利尿剤と血圧の関係

利尿剤は一般的に“むくみを取る薬”として知られていますが、実際には高血圧治療の基本薬としても広く使われています。
体内から水分やナトリウムを排出することで血液量を減らし、心臓や血管にかかる負担を和らげるためです。
血圧は、下記の要因で決まります。
血圧が決まる要因
- 心臓が送り出す血液量(循環血液量・前負荷)
- 血管の硬さ(末梢血管抵抗)
そのため、利尿剤が血液量を適切に調整すると、血管内圧が下がり、結果として血圧が自然に低下していきます。
特に「サイアザイド系利尿剤」は、高血圧治療ガイドラインでも第一選択薬として推奨される代表的な薬です。
利尿剤で血圧が下がる仕組み

利尿剤が血圧を下げる理由は、単に「尿が増えるから」だけではありません。
実際には、以下複数の作用が組み合わさることで血圧を下げています。
体内の水分量が減る(血液量の減少)
利尿剤は、腎臓でのナトリウム再吸収を阻害することで、結果的に体内の水分量が減り、血圧低下につながります。
ナトリウムが再吸収されにくくなることで浸透圧が変化し、水分の再吸収も減少します。
- 血管内に流れる血液量が減る
- 血管内の圧力(血圧)が下がる
という流れが起こります。
高血圧治療の初期段階では、この作用が最も大きく働きます。
血管の負担が軽くなる(心臓の負担が軽減)
血液量が減ると、心臓が送り出す血液量(前負荷)が下がり、心臓のポンプ仕事量が減ります。
その結果、心拍出量の低下 → 血圧低下につながります。
特に心不全を合併している場合は、利尿剤によって症状改善にも大きく寄与します。
血管拡張作用があるタイプもある(長期的作用)
サイアザイド系利尿剤(ヒドロクロロチアジドなど)には、長期服用で末梢血管抵抗が低下する「血管拡張作用」が報告されています。
- 水分排出だけでは説明できない
- 長期的な血圧安定に寄与する
とされていますが、分子レベルの詳細な機序は完全には解明されていません。
利尿剤の種類と特徴

利尿剤にはいくつか種類があり、作用の強さや特徴が異なります。
サイアザイド系(ヒドロクロロチアジド)
高血圧治療で最も標準的に使われる利尿剤で、血圧降下作用が得られます。
サイアザイド系(ヒドロクロロチアジド)の特徴
- 高血圧治療の第一選択薬
- 効果が穏やかで持続時間が長い
- 長期的に血管拡張作用が得られる
- 副作用:低カリウム血症、高尿酸血症など
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| 商品名 | アクアザイド |
|---|---|
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| 有効成分 | ヒドロクロロチアジド25mg |
| メーカー | Sun Pharma (サンファーマ社) |
| 購入サイト | アクアザイドの購入ページ |
ループ系(トラセミド・ブメタニド・フロセミド)
即効性があり強力に血圧を下げることができますが、持続時間は短く日常の高血圧治療の中心薬にはなりにくいタイプです。
ループ系(トラセミド・ブメタニド・フロセミド)の特徴
- 最も利尿作用が強い
- 心不全や浮腫の治療に広く使われる
- 血圧を下げる効果は強力だが、持続は短め
- 副作用:電解質異常(低カリウム、低ナトリウム)など
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●トーシミド
| 商品名 | トーシミド |
|---|---|
| 画像 | ![]() |
| 有効成分 | トラセミド5mg/10mg/20mg/40mg/100mg |
| メーカー | John Lee Pharma(ジョンリーファーマ) |
| 購入サイト | トーシミドの購入ページ |
●ブリネックス
| 商品名 | ブリネックス |
|---|---|
| 画像 | ![]() |
| 有効成分 | ブメタニド1mg/5mg |
| メーカー | Karo Pharma(カロ・ファーマ) |
| 購入サイト | ブリネックスの購入ページ |
カリウム保持系(スピロノラクトン)
血圧下降作用は比較的マイルドですが、治療抵抗性高血圧や心不全を伴う場合に特に有効とされるタイプです。
カリウム保持系(スピロノラクトン)
- カリウムを保持するため低カリウム血症が起きにくい
- アルドステロン拮抗薬として働き、心不全治療にも有効
- 血圧下降効果は比較的マイルド
- 副作用:高カリウム血症、男性乳房など
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●シレクトン
| 商品名 | シレクトン |
|---|---|
| 画像 | ![]() |
| 有効成分 | スピロノラクトン25mg/50mg/100mg |
| メーカー | Johnlee Pharmaceuticals(ジョンリーファーマ) |
| 購入サイト | シレクトンの購入はこちら |
血圧が下がり過ぎた場合の注意点

