イベルメクチンクリームとは
イベルメクチンクリームは海外で販売されている顔ダニや疥癬、酒さの治療薬です。
酒さとは、顔面の中央部に発赤やブツブツが現れる慢性的な皮膚疾患です。肌が赤くなり、細かい血管が透けて見える様子が特徴的です。30~50代の中高年で発症しやすいことから、「大人のニキビ」とも呼ばれています。
発症しやすい人は?
酒さの正確な原因はわかっていませんが、白人の北欧系やアイルランド系の人に多い傾向があります。ただし、実際には人種を問わず発症するケースもあり、見逃されている可能性があります。
誘発する可能性のある刺激
・香辛料の強い食べ物
・アルコール
・熱い飲み物
・日光
・極端な気温の変化
・風
・化粧品
・ストレス
など、様々な外的・内的要因が再発の引き金になると考えられています。
4つの症状ステージ
①前駆期 – 頬と鼻の皮膚が長期にわたって赤く、チクチクする
②血管期 – 赤みが強くなり、細かい血管が透けて見える
③炎症期 – 小さなブツブツやにきびが現れる
④進行期 – 一部の人で鼻周りの皮膚が肥厚し、団子鼻になる
酒さは外見上の症状だけでなく、精神的なストレスも大きな問題です。発症初期のうちは、抗菌薬の外用薬や内服薬で症状をコントロールできる場合が多いようです。
ただし、酒さは再発を繰り返しやすい病気です。適切な治療と生活習慣の改善で、最小限に抑えることが重要になってきます。
この酒さの原因の一つとして、毛穴内に潜むニキビダニの関与が指摘されています。
海外において酒さの治療に期待されているのが、「イベルメクチンクリーム」と言う訳です。イベルメクチンは元々駆虫剤として使われてきた薬ですが、ニキビダニを死滅させる効果があることがわかり、酒さ治療に応用できるようになりました。ここでは、イベルメクチンクリームとはどのような薬なのか、その特徴と効果について解説します。
イベルメクチンクリームの主な有効成分は、「イベルメクチン」という物質です。この成分には、次の2つの働きがあります。
①毛穴に住むニキビダニを死滅させる
酒さの原因の1つとされているのが、毛穴に住む「ニキビダニ」という小さな生物です。イベルメクチンはこのニキビダニを殺虫する働きがあり、酒さの発症源となっています。
②炎症を抑える
イベルメクチンには、体内の炎症を引き起こす「サイトカイン」の生成を抑制する働きがあります。これにより、酒さによる赤み、腫れ、痛みなどの炎症症状が抑えられます。
このようにイベルメクチンは、酒さの原因に直接作用しながら、同時に症状も改善すると言う非常に優れた治療薬なのです。
そして、イベルメクチンクリームの大きな特徴は、比較的即効性があるという点です。使用を始めて2週間で、かなりの治療効果が認められます。また、メトロニダゾールなどの既存の酒さ治療薬とは異なり、イベルメクチンは副作用が少なく、安全性が高い点も大きな特徴であるとされています。
欧米においては主流なイベルメクチンクリームですが、日本ではまだ未承認薬であるため自費治療となっています。その結果、高額な治療費がかかるのが課題とされています。
しかし、即効性が高く副作用が少ないことから、酒さに悩む人々への新たな選択肢として期待が高まっています。
FDAによる承認された適応症状
酒さの治療薬として、2014年12月にカルデルマ社のイベルメクチンクリームがアメリカのFDA(食品医薬品局)から承認を受けました。
イベルメクチンは元々駆虫剤として使われていた薬ですが、酒さの原因の一つと考えられている「ニキビダニ」を死滅させる作用があることがわかり、酒さ治療に応用されるようになりました。
イベルメクチンクリームは、酒さの代表的な症状である以下の症状に効果を示します。
赤み・発疹
ニキビダニを死滅させることで、酒さに伴う顔面の赤みや発疹を改善します。ニキビダニが引き起こす炎症反応を抑制する作用があります。
ブツブツ・ニキビ
毛穴の中に潜むニキビダニを駆除することで、ブツブツしたニキビの症状を改善します。ニキビの再発予防にもつながります。
痒み
酒さによる顔面の痒みの緩和に効果的とされています。ニキビダニ駆除による炎症の抑制が、痒みの原因を取り除く働きをします。
痛み
発赤やニキビによる痛みを和らげる効果が期待できます。殺菌作用はありませんが、ニキビダニ除去により二次感染のリスクを下げます。
肌のくすみ
ニキビダニ除去による炎症緩和で、酒さに伴う肌のくすみ、色むらを改善する可能性があります。一方で、酒さが重症化した症状などでは、単独の外用治療には限界があります。状況に応じて内服薬などを組み合わせる必要があるかもしれません。
全体として、ニキビダニを徹底的に除去することで、酒さの外見上の症状を幅広く改善できると期待されています。適切な使用法を守れば、高い効果が見込めるでしょう。
臨床試験の結果、イベルメクチンクリームの臨床試験では、2週間目から症状の改善が見られ、3週間目以降はメトロニダゾール0.75%クリームよりも高い効果を示しました。また、52週間にわたる長期使用においても、安全性と忍容性(副作用が出にくいこと)が確認されています。
