利尿剤とは?種類と基本の作用

利尿剤とは、腎臓に働きかけて尿の量を増やし、体から余分な水分や塩分(ナトリウム)を排出させる薬です。
この働きによって、血液の量が減り、血圧が下がったり、むくみが改善したりします。
病院では高血圧治療や心臓病・腎臓病・肝臓病などさまざまな治療を行うために使用されています。
利尿剤には主に「ループ利尿薬」・「サイアザイド系利尿薬」・「カリウム保持性利尿薬」・「バソプレシンV2受容体拮抗薬」と4つの種類があります。
それぞれ腎臓の中でも異なる部分に作用することで利尿作用を発揮しますが、どの利尿剤にもそれぞれ異なる特徴を持っています。
どんな特徴を持っているのか、種類別に基本の作用に基づいて解説していきます。
ループ利尿薬(フロセミド、アゾセミドなど)
- 腎臓の「ヘンレのループ」という部分に作用して、強力な水分と塩分の排出効果を発揮する
- むくみが強い心不全や腎不全などで処方されることが多く、即効性があるのが特徴
【メデマート取り扱い商品】
| 商品名 | トーシミド | トール | ムクミトール |
|---|---|---|---|
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| 有効成分 | トラセミド5mg/10mg/20mg/40mg/100mg | トラセミド5mg/10mg/20mg | トラセミド5㎎/10㎎/20㎎ |
| メーカー | John Lee Pharma(ジョンリーファーマ) | Intas Pharmaceuticals(インタスファーマ) | Asle pharmaceuticals(アスレ) |
| 購入サイト | トーシミドの購入ページ | トールの購入ページ | ムクミトールの購入ページ |
サイアザイド系利尿薬(ヒドロクロロチアジドなど)
- 腎臓の「遠位尿細管」という部分に働きかけ、ループ利尿薬より穏やかな利尿作用がある
- 高血圧治療の第一選択薬で、長時間効果が持続するため1日1回の服用で済むという特徴がある
| 商品名 | アクアザイド |
|---|---|
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| 有効成分 | ヒドロクロロチアジド25mg |
| メーカー | Sun Pharma (サンファーマ社) |
| 購入サイト | アクアザイドの購入ページ |
カリウム保持性利尿薬(スピロノラクトン、エプレレノンなど)
- 腎臓の「遠位尿細管・集合管」に働きかけ、水分と塩分を排出しつつも体内のカリウムを維持できるのが特徴
- 利尿効果はやや弱いが、他の利尿剤で起こるカリウム不足を防ぐために、併用されることが多い
| 商品名 | スピロノラクトン | シレクトン |
|---|---|---|
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| 有効成分 | スピロノラクトン100mg | スピロノラクトン25mg/50mg/100mg |
| メーカー | Haupt Pharma(ハウプトファーマ) | Johnlee Pharmaceuticals(ジョンリーファーマ) |
| URL | スピロノラクトンの購入はこちら | シレクトンの購入はこちら |
バソプレシンV2受容体拮抗薬(トルバプタンなど)
- 新しいタイプの利尿剤で、腎臓で水分だけを選択的に排出させるのが特徴(ナトリウムやカリウムに影響しない)
- 腎臓の「集合管」にある特殊な受容体(バソプレシンV2受容体)をブロックして作用する最も強い利尿効果を持った薬
| 商品名 | トルバプタン | ナトライズ |
|---|---|---|
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| 有効成分 | トルバプタン15mg/30mg | トルバプタン15mg/30mg |
