ドパミン塩酸塩

成分名

ドパミン塩酸塩

適応症状

ショック(循環不全)

簡易説明

ドパミン塩酸塩は古くからアドレナリンの前駆物質として知られていて、1910年にMannich、Bargerにより合成されました。
ドパミン塩酸塩の作用としては1937年に血圧上昇作用、1931年には静脈投与による血圧上昇作用、1937年には陽性変力作用(心収縮力を増大させる作用)が示されました。
日本国内では協和キリン株式会社が1972年に急性循環不全に対する臨床試験を実施し、1977年6月にイノバン注(以下、本剤)が厚労省の承認を得ました。
その後、本剤の希釈やシリンジへの充填等の手間を省くため、プレフィルドシリンジ(あらかじめ調製した薬をシリンジに充填した製剤)を2002年10月に発売しました。

※本剤はショック状態で使用する薬です。一般の方が用いる薬ではありません。
ショックとは:生体に対する侵襲あるいは侵襲に対する生体反応の結果、重要臓器の血流が維持できなくなり、細胞の代謝障害や臓器障害がおこり、生命の危機にいたる急性の症候群

処方可能な診療科目

救急科/循環器科など

健康保険の適応

急性循環不全(心原性ショック、出血性ショック)
下記のような急性循環不全状態に使用します。
・無尿・乏尿や利尿剤で利尿が得られない状態
・脈拍数の増加した状態
・他の強心・昇圧剤により副作用が認められた李、好ましい反応が得られない状態

病院で処方してもらう時の費用目安

この薬は処方薬ではありません(薬価記載)。
イノバン注:50mg(2.5mL1管)269.00円/100mg(5mL1管)197.00円/0.1%シリンジ(50mL1筒)559.00円/0.3%シリンジ(50mL1筒)805.00円/0.6%シリンジ(50mL1筒)1,499.00円
ドパミン塩酸塩点滴静注:50mL(2.5mL1管)131.00円/100mg(5mL1管)97.00円~127.00円/200mg(10mL1管)132.00円/キット200mg(200mL1袋)818.00円~1,130.00円/キット600mg(200mL1袋)1,304.00円

厚生労働省による認可、または発売年月日

発売年月日:1978年3月10日

国内のジェネリック認可

あり

関連製品(先発薬)

イノバン注(50mg、100mg、0.1%シリンジ、0.3%シリンジ、0.6%シリンジ)【製薬メーカー:協和キリン株式会社】

関連製品(ジェネリック)

ツルドバミ点滴静注(100mg、200mg)【製薬メーカー:鶴原製薬株式会社】
、ドパミン塩酸塩点滴静注「NP」(50mg、100mg、200mg、200mgバッグ、600mgバッグ)【製薬メーカー:ニプロ株式会社】、ドパミン塩酸塩点滴静注「NIG」【50mg、100mg、200mg)【製薬メーカー:日医工株式会社】、ドパミン塩酸塩点滴静注100mg「イセイ」【製薬メーカー:コーアイセイ株式会社】、ドパミン塩酸塩点滴静注100mg「ツルハラ」【製薬メーカー:鶴原製薬株式会社】、ドパミン塩酸塩点滴静注「KCC」(100mg、200mgキット、600mgキット)【製薬メーカー:ネオクリティケア製薬株式会社】、ドパミン塩酸塩点滴静注「VTRS」(100mg、200mgキット、600mgキット)【製薬メーカー:ヴィアトリス製薬株式会社】

海外での使用実績

アメリカで承認されています。(2020年7月現在)

効果・作用

ドパミン塩酸塩は循環器系に対し心収縮力増強作用、腎血流増加作用、上腸間膜血流増加作用、血圧上昇作用があり、これらの作用が複合的に絡み合って強心作用、昇圧作用、利尿作用を発現し、心原性ショック、出血性ショック等の急性循環不全を改善します。

日本国内では25施設167症例を対象とした臨床試験が行われています。
総有効率:71.3%
疾患別有効率:心原性ショック 76.6%(72/94例)、出血性ショック 90.0%(9/10例)、その他の急性循環不全及び急性循環不全状態 60.3%(38/63例)

