ジエチルカルバマジンクエン酸塩

成分名

ジエチルカルバマジンクエン酸塩

適応症状

フィラリアの駆除

簡易説明

ジエチルカルバマジンクエン酸塩には、フィラリア(糸状虫)を殺す作用があります。
蚊を媒介して人から人へと感染するフィラリアは、人体に入るとリンパ管に寄生します。
雌のフィラリアは、寄生した場所で生涯、その血液中にミクロフィラリア(仔虫)を放流し続けます。
そのため適切な措置を施さない限り、体内におけるフィラリア存在数は増加の一途を辿ります。
そして存在数が増えるにつれて、リンパ節を始めあらゆる組織、機能が蝕まれていき、徐々に発熱や炎症など身体中に様々な症状(フィラリア症)が見られるようになります。
冒頭にもあるように、本成分ジエチルカルバマジンクエン酸塩にはフィラリアを殺す作用があるので、摂取して同寄生虫を死滅させることによって、上記症状が改善されていきます。
1940年代には日本国内に100万人以上の患者がいるとされていたフィラリア症ですが、国を挙げての大がかりな血液検査や投薬、および蚊の駆除が行われたことにより制圧され、1978年には根絶しました。
そのため現在国内で感染することはまずありませんが、海外渡航中に感染し、帰国後に発症するというケースがあります。
その場合に、本成分を含む医薬品による治療が現在も行われています。

処方可能な診療科目

内科/アレルギー科/感染症内科など

健康保険の適応

健康保険適応

病院で処方してもらう時の費用目安

診察料などの目安  :約3,000円~5,000円
薬代1錠あたりの目安:50mg 10.2円
病院によって差が有り薬代の他に、初診料・診察料・検査料などが必要です。

厚生労働省による認可、または発売年月日

1951年2月(発売)

国内のジェネリック認可

現在ジェネリック医薬品の製造はありません。

関連製品(先発薬)

スパトニン錠50mg【製薬会社:田辺三菱製薬株式会社】

関連製品(ジェネリック)

現在ジェネリック医薬品の製造はありません。

海外での使用実績

・パプアニューギニア、キリバス、ツバル、フィジー

日本の大手製薬会社エーザイが、2013年10月、自社製のリンパ系フィラリア症治療薬「ジエチルカルバマジンクエン酸塩(略称:DEC)100mg錠」の世界保健機関(以下WHO)への無償提供を開始しました。
(2013年10月)現在、リンパ系フィラリア症の蔓延国においてDEC錠が入手困難な状況にあります。
そこでエーザイは同疾患の制圧を目的としてDEC錠を自社開発・製造し、WHOの事前認定取得を経て、インド・バイザッグにある自社工場から出荷を始めました。
初出荷国は標記4か国で、今後、同疾患が蔓延している26か国2.5億人に7年間継続して提供される予定です。

効果・作用

ジエチルカルバマジンクエン酸塩はフィラリア症治療成分の一つで、人体内に寄生するフィラリア(糸状虫)を駆除するはたらきがあります。
フィラリアには、バンクロフト糸状虫、マレー糸状虫、イヌ糸状虫など様々な種類が存在し、それらは元々蚊の体内に潜んでいます。
そして蚊が人を刺したタイミングで、糸状虫の幼虫が人体に入り込むと感染が成立します。
上に一部列挙したように様々な種類がいるフィラリアですが、そのうち人にフィラリア症を引き起こさせるのは、バンクロフト糸状虫、マレー糸状虫、チモール糸状虫の3種類です。
人体内で成長した雌のフィラリアは、成熟すると「ミクロフィラリア(仔虫)」を人の血液内に放流します。
そのミクロフィラリアを含んだ血液を別の蚊が吸い、その蚊の体内でミクロフィラリアが感染幼虫になり、再び別の人を刺すことで新たな感染が成立する、というのがフィラリア感染の流れです。
人体内では主にリンパ管に寄生するフィラリア、その寿命は6~8年程度で、雌は生きている間、人の血液内にミクロフィラリアを放流し続けます。
そのため感染初期では、体内のフィラリア存在数が少なく無症状のことが多いですが、実際にはその間にもどんどん存在数が増え、徐々にリンパ管や腎臓の機能を障害したり、免疫システムを変化させたりするようになります。
その後、フィラリアが溜まっている皮膚やリンパ節にリンパ液が滞り、炎症を起こし始めます。
そしてリンパ液が滞り閉塞することで浮腫が起こります。
その浮腫による刺激で、皮膚や皮下組織に変化が起きると、象皮症(リンパ系の損傷により、脚などが象の皮膚のように硬く肥大化する疾患)を引き起こします。
そうした連鎖を避けるため、また症状の進行を食い止めるためには、体内のフィラリア数を減らすことが必須になります。
ジエチルカルバマジンクエン酸塩には、フィラリア成虫の酸素消費を抑制したり、宿主である人体に対して抗体産生能や貪食能(体内にある不要なものを取り込み、消化、分解する作用)を亢進したりしてフィラリアを殺す作用があります。
そのため、その摂取により、フィラリア症の改善効果が期待出来るのです。

