糖尿病とは
糖尿病とは、血糖値が高い状態が続いてしまう疾患です。主に、インスリンの作用不足によって起こるとされています。
通常、食事を摂取するとぶどう糖となって血液中に入りますが、血液中のぶどう糖が増加し血糖値が上昇すると、膵臓からインスリンというホルモンが分泌されます。
インスリンは、ぶどう糖をグリコーゲンというエネルギー源に変えるため、血糖値が高くなりすぎずに一定に保つ作用を持っているのです。
糖尿病は日本人の中でも強く疑われる人が690万人、可能性を否定できない人を含めると1370万人という一般的で身近な疾患です。
糖尿病は、血糖値が高くなることで、「網膜症」、「腎症」、「神経障害」といった三大合併症を伴うため、いち早い治療と予防が大切になってきます。
糖尿病の種類と原因
インスリンの作用不足によって引き起こされる高血糖状態を「糖尿病」と呼んでいますが、大きく分けると「1型糖尿病」、「2型糖尿病」、「妊娠糖尿病」にわけられます。
1型糖尿病
1型糖尿病では、インスリンを産生する膵臓のβ細胞が破壊されることで起こります。
膵臓からインスリンが出す力が弱まったり、ほとんど出なくなったりするため、血糖が高い状態となります。
糖尿病全体の5%が1型糖尿病といわれており、若い方での発症が多いですが、どの年齢でも発症する可能性はあります。β細胞が破壊される原因はいまだ不明ですが、β細胞の破壊は進行性であることがわかっています。
そのため、基本的にインスリンを注射で補う治療法が主体となります。
2型糖尿病
2型糖尿病は、糖尿病全体の90%の方が含まれる種類です。食べ過ぎや運動不足などの生活習慣や遺伝的な影響で、インスリンの分泌が低下したり、インスリンが効きにくくなったりします。
生活習慣に影響されて発症することが多いため、中高年での発症が多いとされています。食事療法や運動療法や薬物療法を組み合わせながら治療していきます。
妊娠糖尿病
妊娠糖尿病は、妊娠中にわかった糖尿病には至っていない血糖の上昇を指します。
血糖は高すぎても低すぎても赤ちゃんの成長に影響を及ぼすため、細やかな血糖管理が大切になってきます。
妊娠中は、赤ちゃんに栄養を与えているため空腹時は血糖が低くなります。一方で、胎盤から出るホルモンの影響でインスリンが効きにくい状態となっているため、食後の血糖値は上がりやすい傾向にあります。
血糖値が高い傾向は出産の後に戻りますが、妊娠糖尿病を経験すると、将来糖尿病になりやすいとされるため注意が必要です。
糖尿病の症状
糖尿病は、血糖が高い状態が慢性的に続くことで、進行に伴い以下のような自覚症状が出てきます。のどの渇きや疲れやすさ、体のだるさなどの症状が出ている場合、高血糖によって血管が傷付いている場合があります。
糖尿病の症状
- 多尿
尿から糖が出る際に、水分も一緒に出るため尿が多くなります。 - 喉の渇き
多尿によって、水分が多く出てしまうため脱水状態となります。 - 多飲
喉が渇いてしまうため、水分を自然に多くとるようになります。 - 疲れやすい
糖尿病の診断判定基準
糖尿病は検査の値から、「正常型」、「境界型」、「糖尿病型」の3つに分類します。
その後、「糖尿病型」の中で、基準を満たす人を「糖尿病」として判断します。
「境界型」の人は糖尿病ではありませんが、糖尿病予備軍とします。
「糖尿病型」の判定
以下のうち1つを認めた人を「糖尿病型」とします。
「糖尿病型」の判定
- 血糖値 空腹時血糖値≧126mg/dl
- 血糖値 75g 経口負荷試験(OGTT)2 時間値≧200mg/dl
- 随時血糖値 ≧200mg/dl 以上
- HbA1c≧6.5%
※糖尿病の診断に使用する語句
名前 | 説明 |
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ヘモグロビンA1c (HbA1c) | 過去1~2ヵ月間の血糖の状態を示します。 |
早朝空腹時血糖値 | 早朝(8時間以上の絶食後)に採血したときの血糖値を示します。 |
75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT) | 75gのブドウ糖水などを飲み、その2時間後に採血したときの血糖値を示します。 |
随時高血糖 | 食事の時間と関係なく採血したときの血糖値を示します。 |
「糖尿病型」の中から「糖尿病」の判定
糖尿病型の中から糖尿病と判断されるのは、以下の3つの場合となります。
「糖尿病型」の中から「糖尿病」の判定
- 糖尿病型の中で血糖値に関する①、②、③のいずれかと④が糖尿病型の基準を満たせば、1回の検査のみで「糖尿病」と判断されます。