酒さの症状は、ストレスや気温の変化、ホルモンバランスの変動などさまざまな要因で悪化したり、良くなったりを繰り返します。そのため、継続的な治療が必要とされています。イベルメクチンクリームは、酒さの主な症状に対して効果的な治療選択肢の一つとなっています。
つまり、イベルメクチンクリームは、酒さの炎症性病変である丘疹や膿疱に対する治療に特に効果があり、比較的早期から症状改善が期待できる優れた薬剤なのです。
ただし、酒さには個人差があり、必ずしもイベルメクチンクリーム単体では治りません。医師の判断のもと、他の治療薬や外用剤などを併用することで、よりよい治療が期待できます。
酒さに悩む方は、イベルメクチンクリームについて、一度皮膚科医に試していただくことをおすすめします。
日本での承認について
酒さに悩む人は少なくありません。ニキビやできものによる発赤や痛みは、見た目の問題だけでなく、精神的なストレスも大きいものです。そんな酒さ治療に効果的といわれている外用クリームが「イベルメクチンクリーム」です。
実際、海外ではイベルメクチンクリームが酒さ治療に広く使用されております。しかし、日本ではまだイベルメクチンクリームが承認されていないため、医療機関や薬局で入手することはできません。
日本で承認されている酒さ治療薬は、「ロゼックスゲル」が主流です。
有効成分の違い
イベルメクチンクリームの主成分は「イベルメクチン」で、駆虫作用があります。酒さの原因とされるニキビダニを死滅させる働きがあります。 一方のロゼックスゲルには「メトロニダゾール」が含まれ、殺菌作用でニキビ菌やブドウ球菌を殺菌します。
効果の違い
イベルメクチンクリームはニキビダニへの直接的な駆虫作用があり、ロゼックスゲルより高い治療効果が期待できます。再発のリスクも低いというデータもあります。 ただし、ロゼックスゲルにも一定の酒さ改善効果はあります。
処方の違い
ロゼックスゲルは保険適用された治療薬なので、比較的安価で処方されます。 一方、イベルメクチンクリームは日本ではまだ承認されていないため、一部のクリニックでのみ自由診療で処方が可能です。その他個人輸入により購入することも可能です。酒さに悩む方にとって、イベルメクチンクリームは期待の新しい治療薬です。副作用がなく敏感肌でも使えるのも魅力的です。
※個人輸入により購入する場合は当メデマート商品ページをご参照ください。
商品名 | イベルメクチンクリーム |
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画像 | |
有効成分 | イベルメクチン10mg |
メーカー | Ajanta Pharma(アジャンタファーマ) |
購入サイト | イベルメクチンクリームの購入ページ |
一方で、日本で承認されているのはイベルメクチンの内服薬です。内服薬の「ストロメクトール」は、有効成分として「イベルメクチン」を配合しており、糞線虫症と疥癖の治療に用いられる処方箋医薬品として販売されています。酒さに対しての効果は認められていません。
酒さに悩む人にとって、イベルメクチンクリームは待望の医薬品かもしれません。ただし、日本での承認に向けてさらなる臨床試験が必要とされており、一般に普及するにはまだ時間がかかる見込みです。
イベルメクチンクリームの安全性
酒さ治療に効果的なイベルメクチンクリームですが欧米では標準的な治療薬として広く処方されていますが、日本ではまだ承認されていません。新しい治療薬への不安もあることでしょう。そこで、イベルメクチンクリームの安全性についてまとめてみました。
副作用のリスクは低い
イベルメクチンは経口投与や注射で長年使用されてきた実績のある医薬品です。腸管糞線虫や疥癬の治療に用いられる内服薬「ストロメクトール」の成分でもあります。安全性が高いことが分かっています。 外用のイベルメクチンクリームは、吸収率が低いため全身への移行が少ないというメリットがあります。
適切な使用であれば問題なし
イベルメクチンクリームは経口摂取しないよう注意が必要ですが、外用で適切に使用する限りにおいては、重大な副作用のリスクは低いと考えられています。 クリームを目に入れないよう気をつける、妊娠中は控えるなど、一般的な外用剤と同様の注意点を守れば安心して使えるでしょう。
皮膚刺激は少ない
イベルメクチンクリームは、殺菌成分を含まないため、皮膚への刺激が少ないのが特徴です。敏感肌の方でも比較的使いやすい外用薬と言えます。 一部で軽い発赤や痒みが出る可能性はありますが、重度の皮膚炎などのリスクは低いとされています。
イベルメクチンは長年の歴史があり、安全性が確認されている医薬品です。クリーム製剤も適切に使えば、酒さ治療の新たな選択肢として有力な治療薬になり得ます。 ただし、自己判断で使用するのはリスクが高いので、かかりつけ医に相談しましょう。今後の日本での承認動向にも注目が集まります。
よくある質問
- Qイベルメクチンクリームにはどの様な副作用がありますか?