使用方法

用法用量は、以下3段階に分かれます。

1.服用開始1~3日目
ジエチルカルバマジンクエン酸塩として、1日1回100mg(小児は50mg)を夕食後に内服します。

2.服用開始4~6日目
ジエチルカルバマジンクエン酸塩として、1日300mg(小児は150mg)を3回に分けて毎食後に服用します。

3.服用開始7日目以降
ジエチルカルバマジンクエン酸塩として、1日300mg(小児は150mg)を毎週1回、8週間服用します。

副作用

主な副作用
頭痛 、倦怠感 、眩暈 、眠気 、悪心 、嘔吐 、食欲不振 、腹痛 、下痢 、脱毛

重大な副作用
発熱 、リンパ節腫脹 、陰嚢腫脹 、浮腫 、そう痒 、悪寒 、疝痛 、筋肉痛 、皮疹 、皮膚炎 、アレルギー性脳炎 、過敏症状 、失明

※その他、異変を感じた場合は直ぐに医師の診察を受け指示に従ってください。

使用に注意が必要な方
使用出来ない方

使用が出来ない方
■ジエチルカルバマジンクエン酸塩を配合した医薬品の添加物に、アレルギーをお持ちの方
下記添加物にアレルギーをお持ちの方は、スパトニン錠50mgは、アレルギー反応を起こしてしまう為、服用出来ません。
▼スパトニン錠50mgの有効成分
ジエチルカルバマジンクエン酸塩
▼代表薬の添加物
・カルメロースカルシウム
・ステアリン酸マグネシウム
・セルロース
・タルク
・デキストリン
・トウモロコシデンプン
・乳糖水和物

使用に注意が必要な方
■高齢者
一般的に高齢者は生理機能が低下しているので、成分の血中濃度が高くなりすぎないよう注意する必要があります。

■妊婦、妊娠している可能性のある女性、産婦、授乳婦
標記の方々への安全性は確立していないため、なるべく服用を避けるようにして下さい。

上記にあてはまる方は、ジエチルカルバマジンクエン酸塩を使用する事が出来ない可能性があります。
ジエチルカルバマジンクエン酸塩を使用する前に、医師又は薬剤師に使用しても問題ないか必ず確認をして下さい。

併用禁忌薬

現在併用禁忌薬に該当する医薬品はありません。

併用禁忌薬に入ってないからといって、その他の医薬品と併用するのは危険です
現在、薬を服用している場合は、併用可能かどうか必ず医師に相談してください。

よくある質問
フィラリア症というと犬や猫など動物が感染するイメージがありますが、動物用も駆除薬の主成分はジエチルカルバマジンクエン酸塩ですか?

ジエチルカルバマジンクエン酸塩は動物用フィラリア駆除薬の有効成分としてはあまり用いられません。
フィラリア(糸状虫)には種類があり、例えば犬にフィラリア症を感染させるのはイヌ糸状虫で、人間に同疾患を感染させるバンクロフト糸条虫とは別種類のものです。
イベルメクチンのように人間と動物双方に効果のある成分もありますが、本成分に於いてはそうではありません。

対象が虫であるとはいえ、微生物より大きい生物を殺すはたらきのある成分を人間が摂取しても問題ないのでしょうか?

ジエチルカルバマジンクエン酸塩は毒性が低く、安全域が大きいとされている物質です。ただし、中毒量を摂取すると、副作用が強く出たり、嘔吐、振戦、けいれんといった症状が現れたりする場合がありますので注意が必要です。

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