アトロピン硫酸塩水和物

成分名

アトロピン硫酸塩水和物

適応症状

迷走神経性徐脈、そして迷走神経性房室伝導障害、そのほか徐脈、房室伝導障害、心肺蘇生、麻酔前投薬:迷走神経遮断作用、分泌抑制作用、有機リン系殺虫剤・副交感神経興奮剤の中毒、胃・十二指腸潰瘍における分泌、運動亢進、胃腸の痙攣性疼痛、胆管・尿管の疝痛、痙攣性便秘
・非脱分極性筋弛緩薬の拮抗:抗コリンエステラーゼ薬のムスカリン作用の拮抗※注射薬のみ
・気管支痙攣 ※本邦では適応外
・夜尿症、非薬物性パーキンソニズム ※経口薬のみ
・ECT(電気的痙攣療法)の前投与 ※注射薬のみ
・眼科用剤として診断や治療を目的とする散瞳と調節麻痺 ※点眼薬、眼軟膏のみ

簡易説明

アトロピンは胃腸管の緊張を低下させて、運動機能を抑えます。
そして心筋に作用して心拍数を増やします。更には唾液、胃液、気管支粘膜、膵液等の分泌を抑えてくれます。
一般的に胃・十二指腸潰瘍における、分泌、運動亢進、胃腸の痙攣性疼痛、痙攣性便秘、胆管・尿管の疝痛、迷走神経性徐脈、そして迷走神経性房室伝導障害、そのほか徐脈、房室伝導障害、麻酔前投薬、有機燐系殺虫剤・副交感神経興奮剤の中毒、ECT(電気けいれん療法)の前投与に使用されています。

処方可能な診療科目

眼科、内科、胃腸内科、循環器科、泌尿器科

健康保険の適応

保険適応あり

病院で処方してもらう時の費用目安

診察料などの目安:約2,500円~10,000円
アトロピン硫酸塩(ニプロESファーマ)アトロピン硫酸塩注0.5mg「タナベ」95円/管
病院によって差が有り薬代の他に、初診料・診察料・検査料などが必要になる。

厚生労働省による認可、または発売年月日

1947年11月販売開始

国内のジェネリック認可

あり

関連製品(先発薬)

アトロピン硫酸塩(ニプロESファーマ) アトロピン硫酸塩注0.5mg「タナベ」
アトロピン硫酸塩(扶桑薬品工業) アトロピン硫酸塩注0.5mg「フソー」
アトロピン硫酸塩(扶桑薬品工業) アトロピン硫酸塩注0.5mg「フソー」
硫酸アトロピン(マイランEPD) 硫酸アトロピン「ホエイ」
アトロピン(ロートニッテン) 日点アトロピン点眼液1%
リュウアト(参天製薬) リュウアト1%眼軟膏

関連製品(ジェネリック)

