成分名 |
リゾチーム塩酸塩 |
適応症状 |
結膜炎 |
簡易説明 |
リゾチームは唾液、肺、腸管、白血球、涙、鼻汁、痰などに比較的高濃度に存在しる局所の殺菌作用のある酵素です。1922年にFlemingによって鼻汁中の溶菌性酵素として発見され、1937年にAbrahamとRobinsonによって卵白から結晶状に分離されました。リゾチームは自然界に広く存在していますが、鶏卵白のリゾチームは含有量が極めて高いことが知られています。
日本国内では主に経口の去痰薬などで使用されていましたが、2016年に通知された再評価結果で「現時点におけるリゾチーム塩酸塩含有経口剤の医療上の有用性を確認することはできなかった」との結果となり、当時の販売会社が製造を中止しました。
リゾチーム塩酸塩を主成分とする点眼薬も販売中止となり、ムコゾーム点眼液0.5%(以下、本剤)も2023年3月31日をもって経過措置期間が終了しました(販売中止)。
リゾチーム塩酸塩は一般用医薬品の有効成分として多くの薬に配合されていましたが、この再評価結果を受け、一般用医薬品でも鼻炎用内服薬の新たな承認を行わないことになりました。既に承認を受けている薬に関しても可能な限り速やかにリゾチーム塩酸塩の削除が求められています。なお2023年5月現在、リゾチーム塩酸塩を含む一般用医薬品は28製品(点眼薬、トローチ、咳止め、かぜ薬、鼻炎薬等)が販売されています。
リゾチーム塩酸塩を含む一般用点眼剤は下記2製品です。
(両剤共通)
リゾチーム塩酸塩含有量(100mL中)500mgの第二類医薬品。
適応症:目のかゆみ、結膜充血、眼病予防、目の疲れ、目のかすみ、眼瞼炎、紫外線その他の光線による眼炎、ハードコンタクトレンズを装着いているときの不快感
・アイルビーAL【製薬メーカー:日邦薬品工業株式会社】
他含有成分:塩酸テトラヒドロゾリン、アラントイン、クロルフェニラミンマレイン酸塩
・スマイル40メディクリア【製薬メーカー:ライオン株式会社】
他含有成分:塩酸テトラヒドロゾリン、クロルフェニラミンマレイン酸塩、レチノールパルミチン酸エステル、酢酸d-a-トコフェロール、ピリドキシン塩酸塩 |
処方可能な診療科目 |
眼科 ※経過措置期間終了のため、処方可能な診療科はありません。 |
健康保険の適応 |
慢性結膜炎 ※経過措置期間終了のため、健康保険の適応はありません。 |
病院で処方してもらう時の費用目安 |
経過措置期間終了のため、薬価はありません。
※経過措置期間終了時点の薬価
1mLあたりの薬価:19.10円
点眼液1本(5mL)あたりの薬価:97.50円 |
厚生労働省による認可、または発売年月日 |
発売年月日:1984年8月1日 |
国内のジェネリック認可 |
あり |
関連製品(先発薬) |
なし |
関連製品(ジェネリック) |
ムコゾーム点眼液0.5%【製薬メーカー:参天製薬株式会社】 |
効果・作用 |
本剤は結膜に働き、炎症時の組織修復過程を促進する働きがあります。この薬理作用はウサギを用た動物実験で、同種同効の薬と同程度の角膜損傷治癒作用が確認されました。本剤は後発医薬品のため、臨床試験は実施していません。なお、先発品は販売中止となっているため、臨床試験情報がありません。
リゾチーム塩酸塩には抗ウィルス作用、抗感染作用、抗生物質の効力増強作用、腸内細菌叢の正常化作用、止血作用、血液凝固ならびに抗ヘパリン作用、抗炎症作用、組織再生・瘢痕形成促進作用などがあるとされています。リゾチーム塩酸塩は自然界にも多く存在し、ヒトでは涙、唾液、鼻汁など様々な分泌物に含まれています。これらの分泌物が生体を防御する働きの一部をリゾチーム塩酸塩が担っています。
抗炎症作用や組織再生・瘢痕形成促進作用は動物実験で確認されていますが、その作用機序は明確にはなっていません。抗炎症作用は酵素の働きとは無関係との考え方もあり、組織再生・瘢痕形成促進作用は凝固物の組織化促進、滲出性炎症反応の抑制、繊維細胞の増殖などが考えられています。
なお、抗ウィルス作用、抗感染作用なども確認されており、この作用から卵白リゾチームは食品添加物として各種食品の日持ち向上や微生物制御などに使用されています。
リゾチーム塩酸塩は鶏卵白を原料とするため、卵アレルギーの方は注意が必要です(使用に注意が必要な方・使用出来ない方参照)。
リゾチーム塩酸塩の再評価
呼吸器疾患患者を対象とした製造販売後臨床試験2試験でリゾチーム塩酸塩製剤の有効性・安全性を検証しました。
