成分名 |
アルガトロバン水和物 |
適応症状 |
1)下記に記載しました疾患に伴う神経症候(運動麻痺)、日常生活における動作(歩行、起立、坐位保持、食事)の改善へ使用します。
●発症後48時間以内の脳血栓症急性期(ラクネを除きます)
2)慢性動脈閉塞症(閉塞性動脈硬化症・バージャー病)における冷感の改善、安静時疼痛、ならびに四肢潰瘍に使用します。
3)下記に記載しました患者における血液体外循環時の灌流血液の凝固防止(血液透析)
●先天性アンチトロンビンⅢ欠乏患者
●アンチトロンビンⅢ低下を伴う患者
(アンチトロンビンⅢが患者が正常な状態の際の70%以下に低下し、かつ、ヘパリンカルシウムやヘパリンナトリウムの使用状況においては、体外の循環路内における凝血(残血)が改善しないと判断されたもの)
●ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)Ⅱ型患者
4)ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)Ⅱ型(発症リスクのある場合も含まれる)による経皮的冠インターベンション施行時の血液の凝固防止
5)ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)Ⅱ型における血栓症の発症を抑制します。 |
簡易説明 |
アルガトロバン水和物注は、三菱ウェルファーマ株式会社と神戸大学との研究により、1978年に合成された選択的抗トロンビン剤になります。アルガトロバン水和物注は、低分子ヘパリンやヘパリンのようにアンチトロンビンと直接結合することなく、血液を凝固させる作用を持っているる「トロンビン」に選択的に結合する事で、「トロンビン」の作用を阻害する事で血液を固まらせにくくする医療用医薬品になります。
アンチトロンビンと直接結合しなくても血液を固まらせにくくする作用を発揮する為、アンチトロンビンの欠乏や低下がみられる患者へ使用されます。
注意点としては半減期が30分と長いため、出血傾向のある患者への使用には適していないと言う事です。 |
処方可能な診療科目 |
内科/外科/整形外科/血液内科/循環器内科/産婦人科など |
健康保険の適応 |
健康保険適応 |
病院で処方してもらう時の費用目安 |
診察料などの目安 :約2,000円~6,000円
薬代1管あたりの目安:約1440円
薬代後発薬1管の目安:約690円
病院によって差が有り薬代の他に、初診料・診察料・検査料などが必要になります。 |
厚生労働省による認可、または発売年月日 |
2005年3月2日製造販売承認
2011年5月20日効能・効果追加による製造販売一部変更承認
2005年7月8日薬価基準収載
2005年7月25日販売 |
国内のジェネリック認可 |
あり |
関連製品(先発薬) |
スロンノンHI注10mg/2mL【製薬メーカー:アルフレッサファーマ株式会社】
ノバスタンHI注10mg/2mL【製薬メーカー:田辺三菱株式会社】 |
関連製品(ジェネリック) |
アルガトロバン注射液10mg「日医工」20mL【製薬メーカー:日医工株式会社】
アルガトロバン注射液10mg「SN」20mL【製薬メーカー:シオノケミカル株式会社】
アルガトロバン注射液10mg「サワイ」20mL【製薬メーカー:沢井製薬株式会社】
アルガトロバン注シリンジ10mg「NP」20mL【製薬メーカー:ニプロ株式会社】 |
海外での使用実績 | 欧州
2005年発売:ドイツ、スウェーデン
2006年発売:オーストラリア
2007年発売:オランダ、デンマーク、ノルウェー
2008年発売:イタリア
2011年発売:フランス、フィンランド
2012年発売:イギリス
2013年発売:スペイン
2016年発売:スイス
HIT患者の透析、HIT患者のPCI、HIT患者における抗凝固に適応があります。