アトロピン注0.05%シリンジ「テルモ」143円/筒

効果・作用

アトロピン硫酸塩は副交感神経の機能に関与したアセチルコリンという物質の機能を抑制します。アセチルコリンは、ムスカリン受容体やニコチン受容体に結合する事で、その働きを示します。アトロピン硫酸塩は、アセチルコリンがムスカリン受容体に結合する事を阻害します。それによって副交感神経の機能を抑制してくれます。これ作用を抗コリン作用と言います。
◆作用機序
アトロピン硫酸塩は抗コリン作用(抗ムスカリン作用)による副交感神経遮断剤になります。コリン作動性受容体は、ムスカリン受容体とニコチン受容体に大きく別けられるが、アトロピン硫酸塩は、ムスカリン受容体でアセチルコリンと競合的に対立します。
即ち神経伝達物質として副交感神経節後線維から放出されたアセチルコリンと、奏効器官の受容体において争い、興奮伝達を遮断します。
アトロピン硫酸塩の効果は、特に心筋・平滑筋・外分泌腺を支配しているムスカリン受容体に選択性が高いです。自律神経節前線維、運動神経線維での興奮伝達は遮断されません。
◆薬効
・心臓に対する効果・・洞結節や房室結節で、迷走神経抑制作用は房室伝導を加速して、心拍数を増やす効果がある。相対的に少量での投与の場合は、末梢の弱いムスカリン作用によって心拍数の一過性の減少(延髄迷走神経核の興奮に起因する徐脈)が現れる事があります。
・消化器系に対する効果・・消化管の緊張と運動を抑さえて,消化液の分泌を抑さえる。胃液の分泌量は減るが、胃酸度はあまり変わらない。膵液、胆汁分泌、腸液の分泌はほぼ影響が無いです。
・泌尿器、子宮に対する効果・・膀胱の収縮を抑えるが、膀胱括約筋の収縮は強くなるので、排尿困難を発症する事があります。子宮における副交感神経支配は弱い。抗コリン作用薬はほぼ作用しません。
・呼吸器に対する効果・・気道の分泌物抑制と気管支拡張を発症する。吸入麻酔時の気管の分泌の抑制の用途で用いられます。
・外分泌腺に対する効果・・唾液、気管支粘膜、胃液、膵液、涙液、汗腺などの分泌を抑えます。
・眼に対する効果・・瞳孔括約筋弛緩による散瞳や毛様筋弛緩による遠視性調節麻痺が起こります。
・中枢神経系に対する効果・・中枢神経系では、治療量で延髄・大脳諸中枢に対して緩らげる興奮作用が現れます。中枢性迷走神経興奮、呼吸中枢刺激作用によって、呼吸数や深さも増大させます。

使用方法

アトロピン硫酸塩水和物として、成人0.5mg(1管)を皮下もしくは筋肉内に注射します。時には静脈内に注射することも可能です。※年齢、症状により適宜増減します。

有機燐系殺虫剤中毒の際は症状によって次のように使用します。

・軽症
アトロピン硫酸塩水和物として0.5~1mg(1~2管)を皮下注射します。
もしくは0.5~1mgを経口投与します。

・中等症
アトロピン硫酸塩水和物として1~2mg(2~4管)を皮下や筋肉内もしくは静脈内に注射します。必要ならそのあと20~30分毎、繰り返し注射をします。

・重症
一回目アトロピン硫酸塩水和物として2~4mg(4~8管)を静脈内に注射します。
そのあと症状によって、アトロピン飽和が認められるまで繰り返し注射を行います。

ECTの前投与の際では、アトロピン硫酸塩水和物として成人1回0.5mg(1管)を皮下や筋肉内もしくは静脈内注射をします。※年齢、症状により適宜増減します。

副作用

アトロピン硫酸塩は使用成績調査などの副作用発現頻度が明確となるような調査を実施していません。

重大な副作用
ショック、アナフィラキシー(頻度不明)が発症する場合があるので、十分な観察をおこない、頻脈、発汗、全身潮紅や顔面むくみなどが発症した際は、使用を中止して、適切な処置をおこなうようにしましょう。

その他の副作用
頻度不明
眼・・散瞳、視調節障害、緑内障
消化器・・口渇、悪心、嘔吐、嚥下障害、便秘
泌尿器・・排尿障害
精神神経系手・・頭痛、頭重感、記銘障害
呼吸・循環器・・心悸亢進、呼吸障害
他、過敏症、発疹、顔面潮紅

※その他、異変を感じた場合は直ぐに医師の診察を受け指示に従ってください。

使用に注意が必要な方
使用出来ない方

使用が出来ない方
■アトロピン硫酸塩(成分名)を配合した医薬品の添加物に、アレルギーをお持ちの方
下記、添加物にアレルギーをお持ちの方アトロピン硫酸塩(アトロピン硫酸塩注0.5mg)は、アレルギー反応を起こしてしまう為、服用できません。

