見た目への影響やストレスが大きくなるため、できるだけ悪化させないよう心がける必要があります。

一方で、酒さの症状を悪化させる外的要因はいくつか特定されています。

酒さの症状を悪化させる要因

  • 紫外線の刺激
  • 気温の変化による寒暖差
  • 香辛料や熱い飲食物
  • アルコール
  • 化粧品や洗顔料の刺激
  • 過度の皮脂
  • 精神的ストレス

酒さ患者は自身の症状の良し悪しを観察しながら、悪化させる可能性のある刺激を避けることが大切です。

スキンケアのポイント

日々のスキンケアにも気をつけましょう。洗顔や化粧の摩擦によっても症状が悪化する可能性があります。

低刺激の洗顔料や保湿剤を使う
強い摩擦は避け、ぬるま湯で優しく洗う
保湿剤はたっぷりになじませる
抗炎症成分入りがおすすめ

紫外線対策も欠かせません。日焼け止めクリームを毎日塗布し、紫外線を避けましょう。石鹸で落ちるタイプがよいでしょう。

その他の気づかい

メイクで赤みを目立たなくするのも有効です。低刺激の化粧品を選びましょう。ストレス過多にならないよう気をつけることも大切なポイントです。

このように、酒さでは日常生活の中に潜む様々な要因に、細かく気をつける必要があります。自分の悪化要因を見つけて避け、スキンケアや生活習慣の改善に取り組むことが、酒さ改善への第一歩となります。

よくある質問

よくある質問
Q
酒さの治療は大体どれくらいで良くなりますか?
A

酒さの治療期間は、選択する治療法によって異なります。抗生剤を内服する場合は、おおよそ3ヶ月程度で良くなります。一方、レーザー治療を行う場合は、標準的には約6ヶ月の治療期間が必要となります。いずれの場合も、適切な治療を受けることが重要です。

Q
治療後再発することはありますか?
A

はい、残念ながら酒さの治療後に再発することはあります。再発した場合は、改めて治療を行う必要があります。そして、再発しにくいよう、慎重に治療を進めていく方法を取ることになります。

Q
酒さと似ている病気にはどんなものがありますか?
A

酒さと外見上類似する可能性のある病気として、口囲皮膚炎、眼囲皮膚炎、開口部皮膚炎、尋常性ざ瘡(ニキビ)、接触皮膚炎などの皮膚疾患が挙げられます。これらの病気は、口周りや顔面に発疹や潰瘍、炎症などの症状が現れることがあり、酒さと見間違えられる可能性があります。ただし、酒さは上記の皮膚疾患とは根本的な原因が異なります。適切な診断と治療を受けるためには、歯科医や皮膚科医への受診が重要になります。

まとめ

酒さはニキビに似た発疹症状があるため、見分けが難しい病気です。しかし、酒さには以下のような特徴があります。
顔全体の持続的な赤み
自覚症状(かゆみ、ヒリヒリ感)の存在
外的刺激で増悪しやすい
一方で、ニキビは毛穴の詰まりから始まる病気で、白ニキビ(コメド)や限られた部位の吹き出物がみられます。
酒さには複数の病型があり、発疹の症状の違いによって治療法が変わってきます。内服薬や外用剤、レーザー治療など様々な選択肢があります。
医師に正しく診断してもらい、自分の症状に合った治療法を選ぶことがポイントです。加えて、日頃の生活習慣の改善にも気をつける必要があります。
単に見た目の問題にとどまらず、酒さは長期に渡る付き合いが求められる病気です。しかし、適切な対症療法と自己管理を続けることで、症状をコントロールできます。
酒さとニキビの違いを理解し、早期に専門医を受診することが大切です。一人で悩まず、医師と相談しながらステップを踏んで改善を目指しましょう。

酒さ(MSDマニュアル家庭版)

酒さ(MSDマニュアルプロフェッショナル版)

尋常性ざ瘡(MSDマニュアルプロフェッショナル版)

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