D-ソルビトール

成分名

D-ソルビトール

適応症状

栄養補給

簡易説明

ソルビトールは1872年にフランスのBoussingaultによってナナカマドの一種であるSorbus aucuparia L.(セイヨウナナカマド)から結晶として単離された自然界に広く分布する糖アルコールです。1976年にはGreightonがブドウ糖から合成することに成功し、現在では、医薬品以外にも食品添加物や原料として使用されています。
医療用医薬品としてはEllis、Krantsが1943年にPocherらが1958年に腸管X線検査時に消化管通過の促進作用を見出しています。
日本国内では、興和株式会社がソルビトールX液として開発し、1962年に厚生労働省から承認を取得しました。現在は、D-ソルビトール経口液75%「コーワ」(以下、本剤)として販売されています。

D-ソルビトールは一般用医薬品としても販売されています
製品名:ミニカS
成分分量(本剤1個:8mL中):D-ソルビトール液(70%) 7.144g、クエン酸ナトリウム0.72g、グリセリン 1g
添加物:CMC-Na、ソルビン酸、大豆レシチン、ケイ酸Mg/Na、バレイショデンプン、トウモロコシデンプン、その他1成分
製薬メーカー:佐藤製薬株式会社
リスク区分第2類医薬品
薬効分類:浣腸薬
剤型:挿入剤
効能・効果:便秘
用法・用量:1回1本を直腸内に注入します(効果不十分な場合はもう一度追加投与)
※12歳未満の方は使用しないでください。

処方可能な診療科目

内科など

健康保険の適応

健康保険適応あり

病院で処方してもらう時の費用目安

診察料などの目安:算出不可
※本剤は造影剤に添加もしくは栄養補給時には必要量を経口投与するとされているため、処方時の費用は算出できません。
薬代1錠あたりの目安:先発品なし(統一名収載品目(*))
薬代後発品1錠の目安:原末1g 1.19円/経口液65%、75% 1.02円
病院によって差が有り薬代の他に、初診料・診察料・検査料などが必要になる

(*)統一名収載品目
一般的に薬価は製品名ごとに決まっています(銘柄別収載)が、成分名(本剤の場合、「D-ソルビトール」という成分)に統一の薬価(原末1g 、経口液65%・75%)が設定される場合があります(統一名収載)。
D-ソルビトールに関しては、銘柄別収載品目が存在しないため、先発品、後発品の区分には該当しませんが、統一名収載品目は後発品で設定されることから、便宜上後発品の薬価として記載しています。

厚生労働省による認可、または発売年月日

1962年6月1日

国内のジェネリック認可

国内ジェネリック認可あり

関連製品(先発薬)

なし

関連製品(ジェネリック)

D-ソルビトール経口液75%「コーワ」【製薬メーカー:興和株式会社】、D-ソルビトール内用液65%「マルイシ」【製薬メーカー:丸石製薬株式会社】、D-ソルビトール原末「マルイシ」【製薬メーカー:丸石製薬株式会社】

効果・作用

D-ソルビトールは医療用医薬品としては、肝臓のグリコーゲンに変換されるなどの働きにより栄養補給を行うことを目的に使用されています。
この働きは動物実験で確認されています。40時間絶食のラットに50%ソルビトール液を4時間間隔で2回投与した結果、8時間後の肝グリコーゲン量(1.06%)は非投与(0.14%)、20%マンニトール2mL2回投与(0.33%)に比べて多かったと報告されています。
また、本剤は一部腸内細菌で産生された有機酸が吸収されてエネルギー源となります。
本剤のX線造影時の緩下作用は12人の健康人を対象に試験が行われ、緩下作用が確認されています。このD-ソルビトールの緩下作用から一般用医薬品医薬品としてh便秘薬として販売されています。
医療用医薬品ではX線造影時以外の便秘薬としての適応症はありませんが、適応外使用(*)で便秘薬として使用されることもあるとの情報がWebサイト上では散見されます。緩下作用は①腸管蠕動運動亢進作用(腸を動かす働き)と浸透圧性緩下作用(腸内の水分を増やし便を柔らかいしたり、便の量を増やす働き)によるものなので、理論的にはX線造影時以外でもその効果があらわれる可能性があります。また薬価が安く、副作用の懸念が少ないことも一因となっていると思われます。

