硫酸マグネシウム水和物

成分名

硫酸マグネシウム水和物

適応症状

便秘症/胆石症/低マグネシウム血症/頻脈性不整脈/切迫早産における子宮収縮の抑制/重症妊娠高血圧症候群における子癇の発症抑制及び治療など

簡易説明

硫酸マグネシウム水和物は、切迫早産と診断されて、おなかの張りを抑えるために使われる薬で、切迫早産における子宮収縮の抑制や重症妊娠高血圧症候群における子癇の発症抑制及び治療に用いられます。
ただ、一般に切迫早産と診断されると、まずは塩酸リトドリンが治療に用いられ、それでもなおおなかの張りが抑えられなかったり、塩酸リトドリンの副作用が強い場合に限って本剤が用いられます。
その他、便秘症、胆石症、低マグネシウム血症にも用いられます。

処方可能な診療科目

内科/消化器科/胃腸科/循環器科/産婦人科など

健康保険の適応

健康保険適応

病院で処方してもらう時の費用目安

診察料などの目安 :約1000円~5000円程度
薬代1瓶あたりの目安:40mL約1469円/100mL約1833円
薬代1gあたりの目安:1g約1円
※病院によって差が有ります。初診料・診察料・検査料などが必要です。

厚生労働省による認可、または発売年月日

【マグセント注100mL)】
販売開始年月 : 2006年6月

【マグセント注シリンジ40mL】
販売開始年月 : 2011年11月

【硫酸マグネシウム「東海」】
薬価基準収載年月 : 1955年9月
販売開始年月 : 1955年9月
再評価結果公表年月 : 1986年12月

【硫酸マグネシウム(山善)】
薬価基準収載年月 : 1951年2月
販売開始年月 : 1951年2月
再評価結果公表年月 : 1986年12月


【硫酸マグネシウム「トミタ」】
薬価基準収載年月 : 1985年7月
販売開始年月 : 1985年9月
再評価結果公表年月 : 1986年12月

【硫酸マグネシウム「NikP」】
販売開始年月 : 1986年1月

国内のジェネリック認可

なし

関連製品(先発薬)

【製薬メーカー:あすか製薬】
マグセント注100mL)
マグセント注シリンジ40mL

【東海製薬】
硫酸マグネシウム「東海」

【山善製薬】
硫酸マグネシウム(山善)

【富田製薬】
硫酸マグネシウム「トミタ」

【日医工】
硫酸マグネシウム「NikP」

関連製品(ジェネリック)

なし

海外での使用実績

・子癇では硫酸マグネシウム水和物は、1925年には子癇発作改善薬として静脈内投与されていたとされ、2012年11月の時点で、本薬の注射剤がアメリカ、ドイツ、フランス、カナダ、オーストラリアにおいて子癇の予防及び治療の効能.効果で承認されています。
また、子癇は重症妊娠高血圧症候群に伴う痙攣発作であり、適正な管理が行われれば後遺症を残さずに回復しますが、治療が遅れた場合や、重症化した場合は、脳組織に梗塞病変や出血性梗塞をもたらすこともあり、欧米各国では本薬による子癇の予防効果が確認されており、アメリカ、ドイツ、フランス、カナダ及びオーストラリアにおいて、本薬は子癇の予防の効能・効果でも承認されています。

効果・作用

硫酸マグネシウム水和物は、切迫早産と診断された際に用いられる薬剤で、おなかの張りを抑えるはたらきがあるほか、便秘症、胆石症、低マグネシウム血症にも用いられます。
子癇では妊娠37週以前におなかの張りが頻繁にあらわれたり、子宮頸管が短くなったりすることで、切迫早産として入院となることがあります。
切迫早産として入院した際に、硫酸マグネシウム水和物を用いることで、おなかの張りを抑えることから、妊娠期間をできるだけ長くするはたらきがあり、早産になることを予防します。
本剤は切迫早産と診断されて、おなかの張りを抑えるために使われる薬剤ですが、一般に切迫早産と診断されると、まずは塩酸リトドリンが治療のために用いられます。
塩酸リトドリンを内服しても切迫早産の症状が改善しない場合は、塩酸リトドリンを点滴をすることになり、それでもなおおなかの張りが抑えられなかったり、塩酸リトドリンの副作用が強い場合に限って本剤が用いられます。
ただし、塩酸リトドリンと硫酸マグネシウム水和物とも、長期間投与することへの効果や安全性は証明されていません。
点滴で本剤を投与する場合には入院治療が必要となます。
本剤は正確な量を投与する必要があるため、持続注入ポンプが使われることから、母子共に管理できる十分な医療施設で見てもらうことが望ましいです。
便秘症では、本薬を服用することで、腸内の浸透圧が高まり、腸管内に水分が移動することで、便が柔らかくなり排便を促します。
胆石症では、25%から50%溶液20mLから50mLを十二指腸ゾンデで注入して治療に用います。
低マグネシウム血症では、本薬を静脈内投与または筋肉内投与して血清マグネシウム濃度を頻回にモニタリングしながら正常範囲内の血清マグネシウム濃度をコントロールすることで治療を行います。

