男性ホルモンを抑えることで、体を女性らしく変化させることを目指す「MtFホルモン治療」
近年では、性別違和を持つ人だけでなく、体毛や肌質などを女性的に近づけたいと考える人の間で関心が高まっています。
女性化を進めるためには、男性ホルモンの抑制と女性ホルモンの補充という2つのアプローチが基本となります。
男性ホルモンを抑えると女性化できるのか

人の体の特徴は、ホルモンバランスによって大きく左右されます。
男性の体では、テストステロンという男性ホルモンが多く分泌されており、次のような特徴を作り出します。
- 筋肉量の増加
- 体毛の増加
- 皮脂分泌の増加
- 男性的な体型
そのため、男性ホルモンの作用を抑えることで、体を女性的な状態に近づけることができます。
実際にトランスジェンダー女性(MtF)のホルモン治療では、下記を併用する治療が一般的です。
- 男性ホルモンを抑える薬(抗アンドロゲン)
- 女性ホルモン(エストロモン)
男性ホルモン(テストステロン)とは

テストステロンは、男性の体で主に精巣から分泌されるホルモンです。
思春期以降に分泌量が増加し、男性特有の身体的特徴を形成します。
男性ホルモンの主な働きは次の通りです。
- 筋肉量の増加
- 声代わり
- 体毛の発達
- 性欲の維持
- 骨密度の維持
成人男性の血中テストステロン値は、一般的に300~1000ng/dL程度とされています。
詳しく知りたい方は「テストステロン(男性ホルモン)とは?」の記事もご覧ください。
男性ホルモンが多いと現れる体の特徴


男性ホルモンの作用が強いと、次のような身体的特徴が現れます。
- 体毛が濃くなる
テストステロンは体毛の発達を促進します。特に下記部分が濃くなります。
- ヒゲ
- 胸毛
- すね毛
皮脂分泌が増える
皮脂腺の働きが活発になりニキビができやすくなります。
筋肉量が増える
筋肉の合成を促進するため、体格が男性的になります。
男性型脱毛症(AGA)
テストステロンがDHT(ジヒドロテストステロン)に変換されることで、AGAが進行します。
男性ホルモンを抑える代表的な薬
男性ホルモンの作用を抑える薬は、抗アンドロゲン薬と呼ばれます。
MtFホルモン治療では、主に次の薬が使用されます。


ビカルタミド
ビカルタミドは、非ステロイド性抗アンドロゲン薬で、男性ホルモン受容体をブロックする作用があります。
そのため、テストステロンの働きを抑えることができます。
本来は、前立腺がん治療薬ですが、海外ではMtFホルモン治療でも使用されることがあります。
| 商品名 | ビコミン |
|---|---|
| 画像 | ![]() ![]() |
| 有効成分 | ビカルタミド50mg |
| メーカー | Johnlee Pharmaceutical Pvt Ltd(ジョンリー ファーマシューティカル) |
| 販売ページ | ビコミンの購入はこちら |
スピロノラクトン
スピロノラクトンは利尿薬として開発された薬ですが、抗アンドロゲン作用も持っています。
そのため、海外ではMtF治療の抗アンドロゲン薬として使用されることがあります。
| 商品名 | シレクトン |
|---|---|
| 画像 | ![]() ![]() |
| 有効成分 | スピロノラクトン25mg/50mg/100mg |
| メーカー | Johnlee Pharmaceuticals(ジョンリーファーマ) |
| URL | シレクトンの購入はこちら |
ビカルタミドとは?女性化目的で使われる理由
ビカルタミドは、男性ホルモンの働きを抑えることで体のホルモンバランスに影響を与え、女性化の変化が現れやすくなる可能性があります。
ビカルタミドは、アンドロゲン受容体を阻害する作用を持つため、テストステロンやDHTが体に作用するのを抑えることができます。
その結果、次のような変化が起こる可能性があります。


