プロカイン塩酸塩

成分名

プロカイン塩酸塩

適応症状

浸潤麻酔/伝達麻酔/硬膜外麻酔 など

簡易説明

プロカイン塩酸塩は局所麻酔薬の主成分の一つです。
作用時間が短く身体への負担が少ない、局所麻酔薬中毒が生じにくいといった理由から、あらゆる診療科で広く使われています。

ヒトは身体の一部が刺激を受けた時、その刺激が電気信号となって脳まで伝わり、大脳で「痛い」と感じます。

本成分はその電気信号が発生するのを抑制し、刺激による痛みを感じにくくします。

処方可能な診療科目

麻酔科/歯科/歯科麻酔科/産婦人科 ほか多数

健康保険の適応

健康保険適応

病院で処方してもらう時の費用目安

診察料などの目安  :約3,000円~8,000円
薬代1管あたりの目安:1% 1mg約94円/2% 5mg約96円
病院によって差が有り薬代の他に、初診料・診察料・検査料などが必要になる。

厚生労働省による認可、または発売年月日

1954年1月(発売)

国内のジェネリック認可

ジェネリックなし

関連製品(先発薬)

・プロカイン塩酸塩注射液0.5%「日医工」 5mL(製薬会社:日医工株式会社)
・プロカイン塩酸塩注射液0.5%「日医工」 10mL(製薬会社:日医工株式会社)
・ロカイン注1% 1mL(製薬会社:扶桑薬品)
・ロカイン注1% 2mL(製薬会社:扶桑薬品)
・ロカイン注1% 5mL(製薬会社:扶桑薬品)
・ロカイン注1% 10mL(製薬会社:扶桑薬品)
・ロカイン注2% 1mL (製薬会社:扶桑薬品)
・ロカイン注2% 2mL (製薬会社:扶桑薬品)
・ロカイン注2% 5mL (製薬会社:扶桑薬品)

関連製品(ジェネリック)

ジェネリックなし

効果・作用

プロカイン塩酸塩は麻酔作用をもつ成分の一つで、「浸潤麻酔」「伝達麻酔」「硬膜外麻酔」などに使用されています。

上記3つの麻酔方法に関して、
まず現在手術の際に行われている麻酔方法は、大きく「全身麻酔」「浸潤麻酔(=局所麻酔)」の2つに分けられます。
そして浸潤麻酔はそこからさらに、硬膜外麻酔、伝達麻酔、脊髄くも膜下麻酔(=脊椎麻酔=腰椎麻酔=下半身麻酔)などに細分化されていきます。

ここで、全身麻酔は身体の機能を一時的に止めてしまう異質なものですがそれ以外、つまり浸潤麻酔に属する麻酔方法は、その目的や投与する部分こそ異なるものの、痛みを感じにくくなる仕組みに大差はありません。

その仕組みについて、まず痛みというのは、その痛みが発生するきっかけとなった箇所(怪我や手術など外的損傷を受けた場所)から刺激信号が神経を伝って脳に届き、最終的に大脳で感じます。

次に刺激信号ですが、これは活動電位の発生により生じます。
神経細胞内外には「Na+(ナトリウムイオン)」「K+(カリウムイオン)」という2種類のイオンが存在しています。
細胞外にはNa+が多く、細胞内にはK+が多いという違いはありますが、通常「Na+の数とK+の数の合計」は細胞内外で同じになっているため、電気的な均衡が保たれています。

また細胞の内外を仕切る細胞膜には、細胞内外でイオンをやり取りするために、「電位依存性Na+チャネル」「電位依存性K+チャネル」「K+漏出チャネル」「Na+/K+ ATPase」4種類のチャネル(イオンの通り道)があり、通常これらはイオンのやり取りをする必要がないので閉じています。

それが、神経の刺激があると電位依存性Na+チャネルが開き、Na+が細胞内に流入します。
するとさらなるNa+チャネルが開いたり、K+漏出チャネルが開いてK+が細胞外へ流出したりするのですが、最終的に細胞の内外における電気均衡が崩れて電位差が生じます。
これが活動電位、すなわち刺激信号の正体です。

プロカイン塩酸塩には、Na+が細胞内に流入するのを防ぐ作用があります。
そのためその投与によって、刺激信号の発生が抑制され、痛みを感じにくくなる効果が得られるのです。

使用方法

【浸潤麻酔】
通常、成人はプロカイン塩酸塩として1回1000mgまでの範囲で摂取します。
ただし年齢や症状、麻酔領域やその部位、組織、体質などによって適宜増減します。
また場合によって、アドレナリン(通常濃度 1:10万~20万)を添加して摂取します。

【伝達麻酔】
通常、成人はプロカイン塩酸塩として1回10~400mgを摂取します。
ただし年齢や症状、麻酔領域やその部位、組織、体質などによって適宜増減します。
また場合によって、アドレナリン(通常濃度 1:10万~20万)を添加して摂取します。

