梅毒とは
梅毒トレポネーマという病原体により引き起こされる感染症です。性的な接触によって感染します。梅毒は 「The Great Imitator (模倣の名人)」と呼ばれることもあり、全身にさまざまな症状をきたします。
2011年から、梅毒の報告数は増加傾向にありましたが、その中でも2021年以降は特に大きく増加しています。
年齢別でみると、女性は20代が最も多く、男性は20代~50代に多いとされています。
梅毒の原因
梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)という細菌が原因となります。梅毒という名前は、症状として起こる赤い発疹がヤマモモ(楊梅)に似ていることに由来しています。
梅毒トレポネーマは、皮膚や粘膜から体内に侵入して数時間ほどでリンパ節に達します。その後血液にのって、全身に広がっていきます。体内にいると時間の経過とともに全身に症状が広がってしまいますが、細菌自体は低酸素状態でしか感染力を持ちません。つまり、温度や湿度に弱いため、皮膚や粘膜から離れると感染力は数時間で失うとされています。
梅毒の症状
時期によって、Ⅰ期~Ⅳ期と呼ばれています。最初は性器や口の中に小豆くらいのしこりができます。ほかにも痛みやかゆみがない発疹が体に広がることもあります。実は梅毒は症状が消えても数年単位で感染力が残る恐ろしい細菌です。治療しないまま放置していると、知らない間に病原体が体を蝕み、Ⅲ期、Ⅳ期と進行し、心臓や血管などの臓器に侵食していることがあります。
Ⅰ期
最初の症状があらわれる時期です。感染してから3週間ほどの潜伏期間を経て、症状があらわれます。感染した部位(性器や肛門、口など)に3ミリ~3センチほどのできものができます。できものはコリコリと硬めですが、約1カ月で自然に治癒していきます。そのため症状に気が付きにくいです。
Ⅱ期
感染から3カ月ほどで洗われる症状のことを言います。手のひらや足の裏、体一部に赤い発疹が起こります。発疹は痛みがなく、半年以内に消えてしまいますが、菌は体内に居続けています。第Ⅱ期は症状が消えたり、現れたりするサーキットと呼ばれる現象となることがあります。また、第Ⅰ期と第Ⅱ期の病変は併存することがあります。
Ⅲ期
感染から3年ほど経過した時期のことを指します。体全身に炎症が進行します。ゴム腫と呼ばれる腫瘍が出現し、全身の皮膚だけではなく、筋肉や内臓などにも起こります。
Ⅳ期
感染から10年ほど経過した時期を指します。脳や心臓などの臓器に病変ができます。神経障害や脳梗塞、心不全など命に係わる状態となります。
梅毒の感染経路
感染1年以内の早期梅毒の方と性行為をした時の感染確率は30%程度といわれています。
早期梅毒の際の感染力は非常に強く、罹患した病変部位と接触すると、性器以外にも感染してしまうことがあります。
母子感染の場合、早期梅毒で感染確率は60~80%と非常に高い確率となります。一方で、1年以上経過した梅毒に妊婦がかかっている場合、子供に感染する確率は20%と低下します。
感染経路 | 原因となる行為 |
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性器 | 膣性交とオーラルセックスによって感染します。 |
のど | オーラルセックスによって感染します。 |
肛門 | アナルセックスによって感染します。 |
目(結膜) | 感染した液がついた手で目をこすることによって感染します。 |
口 | キスによっても感染します。 |
母子感染 | 母親が梅毒に感染していることで子供にも感染します。 |
梅毒の検査
梅毒の検査は一般的に血液検査となります。血液から体内の梅毒の抗体を調べます。検査は梅毒に感染してすぐはできず、検査方法によって数週間~経過している必要があります。この抗体が確認されるまでの期間を「ウィンドウピリオド」と呼んでいます。
梅毒の検査では、1回の採決で脂質抗原法とTP抗原法の2つを行い、総合的な結果から梅毒にかかっているかを判断します。
脂質抗原法ー血液検査ー
RPR法、ガラス板法、凝集法などの方法がありますが、現在主流で使用されているのはRPR法です。陽性・陰性で結果が出ます。感染してから2~4週間後には、抗体が出るため、すぐに診断が可能な点が長所となっています。また、抗体は治療を進めていくとともに低下していくので、治療効果の判定にも使用ができます。
TP抗原法ー血液検査ー
TPI法、TPHA法、TPLA法などがあります。脂質抗原法よりも精密な検査で、梅毒以外で陽性が出ることは少ないとされています。陽性・陰性で結果が出ますが、一度梅毒に感染したことのある方は、薬で完治していたとしても陽性が出ます。感染してから4~6週間後にならないと結果が出にくいため、早めの診断には適していません。
脂質抗原法(RPR) | TP抗原法(TPHA) | 結果 |