▼体毛の減少
男性ホルモンは体毛の発達を促進する働きを持っています。
そのため、男性ホルモンの作用が弱まることで、下記のような変化が起こる可能性があります。
- 体毛の成長がゆるやかになる
- ヒゲや体毛が薄くなる
特にMtFホルモン治療では、抗アンドロゲン薬によって男性ホルモンの影響を抑えることで、体毛の増加を抑制することが一般的です。
▼肌質の変化
男性ホルモンは、皮脂腺の働きを活発にするため男性では皮脂分泌が多くなりやすい特徴があります。
ビカルタミドによって男性ホルモンの作用が弱まると下記の変化が現れる可能性があります。
- 皮脂の分泌の減少
- ニキビの減少
- 肌が柔らかくなる
これらの変化は、女性ホルモン(エストロゲン)と併用することで現れやすくなります。
▼乳房の発達(女性化)
ビカルタミドは、男性ホルモンの作用を抑えることで体内のホルモンバランスが変化し、乳房の発達が起こる可能性があります。
2019年に発表された研究では、トランスジェンダー女性の患者を対象にビカルタミドを使用した結果、約84.6%の患者が6ヶ月以内に乳房の発達が確認されたと報告されています。
この研究では、13人の患者がビカルタミドのみで治療を受け、その多くで乳房発達(タナ―分類Ⅱ~Ⅲ)が確認されました。
出典
Bicalutamide as an Androgen Blocker With Secondary Effect of Promoting Feminization in Male-to-Female Transgender Adolescents
ビカルタミドで期待できる効果


▼ビカルタミドの作用
ビカルタミドは、男性ホルモン(アンドロゲン)の働きを抑える「抗アンドロゲン薬」の一種です。
本来は、前立腺がんの治療薬として開発された医薬品で、男性ホルモンががん細胞の増殖を促すのを抑える目的で使用されています。
ビカルタミドは体内のアンドロゲン受容体(男性ホルモン受容体)に結合し、男性ホルモンであるテストステロンやDHT(ジヒドロテストステロン)が受容体に作用するのを阻害します。
この働きにより、男性ホルモンによって引き起こされる次のような作用を弱めることができます。
- 体毛の発達
- 皮脂分泌の増加
- 筋肉量の増加
- 男性型脱毛症(AGA)の進行
そのため、ビカルタミドは男性ホルモンの影響を抑える薬」としてMtFホルモン治療で使用されることがあります。
▼女性ホルモンの効果を高める
ビカルタミドは、男性ホルモンの働きを抑えることで女性ホルモンの作用が体に現れやすくなる可能性があると考えられています。
そのためMtFホルモン治療では、下記の組み合わせでホルモンバランスを調節する方法が一般的です。
抗アンドロゲン(男性ホルモン抑制)
+
エストロゲン(女性ホルモン)
実際の臨床実験では、トランスジェンダー女性にビカルタミドを抗アンドロゲン薬として使用したところ、乳房発達などの女性化の変化がされた例が報告されています。
出典
Bicalutamide as an Androgen Blocker With Secondary Effect of Promoting Feminization in Male-to-Female Transgender Adolescents
▼女性化はどれくらいで変化する?
MtFとホルモン治療による体の変化は、数週間で起こるものではなく、数ヵ月から1年以上かけて徐々に進むことが多いとされています。
米国内分泌学会(Endocrine Society)のガイドラインでは、ホルモン治療による体の変化の目安は次のように示されています。
1~3ヶ月
- 肌の分泌の減少
- 肌質の変化
- 性欲の変化
3~6ヶ月
- 体毛の成長がゆるやかになる
- 筋肉量の減少
- 体脂肪のつき方の変化
6~12ヶ月
- 乳房の変化
- 体型の女性化
ただし、ホルモン治療による変化のスピードには個人差があり、年齢・体質・ホルモン量などによって大きく異なるとされています。
出典
Endocrine Treatment of Gender-Dysphoric/Gender-Incongruent Persons
MtFホルモン治療で併用される薬