アメリカ:2000年発売
HIT患者のPCI、HIT患者における抗凝固に適応があります。
カナダ:2002年発売
HIT患者における抗凝固に適応があります。
韓国:2001年発売
脳梗塞急性期、慢性動脈閉塞症に適応があります。
中国:2003年発売
慢性動脈閉塞症に適応があります。 |
効果・作用 |
スロンノンHI注10mg/2mLは①発症後48時間以内の脳血栓症急性期(ラクネを除く)、②慢性動脈閉塞症、③先天性アンチトロンビンⅢ欠乏患者、アンチトロンビンⅢ低下を伴う患者、HITⅡ型患者における血液体外循環時の灌流血液の凝固防止(血液透析)、④HITⅡ型患者におけるPCI時の血液の凝固防止、⑤HITⅡ型における血栓症の発症抑制へ効果のある医療用医薬品になります。
【作用機序】
アルガトロバンは、トロンビンを不活性化するアンチトロンビンⅢを介さずに、血液中の凝固因子であるトロンビンを選択的に且つ直接阻害する静注抗凝固剤になります。本剤の3本足(トライポッド)構造がトロンビンの活性部位と立体的に結合する事により、トロンビンによる①フィブリン生成、②血小板凝集、③血管収縮の3つの作用を抑制する事でその効果を発揮します。
【脳梗塞とは?】
脳梗塞とは脳の血管が突然詰まることにより血流が途絶え、脳の細胞が死んでしまう病気になります。早期に適切な治療を受けないと後遺症をきたしたり、死亡してしまう可能性があります。
この「脳梗塞」と呼ばれるものの中には血管の詰まり方によって、「ラクナ梗塞」、「アテローム血栓性脳梗塞」、「新原生脳塞栓症」の3種類のタイプに分別されます。「ラクナ梗塞」は脳血栓の中でも脳の深い部分を流れている細い血管が詰まってしまうことで起きる脳梗塞を言います。「アテローム血栓性脳梗塞」は脳の大きな血管や首の血管が動脈硬化により狭くなっている、あるいは詰まってしまうことによって生じる脳梗塞を言います。「心原生脳塞栓症」は心臓の中でできた血栓が血液を通して脳へ運ばれ、脳動脈を詰まらせる脳梗塞を言います。
【慢性動脈閉塞症とは?】
慢性動脈閉塞症とは、動脈硬化が起こることで血管内膜が傷つくことで、それを修復するために血小板が集まり塊を形成する為、血管内膜の狭窄が起こります。その結果末梢動脈が細くなったり(狭窄)、詰まったり(閉塞)し、痺れ、冷感、歩行障害、重症の場合には下肢の壊死にまで至る症状の事をいいます。
【先天性アンチトロンビンⅢ欠乏とは?】
アンチトロンビンは、トロンビンなどの活性型凝固因子と結合する事により複合体を形成し、トロンビン等を中和する事で過剰な凝固の行き過ぎにブレーキをかけます。その為、このアンチトロンビンが欠乏すると血液凝固の進行にブレーキがかからず、血栓症を起こしやすくなります。
先天性アンチトロンビン欠乏症は遺伝性疾患と言われております。先天性アンチトロンビン欠乏症でおこる血栓症としては、動脈よりも静脈における血栓症が多く、深部静脈血栓症や肺血栓塞栓症、上腸間膜静脈血栓症、門脈血栓症等があります。
【ヘパリン起因性血小板減少症とは?】
ヘパリン起因性血小板減少症は、血栓の予防・治療のために投与されたヘパリンが原因となり、血小板第4因子とヘパリンの複合体に対する抗体(HIT抗体)が産生され、血小板の減少とともに、血栓症や塞栓症を引き起こす疾患になります。 |
使用方法 |
1)発症後48時間以内の脳血栓症急性期の投与について(1996年4月承認)
通常、成人においては、初めの2日目までは1日60mgを輸液を用いて適当量に希釈し、24時間かけて持続点滴静注します。その後の5日間は1回10mgを輸液を用いて適当量に希釈し、1日2回朝・夕に点滴静注します。1回にかける点滴静注の時間は3時間かけることとされております。なお、年齢や症状によって適宜増減する事と記載されております。
