アーチストとは?
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「アーチスト」という医薬品を飲んだことはありますか?実はアーチストがどんな薬で何に効く薬なのかを知っている人は多くはないと思います。
なぜならばアーチストは高血圧症では第一選択で使用する医薬品ではないからです。それゆえお目にかかれる頻度が少ないため、あまり認知されていない医薬品ではないかと思われています。
アーチストは医師の診断後に処方される医療用医薬品であり、高血圧症や狭心症など多くの疾患に使用することができます。
しかし一方で、「あがり症」に効果があるという噂も流れています。なぜ、血圧や心臓の薬があがり症と結び付けられることがあるのでしょうか?
その謎を解き明かすために、まずはアーチストがどんな薬なのかを詳しく解説していきます。
アーチストの成分名は「カルベジロール」と呼ばれており、その用量は1.25mg・2.5mg・10mg・20mgの4段階とかなり多い方です。
この医薬品は「α1β遮断薬」と呼ばれる種類の医薬品に分類されています。まずα1受容体を遮断することで血管が拡張します。また心臓に存在しているβ受容体を遮断することによって、心拍数を抑える働きがあります。
高血圧症や狭心症を患っている患者さんの心臓は、常に過剰に働いている状態です。アーチストは心臓に係る負担を減らし症状を改善してくれる働きを持っています。
アーチストはαβ遮断薬ですが、主な作用はβ遮断作用になります。ただしこのβ遮断作用は非選択性(心臓以外にも作用すること)になるため心臓だけでなく気管支にあるβ受容体などにも影響を及ぼします。その結果気管支が狭くなり喘息の疾患を持っている人は症状が悪化してしまいますので注意が必要です。
この薬の特徴として、長時間作用型であることが挙げられます。つまり、1日1回または1日2回の服用により24時間効果が持続します。これは患者さんの服薬コンプライアンス(薬を決められたとおりに服用すること)を向上させるうえで重要な特性と言えます。
またアーチストは、他のβ遮断薬と比較して副作用が少ないことも特徴として挙げられます。
ここまでの説明では「あがり症と全然関係ない薬では?」そう思われた方もいるかもしれません。
実際問題アーチストの適応症を見てみると「あがり症」という文言はありません。
つまり医師はあがり症の患者に保険診療でアーチストを処方することはできないのが現実です。しかし「火のない所に煙は立たぬ」とよく言われますので順を追って解説していきます。
アーチストってどんな症状に使われるの?
アーチストが使用されている症状について詳しく解説していきます。
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高血圧症
一つ目として高血圧症を患っている患者の治療にアーチストが広く使用されています。
高血圧症は別名「サイレントキラー」とも呼ばれている恐ろしい病気であることを知っていますか?その名の通り全く気付かないうちにどんどん症状が進行してしまい、気づいたときには手遅れになっていることもあるという恐ろしい病気なんです。
自覚症状がない為誰でも放置してしまうことから、早期発見早期治療がとても大切なのです。
そんな疾患に対し使用されるアーチストには、血管を拡げる作用があることから血圧を下げる効果が期待できます。
その結果、脳卒中であったり心臓病のリスクを大幅に減少することができる医薬品です。
慢性心不全
二つ目として慢性心不全を患っている患者の治療においてもアーチストは使用されています。
心不全と言われると死んでしまうのでは?と思う人も中にはいると思いますがその認識は決して誤ったものではありません。
心不全になると心臓のポンプ機能が低下してしまい、体に十分な血液を送り出せなくなってしまいます。その結果様々な所に影響が出てくると言う訳です。
そこでアーチストを使用することにより心臓の負担を軽くして、心機能を改善することができます。
これによって、息切れや疲労感、むくみと言った心不全特有の症状を和らげることができます。
狭心症
三つ目として狭心症を患っている患者さんにもアーチストが処方されることがあります。狭心症とは、心臓の冠動脈(かんどうみゃく)が詰まって狭くなり、十分な酸素や栄養が届かなくなる病気です。
その結果胸が痛くなったり圧迫感があったりするのが特徴の疾患です。
アーチストは心臓の酸素需要を減らして、狭心症の発作を予防する効果があります。
頻脈性心房細動
四つ目としてアーチストは頻脈性心房細動を患っている患者さんの治療にも使用されます。頻脈性心房細動とは、心房細動と呼ばれる不整脈の一種です。
脈の乱れや脈が飛ぶように感じたり、動悸がして息苦しくなったりします。