- 血糖値に関する①、②、③のいずれかに加えて、糖尿病と思われる症状(口渇、多飲、多尿、体重減少)または合併症の1つである糖尿病網膜症が確実にみられる場合も「糖尿病」と判断されます。
- ①~④のうちどれかが糖尿病型の基準を満たした時には、1カ月以内に再検査を実施し、再び①~③で糖尿病型の基準を満たせば「糖尿病」と判断されます。
糖尿病の治療方法
食事療法
2型糖尿病の方は、基本的に食事療法を実施していきます。難しいものではなく、適切なエネルギー量で、バランスの良い食事を心がけていきます。
例えば、「ゆっくりよく噛んで食べる」、「食事はおなか八分目でストップする」、「朝食・昼食・夕食を規則正しく食べる」などを実践します。
運動療法
2型糖尿病患者は、肥満の方が多いため運動療法が推奨されると思われがちですが、肥満の解消以外にも、体脂肪を減らしたり、血糖を低下させたり、体力を向上させる効果が期待されています。運動療法は健康のためにも大切です。
特におすすめなのは、30分程度の有酸素運動です。15分ほど運動をつづけたくらいから脂肪が燃焼され始め、30~40分運動を継続すると、特に効果的です。
また、ウォーキングや自転車、水泳は全身を使うため、糖尿病患者に適している運動と考えられています。無理しすぎはよくないですが、楽しむ程度に運動を続けていきましょう。
薬物療法
糖尿病の薬剤は多くの種類が出ています。運動療法や食事療法だけではなかなか改善が難しいケースも多くみられますので、このような場合に薬物療法も組み合わせていきます。
2型糖尿病では、経口血糖降下薬の処方が主体となり、1型糖尿病ではインスリン注射が主体となります。
注射薬療法
【インスリン療法】
インスリンを直接注射で補充することで、血糖値を下げます。1型糖尿病患者は、インスリンを分泌する膵臓自体に問題があるため、インスリン注射は必須です。
インスリン注射剤は、効果が出てくる時間や持続時間によって、超即効型、速効型、中間型、持効型溶解など様々な種類があり、患者の生活や症状に合わせて選択することができます。
●代表薬:ノボラピッド
商品名 | ノボラピッド |
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有効成分 | インスリン アスパルト(遺伝子組換え) |
効果 | インスリン療法が適応となる糖尿病 |
用法用量 | 成人では、初期は1回2〜20単位を毎食直前に皮下注射します。 |
メーカー | ノボノルディスクファーマ |
経口血糖降下薬
経口血糖降下薬には多くの種類があり、新しい薬剤もどんどん出ています。それぞれの特徴に合わせて処方を決めていきます。
【SU(スルホニル)薬】
SU薬は、膵臓からのインスリンの分泌を増やし血糖を下げる飲み薬です。インスリンを作る働きが少しでもある患者さんで効果が期待できます。歴史の長い薬剤で、最近は少なめの量を使用する傾向があります。
< SU(スルホニル)薬関連商品①>
●アマリール
アマリールは、サノフィが開発した薬剤です。有効成分であるグリメピリドはインスリンを分泌する膵臓のランゲルハンス島に作用し、インスリン分泌を高める働きをします。歴史の長い薬剤であり、比較的安価です。
商品名 | アマリール |
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有効成分 | グリメピリド 1mg 2mg 4mg |
価格 | 1mg:1錠あたり38円~ 2mg:1錠あたり40円~ 4mg:1錠あたり66円~ |
メーカー・ブランド | サノフィ社 |
URL | アマリールの購入はこちら |
【ビグアナイド薬】
血糖コントロールを改善する薬剤で、体重を増やしにくいという特徴があります。歴史の長い薬剤で、肥満の人でなくても効果が期待できます。ビグアナイド薬は糖新生を抑えることで血糖を下げます。
<ビグアナイド薬関連商品①>
●ゾメット【メトホルミン】
ゾメット【メトホルミン】は、日本でも処方されている2型糖尿病の治療薬であるメトグルコのジェネリック医薬品ゾメットです。糖の生成を抑制し、血糖値を減少させる効果があります。加えて、筋肉への糖の吸収を促進させて、腸管での糖の吸収を抑制します。
商品名 | ゾメット【メトホルミン】 |
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有効成分 | メトホルミン500mg |
価格 | 500mg:1錠あたり27円~ |
メーカー・ブランド | Intas Pharmaceuticals(インタスファーマ) |