2)慢性動脈閉塞症における四肢潰瘍、安静時疼痛ならびに冷感の改善における投与について(1990年1月承認)
通常、成人においては、1回10mgを輸液を用いて適当量に希釈し、1日2回点滴静注します。1回にかける点滴静注の時間は2~3時間かけることとされております。なお、年齢や症状によって適宜増減する事と記載されております。
3)先天性アンチトロンビンⅢ欠乏者、アンチトロンビンⅢの低下を伴う患者、ヘパリン起因性血小板減少症Ⅱ型患者における血液体外循環時の灌流血液の凝固防止における投与について(1996年4月承認)
通常、成人においては、透析開始する際にまず10mgを回路内へ投与し、透析開始後は毎時25mgから投与を開始していきます。凝固時間の延長、透析終了後の止血状況、回路内の凝固、及び透析効率等を指標に用いる事で投与量を増減し、患者ごとの投与量を決定するが、毎時5~40mgを目安にして投与する事とされております。
4)ヘパリン起因性血小板減少症Ⅱ型患者における経皮的冠インターベンション施行時の血液の凝固防止における投与について(2011年5月承認)
通常、成人においては、本剤を適当な量の輸液を用いる事で希釈してから、投与量として0.1mg/kgを3~5分かけて静脈内投与し、3~5分間の投与終了後には6μg/kg/分を静脈内持続投与の目安として投与し、術後の4時間までは維持継続する事とされております。その後、抗凝固療法の継続が必要と判断される場合においては、0.7μg/kg/分に投与する量を減量し静脈内持続投与を行います。なお、持続投与量はあくまで目安であり、凝固能のモニタリングを適切に行う事によって適宜調節するようにとの記載がございます。
本剤による治療開始及び投与量変更時には体重換算による投与量の表を参考に投与する事とされております。
5)ヘパリン起因性血小板減少症Ⅱ型患者における血栓症の発症抑制における投与について(2008年7月承認)
通常、成人においては、本剤を適当な量の輸液を用いる事で希釈してから、0.7μg/kg/分より点滴静注を開始し、持続投与する事とされております。なお、肝機能障害のある患者や出血リスクのある患者に対しては、低用量から投与を開始する事とされております。投与量の増減に至っては活性化部分トロンボプラスチン時間を指標の一つにすることで患者ごとの投与量を決定する事とされております。
本剤による治療開始には体重換算による投与量の表を参考に投与する事とされております。 |
副作用 |
重大な副作用
1)出血性脳梗塞(1.2%)
2)脳出血(0.1%)、消化管出血(0.2%)
3)ショック・ナフィラキシーショック(頻度不明)
4)劇症肝炎(頻度不明)、肝機能障害(0.02%)、黄疸(0.03%)
その他の副作用
1)血液
凝固時間の延長、出血、血尿、貧血(赤血球、ヘモグロビン、ヘマトクリット値の減少)、白血球増多、白血球減少、血小板減少(0.1%~5%未満)
2)過敏症
皮疹(紅斑性発疹等)(0.1%~5%未満)
掻痒、蕁麻疹(0.1%未満)
3)血液
血管痛、血管炎(0.1%未満)
4)肝臓
AST(GOT)上昇、ALT(GPT)上昇、ALP上昇、LDH上昇(0.1%~5%未満)
総ビリルビン上昇、γ-GTP上昇(0.1%未満)
5)腎臓
BUN上昇、クレアチニン上昇(0.1%~5%未満)
6)消化器
嘔吐、下痢(0.1%~5%未満)
食欲不振、腹痛(0.1%未満)
7)その他
腹痛(0.1%~5%未満)
四肢の疼痛、四肢のしびれ、ふらつき、不整脈、心悸亢進、熱感、潮紅、悪寒、発熱、発汗、胸痛、過換気症候群、呼吸困難、血圧上昇、血圧低下、浮腫、腫脹、倦怠感、血清総蛋白減少(0.1%未満)
※その他、異変を感じた場合は直ぐに医師の診察を受け指示に従ってください。 |
使用に注意が必要な方 使用出来ない方 |