MtFホルモン治療では、男性ホルモンの作用を抑える薬だけでなく、女性ホルモンを補充する薬を併用することが一般的です。
男性ホルモンの影響を抑えるだけでは、十分な女性化の変化が起こらない場合があるためです。
そのため、多くのMtFホルモン治療では次のような組み合わせで使用されています。
抗アンドロゲン薬(男性ホルモン抑制)
+
女性ホルモン(エストロゲン)
ビカルタミドは、この抗アンドロゲン薬として使用される薬です。
ビカルタミドによって男性ホルモンの作用を抑えることで、女性ホルモンの影響が体に現れやすくなると考えられます。
▼エストロゲン
エストロゲンは、女性の体内で分泌される代表的な女性ホルモンです。
卵胞ホルモンとも呼ばれます。
MtFホルモン治療では、エストロゲンを補充することで女性らしい体の変化を促します。
期待される変化には、次のようなものがあります。
- 乳房の発達
- 体脂肪のつき方の変化
- 肌質の変化
- 体毛の減少
ビカルタミドなどの抗アンドロゲン薬と併用することで、男性ホルモンの影響が弱まり、女性ホルモンによる変化が現れやすくなるとされています。
そのためビカルタミドとエストロゲンを併用するケースは多く見られます。
▼プロゲステロン
プロゲステロンは、女性ホルモンの一種で女性の体では月経周期や妊娠に関するホルモンです。
黄体ホルモンとも呼ばれます。
MtFホルモン治療では、エストロゲンと併用されることがあります。
主な目的としては、下記などが挙げられます。
- 乳房発達のサポート
- ホルモンバランスの調節
- 睡眠や気分の安定
また、ビカルタミドやエストロゲンによるホルモン治療に加えて、さらに女性ホルモン環境を整える目的でプロゲステロンを併用するケースもあります。
ただし、プロゲステロンの使用については医療機関によって考え方が異なる場合もあります。
▼ビカルタミドとの併用について
MtFホルモン治療では、ビカルタミドなどの抗アンドロゲン薬と女性ホルモンを併用する方法が広く使われています。
ビカルタミドによって、男性ホルモンの作用を抑えながら女性ホルモンを補充することで体のホルモンバランスを女性に近い状態に調節します。
このように複数の医薬品を組み合わせることで、体毛・肌質・体型などの女性化の変化を目指します。
【関連商品】
MtFホルモン治療では、抗アンドロゲン薬としてビカルタミドを使用し、女性ホルモンを併用する方法が広く知られています。
当サイトでは、MtFホルモン治療に関連する医薬品も取り扱っています。
・ビカルタミド(抗アンドロゲン薬)
| 商品名 | ビコミン |
|---|---|
| 画像 | ![]() ![]() |
| 有効成分 | ビカルタミド50mg |
| メーカー | Johnlee Pharmaceutical Pvt Ltd(ジョンリー ファーマシューティカル) |
| 販売ページ | ビコミンの購入はこちら |
・エストロゲン
| 商品名 | エチニラ | プロギノバ | プレモン |
|---|---|---|---|
| 画像 | ![]() ![]() | ![]() ![]() | ![]() ![]() |
| 有効成分 | エチニルエストラジオール0.05mg | エストラジオール吉草酸エステル2mg | 結合型エストロゲン0.625mg/1.25mg |
| メーカー | Lloyd Laboratories Inc.(ロイドラボラトリーズ) | Bayer(バイエル) | West-Coast Pharmaceutical Works Ltd(ウエストコースト) |
| 購入サイト | エチニラの購入ページ | プロギノバの購入ページ | プレモンの購入ページ |
・プロゲステロン
| 商品名 | プロゲスタン | マレフェMTF | ウトロゲスタン100mg |
|---|---|---|---|
| 画像 | ![]() ![]() | ![]() ![]() | ![]() ![]() |
| 有効成分 | プロゲステロン100mg/200mg | メドロキシプロゲステロン酢酸エステル10㎎ | プロゲステロン100㎎ |
| メーカー | Koçak Farma(コサックファーマ) | West-Coast Pharmaceutical Works Ltd(ウエストコースト) | Besins Healthcare(ベジン・ヘルスケア) |
| 購入サイト | プロゲスタンの購入はこちら | マレフェMTFの購入はこちら | ウトロゲスタン100mgの購入はこちら |
MtFホルモン治療の副作用と注意点