一方、本剤投与時には下記注意が必要となります。
・それぞれのショック状態では必要に応じて、最初に輸液、輸血、呼吸管理、ステロイド投与等の処置を考慮します。
・血圧、脈拍数、尿量等、状態を見ながら投与します。
・大量使用した際に、脈拍数が増加した場合や尿量が増加しない場合は、本剤を減量・中止します。※本剤の過量投与によって急激な血圧上昇等がおこるおそれがあります。この場合は投与速度を落とすか一時的に投与を中止します。
なお、本剤は持続静脈投与(点滴)のみで使用します。筋肉注射で使用すると、硬結、壊死を起こすことがあります。

使用方法

1分間当たり1~5μg/kgを点滴静脈投与します。状況に応じて20μg/kgまで増量することができます(投与量は血圧、脈拍数、尿量により増減します)。
(注50mg・100mgの場合)
必要に応じて、日局生理食塩水、日局ブドウ糖注射液、総合アミノ酸注射液、ブドウ糖・乳酸ナトリウム・無機塩類剤等で希釈します。

副作用

重大な副作用
・麻痺性イレウス
・末梢の虚血(四肢冷感等の末梢の虚血がおこり、壊疽を生じることもある)

副作用発現率:10.05%(240/2,389)
発現率5%以上の副作用:不整脈(心室性期外収縮、心房細動、心室性頻脈等)

※その他、異変を感じた場合は直ぐに医師の診察を受け指示に従ってください。

使用に注意が必要な方
使用出来ない方

使用が出来ない方
■褐色細胞腫のある方
症状が悪化するおそれがある為、使用出来ません。
■ドパミン塩酸塩を配合した医薬品の添加物にアレルギーをお持ちの方
下記、添加物にアレルギーをお持ちの方、イノバンはアレルギー反応を起こしてしまう為、使用出来ません。
▼イノバンの有効成分
ドパミン塩酸塩
▼イノバンの添加物
(注)
ピロ亜硫酸ナトリウム
(シリンジ)
亜硫酸ナトリウム、ブドウ糖、pH調節剤

使用に注意が必要な方
・末梢血管障害(糖尿病、アルコール中毒、凍傷、動脈硬化症、レイノー症候群、バージャー病等)のある方:末梢血管収縮作用により症状が悪化するおそれがあります。
・未治療の頻脈性不整脈又は心室細動の方:陽性変力により症状が悪化するおそれがあります。
・妊婦、妊娠している可能性のある女性:有益性が危険性を上回る場合のみ使用します。
・授乳婦の方:治療上の有益性と母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続・中止を検討します。
・高齢者:一般的に生理機能が多く、副作用があらわれやすいため。
・擬糖尿病、糖尿病の方(シリンジのみ):血糖値が上昇するおそれがあります。

上記にあてはまる方は、ドパミン塩酸塩を使用する事が出来ない可能性があります。
ドパミン塩酸塩を使用する前に、医師又は薬剤師に使用しても問題ないか必ず確認をして下さい。

併用禁忌薬

併用注意薬
フェロチアジン誘導体、ブチロフェノン誘導体:作用が減弱することがあります。
モノアミン酸化酵素阻害剤:本剤の作用が増強・延長することがあります。
ハロゲン化炭化水素系麻酔剤:不整脈をおこすおそれがあります。

上記を使用している方は、ドパミン塩酸塩を使用する事が出来ない可能性があります。
ドパミン塩酸塩を使用する前に、医師又は薬剤師に使用しても問題ないか必ず確認をして下さい。

併用禁忌薬
なし

併用禁忌薬がないからといって、その他の医薬品と併用するのは危険です
現在、薬を服用している場合は、併用可能かどうか必ず医師に相談してください。

ドパミン塩酸塩に関する
よくある質問
イノバン注を希釈する際の注意事項はありますか?

pH8.0以上になると着色することがあるので、重曹のようなアルカリ性薬剤と混合しないこと。

ドパミン塩酸塩(イノバン注 添付文書)

【上記引用元:イノバン 添付文書】

1シリンジ使い切れなかった場合の保管方法はありますか?

開封後の使用は1回限りとし、使用後の残液はシリンジとともに速やかに廃棄すること。

ドパミン塩酸塩(イノバン注シリンジ 添付文書)

【上記引用元:イノバン 添付文書】

参考元一覧

ドパミン塩酸塩(イノバン注・注シリンジ 添付文書、インタビューフォーム) 【PMDA 医療用医薬品 情報検索】

医学用語 解説集(ショック) 【日本救急医学会】

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