使用方法

[切迫早産における子宮収縮の抑制]
・初回量として、硫酸マグネシウム水和物として4g(40mL)を20分以上かけて静脈内投与した後に毎時1g(10mL)より持続静脈内投与を行います。なお、子宮収縮が抑制されない場合は毎時0.5g(5mL)ずつ増量してください。最大投与量は毎時2g(20mL)までとしてください。子宮収縮抑制後は症状を観察しながら漸次減量して、子宮収縮の再発がみられないことが確認された場合には投薬を中止してください。また、本剤は持続注入ポンプを用いて投与してください。

[重症妊娠高血圧症候群における子癇の発症抑制及び治療]
・初回量として、硫酸マグネシウム水和物として4g(40mL)を20分以上かけて静脈内投与した後に、毎時1g(10mL)より持続静脈内投与を行ってください。症状に応じて毎時0.5g(5mL)ずつ増量して、最大投与量は毎時2g(20mL)までとします。本剤は初回量投与の場合を除いて、持続注入ポンプを用いて投与してください。

[便秘症]
・硫酸マグネシウム水和物として多量の水とともに1回5gから15gを経口投与します。

[胆石症]
・25%から50%溶液20mLから50mLを十二指腸ゾンデで注入します。

[低マグネシウム血症]
・硫酸マグネシウム水和物として、通常成人1日2gから4gを数回に分けて筋肉内注射あるいは極めて徐々に静脈内注射します。血中マグネシウム濃度が正常になるまで継続します。なお、年齢や症状により適宜増減します。

副作用

重大な副作用
▼マグネシウム中毒:眼瞼下垂、膝蓋腱反射の消失、筋緊張低下、心電図異常(房室ブロック、伝導障害)、呼吸数低下、呼吸困難等(いずれも頻度不明)
マグネシウム中毒:眼瞼下垂、膝蓋腱反射の消失、筋緊張低下、心電図異常(房室ブロック、伝導障害)、呼吸数低下、呼吸困難等があらわれることがあります。観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止して、適切な処置を行ってください。

▼心(肺)停止、呼吸停止、呼吸不全(いずれも頻度不明)
心(肺)停止、呼吸停止、呼吸不全があらわれることがあります。高用量の硫酸マグネシウム水和物急速投与により発現した報告があることから、投与に際しては用法及び用量を遵守してください。観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止して、適切な処置を行ってください。

▼横紋筋融解症(頻度不明)
横紋筋融解症があらわれることがあります。観察を十分に行い、筋肉痛、脱力感、CK上昇、血中及び尿中ミオグロビン上昇があらわれた場合には直ちに投与を中止して、適切な処置を行ってください。

▼肺水腫(頻度不明)
呼吸困難、胸部圧迫感、頻脈等に十分に注意してください。観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止して、適切な処置を行ってください。

▼イレウス(腸管麻痺)(頻度不明)
嘔吐、腹部膨満等の症状に十分に注意してください。観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止して、適切な処置を行ってください。

その他の副作用
肝機能障害/AST上昇/ALT上昇/無力症/頭痛/視力異常/調節障害/複視/反射減退/知覚減退/しびれ/浮動性めまい/振戦/高マグネシウム血症 /敏症/中毒疹/血管痛/凝血異常/うっ血性心不全/肝不全/急性腎不全/意識障害/代謝異常/低カルシウム血症/高カリウム血症/電解質異常/乳房うっ滞/乳汁漏出/外陰浮腫/尿崩症/乏尿/踵骨骨折

※その他、異変を感じた場合は直ぐに医師の診察を受け指示に従ってください。

使用に注意が必要な方
使用出来ない方

使用が出来ない方
■重症筋無力症の患者
重症筋無力症の患者は、アセチルコリン放出抑制により骨格筋弛緩の症状があらわれることがあるため使用できません。投与しないでください。

■心ブロックの既往歴のある患者
心ブロックの既往歴のある患者は、洞房結節インパルス生成速度の遅延と伝導時間の持続を助長するおそれがあることから使用できません。投与しないでください。