心拍数が通常よりも速くなることが特徴で、この状態が長く続いた場合、心臓が効率よく血液を送り出すことができなくなり、さまざまな症状や合併症を引き起こす可能性があります。
アーチストの作用機序は、主にβ遮断作用とα1遮断作用によるものです。β遮断作用は心拍数を下げる方に働き、心臓の収縮力を抑えることで心臓の負担を軽くします。
一方、α1遮断作用は末梢血管を拡張させ、血圧を下げる働きがあります。この2つの作用が組み合わさることにより、循環器系の疾患に対して幅広い効果を発揮することができます。
アーチストは、その効果と安全性が多くの臨床試験で確認されており、循環器疾患の治療において重要な位置を占めています。
しかし、患者さん個々の状態によって最適な用量や用法が異なるため、医師の指示に従って服用することが大切な医薬品であることは間違いありません。
以上アーチストは高血圧症、慢性心不全、狭心症、頻脈性心房細動の症状に使用されることを解説してきました。アーチストによる治療は、生活習慣の改善と合わせて行うことでより効果的に働きます。
適度な運動、塩分制限、禁煙などの生活習慣の改善を行うことは治療を行う上で非常に大切な組み合わせと言えるでしょう。
アーチストの飲み方・副作用・併用禁忌
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アーチストの飲み方
アーチストは疾患に応じて、1日1回又は1日2回に分けて食後に服用するのが基本です。1日1回と言ったからと言っていつ飲んでもいいわけではありません。
毎日医師の指示に従って同じ服用時点で服用するようにしましょう。そしてアーチストを飲むときは、コップ1杯程度の水またはぬるま湯で飲むようにしましょう。
かみ砕いたりつぶしたりして服用してはいけません。もし飲み忘れてしまった場合は、気づいた時点で直ちに服用するようにしましょう。
ただし、次の服用時間が短い場合は、1回分飛ばして次の服用時点から再開するようにしましょう。決して2回分を一度に飲んではいけません。
アーチストの副作用
どんな医薬品にも副作用はつきものです。アーチストも例外ではありません。0.1~5%と頻度の高い副作用として、発疹、そう痒感、徐脈、顔面紅潮、めまい、眠気、頭痛、胃部不快感、嘔吐、CK上昇、AST上昇、ALT上昇、倦怠感、血糖値上昇LDH上昇、総コレステロール上昇、腎機能障害などが挙げられます。
血圧が下がりすぎて立ち眩みを感じることもあるかもしれません。また、心拍数が遅くなることもあります。
重大な副作用として最も注意が必要な症状は、高度な徐脈、ショック、完全房室ブロック、心不全、心停止、肝機能障害、黄疸、急性腎障害、中毒性表皮壊死融解症(ちゅうどくせいひょうひえしゆうかいしょう)、皮膚粘膜眼症候群(ひふねんまくがんしょうこうぐん)、アナフィラキシーが挙げられます。いずれの場合も発生頻度は不明ですのでこれらの症状が現れたときには直ちに医療機関を受診し主治医に相談するようにしましょう。
アーチストの併用禁忌
アーチストは次の患者には投与することができません。
①気管支喘息、気管支痙攣の恐れのある患者
②糖尿病性ケトアシドーシス、代謝性アシドーシスのある患者
③高度の徐脈、房室ブロック、洞房ブロックのある患者
④心原性ショックの患者
⑤強心薬又は血管拡張薬を静脈内投与する必要のある心不全患者
⑥非代償性の心不全患者
⑦肺高血圧による右心不全のある患者
⑧未治療の褐色細胞腫又はパラガングリオーマの患者
⑨本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
アーチストに併用禁忌薬はありません。併用注意薬は多く、例えばインスリンなどの血糖降下薬などを使用している場合などが挙げられます。
アーチストはあがり症に効くというのはホント?
「人前で話すだけで心臓がバクバク…」「発表会前はいつもお腹が痛くなる…」
そんな経験はありませんか? 実はそれ、多くの人が抱える「あがり症」の代表的な症状かもしれません。あがり症は、決して特別なものではありません。誰でも経験する、ごく自然な反応なんです。
私たちの身体は、緊張や不安を感じると、心拍や呼吸を速め、筋肉を緊張させて、危機に備えようとします。
これは、進化の過程で身につけた、生き残るための大切な反応ですので決して恥ずかしがることではありません。
あがり症は、この反応が過剰に働いてしまう状態と言えます。
あがり症についてもっと詳しく知りたい方は下記ページで紹介しておりますので御覧ください。
あがり症に使用される医薬品には今回紹介しているアーチストの他に、インデラルやメインテートなどもあります。どんな違いがあるの?と疑問になるかもしれませんね。
インデラルとメインテートの違いについては下記ページで紹介がありますのでご確認ください。
あがり症について理解は深まったと思いますが果たしてアーチストは本当にあがり症に効果があるのでしょうか?