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陽性(+) | 陽性(+) | 梅毒に感染している |
陰性(-) | 陰性(-) | 梅毒に感染していない |
陽性(+) | 陰性(-) | 初めて感染した可能性がある 偽陽性(感染していない) |
陰性(-) | 陽性(+) | 初めて感染した可能性がある 梅毒の治療後の可能性がある 偽陽性(感染していない) |
<梅毒の検査関連商品>
●梅毒セルフテスト
梅毒セルフテストは、自宅で簡便に梅毒の検査が行えるキットです。病院に検査に行くことに抵抗がある方、検査結果をすぐに知りたい方などにおすすめです。
商品名 | 梅毒セルフテスト |
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有効成分 | ー |
価格 | 1個あたり2850円~ |
メーカー | Boson Biotech |
購入ページ |
梅毒の治療薬
梅毒は早めに抗菌薬を投与することで完治が可能です。梅毒の治療には昔からペニシリン系の抗菌薬が中心として使用されています。海外では1回の注射が認められていますが、日本で使用することはできません。
そのため、第一選択薬は基本的に内服のペニシリンが推奨されています。
もし、アレルギーなどでペニシリンの使用が難しい場合には、第2・第3選択薬としてミノサイクリン、スピラマイシンが推奨されています。治療期間は症状ごと、薬剤ごとで異なりますが、2週間~8週間と長期に及びます。
ペニシリン系抗生物質
特徴
- ガイドラインにおいて、ペニシリン系抗菌薬の内服が推奨されています。
- 梅毒の病原体である「梅毒トレポネーマ」を死滅させる効果があります。
- 抗菌薬は耐性株が問題となりますが、ペニシリンへの梅毒耐性株の報告はありません。
- ペニシリン内服の投与期間は、第1期は2~4週間、第2期では4~8週間、第3期以降では8~12週間がガイドラインにおいて推奨されています。
注意点
- 投与期間は、感染期間によって変化します。
- 梅毒には非常に有効とされていますが、他の性感染症には効果は期待されません。
- 治療最初のころに発熱が起こしやすいく、8日目以降は薬疹が起こりやすいとされています。女性に特に多いとされているので、事前に理解しておく必要があります。
<ペニシリン系抗生物質関連商品①>
●キャンピシリン
キャンピシリンは、アンピシリンを有効成分として含んだペニシリン系抗菌薬です。ビクシリンのジェネリック医薬品です。細胞壁の合成を阻害することで、細菌を殺菌します。梅毒にも効果がありますが、以外にも中耳炎や扁桃炎などにも期待されています。症状によって服用量が異なります。副作用として頭痛や発熱などが報告されていますので、異常があった場合には医療機関を受診してください。
商品名 | キャンピシリン |
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有効成分 | アンピシリン |
価格 | 250mg:1錠あたり48円~ 500mg:1錠あたり64円~ |
メーカー | カディラファーマ社 |
購入ページ |
<ペニシリン系抗生物質関連商品②>
●ワイモックス【アモキシシリン】
ワイモックス【アモキシシリン】は、殺菌効果がつよいペニシリン系の抗菌薬です。アモキシシリンを有効成分として含んでおり、ペニシリン系の抗菌薬の中でも使用頻度が高い薬剤となっています。年齢や症状によって服用方法や服用量が異なりますので、症状に合わせて変更してください。
商品名 | ワイモックス【アモキシシリン】 |
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有効成分 | アモキシシリン250mg |
価格 | 250mg:150錠あたり6500円~ |
メーカー | Abbott |
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<ペニシリン系抗生物質関連商品③>
●アトキシリン【アモキシシリン】
アトキシリン【アモキシシリン】は、アモキシシリンを有効成分として含んだペニシリン系抗生物質です。発疹や吐き気などの副作用が報告されておりますので、異常があった場合には医療機関を受診してください。
商品名 | アトキシリン【アモキシシリン】 |
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有効成分 | アモキシシリン500mg |
価格 | 500mg:1錠あたり114円~ |
メーカー | Atabay Kimya San. ve Tic A.S.Made in Turkey |
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<ペニシリン系抗生物質関連商品④>