URL | ゾメット【メトホルミン】の購入はこちら |
【DPP-4阻害薬】
食事摂取の後の、インスリン分泌を調整して血糖を下げる薬剤です。併用しなければ、低血糖のリスクは低く、体重を増やしにくいという特徴があります。比較的新しい薬剤で2型糖尿病の患者さんの最初に選択されるケースが増えてきています。
< DPP-4阻害薬関連商品①>
●ジャヌビア
ジャヌビアは、MSD社が開発したDPP-4阻害薬です。血糖値が高い時にのみ作用するので、体への負担や低血糖が生じるリスクが少ないのも特徴の一つです。また、生活習慣病治療薬との併用も比較的に安全です。
商品名 | ジャヌビア |
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有効成分 | シタグリプチン25mg/50mg/100mg |
価格 | 25mg:1錠あたり232円~ 50mg:1錠あたり246円~ 100mg:1錠あたり400円~ |
メーカー・ブランド | MSD(メルク・アンド・カンパニー) |
URL | ジャヌビアの購入はこちら |
【チアゾリジン薬】
チアゾリジン薬はインスリンの働きをよくすることで血糖を下げる飲み薬です。ほかの薬と併用しなければ低血糖を起こす危険性が低いことも特徴です。脂肪細胞へ作用して、インスリン抵抗性を改善します。
<チアゾリジン薬関連商品①>
●アクトス
アクトスはは、1991年から発売されている歴史の長い薬剤となります。主に2型糖尿病の治療に使用されます。インスリンの効き目をよくする効果があり、糖質の消化、吸収を遅らせる作用があります。
商品名 | アクトス |
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有効成分 | ピオグリタゾン15mg/30mg |
価格 | 15mg:1錠あたり173円~ 30mg:1錠あたり231円~ |
メーカー・ブランド | タケダ |
URL | アクトスの購入はこちら |
【SGLT2阻害薬】
尿に糖を出すことで血糖を下げる薬剤です。体重の減少効果も期待されています。単剤で使用すると低血糖を起こす可能性も低いです。2014年から使用されるようになった比較的新しい薬剤です。
< SGLT2阻害薬関連商品①>
●フォシーガ
フォシーガは、SGLT2阻害薬の1種です。糖尿病治療のほかにも慢性心不全などの治療にも適しています。食事から摂取した糖分を尿として排出してくれる作用があるため、腎臓から吸収される糖のカット効果が期待されています。血糖コントロールの作用時間は8~12時間、作用時間自体は24時間とされています。
商品名 | フォシーガ |
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有効成分 | ダパグリフロジン |
価格 | 10mg:1錠あたり267円~ 5mg: 56錠あたり15000円~ |
メーカー・ブランド | AstraZeneca |
URL | フォシーガの購入はこちら |
【GLP-1受容体作動薬】
GLP-1はもともと人間の体にあるホルモンです。GLP-1を投与することで、膵臓のβ細胞からのインスリン分泌を促進し、血糖を上昇するホルモン、グルカゴンの分泌を抑制して血糖値を低下させます。
< GLP-1受容体作動薬関連商品①>
●リベルサス
リベルサスは、話題の経口GLP-1受容体作動薬で、2型糖尿病に使用されます。血糖値を下げる効果に加えて、食欲を抑制する作用も期待されています。これまでGLP-1受容体作動薬は注射薬しかありませんでしたが、リベルサスが承認されたことで経口で投与することが可能となりました。
商品名 | リベルサス |
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有効成分 | セマグルチド |
価格 | 3mg:1錠あたり1100円~ 7mg:1錠あたり1100円~ 14mg:1錠あたり1166円~ |
メーカー・ブランド | ノボノルディスク社 |
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今ご紹介した糖尿病薬以外にも気になる方がいらっしゃりましたら、以下のページをクリックしてみてください。
糖尿病予防方法
糖尿病を予防するためには最も重要なことは、肥満にならないことです。食事の量と栄養バランスには気を付けて生活していきましょう。
また、無理のない適度な運動を継続することも大切です。運動は中性脂肪を減らし、筋肉をつけ、基礎代謝量の多い身体を作ります。