使用が出来ない方 1)出血している患者(頭蓋内出血、血管障害による出血傾向、消化管出血、血友病、血小板減少性紫斑病、その他の凝固障害、出血性脳梗塞、手術時、喀血、尿路出血、月経期間中、流早産・分娩直後等性器出血を伴う妊産婦等)
本剤を出血している患者へ投与した場合、止血する事が困難となる可能性がある事から投与禁忌とされております。
2)脳塞栓又は脳塞栓の恐れがある患者(ただし、ヘパリン起因性血小板減少症Ⅱ型患者は除くこととされております)
本剤を投与する事によって出血性脳梗塞を起こす可能性がある事から投与禁忌とされております。
3)重篤な意識障害を伴う大梗塞を患っている患者
本剤を大梗塞を患っている患者に投与した場合、出血性脳梗塞を引き起こす可能性がある為、投与禁忌とされております。
4)本剤の成分に対して過去に過敏症が現れたことがある患者
■アルガトロバン水和物を配合した医薬品の添加物に、アレルギーをお持ちの方
下記、添加物にアレルギーをお持ちの方スロンノンHI注10mg/2mLは、アレルギー反応を起こしてしまう為、服用できません。
▼スロンノンHI注10mg/2mLの有効成分
アルガトロバン水和物
▼代表薬の添加物
・無水エタノール、濃グリセリン、pH調節剤
使用に注意が必要な方 1)出血の可能性のある患者(消化管潰瘍、消化管の憩室炎、大腸炎、内臓の腫瘍、亜急性細菌性心内膜炎、血小板の減少している患者、重症高血圧症、重症糖尿病の患者、脳出血の既往歴のある患者、手術後の患者等)
本剤を投与する事により出血を起こす恐れがある為慎重投与する事とされております。
2)抗凝固薬、血小板凝集抑制作用を有する薬剤、血栓溶解薬又はフィブリノーゲン低下作用を有する酵素製剤を投与中の患者
これらの薬剤と併用する事で、出血傾向の増強が現れることがある為慎重投与する事とされております。
3)重篤な肝障害のある患者
本剤は肝臓で代謝される医薬品の為、投与する事で本剤の血中濃度が上昇する恐れがある為慎重投与する事とされております。
4)高齢者への投与
一般的に高齢者においては生理機能が低下している為減量するなど注意が必要とされております。
5)妊婦、産婦、授乳婦への投与
動物実験において乳汁中へ移行する事が報告されております。
6)小児等への投与
低出生体重児、新生児、乳児、幼児又は小児に対する安全性は確立しておりません。
上記にあてはまる方は、アルガトロバン水和物を使用する事が出来ない可能性があります。 アルガトロバン水和物を使用する前に、医師又は薬剤師に使用しても問題ないか必ず確認をして下さい。 |
併用禁忌薬 |
併用注意薬 1)抗凝固薬(ヘパリン、ワルファリン等)
血液凝固作用を阻害する事により、凝固時間を延長し、出血傾向の増強が現れる恐れがあります。
2)血小板凝集抑制作用を有する薬剤(アスピリン、オザグレルナトリウム、チクロピジン塩酸塩、クロピドグレル硫酸塩、シロスタゾール、ジピリダモール等)
血小板凝集を抑制する事により、出血傾向の増強が現れる恐れがあります。
3)血栓溶解薬(アルテプラーゼ、ウロキナーゼ等)
プラスミノーゲンをプラスミンに変換させ、生成したプラスミンがフィブリンを分解し血栓を溶解するため、出血傾向の増強が現れる恐れがあります。
4)フィブリノーゲン低下作用を有する酵素製剤(バトロキソビン等)
フィブリノーゲンが低下する事により出血傾向の増強が現れる恐れがあります。
上記を使用している方は、アルガトロバン水和物を使用する事が出来ない可能性があります。 アルガトロバン水和物を使用する前に、医師又は薬剤師に使用しても問題ないか必ず確認をして下さい。
併用禁忌薬 なし
用禁忌薬がないからといって、その他の医薬品と併用するのは危険です 現在、薬を服用している場合は、併用可能かどうか必ず医師に相談してください。 |
よくある質問 |
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