| メーカー | Centaur Pharmaceuticals Pvt.Ltd.(ケンタウル・ファーマシューティカルズ) | Sun Pharma(サンファーマ) |
| URL | トルバプタンの購入はこちら | ナトライズの購入はこちら |
利尿効果は強い順から、バソプレシンV2受容体拮抗薬>ループ利尿薬>サイアザイド系利尿薬>カリウム保持性利尿薬になります。
利尿作用以外では、それぞれが独特の特徴を持っているからこそ治療の選択肢が増えるのです。
だからこそ、薬の作用を強くも弱くもしてしまう「飲み合わせ」には十分注意しなければなりません。
ここからは具体的に、どんな飲み合わせに気を付けなければいけないのか、「食べ物」・「飲み物」・「飲み薬」について一つ一つ詳しく解説していきます。
利尿剤と食事の飲み合わせ注意点

利尿剤を服用している方は、日常的に普段食べている食事内容にも気を配る必要があり、何気なく食べているものが実は利尿剤に影響を及ぼす食品かもしれません。
特に気を付けなければならない食事についてできるだけわかりやすく解説します。
塩分(ナトリウム)に関する注意点
- ・ラーメン、うどん、丼ものなどの麺類や汁物、漬物、梅干し、ハムやソーセージなどの加工食品、即席めん、そして寿司など塩分が含まれている食品を多く摂取すると、薬の効果が弱くなる
- ・高血圧や心不全の方は、塩分制限として1日6g未満が推奨
1).日本高血圧学会
カリウムに関する注意点
- ・カリウム保持性利尿薬(スピロノラクトンなど)を使用中の方はカリウムが体内に蓄積しやすい
- ・バナナ、柑橘類、トマト、ジャガイモ、ホウレンソウ、アボカド、ナッツ類などカリウムを多く含む食品を多くとると高カリウム血症になる恐れがある
- ・高カリウム血症が重症化すると不整脈が起こることがある
- ・これらの食品自体が悪いわけではなく、摂取量と使用している利尿剤の種類に応じてバランスよく食べることが大切
水分摂取に関する注意点
- ・利尿剤を飲んでいるにもかかわらず極端に水分を制限すると、脱水や血圧低下を招く恐れがある
- ・心不全や腎不全の重症度によって、医師から具体的な水分制限量が指示される場合はそれに従わなければならない
- ・指示がない場合は、喉が渇いたら適度に水分を取るのが基本で、1日推奨水分量は約1.5L~2Lが目安となる
グレープフルーツに関する注意点
- ・バソプレシンV2受容体拮抗薬(トルバプタン)を服用している方はグレープフルーツ(ジュースも)の摂取により薬の作用が増強するおそれがある
セイヨウオトギリソウ(St. John’s Wort、セントジョーンズワート)含有食品に関する注意点
- ・バソプレシンV2受容体拮抗薬(トルバプタン)を服用している方は健康食品(ハーブの一種)であるセイヨウオトギリソウの摂取により薬の作用が減弱するおそれがある
利尿剤と飲料の注意点

利尿剤を服用している方が日常的に飲む「飲み物」にも、実は注意しなければならないポイントがあります。
脱水症状を避けるためならどんな飲み物でも良いと言う訳ではありません。
注意が必要な飲料を、種類別に紹介していきます。
アルコール(お酒)に関する注意点
- ・アルコール自体にも利尿効果があるため、利尿剤と一緒に飲むと効果が強まり、脱水症状を引き起こす可能性がある
- ・アルコールによる血管拡張作用により、急激な血圧低下を起こすことがある(立ちくらみやめまいに注意)
- ・利尿剤の多くは肝臓で代謝、アルコールも肝臓で処理されるため、併用すると肝臓への負担が増加する恐れがある
- ・サイアザイド系利尿薬とアルコールの併用は起立性低血圧(たちくらみ)を増強することがある
カフェイン含有飲料(コーヒー、紅茶、緑茶など)に関する注意点
- ・カフェインには弱い利尿効果がありますが、通常の摂取量であれば大きな問題にはならない
- ・大量のカフェイン(1日5杯以上など)を摂取すると、尿量が増え利尿薬の効果が薄れる
- ・尿量が増えると、脱水症状を引き起こすおそれがある
- ・カフェインは一時的に血圧を上げることがあるが、習慣的に摂取している人では影響が小さい