利尿剤は血圧を下げる効果がありますが、体質や他の薬との併用によって血圧が下がりすぎる(低血圧)ことがあります。
利尿剤を服用中に以下の症状が出た場合は、血圧が下がりすぎている場合があるので、注意が必要です。
利尿剤を服用中に注意が必要な症状
- 立ちくらみ
- めまい
- だるさ
- 動悸
- ぼんやりする、集中できない
また、利尿剤の作用は「水分・電解質のバランス」に影響するため、脱水や電解質異常が低血圧の原因になることもあります。
低血圧になった場合の対処方法
- 十分な水分補給を行う
- 急に立ち上がらない
- 症状が続く場合は、医師に服用量の調整を相談する
- 他の降圧薬を併用している場合は、併用バランスを見直す必要あり
利尿剤は安全性の高い薬ですが、「効きすぎ」による低血圧は軽視できないため定期的な血圧チェックが重要です。
利尿剤に関するよくある質問

- Q利尿剤は毎日飲まないといけませんか?
- A
高血圧治療目的の場合は、毎日継続して服用するのが基本です。
むくみ改善のための短期使用とは異なり、血圧を安定させるには継続が必要です。
- Q水分をあまり飲まないほうが利尿剤は効きますか?
- A
いいえ。
水分制限をすると脱水につながり、逆に体調を崩す原因になります。
通常は、のどが渇いたらしっかり水分をとって問題ありません。
- Qカリウムは減ったり増えたりするの?
- A
利尿剤の種類によって異なります。
サイアザイド系:低カリウムになりやすい
ループ系:低カリウムになりやすい
スピロノラクトン:逆に高カリウムになりやすい定期的な血液検査が推奨される理由です。
- Q利尿剤を飲むと、どれくらいで血圧が下がりますか?
- A
種類によって異なります。
サイアザイド系: 数日~数週間で安定
ループ系: 数時間で作用(短時間)
スピロノラクトン: 効果が出るまで数日~数週間かかることも特にサイアザイド系は、継続服用で血管拡張作用が現れ、より安定した血圧降下が得られます。
まとめ
利尿剤は「むくみの薬」というイメージがある一方で、高血圧治療における重要な薬のひとつです。
体内の水分・ナトリウム量を調節し、血管や心臓の負担を減らすことで自然と血圧を下げます。
サイアザイド系
もっとも標準的で安定した血圧降下作用
ループ系
強力・即効性だが持続は短い
カリウム保持系(スピロノラクトン)
治療抵抗性高血圧に有効
血圧が下がり過ぎる場合や電解質異常には注意が必要ですが、適切に使えば非常に安全で効果の高い薬です。
利尿剤を利用する際は、血圧のセルフチェックを続けること、体調の変化を見逃さないことが大切です。
参考
Whelton PK, et al. (2017 ACC/AHA 高血圧ガイドライン)
MSDマニュアル(高血圧に対する薬剤)
Thiazide-Induced Vasodilation in Humans Is Mediated by Potassium Channel Activation(サイアザイド系末梢血管抵抗が低下作用)