MtFホルモン治療は、体を女性に近いホルモン環境へ変化させる治療方法ですが、ホルモンバランスを大きく変化させるため、副作用が起こる可能性もあります。
使用する医薬品の種類や体質によってリスクは異なりますが、治療を始める前に副作用や注意点を理解しておくことが重要です。
▼肝機能への影響
抗アンドロゲン薬や女性ホルモン製剤の中には、肝臓に負担をかける可能性があるものもあります。
特にビカルタミドは、肝臓で代謝される薬のため長期間使用する場合は注意が必要です。
主な症状としては、下記などが挙げられます。
- 倦怠感
- 食欲不振
- 黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)
これらの症状が現れた場合は、使用を中止し医療機関に相談することが推奨されます。
▼血栓症のリスク
エストロゲン(女性ホルモン)を使用する場合、血栓症のリスクが高まる可能性が指摘されています。
血栓症とは、血管の中に血の塊(血栓)ができてしまう状態です。
特に次のような方は注意が必要です。
- 喫煙習慣がある
- 肥満傾向
- 長時間の座り仕事が多い
- 血栓症の既往歴がある
予防のためには、下記などの生活習慣も重要とされています。
- 過度な運動
- 水分補給
- 長時間同じ姿勢をさける
▼ホルモンバランスの変化による体調変化
MtFホルモン治療では、ホルモンバランスが大きく変化するため、体調や精神面に影響がでることがあります。
主な変化として、下記などが報告されています。
- 過度な運動
- 水分補給
- 長時間同じ姿勢をさける
これらの症状はホルモン変化に体が慣れることで改善する場合もありますが、強い症状が続く場合は専門医に相談が必要です。
▼医薬品の自己判断での過剰使用に注意
MtFホルモン治療では、早く女性化の変化を得たいという理由から、自己判断で薬の量を増やしてしまうケースもあります。
しかし、ホルモン製剤や抗アンドロゲン薬は容量によって副作用のリスクも高まります。
安全に治療を行うためには、下記の点が重要です
- 用量を守る
- 複数の薬を併用する場合は作用を理解する
- 体調の変化に注意する
よくある質問


- QMtFホルモン治療はどれくらいで女性化の変化が出ますか?
- A
個人差はありますが。一般的にはホルモン治療を開始してから数ヵ月~1年ほどで徐々に体の変化が現れることが多いとされています。
乳房の発達や脂肪の分布変化などは、半年~数年かけてゆっくり進むことが多いとされています。
- Qビカルタミドだけで女性化は可能ですか?
- A
ビカルタミドは、男性ホルモン(アンドロゲン)の作用を抑える薬です。
そのため、単独で使用した場合でも男性ホルモンの影響を弱めることは期待できますが、女性ホルモンの作用を補うわけではありません。
そのため、MtFホルモン治療では
・抗アンドロゲン薬(ビカルタミドなど)
・女性ホルモン(エストロゲン)
を併用するケースが多く見られます。
- QMtFホルモン治療はだれでもできますか?
- A
ホルモン治療は、体のホルモンバランスを大きく変化させるため、体質や健康状態によっては注意が必要な場合があります。
・肝機能に問題がある方
・血栓症の既往がある方
・持病がある方
上記に当てはまる方は特に注意が必要であり、事前に医療機関に相談することが重要です。
- QMtFホルモン治療で体毛は薄くなりますか?
- A
MtFホルモン治療では、男性ホルモンの作用が弱まることで体毛が細くなったり、伸びる速度が遅くなることがあります。
特にビカルタミドなどの抗アンドロゲン薬を使用すると、男性ホルモンの影響が抑えられるため、体毛の変化を感じる人もいます。
ただし、ホルモン治療だけで体毛が完全になくなるわけではありません。・ヒゲ
・濃い体毛
などについては、レーザー脱毛や医療脱毛を併用するケースも多く見られます。
体毛の変化も個人差が大きく、効果を実感するまでには、数ヵ月~1年ほどかかる場合があります。
まとめ
MtFホルモン治療は、男性ホルモンの影響を抑えながら女性ホルモンを補充することで、体を女性に近いホルモン環境へ変化させる治療です
治療では一般的に、下記を組み合わせて使用することが多く、ホルモンバランスを調節することで女性化の変化を目指します。
- 抗アンドロゲン薬(男性ホルモンの作用を抑える)
- 女性ホルモン(エストロゲン)
その中でもビカルタミドは、男性ホルモンの作用を抑える抗アンドロゲン薬のひとつとして、MtFホルモン治療で使用されることがある薬です。
ビカルタミドを使用することで、男性ホルモンの影響を弱め、女性ホルモンによる体の変化が現れやすくなると考えられています。
ただし、ホルモン治療には副作用のリスクもあるため、薬の作用や注意点を理解した上で使用を検討することが重要です。