▼アトロピン硫酸塩注0.5mgの有効成分
アトロピン硫酸塩
▼代表薬の添加物
・無色澄明の水性注射液です、添加物として塩化ナトリウム、pH調節剤を含みます。

使用に注意が必要な方
◆慎重投与
・閉塞隅角緑内障の患者【抗コリン作用によって眼圧が上がり、症状を悪化させる可能性があります。】
・前立腺肥大による排尿障害の患者【抗コリン作用による膀胱平滑筋の弛緩や膀胱括約筋の緊張によって、排尿困難が悪化する可能性があります。】
麻痺性イレウスである患者【コリン作用によって消化管運動を抑さえて、症状が悪化してしまう可能性があります。】

重要な基本的注意

視調節障害や散瞳等を発症する可能性がありますので、投与中の方には、自動車の運転など、危険を伴ってしまう機械の操作を禁止させる等の注意が必要です。

・高齢者
基本的に高齢者は、抗コリン作用による緑内障、口渇、排尿困難、記銘障害、便秘などが発現しやすい為、慎重投与になります。

・妊婦、産婦、授乳婦
妊娠中の婦人には使用注意【胎児に頻脈などの症状が起きる可能性があります。】
授乳中の方には使用注意【新生児に頻脈などの症状が起きる可能性があります。更には乳汁分泌が抑えられる場合があります。】

・小児
小児などに対する安全性は確立されていません。(使用経験が少ないため。)

上記にあてはまる方は、アトロピン硫酸塩水和物を使用する事が出来ない可能性があります。
アトロピン硫酸塩水和物を使用する前に、医師又は薬剤師に使用しても問題ないか必ず確認をして下さい。

併用禁忌薬

併用注意薬
抗コリン作用を有する薬剤(三環系抗うつ剤・フェノチアジン系薬剤)
イソニアジド、抗ヒスタミン剤、抗コリン作用(口渇、便秘、尿閉、麻痺性イレウス、など)が強まってしまう事があります。
併用する際、定期的に臨床症状を観察してその分量に注意します。相加的に作用(抗コリン作用)を強めてしまいます。
MAO阻害剤、本剤の作用が強まってしまう可能性があります。異常を感じた際は、量を減らす等の処置をおこないます。MAO阻害剤は抗コリン作用を強めてしまいます。
ジギタリス製剤(ジゴキシンなど)ジギタリス中毒(嘔気、嘔吐、徐脈、不整脈、眩暈など)が発症してしまう可能性があります。定期的にジギタリス中毒の有無や心電図での検査をおこないます。必要であればジギタリス製剤の血中濃度を測って、異常あった際は、ジギタリス製剤を減らす、または使用を辞めます。ジギタリス製剤の血中濃度が上がります。
プラリドキシムヨウ化メチル(PAM)を混ぜて注入する事により本剤の効果が遅延してしまう事あります。
併用する際、混注ではなく定期的に臨床症状を観察して用量に気を付けます。
プラリドキシムヨウ化メチルの局所血管収縮作用がアトロピン硫酸塩の組織移行を遅らせます。

上記を使用している方は、アトロピン硫酸塩水和物を使用する事が出来ない可能性があります。
アトロピン硫酸塩水和物を使用する前に、医師又は薬剤師に使用しても問題ないか必ず確認をして下さい。

併用禁忌薬
該当なし

併用禁忌薬がないからといって、その他の医薬品と併用するのは危険です
現在、薬を服用している場合は、併用可能かどうか必ず医師に相談してください。

よくある質問
小児に対して使用する点眼液の分量を教えてください。

添付文書にはアトロピン点眼液1%は小児には慎重投与となっていて、「小児には、0.25%液を使うことが望ましい。」と記載されています。

0.25%製剤が存在しないが、なぜそのような分量と指示されているのですか?

副作用軽減の目的で記載しています、濃度に関しては医療機関により変動があり0.25%液を使うことが望ましい強い根拠はありません。

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