●ノバモックス【アモキシシリンシロップ】
ノバモックス【アモキシシリンシロップ】は、アモキシシリンを有効成分として含んだシロップタイプの抗生物質です。梅毒以外にも淋病や扁桃炎などにも使用されています。シロップタイプは錠剤よりも速やかに成分が吸収されるため、高い血中濃度での治療が期待されています。
商品名 | ノバモックス【アモキシシリンシロップ】 |
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有効成分 | アモキシシリン125mg・250mg |
価格 | 125mg:1本あたり1280円~ 250mg:1本あたり1900円~ |
メーカー | Cipla(シプラ) |
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<ペニシリン系抗生物質関連商品⑤>
●シリケンVK
シリケンVKは、フェノキシメチルペニシリンを有効成分として含んだ医薬品です。フェノキシメチルペニシリンは細胞壁の合成を阻害することで細菌を死滅させる役割があります。症状によって服用回数が異なりますので、医薬品文書を確認し、適切な用量を服用してください。
商品名 | シリケンVK |
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有効成分 | フェノキシメチルペニシリン250mg/500mg |
価格 | 250mg:50錠あたり1980円~ 500mg:50錠あたり2800円~ |
メーカー | Aspen Pharma Pty Ltd |
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テトラサイクリン系抗生物質
特徴
- 細菌のタンパク質合成を阻害して細菌の増殖を抑えることで抗菌作用をあらわします。
- 「ミノマイシン」「ビブラマイシン」「アクロマイシンV」「レダマイシン」などの商品がありますが、梅毒のガイドラインにおいては、ペニシリンに効果がなかった時の第2選択薬として「ミノサイクリン」が推奨されています。
注意点
- 吐き気や嘔吐、下痢などが起こる場合があります。
- ミネラルを含んだ製剤や食べ物と一緒にとると、効果が弱まってしまう恐れがあります。
<テトラサイクリン系抗生物質関連商品①>
●ディバイン
ディバインは、テトラサイクリン系抗生物質のミノマイシンのジェネリック医薬品です。ミノサイクリンはクラミジアやマイコプラズマ、淋菌などに有効であるとされております。作用機序としては、体に入った細菌を殺菌し、細菌の数を減らすことで症状を改善します。
商品名 | ディバイン |
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有効成分 | 塩酸ミノサイクリン100mg |
価格 | 100mg:1錠あたり144円~ |
メーカー | Cipla(シプラ) |
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<テトラサイクリン系抗生物質関連商品②>
●アカミン【ミノマイシン】
アカミン【ミノマイシン】は、ミノマイシンのジェネリック医薬品です。性感染症やニキビ治療薬として使用されています。牛乳などの乳製品と一緒に服用すると、薬の吸収が悪くなりますので、2時間以上間隔をあけるようにしてください。
商品名 | アカミン【ミノマイシン】 |
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有効成分 | ミノサイクリン塩酸塩50mg |
価格 | 50mg:60錠あたり2850円~ |
メーカー | Myran(マイラン) |
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マクロライド系抗生物質
特徴
- スピラマイシンが、第3選択薬として位置づけられています。
- 妊婦の場合、ミノサイクリンが使用できないため、スピラマイシンを使用します。
注意点
- 蕁麻疹や血管浮腫が起こる可能性がありますので、症状があらわれた際には医療機関を受診してください。
梅毒の予防法
梅毒は、病変部と直接接触することでも感染します。そのため症状が出ている際にはできるだけ病変部に近づかないことが予防法の1つです。一方で症状が出ていないことも十分想定されます。そのため、性行為の際にはコンドームを付ける、不特定多数との性行為は避けるなども大切です。
梅毒の予防法
- 病変部には触らない
- 不特定多数との性行為は避ける
- 性行為の際はコンドームをつける
- パートナーの感染が疑われたら一緒に検査を受ける
- 定期的に性病検査を受ける
梅毒感染症の注意点
妊娠中の梅毒に注意!