【硬膜外麻酔】
通常、成人はプロカイン塩酸塩として1回300~400mgを摂取します。上限は1回600mgです。

副作用

【浸潤麻酔】
ショック、 血圧低下、 顔面蒼白、 脈拍異常、 呼吸抑制、 振戦、 痙攣、 中毒、 中毒症状、 眠気

【伝達麻酔、硬膜外麻酔(共通)】
〇主な副作用
中毒、 眠気、 不安、 興奮、 霧視、 眩暈、 悪心、 嘔吐、 メトヘモグロビン血症、 過敏症、 蕁麻疹

〇重大な副作用
ショック、 血圧低下、 顔面蒼白、 脈拍異常、 呼吸抑制、 振戦、 痙攣、 中毒症状

〇上記以外の副作用
浮腫

※その他、異変を感じた場合は直ぐに医師の診察を受け指示に従ってください。

使用に注意が必要な方
使用出来ない方

【浸潤麻酔、伝達麻酔、硬膜外麻酔 共通】
〇使用出来ない方
■メトヘモグロビン血症のある方
症状が悪化するおそれがあります。

■プロカイン塩酸塩や、(コカインを除く)安息香酸エステル系局所麻酔に対して過敏症の既往歴をお持ちの方


※以下に該当する方や以下の用途で用いる場合、プロカイン塩酸塩の摂取には問題ありませんが、血管収縮薬(アドレナリン、ノルアドレナリン)を添加してはいけません。

■血管収縮薬に対し過敏症の既往歴のある方

■高血圧、動脈硬化のある方
血圧が急激に上昇し、脳出血が起こる危険性があります。

■心不全のある方
血管収縮や心臓刺激の結果、症状が悪化するおそれがあります。

■甲状腺機能亢進のある方
血管収縮薬に対して反応しやすく、心悸亢進、胸痛等が起こる可能性があります。

■糖尿病をお持ちの方
血糖値が上昇することがあります。

■血管痙攣のある方
阻血状態を来し、局所壊死が起こる場合があります。

■耳、指趾又は陰茎への麻酔
阻血状態を来し、局所壊死が起こるおそれがあります。


〇使用に注意が必要な方
※以下に該当する方や以下の用途で用いる際は、プロカイン塩酸塩の摂取には問題ありませんが、血管収縮薬(アドレナリン、ノルアドレナリン)を添加する場合は注意が必要です。

■ハロタン等のハロゲン含有吸入麻酔薬を使用中の方
血管収縮薬に対する心筋の感受性が高まり、不整脈が起こる危険性があります。

■三環系抗うつ剤、またはモノアミン酸化酵素阻害薬を使用中の方
血管収縮薬の作用が増強され、不整脈、高血圧等が起こるおそれがあります。

■高齢者
一般的に高齢者は生理機能が低下していて、副作用が発現しやすい傾向にあります。
また血管収縮薬(アドレナリン、ノルアドレナリン)の作用に対する感受性が高い場合もあるので、状態を見ながら慎重に摂取する必要があります。

■妊産婦、授乳婦
妊娠中の摂取に対する安全性は確立されていないだけでなく、特に妊娠末期では麻酔範囲が広がり、仰臥性低血圧を起こすことがあります。
そのため、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ、慎重に摂取してください。

【硬膜外麻酔のみ】
〇使用出来ない方
■重篤な出血やショック状態にある方
症状が悪化するおそれがあります。

■注射部位又はその周辺に炎症のある方
吸収が高まり、効果が急激に発現するおそれがあります。

■敗血症を患っている方
敗血症性の髄膜炎が発現する可能性があります。


〇使用に注意が必要な方
■中枢神経系疾患(髄膜炎、灰白脊髄炎等)のある方
血液や脳に移行し、症状が悪化するおそれがあります。

上記にあてはまる方は、プロカイン塩酸塩を使用する事が出来ない可能性があります。
プロカイン塩酸塩を使用する前に、医師又は薬剤師に使用しても問題ないか必ず確認をして下さい。

併用禁忌薬

【浸潤麻酔】
〇併用禁忌薬、併用注意薬
報告はありません。

【伝達麻酔】
〇併用禁忌薬、併用注意薬
報告はありません。

【硬膜外麻酔】
〇併用禁忌薬
報告はありません。

〇併用注意薬
血液凝固阻止剤と併用すると、血腫や脊髄障害を引き起こすおそれがあります。

プロカイン塩酸塩に関する
よくある質問
アドレナリンを添加する場合があるのはなぜですか?

アドレナリンには血管収縮作用があります。そのため麻酔薬と一緒に摂取すると、麻酔薬成分が血液内に取り込まれるスピードが穏やかになります。それにより作用時間が長くなり、局所麻酔薬中毒のリスクも低くなります。さらに、本成分を投与した部分の止血効果も得られます。
アドレナリンが添加されることがあるのは、このようにたくさんのメリットがあるからなのです。

麻酔薬の成分としてはリドカインなどもよく耳にしますが、その中でプロカイン塩酸塩の特徴はどういったものになりますか?

プロカイン塩酸塩の特徴としては、血漿のエステラーゼという酵素で容易に分解されるため作用時間が短い(45-60分程度)ことの他、過敏症状(発疹、かゆみ、刺激感など)が発現しやすい、中毒が比較的生じにくい、といったものが挙げられます。

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