■低張性脱水症の患者
低張性脱水症の患者は、低張性脱水症が悪化するおそれがあることから使用できません。投与しないでください。

使用に注意が必要な方
■高マグネシウム血症の患者
高マグネシウム血症の患者は、マグネシウム中毒の症状があらわれることがあります。観察を十分に行ったうえで、このような症状があらわれた場合には、投与を中止してください。やむを得ず投与を続ける必要がある場合には慎重に投与してください。

■低カルシウム血症の患者
低カルシウム血症の患者は、低カルシウム血症を助長するおそれがあります。観察を十分に行ったうえで、このような症状があらわれた場合には、投与を中止してください。やむを得ず投与を続ける必要がある場合には慎重に投与してください。

■カリウム欠乏傾向のある患者
カリウム欠乏傾向のある患者は、低カリウム血症が誘発されるおそれがあります。観察を十分に行ったうえで、このような症状があらわれた場合には、投与を中止してください。やむを得ず投与を続ける必要がある場合には慎重に投与してください。

■糖尿病の患者
糖尿病の患者は、ブドウ糖を含有しています。観察を十分に行ったうえで、このような症状があらわれた場合には、投与を中止してください。やむを得ず投与を続ける必要がある場合には慎重に投与してください。

■尿崩症の患者
尿崩症の患者は、水、電解質異常の悪化又は誘発されるおそれがあります。観察を十分に行ったうえで、このような症状があらわれた場合には、投与を中止してください。やむを得ず投与を続ける必要がある場合には慎重に投与してください。

■貧血症の患者
貧血症の患者は、貧血症を助長するおそれがあります。観察を十分に行ったうえで、このような症状があらわれた場合には、投与を中止してください。やむを得ず投与を続ける必要がある場合には慎重に投与してください。

■心疾患のある患者
心疾患のある患者は、洞房結節インパルス生成速度の遅延と伝導時間の持続のおそれがあります。観察を十分に行ったうえで、このような症状があらわれた場合には、投与を中止してください。やむを得ず投与を続ける必要がある場合には慎重に投与してください。

■腎機能障害患者
腎機能障害患者は、マグネシウム排泄障害による高マグネシウム血症を惹起するおそれがあります。観察を十分に行ったうえで、このような症状があらわれた場合には、投与を中止してください。やむを得ず投与を続ける必要がある場合には慎重に投与してください。

■妊婦
マグネシウムイオンは容易に胎盤を通過します。本剤を分娩前24時間以内に投与した場合は、新生児に呼吸障害、筋緊張低下、腸管麻痺等の高マグネシウム血症を引き起こす場合があるため、観察を十分に行い、慎重に投与してください。

■授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮して、授乳の継続又は中止を検討してください。

■高齢者
高齢者は一般に腎機能が低下していることから、高い血中濃度が持続するおそれがあります。慎重に投与してください。

上記にあてはまる方は、硫酸マグネシウム水和物を使用する事が出来ない可能性があります。
硫酸マグネシウム水和物を使用する前に、医師又は薬剤師に使用しても問題ないか必ず確認をして下さい。

併用禁忌薬

併用注意薬
・スルファミン剤
・競合性(ツボクラリン等)及び脱分極性(サクシニルコリン等)筋弛緩剤
・子宮収縮抑制剤
 リトドリン塩酸塩
・子宮収縮抑制剤
 リトドリン塩酸塩(注射剤)
・カルシウム拮抗剤(ニフェジピン)
・カルシウム塩
・バルビツレート、催眠剤、麻酔剤
・アミノグリコシド系抗生剤

上記を使用している方は、硫酸マグネシウム水和物を使用する事が出来ない可能性があります。
硫酸マグネシウム水和物を使用する前に、医師又は薬剤師に使用しても問題ないか必ず確認をして下さい。

併用禁忌薬
なし

併用禁忌薬がないからといって、その他の医薬品と併用するのは危険です
現在、薬を服用している場合は、併用可能かどうか必ず医師に相談してください。

よくある質問
Q:硫酸マグネシウム水和物はおなかの中の赤ちゃんに影響はありませんか?

A:硫酸マグネシウム水和物は胎盤を通過し、おなかの中の赤ちゃんに移行します。胎動の低下などが見られることがあるため、入院中は胎児心拍モニタリングするなど、医師の指示に従ってください。

Q:硫酸マグネシウム水和物を使ったことで生まれた赤ちゃんに影響はありませんか?

A:新生児への影響については、高マグネシウム血症になることがあります。しかし、出生後48時間以内に消失するとされています。

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医薬品を使用し、体調不良が現れた場合、我慢せずに直ちに医師の診察を受け、指示に従って下さい。