イベルメクチンとは
イベルメクチンとは、大村智博士が米国メルク社との共同研究で開発し2015年にノーベル医学・生理学賞を受賞した医薬品です。
1983年に発売から40年近くさまざまな治療薬として用いられてきました。
動物に駆虫薬としても幅広く使用されています。
人間用のイベルメクチンの形状は「錠剤」「クリーム」と2種類あります。
イベルメクチン錠剤について
先発薬「ストロメクトール錠3mg」として、MSD製薬が製造しています。
国内では、後発薬の処方はされていませんが、海外では後発薬(ジェネリック医薬品)が製造されています。
イベルメクチンの主な効果
腸管糞線虫症
日本では、沖縄・奄美地方で多くみられた感染症です。
感染経路は、汚染された土壌から皮膚に幼虫が侵入することが原因で感染します。
【症状】
皮膚の痒み・発赤がみられます。
続いて下痢・腹痛・肺の異常が発生します。
疥癬
ダニの一種「ヒゼンダニ」が皮膚に寄生し発生する感染症です。
感染経路は、感染しいる人と肌と肌が触れ合う事でダニが移動し感染します。
また、寝具や衣類からも感染する可能性があります。
【症状】
腹部、胸部、大腿内側などに強い痒みや皮疹がみられます。
「新型コロナウイルスへの効果について」
一時イベルメクチンが新型コロナウイルスに対し効果があるのではないかと注目を集めました。
残念ながら治験の結果、イベルメクチンは新型コロナウイルスへの有効性が認められないとの結果が発表されました。
参考
北里大学イベルメクチン医師主導治験結果に関するお知らせ
錠剤の成分量
先発薬ストロメクトールは、1錠あたり3㎎のみです。
体重に合わせ複数錠服用する必要があります。
「ストロメクトール」
商品名 | ストロメクトール【イベルメクチン】 |
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有効成分 | イベルメクチン3㎎ |
メーカー | MSD(メルク・アンド・カンパニー) |
購入サイト | ストロメクトール【イベルメクチン】の購入ページ |
イベルヒールというストロメクトールのジェネリック医薬品には1錠当たり3㎎/6㎎/12㎎3種類の成分量があります。
そのため体重に合わせ調節しやすいというメリットがあります。
「イベルヒール」
商品名 | イベルヒール【イベルメクチン】 |
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有効成分 | イベルメクチン3㎎/6mg/12mg |
メーカー | Healing Pharma(ヒーリングファーマ) |
購入サイト | イベルヒール【イベルメクチン】の購入ページ |
イベルメクチンの使用方法
イベルメクチンの錠剤は体重によって服用量の目安が変わります。
飲む方の体重と照らし合わせ服用量を計算する必要はあります。
また、症状により服用方法が異なるため、服用方法を確認した上で服用してください。
腸管糞線虫症
通常、イベルメクチンとして体重1kgあたり約200マイクログラムを2週間隔で2回経口投与してください。
糞便内幼虫が陰転しない場合は、再投与を考慮してください。
腸管糞線虫症
通常、イベルメクチンとして体重1kgあたり約200マイクログラムを1回経口投与する。
本剤は水とともに服用する。
重症型(角化型疥癬など)の場合、1回目の服用後1~2週間以内に検鏡を使用効果を確認し2回目の服用を考慮してください。
※服用の際の注意点
イベルメクチンは、水で服用してください。
また、高脂質食により血中薬物濃度が上昇する可能性があるので空腹時に服用してください。
イベルメクチンの副作用
主な副作用
- 皮膚
痒み/発疹 - 消化器
悪心/嘔吐/下痢/食欲不振/便秘/腹痛 - 肝臓
肝機能異常 - 腎臓
血液中における尿素の窒素成分(BUN)の上昇 - 精神神経
めまい/傾眠/振戦 - 血液
貧血/好酸球数増加/白血球数減少/リンパ球数増加/単球数減少
イベルメクチンクリームについて
イベルメクチンクリームは、日本でまだ承認されていない医薬品です。
米FDA(食品医薬品局)では、2014年に酒さ治療薬として承認されています。
安全性も非常に高く効果もあるため、自費診療で処方している医療機関もあります。
※関連商品
イベルメクチンクリーム
商品名 | イベルメクチンクリーム |
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有効成分 | イベルメクチン10mg |
メーカー | Ajanta Pharma(アジャンタファーマ) |
購入サイト | イベルメクチンクリームの購入ページ |
イベルメクチンクリームの主な効果
酒さ(しゅさ)
酒さは、別名「酒さ性ざ瘡」や「赤ら顔」とも呼ばれ、主に顔面の中央部に赤い発疹や小さな吹き出物が現れる慢性的な皮膚疾患を言います。
イベルメクチンクリームは、酒さの治療薬として、2014年12月にカルデルマ社のイベルメクチンクリームがアメリカのFDAから承認を受けました。
酒さの原因の一つと考えられている「ニキビダニ」を死滅させる作用があります。
イベルメクチンクリームの使用方法
通常、1日1回洗顔後に症状がある箇所に薄く延ばして塗布してください。
次の部位への使用は避けてください
- 目の周囲、粘膜等
- 皮膚の弱い部位
- 湿疹、かぶれ、傷口
- みずむし・たむし等または化膿している患部
臨床試験
丘疹膿疱性酒さの中程度~重症の患者に1日1回12週間投与したところ、「丘疹膿疱性酒さの炎症性病変の治療に効果的かつ安全だった。」との結果が出ています。
※臨床試験参考ページ
イベルメクチンクリームの副作用
主な副作用
- 皮膚
発疹/発赤/腫れ/紅斑/皮膚炎/蕁麻疹
イベルメクチンクリームは、殺菌成分を含まないため皮膚への刺激がありません。
敏感肌の方でも比較的使いやすい外用薬と言えます。
一部で軽い発赤や痒みが出る可能性はありますが、外用薬として適切に使用する限り、重度の皮膚炎などのリスクは低いとされています。
まとめ
錠剤 | クリーム | |
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国内での承認 | あり | なし |
使用方法 | 経口 | 塗布 |
効果 | 疥癬/腸管糞線虫症 (全身に効果を発揮し、体内の寄生虫感染症) | 酒さ (皮膚表面の局所的な炎症に対する治療) |
有効成分「イベルメクチン」の錠剤とクリームでは、効果・使用方法に大きな違いがあります。
全身的な寄生虫感染症には錠剤が適しており、皮膚の炎症(酒さ)にはクリームが効果的です。
自分の症状にあった医薬品を適切に使用することが大切です。
参考
医療用医薬品 : ストロメクトール
イベルメクチンを用いた、酒さの炎症性病変の治療