- A
皮膚への副作用として皮膚のかゆみ、赤み、乾燥、かぶれ、灼熱感、出血などの症状が報告されています。大半の副作用は軽度で、重篤なものは非常にまれとされています。皮膚への副作用は、クリームを適切に使用していれば避けられる可能性が高くなります。
具体的な注意点は以下の通りです。
・目や粘膜への直接接触は避ける
・創傷面や湿疹のある部位には使用しない
・顔面使用後は手をよく洗う
・小児や妊婦は控えめに使用するイベルメクチンクリームは、他の殺菌外用薬に比べて皮膚刺激が少ないのが特徴です。敏感肌の方でも比較的使いやすいと考えられています。ただし、個人差もあるため、副作用が出た場合は使用を中止し、医師に相談するようにしましょう。自己判断での使用は避け、医師の監督下で使用することが安全対策となります。
- Qイベルメクチンクリームはニキビの上から使用しても大丈夫ですか?
- A
イベルメクチンクリームは、ニキビの上から使用しても基本的には問題ありません。ただし、以下のような注意点があります。
【ニキビが潰れている場合】
ニキビが潰れて傷ができている場合は、その部位にはイベルメクチンクリームを使用しないよう注意が必要です。 創傷面に直接クリームが塗布されると、全身への吸収が高まる可能性があるためです。
【ニキビが重症の場合】
重症のニキビ跡や酒さの場合は、クリームを塗布する前に医師に相談するのがよいでしょう。 状況によっては、別の治療法を優先する必要があるかもしれません。一方で、軽症のニキビ肌であれば、ニキビの上からイベルメクチンクリームを塗布しても問題はありません。 ニキビダニを死滅させる効果が期待できます。ただし、使用後は必ず手を洗うなど、基本的な使用上の注意は守る必要があります。
クリームが目に入らないよう気をつける 妊娠中は控えめに使用する など、一般的な外用薬と同様の注意を払えば安全に使用できます。不安な点があれば、かかりつけ医に相談するのがベストです。適切な使い方を確認しておくことが大切です。
- Qイベルメクチンクリームは市販で購入できないのはなぜですか?
- A
イベルメクチンクリームが市販で購入できない主な理由は、日本ではまだ承認されていないためです。承認されていない医薬品は、医師の処方がなければ一般に販売することはできません。イベルメクチンクリームは酒さ治療薬として海外では広く使われていますが、日本国内では未承認のため、以下のような流通経路がありません。
・薬局やドラッグストアでの販売なし
・Amazon、楽天などの通販での取り扱いなし
・市販の薬局外品としての流通なし
一部の美容クリニックでは、自由診療として処方されている例はあります。しかし、一般の消費者が直接購入できる販路は現状ありません。未承認の理由ははっきりとしていませんが、承認を受けるには製薬企業による臨床試験などの手続きが必要とされています。有効性と安全性のデータが十分に評価されていないためと考えられています。
一方で、イベルメクチンの内服薬「ストロメクトール」は日本で虫垂治療薬として承認を受けています。内服薬と外用剤では製剤が異なるため、安全性の評価が別々に必要となります。承認が得られれば、一般の薬局や通販での流通ルートが開かれる可能性があります。酒さに悩む多くの人々の選択肢が広がることが期待されています。今後の動向に注目が集まります。
まとめ
酒さに悩む方にとって、イベルメクチンクリームは期待の新しい治療薬です。従来の外用薬よりも高い治療効果が期待できるため、欧米では広く用いられています。
日本国内では未だ承認が得られておらず、一般的な流通ルートがありません。しかし、一部の病院で自由診療での処方が可能です。海外からの個人輸入も選択肢のひとつとなっています。
ただし、いずれの場合も保険適用外のため、高額な医療費がかかる可能性があります。費用対効果を考慮する必要があるでしょう。
一方で、イベルメクチンクリームは経口摂取しない外用薬であり、長年の歴史から全身的な安全性は確認されています。適切に使用すれば、重大な副作用のリスクは低いと考えられています。
酒さに悩む方は、まずはかかりつけ医に相談し、自身の症状に合わせて最適な治療法を選択することをおすすめします。イベルメクチンクリームも、新たな選択肢のひとつとして検討に値する治療薬だと言えるでしょう。
今後、国内での承認が進めば、より手軽に入手できるようになる可能性があります。酒さ治療の新たな光明となることが期待されています。
出典
尋常性座瘡・酒皶治療ガイドライン2023
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25228137/
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26691278/
MSDマニュアル(酒さ)