2).Coffee Intake and Risk of Hypertension
スポーツドリンクに関する注意点
- ・スポーツドリンクには塩分(ナトリウム)が含まれているため、高血圧や心不全で塩分制限中の方は摂取量に注意
- ・スポーツドリンクにはカリウムも含まれていることがあるため、カリウム保持性利尿薬を使用している方は注意が必要
- ・スポーツドリンクには糖分が多く含まれているため、ループ利尿薬、サイアザイド系利尿薬で血糖値が上がりやすい方は注意が必要
果汁飲料・野菜ジュース
- ・果物や野菜のジュースには、カリウムが豊富に含まれているため、カリウム保持性利尿薬使用中の方は過剰摂取に注意が必要
- ・市販の果汁飲料は糖分が多いものが多く、カロリーオーバーや血糖値上昇の原因になるため、ループ利尿薬、サイアザイド系利尿薬で血糖値が上がりやすい方は注意が必要
牛乳・乳製品飲料
- ・サイアザイド系利尿薬はカルシウム排泄を減らすため、大量の牛乳摂取と組み合わさると、まれに高カルシウム血症を起こす可能性がある
- ・通常の摂取量(1日1~2杯程度)であれば心配ない
3).Drug Interactions with Foods and Beverages
水分摂取の実践的アドバイス
朝は脱水状態になりやすいため、起床時に一杯の水を飲む習慣をつけると良いでしょう。
利尿剤と他の薬の飲み合わせ

利尿剤は食べ物・飲み物だけでなく様々な薬と相互作用を起こす可能性があります。
処方薬だけでなく、市販薬やサプリメントとの飲み合わせにも注意が必要です。
主な注意点を「併用禁忌薬」と「併用注意薬」に分けて紹介します。
①併用禁忌薬
男性における夜間多尿による夜間頻尿治療薬(デスモプレシン酢酸塩水和物(ミニリンメルト))を服用中の患者
- ループ利尿薬・サイアザイド系利尿薬
- ・デスモプレシン酢酸塩水和物を併用すると、低ナトリウム血症(倦怠感、食欲不振、嘔気、嘔吐、痙攣、意識障害等を伴う)が発現するおそれがある
タクロリムス(プログラフ)、エプレレノン(セララ)、エサキセレノン(ミネブロ)又はミトタン(オペプリム)を投与中の患者
- サイアザイド系利尿薬
- ・タクロリムス(免疫抑制剤)、エプレレノン(高血圧症治療薬)、エサキセレノン(高血圧症治療薬)を併用すると、高カリウム血症が発現することがある
- ・ミトタン(抗がん剤)を併用すると、ミトタンの作用を阻害する
②併用注意薬
高血圧治療薬との飲み合わせ
- ループ利尿薬・サイアザイド系利尿薬・カリウム保持性利尿薬
- ・高血圧治療薬との併用により過度に血圧が下がりすぎる可能性がある
- カリウム保持性利尿薬・バソプレシンV2受容体拮抗薬
- ・ACE阻害薬(エナラプリル、リシノプリルなど)やARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬:オルメサルタン、カンデサルタンなど)、レニン阻害薬といった薬との併用は、高カリウム血症になる危険性がある
痛み止め(NSAIDs)との飲み合わせ
- ・NSAIDs(ロキソプロフェン、イブプロフェンなど)と併用すると、利尿剤の効果を弱める可能性がある
- カリウム保持性利尿薬
- ・腎機能障害患者や高齢者にNSAIDsを併用すると、重度の高カリウム血症を誘発することがある
糖尿病治療薬との飲み合わせ
- ループ利尿薬・サイアザイド系利尿薬
- ・インスリン製剤・経口血糖降下薬(メトホルミン、グリメピリドなど)と併用すると、薬の効果が減弱し血糖値を上昇させることがある
- ループ利尿薬
- ・SGLT2阻害薬(エンパグリフロジンなど)と併用すると、利尿作用が増強され脱水のリスクが高まる
抗うつ薬・精神科薬との飲み合わせ
- ループ利尿薬・サイアザイド系利尿薬・カリウム保持性利尿薬
- ・リチウム製剤(炭酸リチウム)との併用で、リチウムの血中濃度が上昇し、リチウム中毒(ふるえ、胃部不快感等)が増強される。
強心薬との飲み合わせ