生活習慣が乱れると、栄養バランスが崩れ、血糖値が高くなりやすくなります。糖尿病にならないためにも、「食事」と「運動」は意識していきましょう。
糖尿病の合併症
糖尿病は進行していくと、目や神経などに障害をきたすことが知られています。糖尿病は、自覚症状のないまま症状が進んでいることがある恐ろしい疾患です。
中には気が付かないうちに重篤な合併症を引き起こしているケースもありますので、合併症に関する正しい知識をつけて、注意していきましょう。
糖尿病神経障害
高血糖が続くと、神経が障害され、手足の神経に特に異常をきたします。すると、足の先や裏、手の指に感覚異常があらわれます。
痛みやしびれとして自覚することが多く、左右対称にでてきます。痛みやしびれが進行すると、足壊疽や足潰瘍を引き起こし、足切断のリスクも出てきます。このような自覚症状がある場合は早めに医療機関を受診しましょう。
糖尿病網膜症
糖尿病網膜症は、目の網膜にある血管が障害されていく疾患です。進行していくと失明してしまいます。
糖尿病の方は年に1回以上眼底検査をおすすめしています。
糖尿病腎症
糖尿病腎症は、腎臓にある血管が蝕まれていく疾患です。腎臓は老廃物を尿として排泄する大切な役割を担っています。
しかし、腎症が進行すると、腎臓の機能がなくなり、透析治療が必要となります。定期的な腎臓の検査が大切です。
動脈硬化(脳卒中や心臓病)
3大合併症ではありませんが、最近心臓病や脳卒中などの動脈硬化に糖尿病が関わることが分かってきました。動脈硬化は直接死亡にもつながってしまいます。
特に、食後の高血糖が動脈硬化を進行させると報告されているため、早期に防ぐことが大切です。
糖尿病に関するよくある質問
- Q食事療法の一環として フルーツならたくさん食べてよいのでしょうか?
- A
フルーツは体に良いと聞きますが、「果糖」と呼ばれる糖質が多く含まれています。食べ過ぎると肥満をもたらしてしまうかもしれません。適度な量を摂取することが大切で、みかんであれば2個程度、リンゴなら半分、バナナなら1本が目安です。同じくサラダもマヨネーズや高カロリーのドレッシングをかけすぎてしまうとエネルギーのとりすぎになってしまうため注意が必要です。
- Q糖尿病は遺伝しますか?
- A
糖尿病という疾患自体は遺伝しませんが、糖尿病になりやすい体質が遺伝する可能性はあります。
しかし、糖尿病はいきなりかかるものではなく、ゆっくりと進行していくものです。そのため、年に1~2回検査を受けて、生活習慣に気を付けていれば早めに気づくことが可能です。
- Q合併症はすぐに起こるのでしょうか?
- A
合併症は糖尿病の初期状態では起こりません。糖尿病になってから最低でも数年以上はかかるとされています。
しかし、糖尿病は自覚症状が出にくい疾患なので、合併症が出て糖尿病に気づいたというケースも少なくありません。定期的に検診を受診するようにしましょう。
- Q1型糖尿病と2型糖尿病で合併症の発症に違いはあるのでしょうか?
- A
大きく1型糖尿病と2型糖尿病で合併症に違いはありません。
しかし、1型糖尿病の方が血糖値のコントロールが難しくなるため、合併症の頻度は高くなる傾向にあります。
- Q糖尿病で治療を受けている人はどのくらいですか?
- A
平成20年の報告では、糖尿病と推計される890万人のうち、医療機関を定期的に受診しているのは237万人程度とされています。4人に1人弱しか、しっかりとした治療を受けていないということです。
原因は糖尿病は自覚症状がでにくいことが考えられていますが、そうすると、知らないうちに疾患は進行していきます。
後々後悔しないように、自身の症状には気を付け、気になることがあれば医療機関を受診しましょう。
最後に
糖尿病は日本でも多くの方がかかっている身近な疾患です。
しかし糖尿病は症状に気が付きにくく、知らないうちに症状が進行し、合併症を引き起こすリスクもあります。
合併症を引き起こすと、失明したり透析治療を受け続けなければならなかったりと、普通の生活が難しくなってしまう可能性があります。
糖尿病を進行させないためにも血糖コントロールは非常に重要です。
食事や運動だけでなかなか改善しない2型糖尿病には、薬剤も使用していき、血糖管理を行っていきましょう。
出典
国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター 糖尿病とは
糖尿病診断基準(2023)
糖尿病の合併症~神経障害、網膜症、腎臓障害、動脈硬化~
公益社団法人日本糖尿病協会 糖尿病に関するQ&A