結論から言いますと、アーチストにはあがり症を軽減する効果があると考えられています。ただし、効果についてはどの医薬品でもそうですが個人差が大きく必ずしも全員に効き目がある訳ではありません。
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あがり症特有の症状には動悸、手の震え、発汗、顔面紅潮などがあります。
これらは交感神経の興奮により引き起こされる訳ですが、アーチストにはこの交感神経の興奮を抑えることで、あがり症特有の症状である身体的症状に対し効果を示すことができます。
アーチストを使用することで身体的症状が抑えられ、人前でパフォーマンスを求められる職業の方々にとっては、より安定したパフォーマンスを発揮できるようになります。
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通販と言う手段で簡単に入手することができますのでご興味がありましたら使用してみても良いかもしれません。
商品名 | ディラトレンド |
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画像 | ![]() |
有効成分 | カルベジロール6.25mg/25mg |
メーカー | BilDeva(ディーバ) |
購入ページ | ディラトレンドの購入ページはこちら |
しかし、アーチストは緊張などにより現れる身体症状を抑えることはできますが、精神的な不安や緊張そのものを取り除く効果はありません。
つまり、あがり症に対して根本的な治療ではないと言うことになります。
そのため、精神的な不安や緊張を取り除きたい場合には抗不安薬であったり、抗うつ薬の使用が効果的であると言えます。
あがり症に悩む方は少なくありません。しかし、適切な対処法を見つけることで、多くの場合、症状の改善が期待できます。そのため自分に合った対策を見つけていくことが大切です。
アーチストに関するQ&A
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- Qアーチストの投与を急に中止してもよいですか?
- A
急にアーチストの投与を中止してはいけません。重篤な副作用が出たとなれば話は別ですが、通常、アーチストを中止する場合には1~2週間かけて体調を見ながら段階的に減量するようにしましょう。
そして特に注意が必要なのは慢性心不全の患者さんです。慢性心不全の患者が服用しているアーチストを中止する場合は、現時点で服用している用量を半量ずつ段階的に減量し、最終的に2.5mgまたは1.25mg1日2回になるまで減量、その後中止する様にしましょう。
- Qアーチスト服用中は車の運転はしても良いですか?
- A
アーチスト服用中には副作用としてめまいやふらつきが出る可能性があります。
そのため車の運転など危険を伴う作業には従事しないようにしましょう。
- Qアーチストは1日1回服用する人と1日2回服用する人がいるのはなぜですか?
- A
アーチストの適応症によって服用方法が決められています。通常、高血圧症、狭心症、頻脈性心房細動の疾患を患っている人は1日1回服用します。
また慢性心不全を患っている人は1日2回服用します。ただし、医師の判断によって適応症とは別に1日2回服用させる場合もあります。
まとめ
アーチストは、高血圧症であったり狭心症などの治療に用いられる医薬品であるため、あがり症に直接効果があるわけではありません。しかし、動悸や震えのような身体的な症状を緩和する効果があるため、結果的にあがり症の症状を軽減してくれる可能性はあります。
アーチストの作用はαβ遮断作用であり、心臓の拍動を抑えたり、血管を拡げて血圧を下げる効果があります。あがり症で悩んでいる人は、緊張により心臓がドキドキしたり、顔が赤くなったりと言った経験があるはずです。この作用については交感神経が優位に働いていることで起こる反応ですが、アーチストはこの様な作用を抑える効果があるため、結果としてあがり症の症状を和らげることにつながると考えられます。
しかし、アーチストの適応症は高血圧、狭心症、慢性心不全、頻脈性心房細動になります。そのため医師は保険を使用してあがり症に対して処方することはできません。なおかつ身体的症状に効果を示す反面精神的症状には効果を示さないことに注意が必要です。本格的に治療を行うのであれば精神科・心療内科を受診し相談してみると良いでしょう。
またアーチストにはめまいや立ち眩み、倦怠感などと言った副作用が現れる可能性もあります。服用中に気になる症状が出た場合には、服用を中止し直ちに医療機関を受診し相談するようにしましょう。
最後に、アーチストは併用注意が多い医薬品です。現在飲んでいる薬との飲み合わせを知りたいときは医師又は薬剤師に相談するようにしましょう。
あがり症で悩んでいないでまずは試してみることも必要かもしれませんよ。
出典
アーチスト錠1.25mg/2.5mg/10mg/20mg添付文書
アーチスト錠1.25mg/2.5mg/10mg/20mgインタビューフォーム
2020 年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン(日本循環器学会)
2024 年 JCS/JHRS ガイドライン フォーカスアップデート版 不整脈治療(日本循環器学会)
高血圧治療ガイドライン2019(日本高血圧学会)
狭心症(MSDマニュアル プロフェッショナル版)
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)(日本循環器学会)
2021年 JCS/JHFS ガイドライン フォーカスアップデート版 急性・慢性心不全診療(日本循環器学会)