- ループ利尿薬・サイアザイド系利尿薬・カリウム保持性利尿薬・バソプレシンV2受容体拮抗薬
- ・ジゴキシンと併用すると、ジギタリスの心臓に対する作用を増強し、ジギタリス中毒(初期症状として、食欲不振、吐き気、下痢などの消化器症状)を起こすおそれがある
- カリウム保持性利尿薬
- ・ジギトキシンとの併用で、ジギトキシンの作用を強めたり弱めたりする恐れがある
血圧を上昇させる薬(昇圧アミン)との飲み合わせ
- ループ利尿薬・サイアザイド系利尿薬
- ・昇圧剤(アドレナリン・ノルアドレナリン)との併用で、昇圧薬の効果を減弱する恐れがある
抗生物質との飲み合わせ
- ループ利尿薬
- ・アミノグリコシド系抗生物質(ゲンタマイシン硫酸塩など)と併用すると、聴覚障害(音が聞こえない状態)・腎毒性(腎臓が正常に機能しなくなる)が増強する恐れがある
ステロイド製剤との飲み合わせ
- ループ利尿薬・サイアザイド系利尿薬
- ・糖質副腎皮質ホルモン剤(ヒドロコルチゾン)との併用で、低カリウム血症(筋力低下、筋肉のけいれんやひきつり、場合によっては麻痺、不整脈)が発現するおそれがある
市販薬・サプリメントとの飲み合わせ
- ・カリウム含有サプリメントとの併用は、高カリウム血症のリスクがある
- ・ビタミンD・カルシウムサプリメントとの併用は、高カルシウム血症(初期症状としては、一般に便秘、吐き気、嘔吐、腹痛、食欲不振など)のリスクがある
薬の飲み合わせに関する実践的なアドバイス
①お薬手帳の活用
すべての処方薬、市販薬、サプリメントを記録して、医療機関を受診する際に必ず見せましょう。
②医師・薬剤師への相談
新しい薬を始める前に、必ず医師や薬剤師に利尿剤を服用していることを伝えてください。
③自己判断で中止しない
副作用が心配でも、自己判断で利尿剤を中止するのは危険です。
④定期検査の重要性
利尿剤を服用している場合、定期的な血液検査で電解質バランスをチェックすることが重要です。
まとめ
利尿剤は「余分な水分や塩分を尿と一緒に出す薬」で、むくみや高血圧、心臓の負担を軽くするのに役立ちます。
この薬を飲んでいる方が日常生活で気をつけるべきことをおさらいしましょう。
まず食事では、塩分を控えめにすることが大切です。
塩辛いものを食べすぎると、薬が頑張って塩を出そうとしても追いつかなくなります。
カップ麺やお惣菜など加工食品にも塩分がたくさん含まれているので注意しましょう。
カリウムについては、飲んでいる利尿剤の種類によって気をつけ方が変わります。
「カリウム保持性」の薬を飲んでいる方は、バナナやトマトなどカリウムの多い食品の食べ過ぎに注意が必要です。
それ以外の利尿剤なら、むしろ適度に摂ることが大切です。
飲み物では、お酒は利尿作用を強めるので控えめにしましょう。
コーヒーなどのカフェインは1日2~3杯程度なら問題ありません。
水分は医師から制限を指示されていなければ、喉が渇いたらこまめに飲むようにしましょう。
他の薬との組み合わせにも注意が必要です。
特に高血圧の薬や痛み止め、糖尿病の薬を飲んでいる方は飲み合わせに注意しましょう。
市販薬やサプリメントを使う時も、医師や薬剤師に相談してから服用すると安心ですね。
利尿剤は上手に使えば体の負担を減らす心強い味方です。
定期的な検査を受けながら、医師とよく相談して、安全に且つ効果的に活用していきましょう。
何か気になることがあったときは、自己判断しないことが大切です。
出典
1).日本高血圧学会
2).Coffee Intake and Risk of Hypertension
ラシックス錠10mg/20mg/40mg添付文書
フルイトラン錠1mg/2mg添付文書
アルダクトンA錠25mg/50mg添付文書
サムスカOD錠7.5mg/15mg/30mg添付文書
3).Drug Interactions with Foods and Beverages
ミニリンメルトOD錠60μg /120μg /240μg添付文書
MSDマニュアル家庭版(高カリウム血症)