1.COPD(慢性閉塞性肺疾患)患者を対象とした増悪抑制に関する市販後臨床試験
COPDの標準治療(気管支拡張剤及び吸入ステロイド剤のいずれか又は療法)にリゾチーム塩酸塩を上乗せした群(本剤群:201例)と上乗せしなかった群(プラセボ群:204例)との比較試験(52週後の有効性、安全性を評価)
COPD増悪頻度:本剤群1.4±1.5、プラセボ群:1.2±1.4(有意差なし)
副作用発現率:本剤群:1.5%(3/202例)、プラセボ群:2.5%(5/204例)
2.呼吸器疾患患者を対象とした製造販売後臨床試験
喀痰症状のあるCOPD患者又は気管支喘息患者に本剤及びプラセボを投与するクロスオーバー(本剤とプラセボを交互に投与する)試験(28日周期で各2回投与)
有効性:努力性肺活量、1秒量、予測1秒量に対する%、全気道抵抗の指標、中枢気道抵抗の指標、末梢気道抵抗の指標、呼気中一酸化窒素濃度、COPDアセスメントテスト等全ての項目で有意差なし
副作用:なし
総合評価
再評価のために新たに実施された製造販売後臨床試験2試験において、リゾチーム塩酸塩含有経口剤の臨床的有用性は示されなかった。したがって、現時点におけるリゾチーム塩酸塩含有経口剤の医療上の有用性を確認することはできませんでした。 |
使用方法 |
1日1~2滴を1日数回点眼します。 |
副作用 |
【重大な副作用】
ショック、アナフィラキシー:蕁麻疹、掻痒、チアノーゼ、意識低下、血圧低下、全身紅斑、発汗、眼球結膜浮腫等があらわれた場合は投与を中止し、適切な処置を行います。
(1992年4月以降の国内発現件数)※2015年3月末現在
・ショック:0件
・アナフィラキシー:1件
【その他の副作用(1992年4月以降の国内発現件数)※2015年3月末現在】
過敏症:眼瞼発赤(0件)・腫脹(3件)
眼:結膜充血(3件)、刺激感(0件)、掻痒感(0件)
※その他、異変を感じた場合は直ぐに医師の診察を受け指示に従ってください。 |
使用に注意が必要な方 使用出来ない方 |
使用が出来ない方 ■卵白アレルギーの方
アナフィラキシーショックを含む過敏症の報告があります。
■リゾチーム塩酸塩及び、リゾチーム塩酸塩を配合した医薬品の添加物に、アレルギーをお持ちの方
リゾチーム塩酸塩及び下記、添加物にアレルギーをお持ちの方、ムコゾームはアレルギー反応を起こしてしまう為、使用出来ません。
▼ムコゾームの有効成分
リゾチーム塩酸塩
▼ムコゾームの添加物
塩化カリウム、塩化カルシウム水和物、塩化ナトリウム、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、pH調整剤
使用に注意が必要な方 ・アレルギー性素因(アトピー性皮膚炎、気管支喘息、薬剤アレルギー、食物アレルギー等)のある方:各種アレルゲンに対して感作を受けやすく、アナフィラキシー様反応をおこすおそれがあります。
・両親兄弟等がアレルギー症状に罹患したことのある方:アレルギー性素因が遺伝し、アレルギー症状をおこすおそれがあります。
上記にあてはまる方は、リゾチーム塩酸塩を使用する事が出来ない可能性があります。 リゾチーム塩酸塩を使用する前に、医師又は薬剤師に使用しても問題ないか必ず確認をして下さい。 |
併用禁忌薬 |
併用禁忌薬 なし
併用禁忌薬がないからといって、その他の医薬品と併用するのは危険です 現在、薬を服用している場合は、併用可能かどうか必ず医師に相談してください。 |
リゾチーム塩酸塩に関する よくある質問 |
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参考元一覧 |
リゾチーム塩酸塩(ムコゾーム 添付文書、インタビューフォーム) 【PMDA 医療用医薬品 情報検索】
リゾチーム(アイルビーAL、スマイル40メディクリア) 【PMDA 一般用医薬品・要指導医薬品 情報検索】
審議結果報告書 【PMDA 薬効再評価】
リゾチーム塩酸塩を含有する一般用医薬品の取扱い等について 【厚生労働省 医薬・生活衛生局審査管理課長通知(平成27年12月11日)】
総説 卵白リゾチームの化学とその利用 【松岡 芳隆 栄養と食料 1971;.24(6):313-316.】 |
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