(*)適応外使用が一般的に行われている場合は、その妥当性等を確認する「公知申請」という制度により適応症が追加されることがありますが(例:元来、非ステロイド性消炎鎮痛剤であったアスピリンの抗血小板薬としての適応症追加)、本剤はX線造影時以外の便秘薬としての適応症はありません。
適応外使用で用いられる場合は厳密にはいわゆる保険適応にはならないため全額自己負担となります。また国の健康被害救済制度を利用することができません。
副作用のない薬は基本的にはありません。このため国は「適正使用された薬」でおこった副作用に対して給付金や見舞金の制度を設けています(医薬品副作用被害救済制度と言います)。この制度は「適正に使用されて薬」の副作用に適用されるため、国が認めた薬剤、適応症、用法用量などで使用された薬の副作用は対象外となります。本剤の場合、例えばX線造影時以外の便秘薬として使用され、重大な副作用である腸穿孔がおこったとしても健康被害救済制度を利用する事ができなくなります。一方、一般用医薬品で同様の副作用がおこった場合は健康被害救済制度を利用する事ができます。

使用方法

消化管のX線造影の迅速化、消化管のX線造影時の便秘の防止に使用する場合
X線造影剤に添加して経口投与します。添加量はX線造影中の硫酸バリウム100gに対して10~20gです。
経口栄養補給に使用する場合
必要量を経口投与します。

副作用

重大な副作用
腸穿孔、腸潰瘍、腸壊死:激しい腹痛、嘔吐等がおこった場合は、本剤の投与を中止し、適切な処置を行います。
(ポリスチレンスルホン酸ナトリウムのソルビトール懸濁液を服用した症例で、小腸の穿孔、腸粘膜壊死、大腸潰瘍、結腸壊死等が報告されています。

その他の副作用
大量投与により、腹痛、下痢、腹部膨満、放屁等がおこることがあります。

※その他、異変を感じた場合は直ぐに医師の診察を受け指示に従ってください。

使用に注意が必要な方
使用出来ない方

使用に注意が必要な方
※一般用医薬品の「ミニカS(注入剤の便秘薬)」には以下の注意が記載されています。
・常用すると、効果が減弱し薬剤にたよりがちになりますので、連用しないでください。
・下記の方は使用前に医師、薬剤師または登録販売者に相談してください。
医師の治療を受けている方、妊婦または妊娠していると思われる方(早流産の危険性があります)、高齢者、激しい腹痛・吐き気・嘔吐・痔出血のある方、心臓病の診断を受けた方
・2~3回使用しても排便がない場合は使用を中止し、医師、薬剤師または登録販売者にご相談ください。
・定められた用法・用量を厳守してください。
・無理に挿入すると直腸粘膜を傷つけることがありますので注意してください。容器を少し押して、薬液を先端部に少量つけると簡単に挿入できます。
・本剤(ミニカS)使用後は、便意が強まるまで、しばらく我慢してください(使用後、すぐに排便を試みると薬剤のみ排出され、効果がみられないことがあります)。
・小児に使用させる場合には、保護者の指導監督のもとに使用させてください。
・浣腸にのみ使用してください。

上記にあてはまる方は、D-ソルビトールを使用する事が出来ない可能性があります。
D-ソルビトールを使用する前に、医師又は薬剤師に使用しても問題ないか必ず確認をして下さい。

併用禁忌薬

現在併用禁忌薬に該当する医薬品はありません。

併用禁忌薬に入ってないからといって、その他の医薬品と併用するのは危険です
現在、薬を服用している場合は、併用可能かどうか必ず医師に相談してください。

よくある質問
本剤の色、におい、味を教えてください。

色は無色澄明。においは無臭で甘い味がします。
参照元:D-ソルビトール経口液75%「コーワ」【インタビューフォーム】

栄養補給に使用する場合のエネルギー量を教えてください。

本剤 100mLあたり225kcalです(エネルギー換算係数:3kcal/gより算出)。
参照元:D-ソルビトール経口液75%「コーワ」【インタビューフォーム】

参考元一覧

D-ソルビトール(D-ソルビトール経口液75%「コーワ」 添付文書、インタビューフォーム) 【PMDA 医療用医薬品 情報検索(よくある質問)】
医薬品マスター検索(D-ソルビトール) 【厚生労働省 診療報酬情報提供サービス】
一般用医薬品・要指導医薬品 詳細表示(ミニカS)【PMDA 一般用医薬品・要指導医薬品 情報検索】

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