妊娠中に梅毒に母親が感染すると子供にも感染してしまうケースがあります。子供に感染すると、死産や早産を起こす、または子供も神経や骨に異常をきたすことがあります。治療を行えばしっかりと治癒できる疾患であるため、見つけたらすぐに開始していきましょう。妊婦には、第2選択薬のミノサイクリンは基本的に使用できません。第1選択のペニシリンを使用すれば、胎盤や血液を通じて子供にも薬の効果が届くとされているため、同時にお母さんと子供の治療を行うことができます。ですが、「エリスロマイシン」だけは、胎盤を通過しないため、母親のみの治療となります。
治療後、治ったかどうかの確認は必ず行う
梅毒は治療期間に一定の期間を要します。治療中も4週間ごとに陰性確認をしていくことが望ましいとされており、さらに治療が終了した後ももしかすると、菌がいなくなっていないケースも想定されますので、しっかりと確認をしていきましょう。中途半端なタイミングで薬を止めたり、治療後の効果判定に行かないと、再び感染したり、実は治っていなかったというケースもあります。
治療開始後の発熱に注意
梅毒の治療を開始すると、数時間から数日以内に、発熱や悪寒、筋肉痛、頭痛、リンパ節の腫れなどの症状が現れることがあります。しかし、これは梅毒トレポネーマが急激に死滅したことによる「ヤーリッシュ・ヘルクスハイマー反応」というもので、薬の副作用とは異なっています。そのため、副作用だと勘違いをして、自己判断で薬の量を減らしたりしてしまうと、治療効果が満足に得られない場合もあります。症状が出るのは個人差があるため、心配な人は、内服は仕事がお休みの時に始めるのがよいでしょう。
また、自分が梅毒に感染しているということは、パートナーも感染している可能性があります。パートナーも梅毒の検査を一緒に受けて、治療を行うことが大切です。
HIVとの合併に注意
HIVと梅毒は重複感染しやすいとされています。梅毒は現在、患者数が増加している疾患です。アメリカ国内では梅毒新規患者の60%以上がHIV感染症を合併しているという報告もあります。合併しやすい理由としてどちらも同じ感染経路で感染することがあげられます。性行為によって感染するため、梅毒にかかりやすければ、同時にHIVにもかかりやすいのです。また、HIVは血液や膣分泌液などの体液に含まれており、粘膜や傷口から感染しますが、梅毒の感染によって傷ついた粘膜がHIVに感染しやすくなることも関係しています。梅毒はゆっくりと数年かけて症状が進行していきますが、HIVにかかってしまった場合、進行が早まってしまう恐れがあります。加えて、HIVにかかっていると治療効果も出にくいとされているため、同時感染には注意が必要です。
最後に
梅毒は症状に気が付かず放置していると重大な腎臓病の合併を引き起こしてしまうこともあります。そのため、赤いしこりなどの気になる症状があらわれた際には、我慢しすぎずにすぐに治療を開始するようにしましょう。現在は、しっかりとした抗菌薬を服用すれば完治することが分かっていますので安心してください。